アジア経済研究所について

アジ研いま何してる?(活動紹介)

広報担当のネタ探しの旅:アジ研いま何してる?(アジいま)

「アジいま」は、アジア経済研究所の広報担当者が、研究者を中心とする研究所職員を10分間インタビューし、「いま」取り組んでいることをわかりやすくお伝えする連載記事です。アジ研のいまと、新興国・途上国研究のいまを、のぞいてみませんか?

「荒井さん、いま何してますか?」(2024年1月24日)

荒井 悦代/地域研究センター 南アジア研究グループ

荒井 悦代/地域研究センター 南アジア研究グループ

スリランカの研究をしています。スリランカでは、2022年の反政府運動で権力を失うまで、ラージャパクサ―一族が大統領や首相、財務大臣といった要職を占めていました。一族政治は途上国でよくみられますが、前任者から権力を引き継いだのではなく、同時に、そして、複数の重要なポストを一族で分け合っていたという点が特徴的です。スリランカは、教育や医療を無償で提供し、1931年には普通選挙を実施するなど、福祉国家や民主主義国家として高く評価されていました。しかし、気づかないうちに権威主義的な国になってしまいました。どこでどう変わったのか、シンハラナショナリズムや法律制度、財政など、さまざまな角度からスリランカの状況を分析する共同研究「ラージャパクサ一族政治の成り立ち」を進めており、2024年度には日本語の本として研究成果を出版する予定です。

2022年の反政府運動の背景には、外貨不足による燃料不足や激しいインフレなど、経済的な問題が大きく関係しています。スリランカの人々の我慢の限界はどこにあるのか、スリランカの経済を安定させ、国民の不満を抑えるにはどうすればいいのか、その道しるべを見つけることが私の大きな研究目標です。

さらに、スリランカに加え、モルディブの状況にも注目しています。モルディブやスリランカの対中関係は、一帯一路などの影響で、日本国内でも関心が高いと思います。また、スリランカとモルディブの国内では、反中国路線、反インド路線というのが選挙の争点になることが多いです。このような側面も引き続き観察していきます。

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グローバルサウスという「括り」に注目が集まるなか、各地域や国にはそれぞれの政治と社会のダイナミズムが存在するということがわかりました。スリランカは小さな国ですが、そこに虫眼鏡を当てることで、新しい国際秩序が見えてくる気がします。

(取材・構成:金信遇、2024年1月12日)