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記事一覧(最新15件)

  • 金正恩政権の「新時代の農村革命綱領」――農村開発・農業改革のゆくえ / 郡 昌宏 金正恩総書記が近年推進している地方開発政策は、彼の地方経済の現状に対する強い危機感を背景にしていると考えられる。その経済政策の軸となっているのが「地方発展20×10政策」(筆者の別稿を参照)と「新時代の農村革命綱領」(以下、「農村革命綱領」)である。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)において「農村革命綱領」は農村開発を通じた地域間格差解消と農業改革を通じた食糧問題の解決を目指す重要な経済政策として位置づけられている。「農村革命綱領」は全文が公開されておらず全体像が明らかではないが、これまでの報道から分かることに基づいてその内容や位置づけを理解することが必要であろう。以上のことを踏まえ、本稿では、金正恩政権が進めている「農村革命綱領」による農村開発・農業改革の内容や進捗状況、経済的背景と政治的位置づけについて論じる。
    2026/02/17
  • 日本の輸入は経済的威圧にどれだけ弱いのか――脆弱性を計測する新たな指標 / 早川 和伸・椋 寛・山ノ内 健太 地政学的リスクが高まるなか、各国は効率性に基づいた国際分業を進めるだけでなく、政治的に非友好的な国からの経済的威圧等によって貿易関係が途絶するリスクにも備えた貿易体制を構築することが急務となっている。そのためには、各国の現状の貿易パターンが地政学的リスクに対してどの程度脆弱であるかを定量的に把握する必要がある。そこで本稿では、品目別に非友好国からの輸入途絶や経済的威圧に対する「脆弱度」を測り、さらにそれを国レベルで集計した新たな指標を構築したい(詳しい計算方法は補論を参照)。 2026/02/13
  • 2055年に向けた体制の立て直し――ラオス人民革命党第12回大会 / 山田 紀彦 2026年1月6~8日にかけて、ラオス人民革命党第12回全国代表者大会(党大会)が、全国の党員約42万人を代表する834名(女性123名)が参加して開催された。5年に一度開かれる党大会では、今後5年間の党路線や国家建設方針を定めた「政治報告」が提示され、その実施を担う新執行部が選出される。したがって党大会はラオスでもっとも重要な政治イベントである。第12回党大会のポイントは大きく3つに整理できる。第1は、党支配や国家建設にとって重要な節目で開催されたことである。今大会は党にとってどのような位置づけにあったのか。第2は、1972年の第2回党大会以来54年ぶりに「政治綱領」が策定され、党創立100周年にあたる2055年までのビジョンが掲げられたことである。なぜいま党は「政治綱領」を国民に示す必要があったのか。またそれはどのような内容なのか。第3は、執行部人事である。国民の最大の関心は80歳と高齢のトーンルン党書記長の再任の有無と、執行部の世代交代にあった。今回の人事からはどのような特徴がみえるのか。以下、第12回党大会の概説を通じてそれぞれの問いに答えていく。 2026/02/10
  • 過渡期のバングラデシュ――7月政変から第13回総選挙に向かって / 松浦 正典 バングラデシュでは、2024年7月から8月にかけて発生した政変(以下、7月政変)以降初の第13回国民議会総選挙が2026年2月12日に実施される予定である 。7月政変以降、ムハンマド・ユヌス(以下ユヌス)首席顧問を中心に成立した暫定政権はシェイク・ハシナ(以下ハシナ)前政権の政治体制から大きな転換を図り、政策金利引き上げなどの経済政策を実施してきた。本稿では暫定政権による政治・経済改革と外交状況をまとめ、総選挙に向けた各党の動きと総選挙の要点を検討する。 2026/02/06
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第8回 タイ――経済と安全保障のリンケージ / 塚田 和也 2025年に発足した第2次トランプ政権は、米国の巨額な貿易赤字を「国家安全保障に対する脅威」と位置づけ、世界各国に対して「相互関税」(Reciprocal Tariff)を軸とする強硬な通商圧力を展開した。タイも当然のようにその標的となり、また相互関税をめぐる交渉の過程ではタイとカンボジアの国境紛争がとりあげられ、経済と安全保障に関する複雑なリンケージが顕在化した。本論では、タイの対米貿易黒字、交渉の経緯と枠組み合意に対する国内評価、米国が関税交渉と地域の国境紛争を結び付けた背景などを論じることで、タイの置かれている状況を整理したい。 2026/02/03
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第7回 メキシコ――駆け込み輸出とUSMCAの恩恵 / 橋口 義彦 2025年3月、不法移民や合成麻薬フェンタニルの国内への流入を理由に、米国のトランプ大統領は、米国・メキシコ・カナダ協定(United States-Mexico-Canada Agreement:以下、USMCA)の原産地規則(Rules of origin)を満たさないメキシコからの輸入品に対して25%の追加関税を発動した。メキシコ経済は米国に強く依存している。2023年時点で、全輸出額の約8割を対米輸出が占めており、それはGDPの約30%に相当する。そのため、メキシコは追加関税を是が非でも回避する必要があり、また、関税が発表された当初、IMFや世界銀行もメキシコの輸出が停滞することを予想していた。しかし、7月までのメキシコの対米貿易の推移をみると、輸出の減少は4月のみで、むしろ全体では前年よりも輸出は増加している(図1)。それでは、なぜ追加関税はメキシコの貿易にマイナスの影響をそれほど与えなかったのか。本稿では現在までのトランプ関税の流れとUSMCAを概説し、関税発動前の駆け込み輸出、USMCAの枠組み維持による貿易転換効果、USMCAに基づく特恵関税利用の拡大、の以上3点を追加関税の悪影響を緩和した理由として指摘する。
    2026/01/23
  • 混迷するイランの抗議運動と情報収集の壁――何が情勢把握を困難にしているのか / 松下 知史 昨年末にイランで発生した大規模抗議運動は、本記事執筆時点で4週目に入った。この運動は、物価高騰と通貨価値の急落による経済的不満を背景に、首都テヘランのバーザール商人らによるストライキを発端として始まり、短期間のうちに全国規模の抗議の波へと拡大した。国際社会の厳しい経済・金融制裁による国民経済の長期的困窮のなかで、こうした経済改革の訴えはかつての大規模抗議運動(2017年、2019年)の再来を予感させるものであり、幅広い国民の支持を獲得しやすいテーマであった。イランの体制は当初、全国民を対象とする現金給付を含む緊急経済対策を打ち出すなど、一定の融和姿勢を示していた。しかし、運動の拡大と一部での過激化・暴力化、さらには全国的な反体制運動へと変質していく過程で、体制は抗議者を「暴徒」や「テロリスト」「外国勢力の手先」と位置付け、弾圧を強化している。その結果、イランは、抗議者と治安部隊の双方に多数の死傷者を出す、極めて深刻な政治的危機に直面している。 2026/01/21
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第6回 ラオス――出鼻をくじかれる対米輸出 / ケオラ スックニラン 内陸国ラオスにとって、主要な輸出先は国境を接するタイ、中国とベトナムである。この3 国への輸出総額は、2000年、2010年、2019年、2023年にかけて、約5億、40億、116億、165億ドルと伸び続けている。これに対して、アメリカへの輸出は同じ期間に、約1000万、7000万、1億6000万、3億5000万ドルと伸び悩んだ。アメリカへの輸出が伸びなかった最大の理由は一般特恵関税制度(General Systems of Preferences: GSP)が認められなかったことにある。GSPとは先進国が開発途上国からの輸入品に対して通常より低い関税(多くの場合ゼロ)を一方的に適用する制度である。ラオスは2005年に、ほとんどの国に認められるアメリカの正常貿易関係(Normal Trade Relations: NTR)を享受したが、GSPはおもにラオスがアメリカの要求している労働組合結成の自由を受け入れなかったため、今日に至るまで対象外のままである。1997年にGSPを取得した隣国のカンボジアが10年余りで東南アジアにおけるアメリカ向けの主要な輸出拠点に変貌したのと対照的に、ラオスの世界最大市場へのリーチは低空飛行の状態が続いた。 2025/12/25
  • ノーベル平和賞受賞の栄光と米国トランプ政権の軍事圧力に揺れるベネズエラ / 坂口 安紀 ベネズエラは、ノーベル平和賞受賞の栄光と軍事攻撃の脅威という相反するふたつの状況下で、激動の2025年末を迎えようとしている。12月10日、オスロでノーベル平和賞が、ベネズエラの民主化闘争を主導するマリア・コリナ・マチャドに授与された。1年以上国内に潜伏して逮捕を逃れ、出国禁止命令を受けている彼女が無事にオスロに到着できるのかが注目されたが、命をかけた脱出劇のすえ、式典には数時間遅れたものの無事オスロにたどり着いた。その一方、米国のトランプ政権がニコラス・マドゥロ独裁政権への軍事圧力を日に日に強めており、なんらかの軍事行動がいつ始まってもおかしくないほど緊張が高まっている。ベネズエラではいったい何が起きているのか、本報告ではこれらの背景についてみていく。 2025/12/23
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第5回 フィリピン――「特別な関係」が根底に / 鈴木 有理佳 フィリピンに対するアメリカの相互関税は税率19%に落ち着いた。ただフィリピン政府によれば、2025年11月末時点で交渉はまだ継続しており、最終合意に至っていない。税率19%は4月当初に公表された税率17%より引き上げられた形になったが、そもそも相互関税のフィリピン経済への影響は限定的と見込まれ、それがフィリピン政府の判断を後押ししたと考えられる。加えて、両国は軍事的に同盟関係にあり、安全保障の問題も交渉の議題に上がっていたと推察される。この両国の「特別な関係」は、今回の相互関税においてフィリピンを必ずしも優遇しないものの、フィリピンの防衛力強化とアメリカの継続的な関与を見据えたトランプ流の取引が行われているように見える。 2025/12/23
  • 2025-2026年ミャンマー総選挙――正当性なき国軍主導の民政移管へ / 渡邊 康太 ミャンマーでは、2025年12月28日から2026年1月25日にかけて、総選挙が実施される。現行の2008年憲法の下で行われる4回目の総選挙であるとともに、国軍がアウンサンスーチー氏(以下、スーチー氏)を含めた国民民主連盟(NLD)幹部を不当に拘束し、全権を掌握した2021年クーデター以後初めての総選挙となる。今回の総選挙は、NLDが圧勝した直近2回の総選挙(2020年および2015年)とは大きく異なり、国軍主導の下、NLDが実質排除されたなかで実施される。民主派の並行政府として、クーデター直後から国軍への抵抗運動を率いてきた国民統一政府(NUG)は、国軍主導の総選挙に何ら正当性はないと厳しく批判している。国民の間でも、民主体制を転覆し、5年間にわたって徹底的な弾圧と暴力行為を続けたうえ、生活困窮を招いた国軍に対する拒否感はこの上なく強い。
    2025/12/19
  • インフレとエルドアン政権――トルコにおける政治と経済の相互作用 / 間 寧 エルドアン政権が2023年6月に本格的なインフレ抑制政策へ転換してから、まもなく2年半が経つ。しかし、インフレ率が実際に低下し始めたのは、政策開始から約1年後の2024年7月であり(図1)、その後もインフレ低下のペースは鈍いままである。2025年10月時点でもインフレ率は年率33%であり、政府・中央銀行の予測(事実上の目標値)どおり2026年末に年率15%へ半減させることは困難と見る専門家が多い。さらに、インフレ率が下がりにくくなる「粘着化」も指摘されている。本稿では、こうしたインフレがなぜ解消しないのか、その「しぶとさ」の主因を整理する。 2025/12/19
  • クルスク派兵によるロシアとの関係強化 / 中川 雅彦 ロシア軍のクルスク奪還戦闘に対する朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の軍隊の派遣に関する情報は2024年10月17日にウクライナ政府および韓国国家情報院によって発表された。そして、2025年4月26日にロシア軍のクルスク奪還戦闘が終了すると、28日に朝鮮側もロシア側も、朝鮮のクルスク派兵が事実であることを認めた 。さらに、2025年8月22日にYouTubeに掲載された平壌の朝鮮中央テレビの報道「朝鮮人民軍海外作戦部隊指揮官・戦闘員たちのための祝賀公演」によって、クルスク派兵に関する金正恩の決定は2024年8月28日に下され、10月から派兵が実施されたことなどが明らかにされた。ここでは、この朝鮮のクルスク派兵についてその目的を明らかにしたうえで、派兵された部隊の内容についてこれまでわかったことを示してみよう。

    2025/12/10
  • 香港立法会選挙――「愛国者」たちの「中国式」競争―― / 倉田 徹 12月7日、香港では4年に一度の立法会(議会)選挙が行われる。立候補受付は11月6日に締め切られ、90議席を争う選挙戦が展開されている。 2020年の香港国家安全維持法(国安法)制定により、抗議活動や反政府的な言論は姿を消した。すでに前回2021年の選挙から、政権が事実上自由に候補者を排除できる制度が導入されており、もはや民主派が政権に挑戦する姿はない。すべて政府公認の「愛国者」候補のみで行われるこの選挙が、世界的ニュースとして大きく注目されることはないであろう。しかし、そのような「中国式」選挙だからこそ、そのアレンジには、政権の意図が直接反映されている。選挙過程の観察を通じ、我々は北京の香港に対する見方、香港の政治・社会の現状、そして「中国式」政治体制の本質を垣間見ることができる。 2025/12/04
  • ホンジュラス大統領選挙――三党鼎立の闘い / 浜端 喬 11月30日、中米ホンジュラスで総選挙(大統領選挙、国会議員選挙、中米議会議員選挙、市長選挙、市議会議員選挙)が実施される。1982年の民政移管以降、ホンジュラスの大統領職は自由党と国民党によって独占されてきた。しかし、前回2021年選挙ではリブレ党所属のシオマラ・カストロ現大統領が当選し、これまでの二大政党制に初めて風穴を開ける形となった。今回の選挙で、ホンジュラス国民はリブレ党による政権運営の継続を支持するのか、あるいは従来の二大政党制への回帰を選択するのか。本稿では大統領選挙に焦点を当て、主要三政党の候補者を概観したのち、争点を整理し、選挙後の展望を検討する。 2025/11/25