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アジアの障害者の政治的権利――選挙権と被選挙権の実質的平等を求めて――

学術書

アジアの障害者の政治的権利――選挙権と被選挙権の実質的平等を求めて――

2024年1月発行 / ISBN978-4-258-04661-4

本書は、アジアにおける障害者の政治参加の現状を明らかにするとともに、政治的権利の実現に向けた法制度の課題について分析している。国連の障害者権利条約は、第29条「政治的及び公的活動への参加」において、締約国に対して、障害者の政治的権利を保障し、他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を求めている。障害者の政治参加についての国際的趨勢は、選挙権を制限しないよう国内法を改正する方向にある。しかしながら国際人権をリードするEUでさえ、いかなる状況においても個人の選挙権は剥奪されないと規定する加盟国は半数に満たない。分析の結果、アジアにおいても障害者の選挙権行使の制限解除の動きは遅いことが判明した。憲法や障害法で障害者の政治的権利は認められると謳いつつ、一方で政治的権利の行使については選挙法などで制約が加えられている。もちろんこの傾向はアジアだけでなく世界共通の問題であり、特に知的障害者と精神障害者の権利が侵害される傾向にある。障害者のアクセシビリティの改善も、実質的な政治的権利を享受するために不可欠な前提であるものの、アジアでは障害者権利条約の精神に違背して、この問題を代理投票の許容で解決しようと試みられることが多い。障害者が直接議員となり、議員として参加しやすい議会システムの構築などの取り組みが期待される。