出版物・レポート
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新刊
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朝鮮民主主義人民共和国の党軍関係
2025年1月発行 / ISBN978-4-258-04668-3
朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)では1948年9月9日の建国当初から金日成が1994年の死去まで最高指導者として君臨し、その後、その息子である金正日が2011年12月17日に死去するまで2代目の最高指導者となり、そのまた息子である金正恩が3代目最高指導者となって今日に至る。こうした疑似王朝的な政治体制が安定して維持されている最大の要因のひとつとして、それぞれの最高指導者が軍隊と非常に密接な関係にあることが挙げられる。本書は金日成、金正日、金正恩と軍隊の関係を扱うものである。
本書では最高指導者と軍隊の関係を議論するための前提として、軍隊の規模と政治機関での議席数によって軍隊の社会的地位を考察し、また、政治指導者の軍隊に対する活動内容を知るための基礎作業として人民軍部隊のコードナンバーと属性および位置に関する調査を行う。その上で金日成時代における軍隊の建設と軍隊統制の仕組みが形成されていく過程、金正日が軍隊を掌握していく過程が明らかにされ、金正恩時代に入ってからの軍隊統制の変化が示される。

中川 雅彦 著

移民の社会的保護――南アフリカ・モザンビーク・マラウイの制度と実態――
2024年12月発行 / ISBN978-4-258-04665-2
本書では、モザンビークとマラウイから南アフリカへと国境を越えて移動し、移民労働者として就労する/した人びとの社会的保護をめぐる問題が考察されている。具体的には、(1)国際移民の社会的保護に関する研究のレビュー、(2)南部アフリカにおける国境を越えた移民労働の歴史、(3)民主化後の南アフリカの移民政策と社会的保護政策、(4)モザンビーク人移民鉱山労働者の職業性疾患をめぐる問題と給付金制度へのアクセス、(5)マラウイ北部農村出身移民にとっての「社会的保護としての移民労働」戦略が論じられる。グローバルサウスのなかでは例外的に公的な社会的保護の制度が整っている南アフリカでは、移民であっても鉱山労働者は拠出制年金/退職金への加入権を持ち、永住者や難民など一部の移民には社会手当の受給権が存在する。だが、移民労働者が出身国に帰国した後には、たとえその権利があっても、鉱山での健康被害に対する給付金を申請するのは極めて難しく、送り出し国政府や地域機構を含め、南部アフリカ地域全体で域内の移民労働者の社会的保護の実現に取り組む必要性があることが示される。

佐藤 千鶴子 編

サハラ以南アフリカの憲法をめぐる政治
2024年12月発行 / ISBN978-4-258-04667-6
本書は、サハラ以南アフリカにおける憲法と政治の動態を分析した、日本初の研究書である。民主主義と人権を掲げながらも独裁的な統治もまた多くみられるこの地域で、憲法は政権、野党、市民の対立の焦点となり、理念と現実の矛盾を浮き彫りにする。本書では、エチオピア、ケニア、タンザニア、ザンビア、モザンビーク、南アフリカ、ナイジェリア、コートジボワールの8カ国をとりあげ、各国の具体的な事例から、統治者による憲法改正の動き、政治的対立、市民の動きについて考察する。アフリカ研究や比較政治学に貢献する本書は、アフリカに関心をもつ読者だけでなく、幅広い分野の読者にとっても新たな知見を提供する。

佐藤 章 編

2015年日本アジア国際間地域間産業連関表の作成
2024年11月発行 / ISBN978-4-258-04664-5
本書は、日本の国内地域とアジア太平洋の国・地域を連結した「2015年日本アジア国際間地域間産業連関表」作成に関する方法論とそれに基づき作成された表の研究報告である。
近年、複雑化しつつある国際分業構造(グローバル・バリューチェーン)を分析するためのツールとして、各国の産業連関表を連結した国際産業連関表が注目され、国際機関や世界の研究機関で作成が行われている。しかし、同一国内であっても、地域ごとに国際分業への関与の態様や外的ショックにより受ける影響は異なると考えられ、より詳細な国内地域レベルでの分析を可能にする「国際間地域間産業連関表」へのニーズが高まっている。
このような背景から、本書では、同一国内における地域ごとの違いを明示的に把握・分析することを可能にする「国際間地域間産業連関表」の作成方法を検討するとともに(第1章)、具体的な表として、日本の国内8地方とアジア太平洋における6カ国・地域を連結した16産業部門からなる「2015年日本アジア国際間地域間産業連関表」を作成した(第2章)。その表は巻末(補章)に掲載し、それを俯瞰した基礎的な分析結果も紹介した(第3章)。

桑森 啓 玉村 千治 編著

名前を言わない戦争――終わらないコンゴ紛争――
2024年6月発行 / ISBN9784560092972
新たな紛争理論の提示
ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(一八九九年発表、一九〇二年刊)の舞台となった現コンゴ民主共和国は、一八八五年にベルギーの国王レオポルト二世の私有地とされ、一九〇八年に植民地ベルギー領コンゴとなり、一九六〇年に「コンゴ共和国」として独立を果たした。
その後、「コンゴ動乱」を経て誕生したモブツ政権のもとで独裁体制が築かれたが、その後、モブツ体制は打倒された。 コンゴでは一九九六年以来紛争状態が続いており、膨大な数の犠牲者、避難民そして人権侵害を生み続けている。出口の見えない紛争が続いているにもかかわらず、その実態が報道されることはまれである。
本書は、この地域の状況を長く現地で観察してきた著者が、コンゴ東部紛争の展開を整理し、その理論的含意を検討したものである。
その人的被害の深刻さはもとより、百を超える武装勢力や紛争鉱物の存在など、コンゴ東部紛争は「新しい戦争」の特徴を数多く備えており、くわえて国連平和維持部隊が長年活動を継続している。 紛争のダイナミクスをもとに交戦当事者の利益と社会構造に着目した新たな紛争理論の提示!

ジェイソン・K・スターンズ 著 武内 進一 監訳 大内 進一・阪本 拓人・佐藤 千鶴子 訳

ASEANと日本――変わりゆく経済関係――
2024年3月発行 / ISBN978-4-258-04662-1
本書は2023年に日本とASEANが友好協力50周年の節目を迎えたことを契機として、ASEANの国々の視点からASEANと日本の関係の変遷について考えてみることを目的に作成されました。昨今、日本の位置づけの低下が懸念されていますが、その背景について、貿易や投資、援助などの統計に基づき客観的に理解できるように工夫しました。本書は2つの視点から書かれています。まず、経済の発展段階などが異なる多様なASEANのそれぞれの国から日本との関係を見ています。次に経済協力機構としてのASEANと日本の関係や、グローバル化する世界経済のなかのASEAN経済と日本の関係を俯瞰しています。本書はオープンアクセスの電子書籍としてアジア経済研究所のウェブサイトにて無料で公開しています。この公開に先立ち簡易版「日本ASEAN友好協力50周年に考える:ASEANと日本―変わりゆく経済関係―」を公開していますが、若干の加筆・修正と編集を加えておりますので、こちらの電子書籍版をご利用ください。

濱田 美紀 編