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コラム

おしえて!知りたい!途上国と社会

第5回 発展途上国と先進国を分ける基準って何ですか?

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050475

2018年9月

画像:質問

どうやって発展途上国と先進国を区別するのですか?

よく使われている明確な基準はありますか?

「発展途上国」は経済が「発展」する「途上」にある国であって、「先進国」は経済発展によって経済が世界でも「先進」的な水準に達している国……というと、なんとなく分かったような、分からないような感じですね。このふたつの線引きはあいまいで、ただひとつの基準はありません。国連や世界銀行は「発展途上国」にあたる定義をそれぞれ持っていますし、研究者もそれぞれに「先進国」や「発展途上国」の基準を示してから経済発展の分析を行うことがよくあります。

それでは、発展途上国と先進国を分ける時によく使われる基準がないかといえば、実はあるんです。OECD(経済開発協力機構)が発表している「ODA(政府開発援助)受け取り国リスト」がそれです。OECDは「経済的により進んだ国が経済発展途上の国々を支援するために全力で協力する」ことを目的にした国際的な機関で、「先進国クラブ」と呼ばれることもあります。

OECDでは3年毎に「ODA受け取り国リスト」を発表していて、このリストにのっている国は、ODAを受け取る資格があります。これらの国は、経済発展のための援助を受ける側ということで「発展途上国」と呼んでよいでしょう。最新のリストは2018-2020年を対象にしています。リストにのっているのは、下の2つの基準のどちらかに当てはまる国々です。

  1. 世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々(2016年時点の一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以下の国々)
  2. 国連によって後発開発途上国(Least Developed Countries)に分類される国々(一人当たり国民所得(GNI)、人的資源指数(HAI)、経済脆弱性指数(EVI)によって判断される)    

ちなみに、世界銀行による分類では、発展途上国は「低所得国」「下位中所得国」「上位中所得国」の3つに分かれています。低所得国はGNIが1,005米ドル(約11万円)以下の国、下位中所得国は1,006米ドルから3,955米ドル(約43万5,000円)までの国、上位中所得国は3,996米ドルから12,235米ドル(約134万5,000円)までの国となります。国連によって「後発開発途上国」に分類される国のほとんどは、世界銀行の分類では「低所得国」となります。

この分類にしたがうと、2018-2020年については「発展途上国と先進国の境界線は一人当たりGNIでみて12,235米ドル(約134万5,000円)」というのが答えになります。下の地図は、OECDのリストに基づいて発展途上国の分布を地図にしたものです。みなさん、これを見てどんなことが分かるでしょうか。

図:OECDのリストに基づく発展途上国の分布

図:OECDのリストに基づく発展途上国の分布

(出所)DAC List of ODA Recipients, Effective for reporting on 2018, 2019 and 2020 flowsより筆者作成。

回答・開発研究センター 熊谷聡(くまがいさとる)

【連載目次】

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