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目標12 つくる責任、つかう責任――循環型社会ってなに? ごみ問題から考える国際協力

Goal 12 Responsible Consumption and Production: What is a Circular Society? International Cooperation from the Perspective of Waste Issue

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00052853

佐々木 晶子
Akiko Sasaki
2021年11月
(4,041字)

大量生産・大量消費から循環型の社会へ

私たちは普段、多くのものに囲まれて暮らしています。シーズン毎に流行りの洋服が安く大量に販売され、スーパーにはたくさんの食品が置かれ、100円ショップにはありとあらゆる商品が並んでいます。たくさんの製品を低価格で買えることは、私たちの生活をより便利に豊かにしてくれます。一方で、それを可能にしているのは多くの資源やエネルギーを使って製品を生産し、消費する大量生産・大量消費の仕組みです。そしてその結果、大量のごみが廃棄されています。

このような仕組みは、化石燃料や金属、木材など多くの天然資源を採掘・採集し利用することで成り立っています。しかし、化石燃料の利用は二酸化炭素の排出を増やして地球温暖化をもたらし、無計画な森林伐採や金属採掘は、生態系の破壊や水質汚濁などの環境問題を引き起こします。SDGsの12番目の目標「つくる責任、つかう責任」は、持続可能な社会の実現に向けて大量生産・大量消費の仕組みを見直し、生産者・消費者がそれぞれ責任をもって、資源の効率的な利用や廃棄物の削減を目指しています。

「つくる(生産)」「使う(消費)」「捨てる(廃棄)」を一方通行で行う「使い捨て」の経済は直線型経済(リニア・エコノミー)と呼ばれます。一方で、生産段階でごみを発生させないようにしたり、製品が利用、消費されて「第一の製品寿命」を終えても、使用済み製品の再使用(リユース)やリサイクルなどを通じて製品に第二、第三の寿命を与えたりすることで、資源の循環やエネルギーの有効利用を目指す経済概念が循環経済(サーキュラー・エコノミー)です(図1参照)。

図1 循環経済と直線型経済

図1 循環経済と直線型経済

(出所)UNIDO(n.d.)より筆者作成

循環経済の考え方自体は古く、1960年代後半までさかのぼります。アメリカの経済学者ボールディングは地球の資源は有限であり、人類はその限りある資源のなかで生きているということを「宇宙船地球号」という言葉で表しました。ボールディングは1966年に発表した著書のなかで、人間は天然資源を一方的に搾取して使い捨てるのではなく、循環する生態系のなかで生きていくべきであると説きました(Boulding 1966)。その後、ドイツや日本、そして中国など各国で循環経済を目指す法制度などが整備され、経済協力開発機構(OECD)によって、自然環境への負担を減らしつつ経済成長を行う「グリーン成長」の柱のひとつとして位置づけられるなど、循環経済の考え方は世界中に広く普及していきました。

つくる責任・つかう責任――ごみは誰が処理するのか

循環経済の実現には、ごみの排出の抑制や適切な処理が必要不可欠です。ごみは、製品を生産する際に発生する産業廃棄物と一般家庭などから出る一般廃棄物に分類されます。そして、廃棄物はその排出者が処理の責任を負っています。これは汚染者負担の原則(Polluters Pay Principle: PPP)と呼ばれ、1972年にOECDが提唱して以降、多くの国がこの原則を採用しています。ごみ処理は、企業など製品をつくる側(生産者)と製品を使う側(消費者)の双方に責任が生じるのです。

「つくる責任」を負う企業は、生産活動で発生した産業廃棄物を処理します。加えて、企業は、製造過程で環境負荷を抑制することや、製品が使用された後の再使用やリサイクルを行いやすい製品設計にすること、販売後の製品を処分する際に一定の責任を持つことも求められます。販売された製品の処分や再使用に関しても生産者が責任を負うことは、拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)と呼ばれ、日本を含む先進国のみならず、途上国にもこの考え方が普及しつつあります。

消費者による「つかう責任」はどうでしょうか。私たちは誰もが消費者です。例えば、壊れにくい製品を買ったり、必要のない包装材を断るなどして消費量を減らすリデュース、フリーマーケットなどを通じて再使用するリユース、ペットボトルや空き缶など資源ごみを分別収集して再生利用するリサイクル、という3R(Reduce・Reuse・Recycleの3つのR)を実践したりすることによって、一人ひとり、生活が環境へ与える負荷を減らすことが大切です。けれども、ごみをまったく発生させないことは難しいので、リサイクルできないごみが適切に処理されることも重要です。

先ほどごみは排出者が処理の責任を負う、と書きましたが、一般家庭の場合、各家庭がごみの焼却や埋め立てを行うことは現実的ではありません。日本では、家庭や事業所から出されるごみである一般廃棄物については、法律(廃棄物の処理及び清掃に関する法第4条第1項)で、市町村など地方自治体が処理することが定められています。また、リサイクルできる資源については、2000年に循環型社会形成推進基本法が施行されて以降、食品やプラスチック包装、家電、自動車などそれぞれの製品のリサイクルに関する法律が整備され、循環型社会を目指して様々な施策が行われてきました。自治体は、こうした国の法制度や政策にもとづき廃棄物処理を行い、ごみ処理に関するノウハウや経験を蓄積してきました。そのノウハウは廃棄物処理施設の管理運営だけにとどまらず、施設を建設する際の地元住民との合意形成、ごみ分別をすすめるための市民への啓発や環境教育など幅広い分野に及んでいます。

「つかう責任」の国際協力――持続可能なごみ処理に向けて

私たちの生活に身近な一般廃棄物の処理は、ごみの発生量にみあった焼却施設を建設したり、再生可能資源を効率的にリサイクルする方法が検討されたりと、日本国内で対応策がとられてきました。しかし資源の循環は一つの国だけで完結するわけではありません。古紙や廃プラスチック、金属スクラップなど、さまざまな再生可能資源は輸出され、再生利用されています。ただし、リサイクルできない廃棄物が再生可能資源と一緒に途上国に輸出され、現地で環境汚染を引き起こす事例も発生しています。また、各国で廃棄されたプラスチックが海に流れ出し、海洋汚染を引き起こす海洋プラスチックの問題も深刻です。このように、各国のごみ問題はグローバルな環境問題につながっています。循環経済を構築するためには、国内だけでなく国際的な状況も考慮して、国境を越えて取り組むことが必要になってきています。

日本はこのようなグローバルなごみ問題に対処するため、国際協力を通じて支援を行っています。国レベルの取組みだけではありません。日本の自治体は、廃棄物処理や資源循環に関する技術とノウハウを活用し、困っている途上国の自治体の課題解決に向けた協力を行っています。急速な都市化が進む途上国の多くの都市では人口増加や所得の増加がおこる一方で、リサイクル資源の分別収集や廃棄物の収集・運搬・処理が十分に行われず、深刻な環境・衛生課題を抱えています。

こうした途上国の自治体を支援する動きは、北九州市、横浜市、川崎市、大阪市など、全国の自治体で行われています。例えば重工業地帯を抱える北九州市では、製鉄業など市内の企業が持つ技術を生かして、1990年代からペットボトルなどのリサイクル産業が発展してきました。また、環境都市として、市民レベルでもリサイクルやごみを減らす運動などが盛んに行われました。こうした経験をもとに、市は積極的に中国や東南アジアなどの都市に対して廃棄物処理などの技術協力を実施してきました。

写真1 カンボジア・プノンペン都において北九州市のメンバーが最終処分場の見学を行う様子

写真1 カンボジア・プノンペン都において北九州市のメンバーが最終処分場の見学を行う様子

なぜ自治体が独自に国際協力を行うのか、疑問に思うかもしれません。それは、自治体レベルの国際協力には、自治体ならではの利点があるからです。例えば、一般廃棄物について、自治体はごみ収集やリサイクルの方法を住民に周知し、実際にごみ収集の役目を担っています。このため、自治体は自ら取り組み、経験したことから得た技術やノウハウを直接海外の自治体に伝えることができます。また、長年かけて構築してきた自治体同士の信頼関係は時に国家間の関係が悪化しても途絶えることなく、環境問題の解決という共通の目的のもと続けられてきました。技術指導あるいは政策形成、そして人材育成の支援など日本の自治体による協力を通じて、途上国の自治体は廃棄物処理など課題解決の糸口を探ることができます。一方、こうした国際協力は日本の自治体にとってもメリットがあります。事業を通じて環境都市としての知名度の向上や自治体職員のスキルを磨く機会を得ることができ、技術を持った地元企業が協力することで、企業の海外進出の支援も担っています。自分たちが培った技術やノウハウを困っている都市の人々に役立てたいという思いを実現すると同時に、こうした国際協力は、自分たちのまちの発展にも役立っているのです。

写真2 プノンペン都において 北九州市のメンバーが住民啓発運動を行っている様子

写真2 プノンペン都において 北九州市のメンバーが住民啓発運動を行っている様子
SDGs目標12の達成に向けて

廃棄物を持続可能な方法で処理すること、天然資源の利用を減らしていくこと、また使用済み資源を循環的に利用することは目標12 の中心的な課題です。こうした課題を解決し循環経済を実現するには、企業など生産者が「つくる責任」を、そして消費者が「つかう責任」を果たすことの双方によって初めて持続可能な生産消費体制が確保できると言えます。また、自治体による途上国への国際協力は今後も重要です。その際には、生ごみの堆肥化のために現地の土地に存在する発酵菌を利用するように(「さらに学びたい人へ」参照)、一律にゴールの達成を目指すのではなく、それぞれの地域にあったやり方を模索することが大切です。「つかう責任、つくる責任」をグローバルに広げていくためには、地域の課題や実状にあわせて目標をより具体的に設定し、解決を目指すローカリゼーション(現地化)を行うことがカギとも言えるでしょう。日本の自治体による国際協力は、途上国の都市がごみ問題に立ち向かうためだけでなく、先進国も途上国も地球全体で循環する社会を実現する重要な一歩となっています。

※この記事の内容および意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式意見を示すものではありません。
さらに学びたい人へ
  • 北九州市の取組み事例

①インドネシア・スラバヤ市――生ごみコンポストの普及

一般廃棄物の約半分を占めるのは生ごみです。北九州市は、途上国で生ごみの堆肥(コンポスト)化によって生ごみの発生量を抑え、都市のごみ全体の量を減らす取組みを2000年代初めから行ってきました。インドネシアのスラバヤ市では、北九州市の協力によってコンポスト事業の実施後、2005年から5年間で最終処分場に搬入されるごみの量がおよそ30%削減されました(IGES 2018)。また一般家庭でのコンポスト化も普及し、できあがった堆肥は家庭菜園やガーデニングなどに使われ、市内の緑化にも役立ちました。この生ごみコンポスト化事業は、北九州市の協力のもと、その後スラバヤからインドネシアの他の都市、タイなど他国の都市にも広がっていきました。

この取組みで用いる手法の特徴は、現地にあるもので作ることができる、しかも生ごみを短期間・低コストで悪臭や廃液を出さずに堆肥化できる、というところです(IGES 2009)。コンポストには生ごみを発酵させるための発酵菌が必要です。この手法はお米を食べる東南アジアの地域であれば米ぬかともみ殻、ラテンアメリカであればトウモロコシの粉など、発酵菌を現地で採取して培養します(高倉, n.d.)。日本発の堆肥化の技術を用いながら、お金をかけずに現地にあったものを利用して、途上国の都市のごみ問題の解決に貢献しています。

②カンボジア・プノンペン都――廃棄物政策策定支援 他にも、北九州市はカンボジアの首都・プノンペン都の廃棄物管理や収集運搬、ごみの分別や環境教育といった住民の啓発運動などに協力しています。北九州市は、プノンペン都の廃棄物政策策定への協力の一環として、住民によるアクションプランの作成を支援しました。プノンペン都からは副知事や地区の区長、村長などが北九州市を訪れ、市民によるごみの分別や出し方を見学しました。廃棄物処分場の管理などの技術協力もありますが、こうした住民活動や環境教育などソフト面の取組みもリサイクル推進や廃棄物量の削減に非常に重要です。また、住民を巻き込んで啓発を行うことで、事業が終了した後でも現地での活動が継続されるよう工夫されています。支援する都市の現場を重視しながら、北九州市が長年培ってきた経験を生かした取組みが行われているのです。現在、新型コロナウイルスの影響で直接現地での交流はできませんが、海外の都市との協力関係は続いています。

  • 地球環境戦略研究機関(IGES)(2018)「持続可能な社会への挑戦――北九州市とアジア都市との連携IGES Discussion Paper. 自治体同士の国際協力について、特に北九州市の取組みをさらに知りたい方におすすめです。
  • 小島道一(2018)『リサイクルと世界経済 貿易と環境保護は両立できるか』 中公新書. ペットボトルなどリサイクルできる資源は日本国内だけでなく海外へ輸出されています。廃棄物貿易、国際的なリサイクルの現状と課題についてさらに学びたいひとにおすすめの一冊です。
写真の出典
  • すべて北九州市環境国際戦略課 提供
参考文献
北九州市の取組みに関するインタビュー協力
  • 高倉弘二氏(髙倉環境研究所 代表)2021年10月13日実施。
著者プロフィール

佐々木晶子(ささきあきこ) アジア経済研究所研究マネジメント職。2013年入所。地球環境戦略研究機関(IGES)客員研究員(2021年4月~11月)、国連社会開発研究所(UNRISD)客員研究員(2019年11月~2021年3月)として、脱炭素社会に向けた公正な移行(Just Transition)について自治体レベルでの取組みに焦点を当て研究を行ってきた。「脱石炭がもたらすもの――地域社会・気候変動・雇用」IDEスクエア(2020年9月)など。