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記事一覧(最新15件)

  • インドネシアのU20男子W杯開催国への野心と挫折――その舞台裏での大統領選挙に向けた駆け引き / 水野 祐地 国際サッカー連盟(FIFA)は、20歳以下(U20)男子ワールドカップ大会の開幕約2カ月前である3月29日に、インドネシアの開催国としての権利を取り消した。このことは国内で衝撃をもって報じられ、連日のようにテレビ番組やソーシャルメディアで話題となった。FIFAの公式声明によると、「現状を鑑みて」開催国を白紙にしたとのことである。いったい何があったのか。 2023/05/26
  • (2022年中国共産党第20回党大会)第6回 習近平時代における欧州の対中姿勢の変化 / ヴィダ・マチケナイテ 2017年10月の第19回党大会での報告で、習近平は「長年の努力を経て、中国の特色ある社会主義は新時代に入った」と述べた。この報告は、習近平が中国共産党の総書記として第2期目に移行する際のものである。「新時代」という文言は、2012年に中国共産党の総書記となった習近平個人と結びついている。実際に、習近平自身も「新時代」の時間軸を2012年以降と定義している。これまでに中国が経験した歴史的飛躍は、中国が成立した1949年以降と、豊かになった1978年から2012年、そして力強くなった2012年以降であるという。 2023/05/22
  • 世界各国の輸入における中国依存度 / 早川 和伸 近年、「脱中国依存」という言葉を聞く機会が増えている。ただし、これには多国籍企業の生産地としての中国依存の低下と、各国の中国からの輸入シェアの低下の2つの意味があり、あまり区別されずに使われているように見える。アップル製品の生産地のベトナムやインドへの移転は前者に該当し、先進国が進めているレアアースなどの調達先の分散は後者に該当する。本稿では、とくに後者の意味での脱中国依存を考えるために、中国からの輸入依存度について分析を行う。Hayakawa(2023)は、日本について、中国からASEANへの輸入転換が起こっているのは2010年代前半では中国依存度が高い品目であり、2010年代後半では労働集約的な品目であることを示した。これに対して本稿では、直近の2022年を対象とし、日本だけでなく世界各国の輸入における中国依存度を分析する。 2023/05/10
  • マルコス政権の『フィリピン開発計画2023-2028』 / 鈴木 有理佳 2022年6月末に発足したフェルディナンド・“ボンボン”・マルコスJr.政権の『フィリピン開発計画2023-2028』が2023年初めに公表された。フィリピンでは新政権発足後、政権の姿勢を示す開発計画を国家経済開発庁(NEDA)主導で策定する。現行のような形になったのはNEDAが1973年に設置されて以降だが、それ以前も各政権はそれぞれ開発計画を作成してきた。作成された計画案は大統領が議長を務めるNEDA理事会で承認されたのち、世間一般に公表される。通常、どの政権も発足後から約半年後の公表を目指すが、政権によっては調整や修正に手間取り、1年近くかかる場合もある。今回はアルセニオ・バリサカンNEDA長官が過去にも同職で計画策定に関わった経験から作業が迅速に進んだとみられ、2022年12月16日のNEDA理事会での承認を経て2023年初めに公表された。2023年1月27日にはマルコス大統領が同計画を正式に承認し、かつ各政府機関にその順守と執行を指示する行政命令第14号を発出した。 2023/05/09
  • タイ下院総選挙2023──選挙の先を睨んだ政党間の攻防 / 青木(岡部)まき 5月14日、タイで国会下院総選挙が行われる。今回の選挙では、2014年5月の軍事クーデタで政権を追われたタクシン派政党・タイ貢献党が政権を奪還できるかどうかに注目が集まっている。 2023/05/08
  • 大国の隣で生きる──フィンランドとトルコ / 今井 宏平 2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻は改めて大国の隣国の難しさを浮き彫りにした。広大な面積をほこるロシアの隣国は数多く存在する。列挙すると陸続きで接している国が北朝鮮、モンゴル、中国、カザフスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、ウクライナ、ベラルーシ、ラトビア、エストニア、フィンランド、ノルウェーである。また、海(カスピ海を含む)を挟んで接している国が米国、日本、トルクメニスタン、イラン、トルコ、ルーマニア、ブルガリアである。こうした国々のなかで、ロシアのウクライナ戦争に積極的に反応し、具体的な政策を掲げた国がフィンランドとトルコである。フィンランドは2022年5月18日に北大西洋条約機構(NATO)に加盟申請し、2023年4月4日に正式加盟を果たした。そしてトルコはウクライナ危機勃発後、一貫してロシアとウクライナの間の仲介を試みている。その成果として、開戦後、初めてロシアとウクライナの外相が言葉を交わした2022年3月10日にトルコのアンタリアで実施されたロシア、ウクライナ、トルコの3カ国外相会談、同年7月にトルコと国連の仲介でウクライナ産の穀物を黒海から輸出させる「穀物回廊」実施の合意を挙げることができる。 2023/04/18
  • トルコ大地震──エルドアン政権の復興選挙 / 間 寧 トルコでは2023年2月6日の大地震後、救助活動の遅れと違法建築が被害を拡大させたとの批判が被災地から上がった。折しも本年5月14日には、大統領・議会選挙の実施が見込まれていた。この震災は、公正発展党(AKP)政権を2002年以来率いてきたエルドアン大統領の続投の試み(「エルドアンの巻き返し」IDEスクエア、2023年1月)にどのような影響を与えるのか。本稿では、この問題を、震災後の有権者の意識とエルドアンの戦略に着目して考えてみたい。 2023/03/13
  • 2022年インドネシアの十大ニュース / アジ研・インドネシアグループ アジア経済研究所では、インドネシアを研究対象とする研究者が毎週集まって「先週何が起きたか」を現地新聞・雑誌などの報道に基づいて議論する「インドネシア最新情報交換会」を1994年から続けています。毎年末には、その年のニュースを振り返って、私たち独自の「十大ニュース」を考えています。 2023/02/28
  • (2022年中国共産党第20回党大会)第5回 不安のなかの習近平――中国の安全保障概念と外交政策への影響 / 頼潤瑤 習近平国家主席(以下、習近平)が今後5年間およびそれ以降の中国の外交観と政治課題の青写真を提示した中国共産党第20回党大会は、中国にとって最も重要なイベントの1つとなった。1980年代に中国共産党の指導者であった鄧小平が政治局常務委員会内で指導者が常に交代する仕組みを作り上げたのは、中国の内政および外交を1人のストロングマンが支配することを防ぐためであった。しかし、今回の党大会で習近平の任期制限が撤廃されたことは、中国が習近平のもとで「新時代」を迎えたことを間違いなく意味している。最も権力を持つ中国の指導者として3期目に入った習近平を政治的に制約するものは何もないだろう。 2023/02/17
  • ベトナム国家主席辞任劇にみる反汚職闘争の論理 / 石塚 二葉 2023年の旧正月を1週間後に控えた1月14日、ベトナムのメディアは、グエン・スアン・フック国家主席が夫人とともに湖に鯉を放す伝統の儀式を行う様子を報じていた。しかしそのたった3日後、フック国家主席の辞任というニュースが世界を驚かせた。1月17日、ベトナム共産党中央委員会の臨時総会は、2021~2026年任期における党政治局員、党中央委員等の役職を辞し、引退したいというフック国家主席の申し出に同意した。翌18日に召集された臨時国会は、同様に本人の辞職願にもとづき、フック国家主席を免職することを決議した。 2023/02/13
  • 「デカップリング」が世界経済に与える影響――IDE-GSMによる分析 / 熊谷 聡早川 和伸後閑 利隆磯野 生茂ケオラ・スックニラン・坪田 建明・久保 裕也 2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、1年近く経過しても停戦の気配はなく、民間人も含めて両国の人的・物的損失は拡大を続けている。ロシアへの経済制裁は侵攻直後に想定されていたような(アジ研ポリシーブリーフNo.156参照)全面的な制裁ではないが、長期的に続くグローバルな分断の引き金になる可能性は排除できない。 2023/02/06
  • 5年間で6人目の大統領──政治混乱が続くペルー / 清水 達也 2022年12月7日正午前、ペドロ・カスティジョ大統領は国民向けテレビ演説で、国会の解散と臨時政府の樹立を宣言した。午後には国会で同大統領に対する罷免決議案の採決が予定されており、カスティジョ大統領はこれを阻止するために先手を打とうとした。これに対しマスメディアは、大統領が自主クーデター(autogolpe)を試みたと報道した。また、ディナ・ボルアルテ副大統領が国会解散を否定したほか、首相をはじめとする主要閣僚や大統領の顧問弁護士もすぐに辞任を発表した。軍や警察も憲法の秩序を守るとして、カスティジョ大統領を支持しないことを発表した。 2023/01/31
  • ラオスの首相交代劇――頂点が見え始めた新首相のロングロード / 山田 紀彦 2022年12月30日、第9期第4回国会の最終日にパンカム首相が突如辞任し、ソーンサイ副首相(経済担当)が新首相に就任した。当初の「公式」議事日程に人事案件は含まれていなかった。本人からの書面による正式な辞任申し出は12月15日であり、ラオス人民革命党の最高意思決定機関である政治局が承認したのは12月21日だった(Pasaxon, January 3, 2023)。本人は辞任を渋っていたといわれ、事態が急展開したことを物語っている。 2023/01/26
  • (2022年中国共産党第20回党大会)第4回 習近平政権の経済政策——産業政策、米中対立と今後の展望 / 丁 可 2022年10月に中国共産党第20回党大会が開催され、習近平指導部の第三期目が正式に発足した。以下で詳述するように、習近平政権のこれまでの経済政策には、産業政策を通じて経済構造の高度化を図る、という論理が貫徹していた。中国製造2025や一帯一路、米中対立、双循環戦略など、一連の象徴的な政策やできごとは、いずれもこの枠組みにおいて理解できる。同様に、第20回党大会以降の経済政策を読み解くうえでも、産業政策の視点が欠かせない。 2023/01/20
  • エルドアンの巻き返し――選挙前トルコの政治経済 / 間 寧 トルコでは、2023年6月までに実施される大統領・議会同時選挙でエルドアン政権が敗北しその20年の歴史に幕が引かれる可能性が取り沙汰されていた。しかし2022年秋以降、エルドアン大統領の世論支持率は持ち直す方向にある。なぜ支持率が持ち直したのか、そしてエルドアンは今後どのような方法で劣勢をさらに巻き返そうとしているのか。本稿では、何でもありの総力戦の中身を紹介する。主な柱は、為替介入と所得政策、硬軟両様の対外政策、有力候補の排除である。そして最後に野党の対応を展望する。 2023/01/10