出版物・レポート
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新刊
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移民たちの太平洋――太平洋諸島をめぐる人の移動と国際制度――
2023年3月発行 / ISBN978-4-258-04656-0
太平洋島嶼地域においてはさまざまな人、さらには企業や国際機関など多様なアクターが地域内外を移動し、送出国たる島嶼国のみならず、オーストラリアやアメリカなど島嶼国出身者を受け入れる側の政治・経済・社会にも大きな影響を与えている。本書は太平洋島嶼地域を行き交う人びとが実践してきた「移動」という経験のなかで、障害となるだけではなく、利用もされてきた国境、移民の受け入れに関して受入国側が設定した諸制度、または国際的な取り決めが、彼らの生活や彼らの移民仲間、母国の政治経済にどのような影響を与えているかを考察している。さまざまな脆弱性を抱える移民の実態を掘り起こす一方、移民がさまざまな規制や制約に応じて戦略を練り直しながら、自己実現を図ろうとするたくましい存在としての側面にも目を向ける。

黒崎 岳大 今泉 慎也 編

「後発の公共政策」としての資源環境政策――理念・アイデアと社会的合意――
2023年3月発行 / ISBN978-4-258-04657-7
「後発の公共政策」である資源環境政策は、産業政策や公衆衛生政策などの公共政策がすでに存在する中でその行政組織や制度を形成した。さらに「環境」に関わる問題の多くは古くから存在し、形を変えて顕在化して社会問題化したものであり、既存の政策領域にすでに組み込まれていた。その政策形成過程は他の政策から影響を受けやすく、歴史的な出来事の順序や長期的趨勢が経路依存性をもたらすため、長期的な視点からその形成過程を分析する必要がある。本書は2020、2021年度に行った「資源環境政策の形成過程における因果関係と社会的合意」研究会の成果の一部である。アジア経済研究所では2010年度から同様の構成で共同研究を行い「後発の公共政策」という視点を共有してきた。既刊の出版物が5冊(2013年の研究双書No.605、2015年の研究双書No.614、2019年の研究双書No.638、2021年のEPUBおよびオンデマンド版、2021年のEdward Elgarからの英文書)あり、本書は6冊目の最終成果である。既刊5冊を受けた本書の特徴は、政策形成過程における「利害」「制度」に加えて「理念・アイデア」という要因を採り入れて分析したこと、「環境権威主義」に関する議論を検討したことなどにある。詳しくは序章を参照されたい。

寺尾 忠能 編

米中経済対立――国際分業体制の再編と東アジアの対応――
2023年2月発行 / ISBN978-4-258-04653-9
米中対立を契機に、東アジアをめぐる国際分業体制は、大きな変容を迫られている。生産の面では、中国を中心とするグローバル・バリューチェーンの再編が急ピッチで進められている。研究開発の面では、技術デカップリングが進み、従来の開かれたイノベーションシステムが閉ざされつつある。さらに、経済体制の異なる国同士では、果たして国際分業が展開できるのか、経済活動の根幹にかかわるところまで疑念が深まっている。本書では、経済学、国際政治、そして地域研究の専門家を集めながら、米中経済対立が国際分業体制の最もコアな部分を担う東アジアに与えるインパクトを分析し、関係諸国・地域の対応について解説する。

丁 可 編

中東のなかの「障害と開発」
2023年2月発行 / ISBN978-4-258-04654-6
アジ研の「障害と開発」研究では、障害の医療・個人モデル」ではなく、「障害の社会モデル」の観点、つまり機能的障害のある人たちが直面する社会的障壁を障害と呼び、彼らにみえている社会とは何か、国家や地域社会などの社会と障害当事者はどのような関係を築いてきているのかを明らかにしてきた。本書では、中東域内の障害者権利条約の履行状況と障害法の動向をまず見ている。さらに伝統的なイスラーム思想における障害にたいする態度を概観した。次にレバノン、イラン、イスラエル、トルコを取り上げ、各国の障害者政策や当事者団体の状況などについて分析した。最後にこの地域の障害者への国際協力を紹介して、日本の国際協力における「障害と開発」のあり方にも触れた。

森 壮也 編

朝鮮労働党第8次大会と新戦略
2023年2月発行 / ISBN978-4-258-04651-5
朝鮮民主主義人民共和国の金正恩体制が発足して10年が経過した。本書は、アジア経済研究所「朝鮮労働党第8次大会と新戦略」研究会の最終成果として、金正恩時代の約10年間における経済改革と対外政策の特徴を明らかにしつつ、今後の展望を試みるものである。本研究会は当初、朝鮮労働党第8次大会をめぐる現状分析を行うことを想定していたが、党大会後に事業総括報告の全文が公表されないなど、これまでになく情報収集に困難を生じた。そのため、公式報道や実際に講じられた措置、現地の研究論文などの解説といった断片的な事実を積み上げ、帰納的に政策の意図や方向性を導き出すことに注力した。

中川 雅彦 編