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朝鮮の対南政策の転換――「特殊な関係」から「敵対的な二国家」へ
The Changes of DPRK’s Policy toward South Korea: From “a Special Interim Relationship” to “the Two States, the Most Hostile toward Each Other”
PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/0002001491
2025年8月
(5,546字)
「統一」の否定
2023年末、朝鮮労働党中央委員会第8期第9回全員会議において、金正恩総書記は韓国との統一は「成就しえない」と述べ、「北南関係はもはや同族・同質関係ではなく、敵対的な2つの国家、戦争中の交戦国の関係である」と宣言した(『労働新聞』2023年12月31日)。この発言は、朝鮮半島の南北関係における歴史的な転換点といえる。というのも、従来の「南北統一」路線の否定は、金日成・金正日の代から継承されてきた国家的悲願の事実上の放棄を意味するからである。
この宣言を受けて、翌2024年初めからさまざまな動きが見られた。朝鮮人民軍総参謀部は1月5日付「報道」で海上実弾射撃訓練の実施を伝えた際、南北の境界線を「国境」と表現した(『労働新聞』2024年1月6日)。また「わが民族同士」などの対南宣伝サイトが削除され、南北の関係改善や経済交流などのための法律や関連団体・機関も廃止された1。
それだけでなく、「統一」や「同族」を象徴する事物の排除も進められた。1月15日の最高人民会議第14期第10次会議で金正恩は、「わが共和国の民族の歴史から『統一』『和解』『同族』という概念自体を完全に除去すべきである」と主張した。その例として、「8000万同胞」といった同民族としての韓国を含む表現を使用しないことや、憲法中の「北半部」「自主、平和統一、民族大団結」という表現を削除すること、平壌市にある祖国統一三大憲章記念塔の撤去2などをあげた(『労働新聞』2024年1月16日)。翌16日には、朝鮮中央テレビで毎晩放送される天気予報のオープニング映像の地図でも変更が確認された。15日までは対象である朝鮮半島全域が明るい黄緑色、外国である日本や中国は暗い緑色、という形で色分けされていたが、16日以降は朝鮮半島北部の統治領域のみが明るい黄緑色で示され、南部の韓国領は中国などと同様の暗い緑色で表示されるようになった。南との分断だけでなく、一主権国家としての領土を視覚的に強調するものであるといえる3 。
こうした方針転換やそれに伴う動きは、2023年末から突然始まったわけではない。後述するように、その兆候と思われる変化は以前からさまざまな面において見られた。このことを踏まえ、本稿では、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の対南政策がなぜ、どのような経緯で転換されたのかを振り返り、その背景と今後の展望について考察する。
「特殊な関係」としての南北関係の形成
南北関係は、冷戦期において互いの正統性を認めない関係から始まった。1970年代初めの米中接近を背景に南北の対話が始まり、1972年の「南北共同声明」で「自主・平和・民族大団結」という統一3原則が掲げられたが、統一の形態やその過程をめぐる意見の相違が解消されず関係は停滞した。その後韓国が1988年にソウル・オリンピックを成功させ、ソ連や中国をはじめとする社会主義圏との関係改善を図るなど国際的な立場を強化するようになると、朝鮮は劣勢を強いられていった。そうしたなか、1991年4月に韓国が国連加盟の意向を表明すると、これまで「2つのコリア」を認めず南北で1つの国家として国連に加盟することを主張してきた朝鮮も政策を転換して翌5月に加盟の意思を示し、同年9月にそれぞれが「別国家」として加盟を承認された。
1991年12月には「南北間の和解と不可侵および交流・協力に関する合意書4」(「南北基本合意書」)が締結され、南北関係は「国と国との関係ではない、統一を志向する過程において暫定的に形成されている特殊な関係」と位置づけられた。これにより、両者は互いの政権を認め、共存する「特殊な関係」へと移行した。その後も両者間の対立による緊張の高まりも見られたが、「特殊な関係」であるという前提は否定されなかった。
今回の金正恩の政策転換はある意味では現状の追認であり、実質的な大変革をもたらすような性格のものではない。しかし、これまで一貫して掲げられてきた「統一」目標を否定・放棄したという意味で根本的な転換といえる。なぜ金正恩政権は対南政策の転換に踏み切ったのであろうか。
「国家核武力完成」から戦術核開発へ
政策転換を可能にした最大の理由として、第1に、安全保障上の前提となる核武装化の実現・強化が挙げられよう。金正恩政権は核・ミサイル開発を進め、2013年から2017年にかけて4回の核実験を実施しただけでなく、2017年11月29日には新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」型の試験発射に成功した。同ミサイルはアメリカ本土全域を射程に入れているとされ、金正恩はこの成功をもって「国家核武力完成」を宣言した。
2017年の「国家核武力完成」は、アメリカ側からするとそれ以前までの核の脅威とは質的に異なるものである。朝鮮は先述の1980年代に生じた劣勢を挽回するべく、アメリカからの体制保証を取り付けるため核をカードに直接交渉を図ってきた。朝鮮が2005年に核保有宣言をしても、アメリカは朝鮮を「核保有国」および首脳間直接交渉の相手とみなさなかった。しかし今回朝鮮が対米核報復能力を持ったことで、アメリカは同国を実存的な脅威とみなすようになり5、朝鮮の対米交渉力が増大したのである。こうして安全保障上以前よりも有利な立場に立った朝鮮は、韓国・アメリカとの首脳会談を実現した。特に米朝首脳会談の実現は、朝鮮の歴代指導者が果たせなかったことである。そして具体的な成果をあげられれば政権にとってプラスになる一方、仮にそれがかなわなかったとしても、核兵器を増強することで、自らの体制を核で守るとともに正統性を強化する、ということが可能となった。
朝鮮半島をめぐる緊張が高まるなか、2018年の新年の辞で金正恩は、国家核武力がアメリカの核脅威に対する強力な抑止力であると述べる一方、韓国に対しては対話を呼びかけた。南北関係改善を訴えていた文在寅政権(2017~2022年)がこれに応じたことで、朝鮮は韓国を仲介役として6アメリカとの交渉に向かうこととなる。しかし、非核化の前に体制保証や経済制裁解除を求めた朝鮮と、非核化を最優先とするアメリカとの間の溝は埋められず、米朝交渉は最終的に決裂した。
これを受けて金正恩は核開発の強化を打ち出した。具体的には、アメリカに対する抑止力を強化するだけでなく、韓国に対する核攻撃能力としての戦術核の開発にも力を入れるようになった。2021年1月の党大会での演説で、核兵器の「小型・軽量化、戦術兵器化」を通じた戦術核兵器の開発や、大型核弾頭の持続的生産を指示した(『労働新聞』2021年1月9日)。また、同演説では「核先制」にも言及しており、2022年9月の最高人民会議第14期第7回会議で採択された法令「朝鮮民主主義人民共和国核武力政策について」によって、一定の条件下での核の先制使用が法的に可能となった7。さらに、同会議の施政演説で金正恩が「核はわれわれの国威であり国体8であり、共和国の絶対的力であり、朝鮮人民の大きな誇り」(『労働新聞』2022年9月9日)であると述べていることは、体制にとっての核が抑止力以上の意味を持つことを示している。
文在寅政権への失望
金正恩が対南政策の転換に踏み切った第2の理由として、韓国の文在寅大統領に対する「失望」が挙げられる。先述のように文在寅大統領は朝鮮側の呼びかけに応じ、南北関係の改善と米朝の仲介を試み、「板門店宣言」(2018年4月27日)や「9月平壌共同宣言」(同年9月19日)を通じて経済協力や軍事的緊張状態の緩和、「朝鮮半島の非核化」などの推進を図った。特に、9月の訪朝時に文在寅が韓国の大統領として初めて朝鮮の住民に向け直接演説を行ったことは、彼が金正恩から破格の待遇を受けたことを示している。しかし、文在寅は仲介役として金正恩の意向をトランプに伝えながら結果的に非核化や関係改善のための利害調整をするという役割を十分に果たせず、前のめりの姿勢が逆に米朝の不満を招いた9 。朝鮮が求めていた南北経済交流のための開城工業団地や金剛山観光事業の再開については、文在寅が経済制裁の例外とするようアメリカに求めたものの拒否されたことで実現しなかった。加えて、朝鮮が中止を要請していた米韓合同軍事演習が再開されただけでなく、「2020~2024年国防中期計画」で韓国の軍備増強の方針が示され、朝鮮側の失望と不満が強まった。
以降、朝鮮の対南姿勢の硬化は鮮明になった。2019年10月に金剛山観光地区を視察した金正恩は、同地に建てられていた韓国側施設の撤去を指示した際に「国力が弱い時に他者に依存しようとした先任者らの依存政策は極めて誤っていた」と批判した(『労働新聞』2019年10月23日)。朝鮮は2020年6月9日に「対南事業を対敵事業に転換」するという方針の下で南北通信連絡線を遮断し、同16日には板門店宣言を受けて設置された南北共同連絡事務所も爆破した。
2021年1月の第8回党大会で改正された党規約の修正でも対南政策に関する文言に変化が見られた。序文の統一に関する箇所では「民族大団結」や「平和統一」といった言葉は残されているものの、「わが民族同士で力を合わせて」という文言が削除される一方、「強力な国防力で根源的な軍事的脅威を制圧し、朝鮮半島の安全と平和的環境を守護」という文言が付記された。南側との連帯という方針が弱められ、自らの核抑止力を前面に押し出す形の変更であるといえる10。
文在寅は任期中に南北関係に関する具体的な成果を出せず、次の尹錫悦政権の対朝鮮強硬姿勢11で両者の関係はさらに悪化した。2023年末の党中央委員会第8期第9回全員会議で金正恩は、いかなる政権でも「『吸収統一』『体制統一』を国策とする」韓国とは統一を成しえないと断言した。翌2024年には金正恩の妹で党副部長の金与正が尹錫悦だけでなく文在寅をも名指しで批判し、両者に対する不満を改めてあらわにした。
転換に向けた複合的な論理形成
「国家核武力完成」と文在寅政権に対する失望を契機として、朝鮮は対南政策を転換していくが、それは複合的に進められていった。先代までの路線を否定する形での転換であるため、韓国やアメリカとの関係を含む国際情勢を見極めながら、徐々にそれが可能となるような論理の形成を進めていったとみられる。その様相を3つの観点から整理していきたい。
第1に、「国家」としての自己規定の強調である。2019年の憲法改正により金正恩が法的に「国家元首」となり、朝鮮が「唯一無二の国家実体」であるという文言も新たに追加された12。また、「わが国家第一主義13」が強調されるようになったことも注目に値する。従来用いられていた「わが民族第一主義」を「昇華発展」(『民主朝鮮』2019年3月26日)させたものだとされているが、「統一」の対象としての南側を包摂する「民族」よりも、それを排除する「国家」を強調した言葉遣いになっているからである。
第2に、文化流入の拒否を通じた敵対的関係の強調がある。2020年12月に採択された「反動思想・文化排撃法」では「傀儡」(韓国を指す)や「敵対国」の「思想文化伝播罪」などが規定されており、韓国の文化的影響力14の排除が目的のひとつとなっている15。同様に、2023年1月19日に制定された「平壌文化語保護法16」では、「傀儡の言葉使用罪」(58条)・「傀儡の言葉流布罪」(59条)の最高刑を死刑と明記している。韓国との文化的同質性を明確に否定しているといえよう。
第3に、韓国を「外国」として扱う姿勢が顕著になったことが挙げられる。2023年7月1日、金剛山の観光事業を担っていた韓国・現代グループの会長の訪朝計画が報じられたことについて、朝鮮の外務省局長が訪朝を許可できないとする談話を発表した(朝鮮中央通信2023年7月1日発)。韓国との関係に関して、従来の対南窓口であった祖国平和統一委員会や朝鮮アジア太平洋平和委員会17ではなく、外務省が反応を示したことは、韓国を「外国」として扱う姿勢を表したものといえる。また、こうした扱いの変化に伴い韓国に対する呼称も変化した。これまでの「南朝鮮」という呼び方に対し、2023年12月以降は「大韓民国18」、また2024年2月以降は「傀儡韓国」も用いられるようになった。こうして、韓国を「外国」と位置付ける姿勢が鮮明となったのである。
今後の展望
朝鮮による対南政策の転換は、2017年の「国家核武力完成」と対南、対米関係をはじめ朝鮮を取り巻く国際環境の変化という現実に即したものであった。そして2024年に朝鮮は、本稿冒頭で述べたような対南断絶策を進めたほか、10月15日には韓国と連結していた道路・鉄道を爆破して完全に閉鎖するなど(朝鮮中央通信2024年10月16日発)、政策転換に沿った行動を見せた。
この政策転換は、国際社会や東アジアの情勢をすぐに変えるものではないが、不可逆的なものであるならば、朝鮮は韓国の内政や外交政策に左右されることなく、「核保有国」として独自の対外政策をさらに推進していくと思われる。朝鮮への強硬姿勢を見せた尹錫悦が「非常戒厳」宣布により弾劾され、それにより新たに大統領に就任した李在明は対北対話の再開を訴えているが、従来の「特殊な関係」に基づく対話は困難な状況にある。朝鮮は今後も核開発を進めながら、アメリカと対立するロシアなどとの関係強化に注力し、東アジアを含む国際情勢の不確実性を一層深化させていくと考えられる。
写真の出典
- Cheongwadae / Blue House(Korea Open Government License Type I)
参考文献
- 宮本悟(2024)「南北朝鮮は別国家?:北朝鮮が『統一』の目標を捨てて、新たな法整備に着手」ニッポンドットコム.
- 김병로, 김학재, 송원준, 조동준, 최은영, 이정철(2022)『김정은 집권 10년, 북한주민 통일의식』서울대학교 통일평화연구원(キム・ビョンロ、キム・ハクチェ、ソン・ウォンジュン、チョ・ドンジュン、チェ・ウニョン、イ・ジョンチョル[2022]『金正恩執権10年、北韓住民の統一意識』ソウル大学統一平和研究院).
- 이무철(2024)「북한의 대남·통일정책 전환 분석: ‘우리 국가제일주의’를 중심으로」『현대북한연구』27(1), 54-90(イ・ムチョル[2024]「北韓の対南・統一政策転換の分析――『わが国家第一主義』を中心に」『現代北韓研究』27(1), 54-90).
著者プロフィール
郡昌宏(こおりまさひろ) アジア経済研究所地域研究センター動向分析研究グループ研究員。修士(国際学)。専門は朝鮮半島地域研究。
注
- 具体的には、6.15共同宣言実践北側委員会、祖国統一汎民族連合北側本部、民族和平協議会など(2024年1月12日)、祖国平和統一委員会、民族経済協力局、金剛山国際観光局(同1月15日)、北南経済協力法、金剛山国際観光特区法とその施行規定、北南経済協力に関連する合意書(同2月7日)、祖国統一民主主義戦線(同3月23日)などが廃止された。
- 修正後の憲法の全文は、2025年7月時点でまだ公表されていない。一方、祖国統一三大憲章記念塔については、衛星画像の分析から、2024年1月23日までに撤去されたとみられる(「NKニュース」2024年1月23日)。
- この他に、平壌市内の「統一駅」が、一旦「駅」とのみ表示されるようになった(『産経新聞』電子版2024年2月20日)。その後、10月に訪朝したロシア人観光客のYouTubeの動画から「牡丹峰駅」に変更されたことがわかった。また国歌においても、朝鮮半島全体を示す「三千里」という表現が削除され、「三千里の美しいわが祖国」が「この世界の美しいわが国」となった。
- 朝鮮側の名称は「北南間の和解と不可侵および協力・交流に関する合意書」である。
- 2018年2月にトランプ政権が発表した「核態勢の見直し(NPR)」では、朝鮮が数カ月以内に核ミサイルでアメリカを攻撃できるようになる可能性を指摘している。さらに2019年1月に発表した「ミサイル防衛の見直し(MDR)」では、朝鮮が核実験やICBM試験発射の実施を通じて、核ミサイル攻撃でアメリカ本土を脅かす能力を持つに至ったと認めている。
- 2018年4月27日に南北首脳が単独で会話を交わした際、金正恩は文在寅にアメリカとの会談の準備についての助言を求めた(『朝鮮日報』電子版2022年4月26日)。
- それ以前の法令「自衛的核保有国の地位をより強固にすることについて」(2013年4月1日採択)では、核の抑止力・核報復手段としての役割を重視しているように読み取れる。
- この発言に先立ち、2022年8月18日付の談話で金与正が初めて「核は国体」と言及している。
- 金正恩はトランプに送った親書に、非核化問題の議論は文大統領ではなくトランプと直接行いたいとして、文在寅の関与に対する拒否感を示した。また「9月平壌共同宣言」の付属合意書「板門店宣言軍事分野履行合意書」の採択をめぐっては、米韓両政府の間での事前協議が不十分であったため、同合意書について知らされたポンペオ米国務長官が韓国の康京和外相に不満を表明した(『中央日報』日本語版2018年10月12日)。
- イ・ムチョル(이무철2024)は、朝鮮は韓国との「敵対的共存」を維持する南北関係の現実を認めながら、対南政策転換を通じて自らの核武力による平和追求政策の正当性を確保しようとしていると分析している。
- 尹政権は「核協議グループ」(NCG)の新設や42年ぶりの米戦略原潜の韓国寄港など、米韓同盟を通じた核抑止力の強化を推進することを鮮明にした。また2023年2月に公表した国防白書では北朝鮮を「敵」と記述し、同12月のNCGの第2回会合の共同声明では、朝鮮が核攻撃をするなら「政権終末」につながると警告するなど、対決姿勢を強めた。
- 金正恩は2021年1月の第8回党大会で、2018~2019年にかけての朝米首脳会談を通じて「共和国の戦略的地位を満天下に」示したと述べている。
- 「わが国家第一主義」は2017年11月20日の『労働新聞』で初めて登場し、2019年の金正恩の新年の辞を契機として頻繁に現れるようになった。それに先立ち、2018年の9月10日にも金正恩が「世界が公認するわが共和国の戦略的地位と国力に相応しながらも、わが人民の強く勇ましい革命的気象(筆者注――原文ママ)と志向に合致する闘争の旗が、まさしく、わが国家第一主義」であると述べたとされる(『朝鮮新報』日本語電子版2022年10月9日)。
- ソウル大学統一平和研究院が2022年に発表した脱北者意識調査の報告によると、2011~2019年にかけて各年平均80%以上の脱北者が韓国文化に一度以上接した経験があることがわかった(김병로, 김학재, 송원준, 조동준, 최은영, 이정철2022, 95-6)。
- 2021年9月に採択された「青年教養保障法」でも第41条(青年たちがしてはならない事項)に、「われわれ式ではない」踊りや言葉遣いなどを挙げている。
- 使ってはならない韓国の言葉の例として、以下の条文で「オッパ(女性が男性に使う『お兄さん』で、韓国では血縁関係だけでなく、親密な間柄でも用いられる)」と「ニム(様)」を挙げている。「公民は、血縁関係ではない青春男女の間で《オッパ》と呼んだり、職務の後ろに《ニム》を付して呼んだりするように、傀儡式の呼び方をまねる行為をしてはならない。(……)」(第19条)。また排除の対象として日本語由来の言葉も含まれている(第41条など)。
- 党統一戦線部傘下の外郭団体で、日本やアメリカとの民間交流のほか、金剛山観光事業や開城工業団地事業などの南北交流・協力関連の業務も担当していた。
- 2023年7月10日から談話や報道で二重鉤括弧付きの「《大韓民国》」が現れるようになり、2023年12月3日の『労働新聞』を最後に「《大韓民国》」は使われず、括弧なしの「大韓民国」が登場するようになった。宮本悟(2024)は、朝鮮の文献において二重鉤括弧は原文そのまま、あるいは「南で使われているだけ」といった皮肉を示していると指摘する。そして二重鉤括弧の外れた「大韓民国」が公式文献に出てきたことをもって、韓国を別国家と規定することが党の最高幹部たちの間で了承されたと分析している。
この著者の記事
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