出版物・レポート
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新刊
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ラージャパクサ一族体制の形成
2025年3月発行 / ISBN978-4-258-04670-6
スリランカでは、2005年に大統領に就任したマヒンダ・ラージャパクサとその一族が政治的な意思決定権を独占し、スリランカの民主主義は崩壊寸前と評された。途中で選挙に敗れ下野したものの、露骨な一族支配は2022年の反政府運動により辞任を余儀なくされるまで続いた。本書では、この特異な政治構造と展開に焦点を当て、スリランカ政治を理解するために多角的な分析を提供する。ラージャパクサ一族の権力基盤構築プロセス、彼らを取り巻く政治環境、権限を強化するために実施された憲法改正を検証する。さらに彼らの台頭を支えたシンハラ・ナショナリズムの役割や、選挙において決定的影響力を持つ、村に居住するシンハラ人の政治意識の変化、ラージャパクサ政権下の財政運営の特徴、そして同政権と中国との関係性について詳細に論考する。

荒井 悦代 編

エチオピア農村社会の変容――ジェンダーをめぐる慣習の変化と人々の選択――
2025年3月発行 / ISBN9784812224083
多民族国家エチオピア。若年層から高齢者まで、たくましく生きる人々のエスノグラフィからアフリカ農村の来し方と行く末を考える。

児玉 由佳 著

国際貿易論の包絡線
2025年3月発行 / ISBN978-4-7664-3018-9
グローバリゼーションの進む世界経済は、戦争、保護主義の台頭など試練を迎えている。一方で経済的な結びつきの重要性は増々高まっている。国際貿易論のみならず国際経営学、社会起業論など幅広いジャンルのテーマが織り成す1冊。

木村 福成 清田 耕造 安藤 光代 小橋 文子 編著

アジアのワンヘルス――人・動物・環境の健康をめぐるリスクとガバナンス――
2025年2月発行 / ISBN978-4-258-04669-0
本書は、人・動物・環境の「健康」を統合的にとらえる「ワンヘルス」の課題について、新興感染症のホットスポットとされるアジアをフィールドに多角的に検討したものである。COVID-19のようなパンデミックを防ぐためには、自然資本への投資や多様なステークホルダーの協力など経済、社会、ガバナンスに関する取り組みが必要であり、そのための社会科学的な研究が求められている。本書ではとくに、森林保全、食肉のフードシステム、野生動物の生息地と近接する地域社会、野生・畜産動物の利用をめぐる国家の規制、国際的な野生動物取引などに注目して、人・動物・環境の関係のなかに潜むリスクとそれらの健康を統合的にとらえるためのガバナンスのあり方を論じている。アジアにおけるワンヘルス・アプローチの現状と課題を理解するための解説書として、研究者だけでなく、広く学生、政策担当者、企業家、市民活動家など既存の分野・領域を越えた多くの方々に手に取っていただけることを期待したい。

大塚 健司 編

朝鮮民主主義人民共和国の党軍関係
2025年1月発行 / ISBN978-4-258-04668-3
朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)では1948年9月9日の建国当初から金日成が1994年の死去まで最高指導者として君臨し、その後、その息子である金正日が2011年12月17日に死去するまで2代目の最高指導者となり、そのまた息子である金正恩が3代目最高指導者となって今日に至る。こうした疑似王朝的な政治体制が安定して維持されている最大の要因のひとつとして、それぞれの最高指導者が軍隊と非常に密接な関係にあることが挙げられる。本書は金日成、金正日、金正恩と軍隊の関係を扱うものである。
本書では最高指導者と軍隊の関係を議論するための前提として、軍隊の規模と政治機関での議席数によって軍隊の社会的地位を考察し、また、政治指導者の軍隊に対する活動内容を知るための基礎作業として人民軍部隊のコードナンバーと属性および位置に関する調査を行う。その上で金日成時代における軍隊の建設と軍隊統制の仕組みが形成されていく過程、金正日が軍隊を掌握していく過程が明らかにされ、金正恩時代に入ってからの軍隊統制の変化が示される。

中川 雅彦 著