出版物・レポート
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新刊
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名前を言わない戦争――終わらないコンゴ紛争――
2024年6月発行 / ISBN9784560092972
新たな紛争理論の提示
ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』(一八九九年発表、一九〇二年刊)の舞台となった現コンゴ民主共和国は、一八八五年にベルギーの国王レオポルト二世の私有地とされ、一九〇八年に植民地ベルギー領コンゴとなり、一九六〇年に「コンゴ共和国」として独立を果たした。
その後、「コンゴ動乱」を経て誕生したモブツ政権のもとで独裁体制が築かれたが、その後、モブツ体制は打倒された。 コンゴでは一九九六年以来紛争状態が続いており、膨大な数の犠牲者、避難民そして人権侵害を生み続けている。出口の見えない紛争が続いているにもかかわらず、その実態が報道されることはまれである。
本書は、この地域の状況を長く現地で観察してきた著者が、コンゴ東部紛争の展開を整理し、その理論的含意を検討したものである。
その人的被害の深刻さはもとより、百を超える武装勢力や紛争鉱物の存在など、コンゴ東部紛争は「新しい戦争」の特徴を数多く備えており、くわえて国連平和維持部隊が長年活動を継続している。 紛争のダイナミクスをもとに交戦当事者の利益と社会構造に着目した新たな紛争理論の提示!
ジェイソン・K・スターンズ 著 武内 進一 監訳 大内 進一・阪本 拓人・佐藤 千鶴子 訳
ASEANと日本――変わりゆく経済関係――
2024年3月発行 / ISBN978-4-258-04662-1
本書は2023年に日本とASEANが友好協力50周年の節目を迎えたことを契機として、ASEANの国々の視点からASEANと日本の関係の変遷について考えてみることを目的に作成されました。昨今、日本の位置づけの低下が懸念されていますが、その背景について、貿易や投資、援助などの統計に基づき客観的に理解できるように工夫しました。本書は2つの視点から書かれています。まず、経済の発展段階などが異なる多様なASEANのそれぞれの国から日本との関係を見ています。次に経済協力機構としてのASEANと日本の関係や、グローバル化する世界経済のなかのASEAN経済と日本の関係を俯瞰しています。本書はオープンアクセスの電子書籍としてアジア経済研究所のウェブサイトにて無料で公開しています。この公開に先立ち簡易版「日本ASEAN友好協力50周年に考える:ASEANと日本―変わりゆく経済関係―」を公開していますが、若干の加筆・修正と編集を加えておりますので、こちらの電子書籍版をご利用ください。
濱田 美紀 編
権威主義体制にとって選挙とは何か――独裁者のジレンマと試行錯誤――
2024年2月発行 / ISBN978-4-623-09700-5
独裁者は選挙で何を目指し、何を得ているのか。多様な意図、選挙統制の実際とは。 7カ国の事例分析から権威主義体制の核心に迫る。
山田 紀彦 編著
東南アジアにおける国家のリスケーリング――都市研究と地域研究との対話――
2024年2月発行 / ISBN978-4-623-09665-7
国家と都市を超えた空間再編とは。各国の政治・経済の歴史から現状を見通し、 東南アジア研究の新機軸を打ち出す。
玉野 和志 船津 鶴代 齊藤 麻人 編著
アジアの独裁と「建国の父」――英雄像の形成とゆらぎ――
2024年2月発行 / ISBN9784779129544
権威主義独裁体制が敷かれたアジア諸国は建国父像をどのように継承し変容させていったのか。アジア近現代比較政治史共同研究。
根本 敬 粕谷 裕子 編著
アジアの障害者の政治的権利――選挙権と被選挙権の実質的平等を求めて――
2024年1月発行 / ISBN978-4-258-04661-4
本書は、アジアにおける障害者の政治参加の現状を明らかにするとともに、政治的権利の実現に向けた法制度の課題について分析している。国連の障害者権利条約は、第29条「政治的及び公的活動への参加」において、締約国に対して、障害者の政治的権利を保障し、他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を求めている。障害者の政治参加についての国際的趨勢は、選挙権を制限しないよう国内法を改正する方向にある。しかしながら国際人権をリードするEUでさえ、いかなる状況においても個人の選挙権は剥奪されないと規定する加盟国は半数に満たない。分析の結果、アジアにおいても障害者の選挙権行使の制限解除の動きは遅いことが判明した。憲法や障害法で障害者の政治的権利は認められると謳いつつ、一方で政治的権利の行使については選挙法などで制約が加えられている。もちろんこの傾向はアジアだけでなく世界共通の問題であり、特に知的障害者と精神障害者の権利が侵害される傾向にある。障害者のアクセシビリティの改善も、実質的な政治的権利を享受するために不可欠な前提であるものの、アジアでは障害者権利条約の精神に違背して、この問題を代理投票の許容で解決しようと試みられることが多い。障害者が直接議員となり、議員として参加しやすい議会システムの構築などの取り組みが期待される。
小林 昌之 編
発展途上国における経済のデジタル化――アフリカ・東南アジア・ラテンアメリカの事例から考える――
2024年1月発行 / ISBN978-4-258-04660-7
コロナ禍を経て、途上国、先進国かかわらず世界中のどの国においてもデジタル化が急速かつ同時代的に進展している。なかでもインフラや各種経済社会制度の未整備が開発の障害となってきた途上国では、それらの問題をデジタル技術によって克服し、大きな発展が実現する状況(リープフロッグ)が注目される。先行する中国で花開いた経済のデジタル化は、ほかの途上国ではどのような広がりをみせているのか。途上国において先進企業ではなく一般の人々が、日常の生活や仕事でデジタル技術やサービスをどのように使い、どのような恩恵を受けているのか、またどのような問題があるのか。本書では、ラテンアメリカ、東南アジア、アフリカの3つの地域からペルー、ベネズエラ、インドネシア、ベトナム、ケニアの5カ国をとりあげ、デジタル化の実態にせまる。
濱田 美紀 編