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記事一覧(最新15件)

  • ナイジェリア北部で慢性化する治安問題――アメリカの軍事的関与は打開策になるか / 松原 優華 アメリカ軍は、ナイジェリア軍との合同作戦により、2025年12月25日にナイジェリアの北西部を、その約5カ月後の2026年5月16日には北東部を相次いで爆撃した。軍事作戦の直接的な契機は、2025年10月30日にトランプ大統領がナイジェリアを、宗教の自由が侵害されている「とくに懸念のある国(Countries of Particular Concern: CPC)」に認定したことにあり、同大統領はナイジェリアで「キリスト教徒が迫害されている」、「多くのキリスト教徒が殺害されている」という発言を繰り返してきた 。そして、「キリスト教徒を守る」ための軍事攻撃を示唆していたなかで、実際に爆撃が行われたのである。 2026/08/28
  • TSMCはなぜ熊本で3ナノ生産をめざすのか / 青木 美璃 2026年2月5日、東京の首相官邸で高市早苗首相と世界の半導体受託製造最大手・台湾積体電路製造(以下、TSMC)の魏哲家董事長(以下、会長)兼最高経営責任者(CEO)が面会した 。この席でTSMC側は、熊本で建設中の第2工場について、生産計画を見直す意向を表明した。従来の計画では、自動車・スマートフォン搭載のカメラ・産業機器などで広く使われるレガシー半導体を中心に生産する予定だった。だがこの計画を変更し、AIブームで需要が拡大している3ナノメートル(以下、ナノ)級の先端ロジック半導体の製造をめざすというのである 。仮にこの計画が実現すれば日本国内で初めて先端ロジック半導体が量産されることになる。現在、2ナノ・3ナノの先端ロジック半導体を量産している国は、米国(インテル)、台湾(TSMC)と韓国(サムスン電子)のみであり、日本はその仲間入りをめざす。 2026/08/27
  • UAEはなぜOPECを脱退したのか――石油、物流、外交を組み替える「ハブ型国家」 / 齋藤 純 2026年4月28日、アラブ首長国連邦(UAE)は石油輸出国機構(OPEC)およびOPECプラスから脱退し、同年5月1日をもって加盟国としての活動を終えた。UAEはサウジアラビアに次ぐ余剰生産能力を持ち、長年にわたりOPECの協調減産を支えてきた主要国である。その離脱は、単に加盟国が一つ減ったという以上の意味を持つ。脱退の直接的な背景として指摘されるのは、UAEが巨額の投資によって原油生産能力を拡大してきたにもかかわらず、OPECプラスの生産枠によって実際の生産量を大幅に抑えられてきたことである。アブダビ国営石油会社(Abu Dhabi National Oil Company: ADNOC)は、生産能力を2026年現在の日量440万バレルから500万バレル規模へ拡大する計画を進めている。低コストで生産可能な原油を持ちながら、造成した能力を長期間遊休させることは、投下資本の回収を遅らせるだけでなく、将来的な石油需要が不透明になるなかで、埋蔵資源を現金化する機会を失うことにもつながる。UAEにとって、OPEC加盟による価格安定や集団的交渉力の利益よりも、造成した低コスト生産能力を長期間遊休させ、生産と資源現金化の時期を自ら決定できないことの機会費用が大きくなったのである[Al-Khateeb et al. 2026]。 2026/08/25
  • ソマリアの「正常化」を阻むもの / 井上 実佳 ソマリアは「アフリカの角」のリスクという汚名を返上できるか。現在、その真価が問われている。1990年代以降、内戦による国家の崩壊と人道危機を経て、2000年代以降は海賊とアッシャバーブによる暴力的過激主義に直面してきた。それでも、2012年9月の連邦政府樹立後は大統領選挙と議会選挙を複数回実施し、2025年12月25日には首都モガディシュで1969年以来の地方選挙を実施した。国際社会もソマリアの国家再建に呼応し、国連安全保障理事会(安保理)は2023年12月1日に決議2714を採択した。これは1992年1月23日の安保理決議733以来約30年間続いた対ソマリア武器禁輸を解除するものであった。さらに、ソマリアは2025年1月から2026年12月まで安保理の非常任理事国を務めている。 2026/08/12
  • 相互依存の再編と経済安全保障 / 早川 和伸 近年、「経済安全保障」「デカップリング(経済切り離し)」「フレンドショアリング」といった言葉を耳にする機会が増えている。背景にあるのは、米中対立の激化、ロシアによるウクライナ侵攻、半導体や重要鉱物をめぐる輸出規制など、経済と安全保障が強く結びつくようになった国際情勢の変化である。これまで世界経済では、「貿易が拡大すれば各国は豊かになり、相互依存が深まることで対立も抑えられる」という考え方が重視されてきた。実際、戦後のグローバル化はこの考え方を土台として進み、多くの国で経済成長をもたらした。しかし近年では、経済的な結びつきが、他国に対する圧力や影響力の手段として利用される場面が増えている。本レポートでは、全米経済研究所(NBER)に公開されている、近年の地経学研究の成果をもとに、世界経済で何が変わっているのかを整理する。より詳細な議論については、参考文献を参照されたい。 2026/05/29
  • クウェート在外備蓄原油がつなぐ「制度的パイプライン」――日本・ベトナムを結ぶエネルギー連携 / 石黒 大岳 2026年5月現在、ホルムズ海峡の実質的な封鎖の継続は、アジア全域をかつてないエネルギー危機へと突き落としている。湾岸産油国からの原油供給は深刻なレベルで滞り、東南アジア諸国では物流の麻痺や電力不足など市民生活に甚大な影響を及ぼしている。日本国内においても、燃料価格の高騰のみならず、広範な業界で原料不足による操業停止・供給停止への懸念が強まっている。日本政府は、代替調達先の確保に奔走するとともに、他国に先んじて3月16日から国内備蓄原油の放出を開始した。日本で国内備蓄の放出が開始された翌日、ベトナム政府は日本に備蓄原油の一部提供を公式に要請した。この要請は、供給不足と家計への不安を募らせる日本国内で困惑と疑念を呼んだ。なぜ、ベトナムが日本に備蓄の融通を求めるのか、と。 2026/05/21
  • 新時代への布陣?――ベトナム共産党第14回党大会と党書記長・国家主席の「一体化」 / 石塚 二葉 3月の選挙を経て誕生した第16期ベトナム国会は、第1会期2日目の4月7日、満場一致によりトー・ラム共産党書記長を国家主席に選出した。1月の共産党第14回全国代表者大会(第14回党大会)で再任されたラム党書記長は、これにより、党と国家の最高位を兼任することとなった。国家主席(英語ではpresidentであり大統領とも訳される)は、政府首相と比べて内政上の実権は限定的であるが、国家元首であり、これまでの党内序列では党書記長に次ぐ第2位と、国家幹部のなかでは最高位に位置していた。 2026/05/15
  • 仲介に奔走するパキスタン――なぜイランをめぐる戦闘の終結を望むのか? / 工藤 太地 2026年2月末に始まったアメリカ・イスラエルとイランとの戦争は、4月8日に一時的な停戦合意に至った。この合意形成において主導的な役割を果たしたのが、パキスタンだった。同国は同時期に交戦状態にあったアフガニスタンに爆撃を行う一方で 、イランをめぐる戦争の早期鎮静化に向け一貫した外交努力を続けた。停戦に合意したイランとアメリカは、シャハバーズ・シャリーフ首相とアーシム・ムニール国軍兼陸軍参謀長の仲裁努力を称賛した。 2026/04/24
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第13回 インドネシア――違法判決直前の不均衡な合意 / 濱田 美紀 2026年2月19日、米連邦最高裁がトランプ相互関税に違法判決を下す前日、インドネシア・プラボウォ大統領は訪問中の米国で相互貿易協定に署名した。本稿では、均衡を大きく欠いた協定がインドネシアに与える懸念について考察することを目的に、インドネシアと米国間の貿易関係をまとめ、合意内容について確認する。2025年4月2日の相互関税32%の発表を受け、インドネシア政府は外交関係者や貿易交渉団を米国に派遣した。交渉を続けた結果、7月16日に関税率19%、米国の工業製品、食品、農産物全般に対する関税障壁の約99%の撤廃で合意した 。併せてインドネシアは米国から150億ドル相当のエネルギー(石油、ガス)、米国産農産物45億ドル相当、32億ドル相当の航空機50機を購入することが合意されたと多くのメディアが報じた 。高関税を回避できたことは評価されたが、その後もパーム油、コーヒー、ココアなど米国で生産できない商品についての関税引き下げの可能性を探って交渉は継続された。交渉は長引き、2025年末には2026年1月後半と言われていた合意は大幅に遅れ2月19日となった。
    2026/04/06
  • なぜ米国・イスラエルはこのタイミングでイランを攻撃したのか――米国世論の変化から読み解く / 水野 祐地 2025年末に米国フロリダ州を訪問したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが「7つの前線」で戦っているのに加え、「8つ目の前線」として西側諸国、とりわけ米国市民の「hearts and minds(人心)」をめぐる戦いを挙げた。これは、中東情勢に影響を及ぼす要素の一つとしての米国世論の重要性と、それが近年大きく変化していることへのイスラエル政府の強い警戒感を示す発言と言える。2026年2月のギャラップによる世論調査では、中東情勢において米国人が共感を示す割合がパレスチナ41%、イスラエル36%となり、初めてイスラエル優位の構図が崩れた。2026年2月末に米国がイスラエルと共同で行った対イラン軍事行動においても、攻撃直後のロイター/イプソスの調査では支持率が27%にとどまっており、米国の対中東政策を考えるうえで世論の動向を無視しにくい状況にある。 2026/04/03
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第12回 ベトナム――米中の間で高成長を模索 / 藤田 麻衣 2025年4月2日、トランプ関税の発表が世界に衝撃をもたらすなか、ベトナムはふたつの点で注目を集めた。ひとつは、予想された打撃の大きさである。ベトナムは当初発表の相互関税率が46%と高く、2024年の対米輸出は国内総生産(GDP)の25% にも相当する。当時のいくつかの試算において、ベトナムはもっとも深刻な負の影響が予想される国のひとつとされた(熊谷ほか2025; Iyer et al. 2025; Rotunno and Rura 2025)。もうひとつは、米国に対する協調姿勢である。4月4日には最高指導者であるトー・ラム共産党書記長がトランプ大統領と電話会談を行い、米国に対する輸入関税の0%への引き下げについて協議する準備があることを伝えつつ、交渉開始の合意を取り付けた。米国製品の大型購入契約などの対応も次々と打ち出した。
    2026/03/31
  • 2025年インドネシアの十大ニュース / アジ研・インドネシアグループ アジア経済研究所では、インドネシアを研究対象とする研究者が毎週集まって「先週何が起きたか」を現地新聞・雑誌などの報道に基づいて議論する「インドネシア最新情報交換会」を1994年から続けています。毎年末には、その年のニュースを振り返って、私たち独自の「十大ニュース」を考えています。今年も、アジ研・インドネシアグループの考える「2025年インドネシアの十大ニュース」を発表します。
    2026/03/31
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第11回 台湾 関税か投資か――半導体サプライチェーンをめぐる米台関税交渉 / 青木 美璃 2026年1月15日の総括会議により、10カ月に及んだ米台関税交渉が妥結した。台湾は、日韓と同水準の相互関税率15%に加え、「米国通商拡大第232条関税(以下、232条関税)」での最恵国待遇も獲得した。しかし、この合意に至るまでの道のりは容易ではなかった。多くの国が相互関税率の引き下げのみを交渉課題とした一方、台湾は主力輸出品である半導体を含む232条関税の高関税率回避という、もうひとつの課題を背負わされていた。トランプ大統領が半導体への高関税導入を示唆するなか、台湾は相互関税率引き下げと米232条関税での優遇措置獲得の断念か、対米投資を通じた半導体サプライチェーンの米国内構築かという難しい選択を迫られたのである。いずれの道を選んだとしても台湾半導体産業に打撃となり得る状況において、台湾はいかに対応したのか。本稿は台湾側の視点から、交渉の背景と経緯を整理し、今後を展望する。
    2026/03/11
  • レコ・ディク金・銅山開発――パキスタン経済を立て直す最後の切り札? / 松田 和憲 パキスタンは、世界第5位の2億4000万の人口を有し、2050年までには世界第3位の人口規模に達すると言われている。人口ボーナスによるポテンシャルが高い一方、政治的混乱や地政学的リスクを抱えている。さらに、2022年の大規模な洪水被害、外貨準備不足による輸入制限、通貨下落、高インフレ、利上げ、IMFプログラム再開遅れ等も相まってデフォルト(債務不履行)危機に陥り、経済的にも苦境に立たされていた。しかし、IMFによる24回目の融資や、友好国であるサウジアラビア、UAE、中国による支援もあり、2023年1月には輸入の3週間分しかなかった外貨準備高は、現在は2~3カ月分まで回復している。 2026/03/06
  • (世界はトランプ関税にどう対応したか)第10回 カンボジア――関税交渉の変遷と雇用不安 / 田中 清泰 2025年に入り、トランプ政権の関税政策は世界に大きな衝撃を与え、特に米国市場への依存度が高い開発途上国に深刻な影響を及ぼした。カンボジアにとって米国市場は輸出産業を支える最重要の柱であり、同国がどのように対応し、どのような影響を受けたのかを把握することは極めて重要である。本稿では、カンボジアと米国の間における関税および貿易関係を整理し、相互関税がカンボジア経済にどのような影響をもたらしたのかを検討する。 2026/03/03