アジア経済研究所について

アジ研いま何してる?(活動紹介)

広報担当のネタ探しの旅:アジ研いま何してる?(アジいま)

「アジいま」は、アジア経済研究所の広報担当者が、研究者を中心とする研究所職員を10分間インタビューし、「いま」取り組んでいることをわかりやすくお伝えする連載記事です。アジ研のいまと、新興国・途上国研究のいまを、のぞいてみませんか?

「三浦さん、いま何してますか?」(2026年2月5日)

三浦 航太/地域研究センター アフリカ・ラテンアメリカ研究グループ

三浦 航太/地域研究センター アフリカ・ラテンアメリカ研究グループ

私のフィールドはラテンアメリカのチリです。これまでは、2010年代の高等教育無償化を求める大規模な学生運動について、地域研究と社会運動論の立場から研究してきました。現在は、チリと韓国の民主化運動について、人々がどのように記憶しているのか、またその記憶が後の時代の社会運動にどのような影響を及ぼしているのかということについて、国際比較の観点から共同研究に取り組んでいます。

この研究ではおもに次の2点を突き止めたいと思っています。1点目は、政府・運動組織・社会といった各アクターがどのように民主化運動を描いているのか(≒誰が、いかにして民主化を勝ち取ったことにしているのか)を調査し、それぞれの立場による記憶と、それら記憶の衝突や変容を明らかにすること。2点目は、抗議行動が発生する文化といえるかもしれませんが、土壌のようなものを、記憶という観点から捉えたいと思っています。従来の社会運動論では、不満・運動組織・政治環境といった部分に要因を求める傾向にありましたが、「そもそもなぜ人々は街頭に出るという選択肢をとるのか(とらないのか)」という根本的な問いに必ずしも対応し切れていないのではないかと考えていました。各国の民主化運動の記憶が、どのような形で、今日の民主主義や社会問題への認識、さらには街頭に繰り出すか否かの判断や規範に影響を与え、それぞれの社会運動のあり方を規定しているのか。2カ国だけでなく、国際比較の視点から、今後さらに各国の事例を積み重ねたいと思っています。

今年の春頃から、海外派遣制度を利用してチリで長期滞在する機会を得ることができました。政府刊行物、運動組織の資料、新聞、世論調査、そして各アクターへのインタビューといった調査を通じ、こうした課題にチャレンジしていきます。また、チリの政治動向も引き続き分析していきます。昨年の大統領選挙の結果、学生運動出身の左派・ボリッチから右派・カストへと政権交代が決まりました。とりわけチリが近年直面している治安問題に対して、これからカストがどのような舵取りをするのか、注意深く見つめていこうと思います。

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従来の手法や自身のフィールドにとらわれず、斬新な視点で政治や社会の本質に迫ろうとする三浦さん。丁寧な、しかし大胆な研究に今後も目が離せません。

(取材・構成:平原友輔、2026年1月19日)
(写真:青山由紀子)