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コラム
新型コロナウイルス感染拡大の中で、各国政府は感染拡大防止に注力していますが、移民はその政策対象からこぼれ落ちがちです。コロナ禍にある世界各国での移民の現状を報告していきます。
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第9回 インド――そしてまた村に誰もいなくなった? / 辻田 祐子 時計の針を新型コロナウイルス感染症パンデミック以前に戻そう。国連統計によれば、インド出身の移民は約1751万人(2019年)にのぼり、インドは世界最大の移民送出国であった 。インドはまた、海外からの送金受取額が約833億ドル(2019年)で世界最大の送金受け取り国でもあった 。 2021/05/19
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第8回 新型コロナ禍下の中南米移民――「3つの流れ」の現況 / 上谷 直克 2021年1月14日の夜半、米国を目指す3000人ほどの移民キャラバン(Caravana de migrantes)がホンジュラス第2の都市サン・ペドロ・スーラを出発した。これは新年早々から活発化したWhatsAppやFacebookでの情報交換を通じて組織されたもので、隣国グアテマラとの国境に到達する頃には約9000人にまで膨れ上がった。 2021/04/15
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第7回 シンガポール――移民労働者への新型コロナウイルス感染拡大と市民社会 / 石井 由香 シンガポールは、外国人が人口の約4割を占める、高度人材から半熟練・非熟練労働者にいたるまで移民の労働力に大きく依存する国である。2020年のコロナ禍の下での状況について注目されるのは、移民労働者が住むドミトリー(宿舎)においてクラスターが多数発生し、国内感染者の大多数が移民労働者という状況に至ったことである。 2021/03/08
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第6回 アジア移民ハイウェイと新型コロナウィルス / 松尾 昌樹 湾岸アラブ諸国(クウェート、カタール、バハレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーン)の6カ国は、アメリカやEUと並んで世界最大の移民受け入れ地域の一つである。国連人口部門の移民統計によれば、2019年の全世界の移民人口は2億7164万人で、湾岸アラブ諸国はその11%の約3000万人を吸収している。 2021/02/01
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第5回 台湾――コロナ禍は家庭介護における外国人労働者・雇用主・仲介業者の関係改善の転機になるか / 鄭 安君 台湾では新型コロナウイルスの感染が比較的抑えられており、市民の日常生活もコロナ禍前に戻ったようにみえる。しかし、水際対策で外国人の上陸制限や強制性のある在宅隔離・在宅検疫の実施が継続されているため、外国人労働者は海外から入りにくい状態が続いている 。一方、コロナ禍による景気減速で外国人労働者の雇用を減らす製造業者がいるものの、対人サービスである介護労働の分野における外国人労働者への雇用需要は景気の変動に影響されにくい。本稿はこうした状況に注目し、仲介業者と労働者へのインタビューを通して、コロナ禍下での外国人介護労働者・雇用主・仲介業者の動きおよび関係変化について考察する 。 2020/12/15
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第4回 沙漠の国のエクソダス――コロナ禍に揺れる湾岸アラブ諸国の外国人労働者たち / 堀拔 功二 人種や国籍、社会階級は新型コロナウイルスの感染に関係しない。しかしながら、新型コロナウイルスの流行は、とくに社会的・経済的に弱い立場の人々をより苦しい状況に追い込んでいる。湾岸アラブ諸国では、UAEにおいて2020年1月末に最初の感染者を確認して以来、感染者および死者数ともに増加の一途を辿っている。2020年10月26日時点では、サウジアラビア、クウェート、バハレーン、カタル、UAE、オマーンの6カ国で約91.6万人の累計感染者数をかぞえ、死者数は8235人となった(図1・2) 。これらの国々では、国民・外国人別の罹患数は発表されていないものの、人口比で単純に考えた場合、相当数の外国人が新型コロナウイルスに感染したものと考えられる。また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が制限されて景気が悪化し、多くの外国人労働者が解雇された。 2020/11/27
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第3回 コロナ禍が日本の介護領域における移民に与えた影響 / 佐々木 綾子 日本における「外国人」人口は、2019年末現在で293万人を超えた 。近年、介護領域では「外国人」(以降、「移民」とする)に対して様々な「入口」が設けられ、とりわけアジアからの移民の受け入れを行ってきた。厚生労働省によれば、2025年には約55万人の介護人材が不足すると推定されている 。本稿では、労働力不足が慢性化した介護領域において、整合性なく増加し続けてきた移民の入口を概観し、日本の介護を担うに至った移民たちに対してコロナ禍が与えた影響をみていきたい。
2020/10/29 -
第2回 サウジアラビア――コロナ禍が直撃する移民労働者の生存戦略 / 石井 正子 「ソーシャル・ディスタンス」この言葉は、新型コロナウィルスの時代になって、日本に定着し始めた。だが、それが蔓延する前から「国籍別のソーシャル・ディスタンス」を実践してきた社会がある。湾岸アラブ諸国である。
2020/09/24 -
第1回 湾岸アラブ諸国のエチオピア人労働者――脆弱な労働環境のなかで / 児玉 由佳 エチオピアは、湾岸アラブ諸国に多くの出稼ぎ労働者を送り込んできた。特にサウジアラビアには国連のデータによると、15万人のエチオピア人の移住者がおり、アメリカへの移住者22万人に次いで多い 。公式データでは捕捉できない非正規移民も多く、2017年3月の時点でサウジアラビアには50万人のエチオピア人移民がいるという報告もある 。ただし、サウジアラビアは、世界各国から多くの移民労働者を受け入れているため、エチオピア人のプレゼンスは必ずしも高くない。サウジアラビアに居住する外国人総数のなかでエチオピア人は1.2%を占めるにすぎず、国別では15位である 。 2020/08/31