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コラム

中東カタルシス

中東に関してしばしば耳にするのが、事情が「複雑でよくわからない」という嘆きです。そうした中東事情に関しての見通しをよくするための交通整理を行い、少しでももやもやした気持ちを解消していただければと用意したのが本コラムです。本コラムを読んで中東に関する理解をより深めてほしいと思います。

  • 第4回 〈特別企画 中東諸国の近隣政策2〉スィースィー政権下のエジプトの近隣政策――安全保障・経済成長・水資源 / 土屋 一樹 2025年10月、エジプト東部のシャルム・エル・シェイクでガザ和平に向けた国際会議が開催された。スィースィー大統領は米国トランプ大統領と共同議長を務め、欧州・中東の20カ国超の首脳・代表が出席するなか、ガザ停戦合意の履行を求める宣言文書に署名した 。スィースィー政権は、米国、カタル、トルコとともにガザ停戦交渉を仲介してきた。エジプトはガザ地区と国境を接しており、ガザ紛争の鎮静化はエジプトにとっても大きな関心だった。紛争の長期化はシナイ半島の不安定化や紅海の混乱に繋がり、エジプトの治安を脅かす危機だと捉えられていたからである。現在のエジプトは、紛争状態にある国に囲まれている。ガザ紛争に加え、リビアとスーダンでも武力衝突が続いている。周辺国の紛争に対し、スィースィー政権はどのような対応をとっているのだろうか。また、どのような対外政策を展開しているのだろうか。本稿では、スィースィー政権の近隣政策を読み解く。
    2026/01/09
  • 第3回 〈特別企画 中東諸国の近隣政策1〉「抵抗の枢軸」の岐路――イランの安全保障はどこに向かうのか / 松下 知史 イランは長年にわたり、ヒズボラ(レバノン)、フーシ派(イエメン)、ハマス(パレスチナ)等の中東諸国の代理勢力を軍事的・経済的に支援し、「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークを構築・活用することで(IISS 2020)、自国の安全保障を確保してきた(図1)。これらのイスラーム主義武装勢力(非国家主体)とシリア・アサド政権(1971-2024)は、イランの支援の下で米国・イスラエルという共通の軍事的脅威に対抗するための「雑多な共同戦線」を形成し(溝渕 2024b)、中東地域におけるイランの政治的・宗教的影響力拡大を担ってきた(Seliktar and Rezaei 2020; Ostovar 2019)。 2025/12/22
  • 第2回 アサド政権崩壊後のトルコにおけるシリア難民──帰還の可能性についての考察 / ダルウィッシュ ホサム今井 宏平 2024年12月のアサド政権崩壊は、シリア紛争(シリア内戦)の展開とその地域的帰結において、画期的な転換点となった。その影響が最も顕著に見られたのは、世界最大規模のシリア難民を受け入れてきたトルコである。シリア紛争が勃発した2011年3月の翌月からシリア難民を受け入れてきたトルコには、最も多い時期で370万人以上の認定難民が存在していた。2025年8月時点でも、認定されたシリア難民が300万人以上、未認定の難民がおよそ100万人、さらに2023年までに約24万人がトルコ国籍を取得していた。アサド政権が崩壊して以降、シリアに戻ったシリア人は40万人ほどである。40万人という数字は、かなり多くの人数であることは確かだが、トルコに滞在するシリア人の規模から考えると、予想されたほど多くはない。すなわち、シリア人がトルコに逃れた主要因であったアサド政権が崩壊し、シリア紛争が終結したにもかかわらず、帰還の動きは一部に限られている。 2025/12/05
  • 第1回 PKKの解散は順調に進むのか――2009年との比較を通して / 今井 宏平 2025年5月12日、クルディスタン労働者党(PKK)が武装解除と解散を発表した。少なくとも双方合わせて4万人以上が亡くなるなど、1984年から約40年以上にわたりトルコ政府と熾烈な抗争を続けてきたPKKの武装解除と解散は、世界中で驚きをもって報じられた。クルド人はトルコ、イラク、イラン、シリアという4カ国に跨って居住しており、さらに、ヨーロッパを中心に多くのクルド人がディアスポラとして暮らしている。その事実に鑑みれば、PKKの武装解除のインパクトは中東地域にとどまらない大きなものとなることが予想される。 2025/10/03