-
エルドアンの「経済・法制度改革」――意志と抵抗
/ 間 寧
トルコでは2020年11月に入り経済状況が深刻化するなか、エルドアン大統領が7日にムラット・ウイサル中央銀行総裁を更迭した。さらにベラト・アルバイラク国庫財務相が8日に辞任、エルドアンはそれを27時間後に承認すると11日に「経済・法制度改革」を宣言した。この一連の動きから3つの疑問が浮かぶ。第1に、エルドアンが後継者として育てていたアルバイラクはなぜ辞任に至ったのか。第2に、中央銀行の独立性を著しく損ねる総裁解任がなぜ経済改革に繋がるのか。第3に、いまだに具体策が提示されず政権内部からの抵抗をも表面化させたこの改革宣言は、何をもたらすのか。本稿ではこの3つの問いへの答えを探すことで、改革宣言の背景と展望を、2017年にトルコで導入された集権的大統領制の機能から説明する。
2020/12/24
-
スリランカの20次憲法改正――大統領の権限強化
/ 荒井 悦代
スリランカで2020年8月5日に行われた国会議員選挙で、マヒンダ・ラージャパクセ元大統領が率いるスリランカ大衆党(SLPP)が、憲法改正を可能にする国会議席の3分の2の150議席にせまる148議席を獲得した。そして選挙からわずか2カ月半後の10月22日に、1978年憲法の20次改正案が国会を通過した 。
2020/12/10
-
大統領が相次いで交代したペルーの政治混乱
/ 清水 達也
2020年11月、ペルーでは1週間に2回大統領が交代した。
政治や経済の混乱が相次ぐラテンアメリカ諸国のなかでペルーは、2000年代以降、順調な経済成長と比較的安定した政治を維持してきた。しかし、コロナ禍による死者が世界的にみても高い水準に達しているのに加え、経済は域内で最も深刻なマイナス成長が予測されている。そのような状況において、相次いで大統領が交代した。
2020/12/04
-
ASEANを通じた内政干渉?――災害管理の事例から
/ 鈴木 早苗
ミャンマーのロヒンギャ問題が国際的な注目を集めている。ロヒンギャはミャンマーのラカイン州に住んでいるムスリムで、ミャンマー国籍を付与されず、たびたび迫害を受けてきた。2017年8月、ミャンマー国軍とロヒンギャとの軍事衝突の結果、70万人を超えるロヒンギャの人々が国外に逃亡し、難民化したとされる。国際社会がミャンマー政府への批判を強める一方、ミャンマーが加盟するASEANはこの問題を「災害」と位置づけ、ASEAN事務総長を現地に派遣し、状況の把握と支援の可能性を探っている。
2020/12/01
-
(2020年ミャンマー総選挙)アウンサンスーチー圧勝の理由と、それが暗示する不安の正体
/ 中西 嘉宏
2015年11月8日の夕刻、筆者はヤンゴンの国民民主連盟(National League for Democracy、以下NLD)の本部前にいた。その日、ミャンマーで総選挙が実施されていた。午後を過ぎたあたりだっただろうか、投票締め切り後に党本部でアウンサンスーチー(以下スーチー)が勝利宣言をする、という噂が広がった。筆者もその噂を耳にしてすぐさま党本部のあるシュエゴンダイン通りに向かった。本部前には群衆や内外の報道陣が集まっていた。夕方には雨が降りはじめたが、人の数はどんどん増えていった。ついには、本部前を車が通行できなくなってしまった。
2020/11/27
-
RCEP署名は何を意味するか――地経学的見方
/ 浜中 慎太郎
中国は2004年にモノの関税引き下げを目指した自由貿易協定(FTA)である東アジア自由貿易協定(EAFTA)を提案した。中国が念頭に置いた参加国はASEAN+3の13カ国であった。一方、日本の関心はモノでなくサービス・投資の自由化や知的財産権の保護であったため、より分野包括的なパートナーシップを豪州・NZ・インドを含めた16カ国で締結しようと逆提案した(CEPEA構想)。日中は折り合うことが出来ず、EAFTA、CEPEAの両プロジェクトが並走した。この時点では日中の力は伯仲し、どちらも主導権をとることは容易でなかった。
2020/11/20
-
-
-
(2020年ミャンマー総選挙)選挙結果速報――国民民主連盟が再び地滑り的な勝利
/ 長田 紀之
2020年11月8日に実施されたミャンマー総選挙の結果が、9日から15日にかけて選挙管理委員会から発表された。与党の国民民主連盟(National League for Democracy、以下NLD)は、議席を減らすのではないかという大方の予想を裏切り、前回の2015年総選挙を上回る議席を獲得して、ふたたび地滑り的な勝利を収めた。
2020/11/18
-
新型コロナ禍のなかのインドネシア――感染の拡大と景気後退
/ 東方 孝之
インドネシアでも新型コロナウィルス感染者数の増加に歯止めがかからない。世界第4位の約2億7千万の人口をかかえたインドネシアでは、2020年10月24日時点で感染者は累積で38万2千人、死亡者も合計1万3千人を超えたとみられる。人口の違いを考慮して100万人当たりの人口比でみるならば、死亡者数は48人に上る。これは東南アジアのなかではフィリピンの63人に次いで大きく、また、日本(13人)の約3.7倍に相当する。
2020/11/10
-
(2020年ミャンマー総選挙)アウンサンスーチー政権下の経済成果と総選挙への影響
/ 工藤 年博
前回2015年11月の総選挙の争点が「軍政からの脱却」「民主化」であったのに対し、今回2020年の総選挙ではそうした明確な争点は見当たらない。そのため、過去4年半のアウンサンスーチー(以下、スーチー)政権の実績をどう評価するかが主要な焦点になるだろう。前回総選挙で国民民主連盟(NLD)が掲げた公約には少数民族武装勢力との停戦合意と民族和解、国軍の影響力が残る2008年憲法の改正、人権と民主主義の定着などと並んで、国民に裨益する経済成長の実現が重要政策として掲げられていた。本稿ではスーチー政権下における経済パフォーマンスを振り返り、経済政策や運営を評価する。そのうえで、経済政策が今回の総選挙の争点になっていないことを指摘する。
2020/11/05
-
#もしもラオスの政治が良かったら
/ 山田 紀彦
「#もしもラオスの政治が良かったら」。ラオスの民主化を求めるこのハッシュタグは、ラオス語で書かれているにもかかわらず、10月19日から20日にかけてタイのTwitterを席巻し、一時はトップトレンドのひとつとなった(Satrusayang 2000b)。このハッシュタグをつけてツイートしているのは、タイの反政府運動に参加している人々やその支持者、また民主化を求めるラオス人である 。同じく民主化を求める香港などからも、同ハッシュタグを使った連帯を示すツイートが寄せられた。
2020/11/04
-
(2020年ミャンマー総選挙)特集にあたって――アウンサンスーチー政権の成果を問う選挙
/ 長田 紀之
2020年11月8日、ミャンマーの総選挙が実施される。前回の2015年総選挙では、アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(National League for Democracy、以下NLD)が地滑り的な勝利を収め、翌年に歴史的な政権交代が実現した。5年の任期を終えつつあるこのNLD政権に対して、国民はどのような評価をくだすのだろうか。今回の選挙は、前回ほどの目立った変化には直結しないかもしれない。しかし、長い目で見れば、すでに大きな変化のなかにあって難局を迎えているミャンマーが、将来の進路を定めていくにあたっての重要な分岐点のひとつになりうるだろう。この特集では、投票日の前後数回にわたって総選挙のみどころや結果について伝えていく。初回は、選挙の背景を解説しながら、いくつかの注目点を挙げる。
2020/10/29
-
トルコはなぜナゴルノ・カラバフ紛争に関与するのか
/ 今井 宏平
「凍結された紛争」と言われたナゴルノ・カラバフ紛争は2010年代後半に入り次第に解凍し始めていたが、2020年9月27日にアゼルバイジャン軍とアルメニア軍の間で衝突が発生し、その後両軍および戦争に巻き込まれた一般市民の犠牲が相次いだ 。国際危機グループの調べによると、9月と10月の両軍および市民の総犠牲者数は529名となっている(9月が205名、10月が324名) 。
2020/10/26
-
第2次ナゴルノ・カラバフ紛争――再び開かれた戦端
/ 立花 優
ロシア、トルコ、イランに囲まれたコーカサス地域の一国アゼルバイジャン共和国において、2020年9月27日、大規模な軍事衝突が発生した。重火器による砲撃の応酬や攻撃ドローンの投入、戦闘エリア外の民間人居住域への大砲・ミサイルによる攻撃など、衝突はエスカレートの一途を辿った。ロシアの仲介によって、数度にわたり「人道的休戦」が合意されたが、いずれも実効性のある停戦には至らず、戦闘は拡大し続けている。アゼルバイジャン側はすでに戦闘エリアの南部と北部を一部「解放」したと発表している。
2020/10/26
-
アルゼンチン国会における審議のオンライン化
/ 菊池 啓一
現在エピセンターの一つとなり新型コロナウイルスの感染者数と死亡者数が急増してしまっているラテンアメリカでは、パンデミックが同地域の民主主義に与える負の影響が指摘され始めている。例えば、ベネズエラのマドゥロ政権は反対派に対する抑圧を続けているが、比較的自由公正度の高い選挙で選ばれたエルサルバドルのブケレ大統領も立法や司法への介入を強めている。また、新型コロナウイルス対策にまつわる汚職が発生する一方、経済的打撃は市民の分極化を促し、治安の悪化は法の支配を後退させる恐れがある(Arnson 2020)。
2020/10/26
-
アメリカ大統領選挙候補者の公約とアジアへの影響――バイデン陣営をトランプ政権と比較して
/ 松本 明日香
アメリカでは11月3日(日本時間4日)に4年に1度の大統領選挙が行われる。今回はコロナ禍での選挙であり、郵便投票などの実施方法を含めこれまで以上に世界の注目が集まっている。トランプ大統領が再選されれば、基本的にはこれまでの政策が継続すると考えられ、アジア諸国は安全保障での責任分担や通商面での負担を引き続き求められるだろう。とはいえ、政権交代が起きれば状況が大きく好転するわけでもない。民主党候補者バイデン元副大統領が当選した場合、トランプ大統領の政策とどのように異なり、また、アジアヘはどのような影響があるのだろうか。以下ではアジアへの影響という観点から、バイデン候補の外交・安全保障政策と経済・通商政策をトランプ大統領の政策と比較しながらみていく。
2020/10/22
-
立ち上がるタイの若者たち――「法の支配」の実現を目指して
/ 青木 まき
政治的混乱が続くタイで、プラユット政権の退陣と憲法改正、王室改革を訴え、デモが活発化している。2020年初頭に始まった反政府集会は、8月頃から王室を含む政治体制改革を掲げて規模を拡大し、9月には学生や市民数万人が結集してプラユット政権の退陣と憲法改正を要求するに至った。彼らが求めるのは、特権階級による「法の下の不平等」を廃し、新たな憲法の下で「法による支配」を貫徹することである。
2020/10/21
-
北京市における単位社会崩壊後の居住形態の変化と社会管理
/ 中岡 まり
2019年10月、筆者は北京市を訪れる機会を得て、複数の知人・友人に身近な居住区を歩きながら案内してもらった。そこで今日の居住区が、「単位社会の崩壊」から「社区」に移行するなかで実施された住宅制度改革によって人の移動が起こり、出身地、社会階層、経済状況を異にする人々が住む複雑な構成となったこと、そして国家による社会管理が一層困難になっている状況を知った。居住区が同一のディベロッパーによるマンション群などの物理的、地域的な概念に限定されるのに対して、「社区」とはcommunityを翻訳したもので、基層自治などを管轄する省庁である民政部が「一定地域の範囲内に住む人々によって構成される社会生活の共同体」と定義している(民政部2000)。社区は単一のあるいは複数の居住区によって構成され、その規模は1000~3000戸とさまざまであり、居民委員会がこれを管轄するとともに、住民は社区を通じて公共サービスを受ける。本稿では、単位社会から社区社会へと転換していくなかで起こった住民の移動と居住区の構成の変化を、北京市の特定区域の事例に沿って紹介し、現在の社会管理の難しさについて述べる。
2020/09/28
-
-
リモートワークで出社勤務はなくなるか?――集積経済の視点
/ 田中 清泰
新型コロナウイルスの感染拡大によって、働き手の通勤移動とオフィスでの接触を減らすため、リモートワークの活用が進んでいる。感染拡大が落ち着いてきた国や地域では、少しずつ通常の通勤風景が戻りつつあるが、オンライン通信環境を整備した企業や働き手は、出社勤務に縛られない新しいリモートワークを積極的に活用し始めている。オフィスの場所や通勤距離を気にしないで、どこでも仕事ができる新しい働き方が広まりつつある。
2020/08/06
-
ベトナムの新型コロナウィルスと情報宣伝工作
/ 坂田 正三
少なくとも本稿を執筆している7月中旬時点では、ベトナムは、新型コロナウィルス感染症拡大の封じ込めに成功した国として、海外からも高く評価されている。累計感染者数は355人にとどまり、死者数はゼロである。
2020/07/29
-
感染症対策と経済再建の両立を目指す韓国――ポストコロナに向けて死角はないのか?
/ 渡邉 雄一
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の早期封じ込めと低い死亡率の維持で自信を深める韓国は、「K(Korea)防疫モデル」と呼ばれる独自の防疫体制の国際標準化を目下推し進めている。その一方で国内経済の立て直しを図るべく、矢継ぎ早に経済再建策や景気浮揚策を打ち出す姿が象徴的である。さらに最近では、ポストコロナを見据えて「韓国版ニューディール」と称される新たな国家プロジェクトも浮上してきた。
2020/07/27
-
朝鮮民主主義人民共和国の防疫体制
/ 中川 雅彦
2020年初めから中国武漢での流行が知られるようになった新型コロナウイルス感染症に関して、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)保健省は世界保健機関(WHO)に対して4月2日時点で感染者なしと報告し、また、6月9日にロシアのタス通信に対しても、感染者は出ていないと発表している 。そして、平壌に駐在しているロシアのマツェゴラ大使も5月29日にタス通信に対して、朝鮮が「現時点で感染症を免れたほとんど唯一の国」であると述べている 。
2020/07/20
-
新型コロナウイルス感染症を通してみるモザンビーク社会
/ 網中 昭世
モザンビークでは3月22日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最初の症例が報告されて以来、6月30日までに感染者数889人、死者6人が報告されている 。初期こそ報告される症例数は少なく、感染経路の特定が可能であったが、4月にクラスターが発生し、5月に入ってからは首都・地方を含めた複数の都市で市中感染が発生しはじめた。6月第2週以降には報告される症例数が倍増する間隔が短くなり、拡大のスピードは世界で8番目となっている 。モザンビーク社会は今まで以上に感染の拡大が懸念される新たな局面に入っている。
2020/07/06
-
新型コロナウイルスによる死者が東アジアで少ないのは何故か――重力方程式による解決
/ 熊谷 聡
2020年1月上旬から中国での感染の拡大が報じられはじめた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、これまで全世界で800万人を超える感染者と44万人を超える死者を出し、なお感染の拡大が続いている(WHO、6月17日現在)。世界各国で企業活動、人の移動、物流が制約を受け、需要も下振れし、世界経済に甚大な影響が出ることは確実である。
2020/06/29
-
第1期蔡英文政権の環境政策――環境影響評価制度と大気汚染対策を中心に
/ 寺尾 忠能
2020年1月11日に台湾総統選挙が行われ、現職の蔡英文総統が再選された。本稿では、2016年5月からの第1期蔡英文政権の環境政策に関する取り組みを振り返ることによって、2020年5月に発足する第2期政権の課題を明らかにしたい。第1期蔡英文政権は、環境、資源・エネルギーに関わるさまざまな政策課題に取り組んだ。以下では、政権発足当初に重点課題としてあげられていた、環境影響評価制度の改革とPM2.5などによる大気汚染対策を中心に取り上げて検討し、そのいずれもが当初期待された成果を十分に挙げるに至らなかったことを指摘する。
2020/06/25
-
新型コロナウイルスと新興国インバウンド観光
/ 田中 清泰
新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広まり、これまで当たり前だった日常は戻らないと言われる。感染拡大を防ぐために、学校の授業はオンラインに切り替わり、人々は外出を控えて他人との接触を減らしてきた。コロナを契機として、新しい日常(ニューノーマル)の世界に足を踏み入れた感覚に襲われる。
2020/06/12
-
新型コロナウイルス危機下で活発化するトルコの人道外交
/ 今井 宏平
地理的に近いヨーロッパで猛威を振るう新型コロナウイルス(COVID-19)は、トルコにも甚大な被害を与えている。5月24日現在、世界保健機関の調べによると、トルコの感染者数は15万5686人、死亡者数は4308人となっている。ただし、ヨーロッパ諸国に比べて死亡率は低く、医療崩壊も回避しており、トルコは比較的健闘していると評価してもよいだろう。とはいえ、感染者数は世界第8位の規模であり、大都市では週末のロックダウンが実施されるなど、国民の生活に支障が出ている。
2020/06/10
-
コロナ禍からの中国経済の立ち上がりをみる
/ 箱﨑 大
世界各地で猛威を振るう新型肺炎の流行にも変化が生じている。最初の流行地である中国・湖北省武漢市でロックダウンが解除され、中国は政策の重点を防疫から景気回復に移した。しかし、中国の景気回復は始まっているのだろうか。次のGDP発表を待っていては7月になる。そこで、いま月次統計が中国の景気の転換点について示していることは何かを考えてみた。
2020/06/08
-
(サステナ台湾――環境・エネルギー政策の理想と現実――)第4回 台湾における太陽光発電の開発状況と生態・環境破壊への懸念
/ 鄭 方婷
前回の連載では、台湾の洋上風力発電所第一号「フォルモサI」に関する全体の開発状況と国内外から寄せられる事業拡大への期待、またその一方で急速に進む開発が引き起こす生態・環境破壊への懸念、対策などについて分析した。連載4回目となる今回は、台湾の再生エネルギー開発におけるもう一つの重要な柱である太陽光発電の開発状況を紹介する。なかでも台湾最大の工業都市であり、近年の人口増加を受け都市部の拡大に臨む桃園市に焦点を当て、太陽光発電の現状と今後の展望を紹介する。また、再生可能エネルギーの開発がかえって環境・生態破壊を引き起こす“Clean-Clean Conflict”が太陽光発電でも懸念されており、その現状や対応策についても本稿で扱っていく。
2020/05/29
-
新型コロナウイルスと海外ビジネス展開――国際線フライト運休の影響
/ 田中 清泰
2019年末に中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは、人がグローバルに行き交う航空ネットワークを通して、瞬く間に世界各国に拡散している。さらなる感染拡大を防ぐために、海外からの渡航者に対して入国制限措置や入国後の行動制限措置が、世界各国でとられている。外務省 によると、5月8日時点において日本からの渡航者や日本人に対して入国制限の措置をとっているのは、184の国/地域に達している。例えば、中国において、15日以内の滞在に対する査証免除の措置が一時的に停止されている。ドイツでは、EU市民ではない訪問者のEUへの入域を原則禁止している。
2020/05/26
-
インド・ナガランド8時間体験記
/ 任 哲
2019年11月27日の午後1時ごろ、筆者はインド北東部にあるナガランド州のディマプール空港に着陸した。オランダのアジア研究機構(IIAS)、アンベードカル大学(インド)およびナガランド州政府が共同で主宰する「相反する社会基盤(Ambivalent Infrastructures)」という国際会議に参加するためである。同じく学会に参加する人はほかにも大勢いて、知り合いも少なくない。辺境の地にある小さな空港は遠いところから集まった外国人で一気に賑やかになった。長い旅の疲れを忘れ、会議への期待も高まる。そして、私たちの不思議な体験もここから始まった。
2020/05/15
-
分断社会における新型コロナウイルス対策――インドネシアの事例――COVID-19 HANDLING IN A FRACTURED POLITY: CASE OF INDONESIA
/ イルマン・G・ランティ
2月の初め、日本に滞在中だった私が日本における新型コロナウイルスの感染拡大についてインドネシアに暮らす私の家族や友人に話をしても、皆自分とは無関係だと感じているようだった。しかし、いまや私がインドネシアで接するほぼすべてのニュースやソーシャルメディアは、新型コロナウイルスに関するもの一色である。インドネシアの人々は、日本や他の世界の人々と同様、マスクなどを買い占めようとドラッグストアに殺到した。しかし、新型コロナウイルスの対策においてインドネシアの事例は、政府の対策に対する賛否が社会の分断と容易に結びつきやすいという点で他と異なっている。それは、2019年の大統領選で深まった社会の分断で負った心の傷口を再び広げ、その傷を閉じようと懸命に取り組んできた努力を水泡に帰してしまうかもしれないからである。
2020/04/24
-
ドキュメント「マレーシア2020年2月政変」
/ 中村 正志
2月23日の日曜日に始まったマレーシアの政変は、3月1日のムヒディン・ヤシン首相就任でひとまず決着した。2月25日に公開した前回記事(「マハティール首相辞任で流動化するマレーシアの政治情勢」)で示した3つのありうる帰結、すなわち造反勢力の勝利、希望連盟の政権奪回、解散総選挙のうち、最初のシナリオに落ち着くかたちとなった。しかし、1週間に及んだ政変劇のなかで形勢は二転三転しており、異なる帰結になってもおかしくなかった。勝負の決め手となったのは、マハティール首相と希望連盟の間に存在した、政権のあり方に関する志向の違いと根深い相互不信である。
2020/03/13
-
-
マハティール首相辞任で流動化するマレーシアの政治情勢
/ 中村 正志
2月24日午後1時、マレーシアのマハティール首相が国王に辞意を伝えた。他方、マハティール率いるマレーシア統一プリブミ党(PPBM)、ならびにアズミン・アリ経済担当相ら人民公正党(PKR)の反主流派が、与党連合である希望連盟からの離脱を表明した。これにより、希望連盟とその友党の勢力は連邦議会下院(定数222)の過半数を大きく割り込む102議席になった。
2020/02/25
-
-
-
-
-
-
2019年インドネシアの十大ニュース
/ アジ研・インドネシアグループ
アジア経済研究所では、インドネシアを研究対象とする研究者が毎週集まって「先週何が起きたか」を現地新聞・雑誌などの報道に基づいて議論する「インドネシア最新情報交換会」を1994年から続けています。毎年末には、その年のニュースを振り返って、私たち独自の「十大ニュース」を考えています。
2020/01/24