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世界を見る眼

記事一覧(最新15件)

  • ホンジュラス大統領選挙――三党鼎立の闘い / 浜端 喬 11月30日、中米ホンジュラスで総選挙(大統領選挙、国会議員選挙、中米議会議員選挙、市長選挙、市議会議員選挙)が実施される。1982年の民政移管以降、ホンジュラスの大統領職は自由党と国民党によって独占されてきた。しかし、前回2021年選挙ではリブレ党所属のシオマラ・カストロ現大統領が当選し、これまでの二大政党制に初めて風穴を開ける形となった。今回の選挙で、ホンジュラス国民はリブレ党による政権運営の継続を支持するのか、あるいは従来の二大政党制への回帰を選択するのか。本稿では大統領選挙に焦点を当て、主要三政党の候補者を概観したのち、争点を整理し、選挙後の展望を検討する。 2025/11/25
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第4回 ミャンマー ――「ディール」を模索する軍事政権とトランプ大統領 / 工藤 年博 世界各国がトランプ関税への対処に苦慮するなか、ミャンマー軍政を率いるミン・アウン・フライン総司令官は、ミャンマーに40%の関税を課すと通知するトランプ大統領からの「手紙」を受け取り喜んだ。同じ時期、それまで軍事政権に対して厳しい姿勢をとってきたアメリカが、ミャンマー政策を変更する可能性があると報道された。一見奇妙にみえる両国の行動の背景には、なにがあるのだろうか。 2025/11/25
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第3回 マレーシア――ASEAN議長国の立場をフル活用 / 熊谷 聡 2024年、米国はマレーシアの輸出先として中国を抜いて2位に浮上した。これまで首位争いはシンガポールと中国が繰り広げてきたため、米国の2位浮上は驚きをもって受け止められた。米国向け輸出額が通年で中国を上回ったのは2008年以来、実に16年ぶりのことである。 2025/11/07
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第2回 トランプ2.0が世界の対米輸出に与えた影響――相互関税導入前まで / 早川 和伸 2025年1月、米国に第2次トランプ政権が発足し、世界中に関税の嵐が吹き荒れている。トランプ2.0における追加関税は、トランプ1.0時に比べ、ほとんどすべての国に対して、そしてほとんどすべての製品に対して課せられる、という点で大きな違いがある。また、近い将来、さらに追加関税率が上がるかもしれないという「見込み」も対米輸出に影響を及ぼしている。とくに、4月9日から導入予定であった相互関税率の実施が90日間延期されたことは、3カ月後により大きな追加関税が課されるという「見込み」を形成した。そこで本稿では、実際にこの相互関税率が課され始める8月より前となる、7月までの対米輸出について、その事後評価結果を紹介する。 2025/10/31
  • 2025年アルゼンチン中間選挙における「3分の1」の意味 / 菊池 啓一 アルゼンチンでは、2025年10月26日に定員257名の下院の半数と定員72名の上院の3分の1を改選する国会議員選挙が行われる。同選挙は2023年に誕生したハビエル・ミレイ政権が初めて経験する中間選挙であり、上院においても下院においても議席数の少ない与党の「自由前進」にとって極めて重要な選挙である。 2025/10/23
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第1回 総論――第2次トランプ政権の関税政策の衝撃と世界経済 / 磯野 生茂 2025年に発足した第2次トランプ政権は、通商政策において第1次政権時以上に急進的かつ制度外的な手法を採用し、国際経済秩序に深刻な揺らぎをもたらしている。強硬な数値目標は大統領選挙戦の段階から前面に出ていた。トランプ氏は選挙中、再選後に全輸入に10〜20%の包括関税を課し、対中輸入には60%の追加関税を上乗せする構想を繰り返し示唆していた。当時は「トランプ氏がどの程度本気かはわからず、実際に高い関税を課すのは中国中心で、他国向けの包括関税は通商交渉のカードにとどまるのではないか」という見立ても有力であった(Bade 2024)。 2025/10/21
  • インドネシアの大規模デモと暴動――プラボウォ政権「利権分配」体制と政治エリートの慢心 / 水野 祐地 2025年8月29日から9月1日にかけて、インドネシア各地で発生していた大規模デモが暴動に発展した。公共交通インフラや地方議会議事堂、警察施設などが放火され、一部地域では略奪行為が発生した。今回の暴動は、スハルト独裁体制の崩壊に直結した1998年の動乱を想起させるほど、近年類を見ない規模と激しさをみせた。2024年10月に発足したプラボウォ・スビアント政権にとって初めての試練となったこの暴動の政治的背景には何があったのだろうか。 2025/10/21
  • カンボジア・タイ国境問題――カンボジアの影響と対応 / 初鹿野 直美 2025年5月28日、カンボジアのプレアヴィヒア州モムバイ地域のタイ国境で生じた軍事衝突は、翌月には陸路国境の全面的な封鎖に発展した。対話が不調に終わり緊張が高まるなか、7月24日以降に衝突が拡大し、両国で合計40人以上の死傷者が発生した。7月28日にマレーシアで行われた停戦合意の後、直接的な衝突は収まりつつあるが、両国ではナショナリズムの高揚と相手国への非難の応酬が続く。カンボジアにとって、タイ国境をめぐる衝突は、国境線を挟んだ軍事的な対立であるにとどまらず、政治・経済・社会・対外関係といった多方面にわたって影響を及ぼしている。本稿では、カンボジア・タイ国境問題について、その経緯を振り返るとともに、カンボジア国内でどのような影響が生じ、どのような対応がとられてきたのかをまとめる。 2025/09/30
  • (BRICSと世界)第6回 エチオピアの選択――BRICSに変容をもたらすのか / 児玉 由佳 2024年1月、エチオピアはBRICSに正式加盟した。その地政学的な位置と経済的潜在力が評価されての加盟であり、同時にイラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)も加わった。さらに2025年1月にはインドネシアが参加し、BRICSは、初期加盟国である5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)から10カ国体制へと拡大した。BRICS加盟国の資格は明文化されていないが、欧米基軸の経済秩序とは異なる新たな軸を形成し得る経済力が前提と考えられる。しかしエチオピアの経済規模は、サブサハラ・アフリカでは南アフリカ、ナイジェリアに次ぐ第3位のGDPを有するものの、南アフリカの3分の1程度にとどまり、加盟国のなかでは最小規模である(2022年時点)。実際、2024年10月に加盟承認が報じられた際には、その経済規模から考えても「驚きの加盟」と国内でも報道された(Abdii 2023)。本記事では、エチオピアの加盟が認められた理由と、エチオピアにとっての意味について考えていく。
    2025/09/19
  • ブラジルの国家主権に介入するトランプ関税――なぜ米国は対ブラジルで貿易黒字なのに50%関税? / 近田 亮平 米国のトランプ政権は2025年8月、ブラジルに対する50%もの「トランプ関税」の実施に踏み切った。しかし、トランプ政権による追加関税の前提とされる貿易収支は近年、対ブラジルに関して米国側の赤字ではなく黒字で推移している。ではなぜ、米国は対ブラジルで貿易黒字なのに50%もの関税を課したのか。その背景について本稿では、ブラジルの米国・中国・ロシアとの貿易収支の推移、および、ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領に注目が集まる最近のブラジルと米国の関係を中心に解説する。 2025/09/10
  • 中間選挙を経てマルコス政権は後半戦へ / 鈴木 有理佳 フィリピンでは2025年5月12日に中間選挙が実施され、フェルディナンド・マルコスJr.政権は後半戦に入った。選挙の結果、マルコス政権は最低限の信任を得た。ただ票が伸びず、市民の期待に十分応えていないことを認識したマルコス大統領は、政権の政策効果を高めることに注力しはじめた。中間選挙後に開始されるはずであったサラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判は、最高裁の違憲判断と上院の中止決定により実施されないことがほぼ確定し、マルコス政権の後半戦は2028年大統領選挙を視野に入れた政権運営となる。 2025/09/01
  • 朝鮮の対南政策の転換――「特殊な関係」から「敵対的な二国家」へ / 郡 昌宏 2023年末、朝鮮労働党中央委員会第8期第9回全員会議において、金正恩総書記は韓国との統一は「成就しえない」と述べ、「北南関係はもはや同族・同質関係ではなく、敵対的な2つの国家、戦争中の交戦国の関係である」と宣言した(『労働新聞』2023年12月31日)。この発言は、朝鮮半島の南北関係における歴史的な転換点といえる。というのも、従来の「南北統一」路線の否定は、金日成・金正日の代から継承されてきた国家的悲願の事実上の放棄を意味するからである。 2025/08/25
  • 立ち現れる正反対のナラティブ――もつれて悪化するインド・パキスタン関係 / 工藤 太地 2025年4月22日、インド連邦直轄領ジャンムー・カシュミール(以下、JK準州)の観光地パハルガームにおいて、観光客を狙ったテロ事件が発生した。本事件をパキスタンに根拠地を置く武装組織の犯行と断定したインドは、在印パキスタン人やパキスタン防衛駐在官の国外追放、在パキスタン印大使館の人員削減、インダス水利協定 の一時停止などの外交措置を講じ、5月7日未明にパキスタン領内のテロ組織のインフラを攻撃した。一方パキスタンは、インドとほぼ同等の外交的対抗措置をとりつつ、インドによる攻撃をうけて軍事的報復を実施した。双方による攻撃が展開され、世界が核戦争へのエスカレーションを憂慮するなか、5月10日に停戦合意に至り戦闘は停止した。 2025/07/16
  • 「強い」李在明政権、「脆い」韓国民主主義 / 浅羽 祐樹 李在明[イ・ジェミョン]氏が2025年6月4日に第21代韓国大統領に就任してから1カ月が経った。この間、韓国総合株価指数(KOSPI)は3000を突破し、「コリア・ディスカウント」から回復しつつあるようにみえる。李大統領はカナダで開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)にもオブザーバー参加し、「民主韓国が戻ってきた(Democratic Korea is back)」ことを対外的に広く印象づけた。石破茂首相とも日韓首脳会談をおこない、「日韓両国は小さな意見の違いを乗り越えて、さまざまな面で互いに協力し助け合う関係として発展することを願う」と述べ、「政策の一貫性」や「国益重視の実用外交」への期待を日本側にもたせた(浅羽 2025b)。 2025/07/15
  • (BRICSと世界)第5回 イランの選択――「東方政策」の到達点としてのBRICS加盟とそのねらい / 松下 知史 2024年1月、イランはエジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦(UAE)とともに、BRICSへの正式加盟を果たした。イラン加盟の背後には、ロシアの強力な後押しがあったとされている(Fathollah-Nejad and Naeni 2023)。今回のBRICS加盟は、こうしたイランの近年の中露および湾岸協力会議(GCC)諸国との関係強化の延長線上に位置づけられる動きである。従来イランが加入してきた国際枠組みは、イスラーム協力機構(OIC)や経済協力機構(ECO)といった特定の地域や分野に限定したものが中心であった。そのため、長年にわたって欧米諸国の厳しい経済、金融制裁に苦しんできたイランにとって、BRICSという包括的な事項を扱う世界的な国際枠組みへの参加は、国際社会における孤立状態からの脱却を図るうえで重要な外交成果であるといえる。 2025/07/08