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コラム

おしえて!知りたい!途上国と社会

第7回 途上国についてどのように調べたらいいですか?(高校2年生)

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050617

2018年11月

画像:質問

学校での課題で、途上国のことを調べています。

どのように調べると、知りたいことにたどり着きやすくなりますか?

質問ありがとう! インターネットや図書館の検索システムを使うと、たくさんの関連ウェブページや本がヒットすると思います。そこから多くの知識や情報を得ることができますが、完全に理解するためには他に知らなければならないことがあったり、筆者によって論点や分析方法、結論が違ってたりしていて、結局どう整理したらいいのか途方に暮れることもあるのではないでしょうか。

たとえば、ここ40年間の中国経済の成長要因を調べたい場合、どうしたらよいでしょうか? インターネットで「中国 成長 要因」を検索すると、多くのウェブページがヒットしますが、「計画経済」や「国有企業改革」などのなじみのない言葉が出てきたり、成長要因として、中国企業の役割を重視するものと、外資系企業の役割を重視するものが混在したりすると思います。知識や情報は、他の知識や情報ともつながり合いながら、体系として存在しているので、検索キーワードや本の題名でヒットしたものを、すぐには消化しきれないことがあります。

そのため、回り道に感じるかもしれませんが、関連することがらの骨格や全体像を把握したうえで、それを構成する部分部分の知識や情報を探した方が、最終的に知りたいと思っていることにたどり着きやすくなります。「木」にたとえると、まずは、「幹」にあたるところを把握できると、その先の専門的な話題としての「枝」にあたるところや、さらにその先の最新の話題、あるいは、詳細な話題としての「葉」にあたるところを理解しやすくなります。中国経済の成長要因の例で言えば、経済の仕組みの自由化とその影響を理解することが「幹」になります。

写真:「幹」から「枝」や「葉」を辿ろう

それでは、途上国のことを調べる場合、具体的にはどのようなものを読んだらよいのでしょうか? ある国・地域のことを知りたいのであれば、たとえば、『モンゴルを知るための65章』や『現代中国を知るための40章』といった、明石書店の「~を知るための…章」というシリーズがあります。タイトルにもよりますが、歴史から政治、経済、社会、文化まで、その国・地域のなりたちについての基礎的な知識を得ることができます。これによって、インターネット上の記事やより専門的な本を理解するための土台作りに役立ちますし、次に何を読んだらよいのかの当たりをつけられるようになります。

ある国・地域の全体像を理解した後、具体的な統計データを知りたいときは、『世界国勢図会』(矢野恒太記念会、各年版)を見てみてください。人口や経済、産業、貿易、物価を始め、さまざまな切り口の数字を他の国・地域と比較しながら概観することができます。ある国・地域を知る、ということは、他と比べた違いを浮き彫りにすることでもありますので、まずは違いを見つけ、そして、その理由を考えてみてください。日本と比べることで、日本のことをさらに理解するきっかけにもなります。また、他にもどんな統計データがあるのか、ということに興味を持ったら、本書がどんな統計書を引用しながら作成されているのかを確認してみてください。世界中にさまざまな統計書があることを発見すると思います。

以上、1つのシリーズと1つの本を紹介しましたが、どのように調べたらよいかは、ぜひ、学校や図書室の先生にも相談してみてください。また、もっとも身近な本としては、教科書や参考書もぜひ振り返ってみてください。専門的な知識を吸収するための基礎的なことがらが、体系的に整理されています。

「木」の「幹」がどこかを考え、そこからたどる、というのは、一見回り道のようで、実際には近道になります。何かを調べるというのは、順を追って理解していかなければならないことも多く、どうしても時間がかかりますが、ぜひチャレンジしてみてください!

回答・開発研究センター 木村 公一朗(きむら こういちろう)

【連載目次】

おしえて!知りたい!途上国と社会