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海外研究員レポート

記事一覧(最近15件)

  • 紛争解決と処罰のための国際刑事裁判所の取り組み――ウクライナとミャンマーの事例から / 能勢 美紀 正当な理由のない武力行使による紛争とそこでの非人道的行為を阻止するため、国際社会はこれまで主として国連安全保障理事会(以下、安保理)と国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)など国連の関連組織を整備・強化する努力を行ってきた。直近では、2022年2月24日にはじまったロシアによるウクライナ侵攻が思い浮かぶ。しかし、拒否権を持つロシアによる侵攻ということから、安保理はほとんど機能できていない。また、ウクライナは、ロシアが「ウクライナ東部のロシア系住民を、ウクライナによる攻撃から守る」ことを理由に侵攻したことは、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(以下、ジェノサイド条約)の「濫用」にあたり、侵攻は国際法に違反するとして、2月26日にロシアをICJに提訴した。ICJは3月16日にウクライナの主張を認め、ロシアに軍事行動の即時停止を命じる暫定措置命令を出したが、ロシアがICJの命令に従うことはなく、戦闘が続くとともに民間人の犠牲も多く発生している。 2022/04/26
  • 平和構築と開発援助の未来――米軍のアフガニスタン撤退が与える影響 / 能勢 美紀 2021年8月のタリバーンによるカブール制圧と米軍をはじめとする多国籍軍の撤退は世界中に大きな衝撃を与えた。筆者が滞在しているオランダも例外ではない。ただ、日本での受け止め方と大きく違うと感じるのは、この出来事を、「多額の開発援助を投じた平和構築活動の失敗」と捉え、今後の平和構築活動そのもののあり方が議論の中心のひとつになっていることである。特にオランダをはじめとするNATO加盟国は、ISAF(International Security Assistance Force, 国際治安支援部隊) と、軍事部門と復興支援部門からなるPRTs(Provincial Reconstruction Teams, 地方復興チーム)を通して戦後の早い時期から治安維持と復興に携わってきた。PRTsの軍事部門は実質的にISAFが担っており、軍隊に対して「安定化」のための積極的な武力行使を容認する平和構築活動のあり方には当初から懸念があっただけに(Maley 2007)、現在、軍事的な関与のあり方だけでなく、今後の開発援助と平和構築のあり方が問われているといえる。 2021/12/06
  • 家から半径2kmのSDGs――コロナ禍のスイスで見つけた身近な取組み / 佐々木 晶子 スイスはアルプスの山々に囲まれた、美しく自然豊かな国というイメージを持つ人は多いだろう。筆者が赴任したジュネーブ州もレマン湖やジュラ山脈など素晴らしい自然に恵まれており、そうした環境の保全を目指し、化石燃料を使わない公共交通機関の整備、再生可能エネルギーの普及など先進的な環境政策も進められている。だがその一方で、宅地開発による緑地の消失やコロナ危機で露呈した経済格差や貧困など課題も少なくない。今回は、ジュネーブ州の持続可能なまちづくりに向けた取組みや課題について、生活者の視点から紹介したい。 2021/03/30
  • 交換文化と自給生活でコロナ危機を乗り越えるフィジー / 片岡 真輝 「靴とオムツを交換しませんか。」これは、昨年来フィジーで話題となっているフェイスブックのページ「Barter for Better Fiji(より良いフィジーのための物々交換)」に投稿された交換の提案だ。Barter for Better Fijiは、一言で言えば物々交換を行うためのプラットフォームだ。お金のやり取りは一切禁止であり、欲しいものとあげたいものを投稿し、物々交換の相手を探すページである。コロナ禍の経済苦境に対応するために立ち上げられた同ページは瞬く間に話題となり、2021年2月現在、人口約90万人の同国で実に20万人近くがこのコミュニティに参加している。Barter for Better Fijiは日本のメディアでも取り上げられたので 、ご存知の方も多いだろう。 2021/03/16
  • 「脱石炭」がもたらすもの――地域社会・気候変動・雇用(後編) / 佐々木 晶子 現在、先進国を中心に2030年代の「脱石炭」を目指して炭鉱や石炭火力発電所の閉鎖が進められている。前編では石炭などの化石燃料利用からの脱却と、それによって影響を受ける産業、労働者や地域を支援しながら、公正な形での新しい社会への移行を目指すジャスト・トランジション(公正な移行)の概念を紹介した。 2020/12/15
  • 「脱石炭」がもたらすもの――地域社会・気候変動・雇用(前編) / 佐々木 晶子 去る7月3日、梶山弘志経済産業大臣は日本国内の石炭火力発電所100基を2030年までに廃止すると発表した。昨今、脱炭素化社会の実現に向けて「脱石炭」に世界的な関心が集まっている。今回の発表を受け新聞紙上等では、発電所の閉鎖は気候変動対策としてどの程度の効果があるのか、またエネルギーの安定供給を継続するため、代替電源をいかにして確保するかといった観点の報道が目立った。だが実は、脱石炭には地域経済や雇用などへ少なからぬ悪影響をもたらすという問題がある。こうした側面を踏まえ、脱石炭はどのような形で進めていくべきだろうか。また持続可能な開発目標(SDGs)の視点からはどのような論点が見えてくるだろうか。本レポートは脱石炭に焦点を当て、地域社会や暮らしを守りながら脱炭素化社会を目指す「ジャスト・トランジション」の取組みを2回にわたって紹介する。 2020/09/15
  • 新型コロナウイルスとSDGs――サステイナブルなまちづくりへの「好機」となるか / 佐々木 晶子 先日スイスのラジオ局の番組を聞いていたら、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのさなかに産まれた赤ちゃんをミレニアル世代になぞらえて「コロニアル世代」と呼ぶのだと紹介されていた。それだけ象徴的な年となった2020年だが、今年は国際社会が2030年までに達成すると約束した持続可能な開発目標(SDGs)まであと10年、目標実現に向けた動きを加速しなければいけない節目の年でもある。新型コロナウイルスがSDGsの実現にどのような影響を与えるのか、現在国際機関や各国政府のみならず、自治体レベルでも活発な議論が行われている。今回はそうした動きを気候変動問題と自治体のローカルな動きに注目してご紹介したい(2020年5月末時点)。 2020/07/02
  • ニューヨーク市で感染爆発したCOVID-19 と人種、所得・教育水準 / 牧野 百恵 COVID-19の感染者数、死者数ともに世界最多となったアメリカでも最も状況が深刻なニューヨーク市では、2020年4月7日に1日あたりの死者数で最大となる579人を記録し、感染拡大のピークを過ぎた4月末でも、1日あたり200人以上の死者が出ていた。1月からすでに市中感染が始まっていたとの憶測もあるが、公式に市内初の感染者が報告された3月1日以降、あっという間に感染爆発が生じた。ニューヨーク州のクオモ知事は3月7日に非常事態宣言を出し、3月22日からはいわゆるロックダウン(日常生活の維持に必要不可欠な業種を除き全面的自宅待機命令)が始まった。5月12日正午時点で確認されたニューヨーク市の感染者数はのべ18万4319人、COVID-19が死因とのみなしを含めた死者数は2万237人に上る。 2020/05/18
  • ブエノスアイレス都市圏の公共交通機関――新型コロナウイルス対策による「実質一日」の利用制限―― / 菊池 啓一 アルゼンチンの首都であるブエノスアイレス自治市(以下、市)はブエノスアイレス州の40の自治体と共にブエノスアイレス都市圏を形成しており、2010年の国勢調査によればアルゼンチン全体の人口の37%にあたる約1480万人が生活している 。そして、彼らの市内移動、市内・市外間移動、市外間移動を支えるべく、公共交通機関が発達している。 2020/05/01
  • ジュネーブの国際機関事情――SDGsへの取組みと直面する課題 / 佐々木 晶子 フランスの国境にほど近い山々に囲まれたスイスの都市・ジュネーブ。ジュネーブ州全体の人口50万人のおよそ4割が外国籍であり、バスやトラムに乗れば様々な国の言葉が飛び交う。国連欧州本部(国際連合ジュネーブ事務所、UNOGとも呼ばれる)はこの街を拠点としている。ここには世界179カ国の代表部が置かれ、国連開発計画(UNDP)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)などの国際機関(政府間機関、国連プログラム含む)が38、さらに非政府組織(NGO)が420ほど存在する。およそ2万7千人、州人口全体の約5%がこの小さなメトロポリスに拠点を置く国際機関で働いている。 2020/04/15
  • オセアニア地域における新型コロナウイルスへの対応 / 片岡 真輝 新型コロナウイルスが世界中で蔓延する中、オセアニア諸国でも感染者数が増加している。4月1日時点の感染者数はオーストラリアが4,707人と突出して多く、次いでニュージーランドが647人となっており、3月下旬から感染者数が急増している。一方、太平洋島嶼国では、まだそれほど多くの感染者は確認されていない。フィジーで5人、パプアニューギニアで1人、ニューカレドニアで16人の感染が確認されている。 2020/04/03
  • シンガポールの中台バランス外交 / 江藤 名保子 2020年1月11日に台湾で総統選挙および立法院選挙(国会議員選挙に相当)の投開票が行われた。結果は周知のとおり、蔡英文総統が過去最高の得票数である817万票を獲得して再選を果たした。立法院選挙においても与党・民主進歩党が過半数を獲得しており、蔡英文政権の基盤を固める結果となった。 2020/03/11
  • ポピュレーション・カウンシルと児童婚の研究 / 牧野 百恵 筆者は、2019年4月より、ニューヨークにあるポピュレーション・カウンシルという国際援助・研究機関に派遣されている。ポピュレーション・カウンシルは1952年に設立され、途上国のエイズ問題、人口問題、女性の妊娠、出産、避妊などリプロダクティブヘルスに関する研究を盛んに行ってきた。現在では、サブサハラアフリカ、南アジア、中南米諸国にオフィスを構え、さまざまな開発プロジェクトを実施するとともにその評価をはじめとした研究を行っている。所属する研究者は、生物医学、人口学、社会学、経済学、教育学、公衆衛生学と多岐にわたり、たいへん学際的である。国際学術雑誌であるPopulation and Development ReviewやStudies in Family Planningの発行も行っている。ポピュレーション・カウンシルはアメリカ人口学会(PAA)において、毎年組織としてブース出展するとともに、所属研究者が論文を発表している。筆者が過去のPAAで論文を発表した際に、ポピュレーション・カウンシルの研究者と意見交換したことがきっかけで、このたびの派遣受け入れ機関となった。 2020/02/10
  • 日韓秘密軍事情報保護協定の象徴的意味 / 中川 雅彦  2019年8月22日、韓国政府は、2006年11月23日に締結された日韓秘密軍事情報保護協定の終了を決定し、翌23日に日本政府にそれを伝達した。これにより同協定は2019年11月23日に失効するはずであったが、前日の22日に韓国政府が「終了通知の効力停止」を発表し、23日以後も同協定は維持されることになった。 2020/01/29
  • バタム島孤児院を訪問して / 土佐 美菜実 筆者は2018年よりインドネシアのジョグジャカルタに1年間滞在したのち、現在はシンガポールに居を移している。シンガポールはマレーシアだけでなく、インドネシアとも海峡を挟んで隣接しており、その近さから文化や気候など、様々な場面で共通点を感じ郷愁にかられることも時々ある。ただ、筆者が昨年まで暮らしていたジョグジャカルタはジャワ島南岸に位置し、インドネシアに住む400以上といわれる民族のなかでも最も人口の多いジャワ民族の文化が色濃い地域であった。一方、シンガポールとわずかな距離の海峡を隔てて近接しているのはスマトラ島やリアウ諸島などで、これらの島からはフェリーで簡単にシンガポールへ渡航することができる。 2020/01/28