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コラム
第8回 奥が深い古着の世界――ファッションから雇用、ゴミ問題、貿易紛争まで
Secondhand Clothing in Developing Countries: Fashion, Employment, Sustainability and Trade Disputes
PDF版ダウンロードページ:https://hdl.handle.net/2344/0002002075
2026年10月
(5,536字)
古着はどこに行くのか
古くなった服を資源回収に出したり、衣料品店で引き取ってもらったりすることは、私たちの生活の中の一部になっている。では、その古着はその後どのように処理されるのか。環境省の調査によると、資源回収された衣料品のうち約半分がウェス(工業用ふき取り布)や自動車のシートの中身になる反毛として利用されるなど、服としては再利用されていない。状態のよい残りの半分が古着として再び持ち主を探すべく、再び市場に回るのだが、衣料品店で回収されたものも含めて、古着の多くは海外、特に開発途上国に輸出されている1。
私たちが服を回収ボックスに入れた後、古着は多くの人の手にかかわるが、新しい持ち主のもとに届くということを通じて開発途上国の社会に様々な影響を与え、その結果、時には論争を引き起こしている。このコラムでは、まず私たちの手を離れた古着が世界をどのように流通しているのかを説明する。そして代表的な古着の行先であるアフリカを事例に、輸出される古着が現地でどのように扱われているのか紹介し、アフリカの社会、経済、環境に与えている影響について解説する。
古着の流通
古着の代表的な行先はアフリカだ。アフリカの都市では、市場や路上などいたるところで古着が中古のカバンなどとともに売られている(写真1、2)。私たちは無料で古着を提供することが多いが、アフリカの消費者に至るまでに回収、仕分け、輸送、流通のコストがかかるため、現地の店頭では値段がついている。アフリカの都市には、路上や露店で販売する人があふれている。彼らは、個人事業主として零細な商売をする人々で、政府に登録せずに事業を行うためインフォーマル・セクターと呼ばれる。企業による雇用が少ないアフリカではインフォーマル・セクターで働くことはごく一般的なことで、その中で、古着売りというのはよくみかける仕事の一つである。
アフリカの都市部ではSNSやオンライン・モールを使って買い物をすることが普及しているため、古着もオンラインで探して買うことができる。ケニアやタンザニアなど東アフリカでは古着はミトゥンバ(mitunba)、ナイジェリアではオクリカ(okurika)と呼ばれており、これらの言葉をネットで検索すると古着売りのSNSや動画をたくさんみつけることができる。また、西アフリカ最大の古着市場といわれるガーナのカンタマント市場では、古着をリメイクしたファッションショーも行われている(Googleなどでkantamanto fashion weekと検索されたい)。こうした写真や動画から、古着が日本と同じように個性的なファッションとして着られているだけでなく、普段着る服としても広く普及していることが分かる。
そのことは、アフリカを含む開発途上国に送られる古着の量が非常に多いことからも分かる。やや古い統計だが、2019年の世界全体の古着の輸出量は522万トンで、これは新品衣料品の輸出量(810万トン)の64%にあたる2。この輸出量には、輸入した古着を最終消費地に向けて再度輸出する古着も含まれるため、実際に供給地から消費地へ送られる古着の量よりも過大であるが、それでも相当な量の古着が輸出されていることが分かる。
アメリカの古着が日本に輸出されるように先進国間の貿易もあるが、多くの古着は、予想されるとおり、豊かな国から貧しい国へと輸出されるという明確な特徴がみられる。北アメリカ、西ヨーロッパ、日中韓などの所得の高い国から途上国への輸出量は、古着輸出の65%を占めている。また、一人あたりGDPが1万ドルよりも低くなると、古着輸入量が輸出量よりも多い国(純輸入国)が多くなり、2万ドルよりも高い国では逆に輸出量が輸入量を超える純輸出国となる3。
最も輸出量が多いのはアメリカ、次いでドイツ、イギリスで、日本は7位である。他方で、輸入量が最も多いのはパキスタン、インドで、アラブ首長国連邦(UAE)、マレーシアと続く(表1)。UAEとマレーシアは古着貿易の中継地となっており、輸出量も多く国内に残る量はそれほど多くない(ポーランドやカナダ、オランダも同様)。国内に流入する古着の規模をつかむためには、輸入量から輸出量を差し引いた純輸入量を求め、それをさらに人口で除した一人あたりの純輸入量もみるとよく分かる。図1は、一人あたり純輸入量を縦軸にとり、一人あたりGDPを横軸に示しているが、貧しい国(横軸でみて左に位置する国)ほど多くの古着を受け入れ、豊かな国ほど多く供出している(純輸入量が負になる)ことが分かる。
表1 古着の輸出入量(2019年)
古着が支える人々の暮らし
図1は、多い国では一人あたり5キログラム以上の古着を1年間で輸入していることを示している。後で説明するように、古着の輸入を実質的に制限している国があるが、実際には隣国から密輸されており、その輸出量が記録されていない場合があることに注意が必要である。その結果、隣国が輸入制限しているチュニジア(アルジェリアが輸入制限)、トーゴ、ベナン(ナイジェリアが輸入制限)などの純輸入量は実際よりも過大になっている。そういった問題は、隣国も含めて純輸入量を集計することで緩和されるので、地域別に一人あたり古着輸入量を求めると、サブサハラ・アフリカ地域の純輸入量が世界で最も多く、一人あたり年間1.2キログラムの古着を輸入していることが分かる。
比較として、衣料品のほぼ全量を輸入に頼る日本では一人あたり年間4.2キログラムの新品衣料を輸入している。これを日本の衣料品消費量として、アフリカの消費量はこれよりも少ないと考えると、消費される衣料品の3分の1程度は古着だと推測される。輸入古着の増加とともに主に中国製の新品衣料品の輸入も増えているが、それらよりも安価で品質がよい古着も多くあり、古着の輸入により特に低所得の人々は購入できる衣料品の選択肢が増えている。ただし、それらは必ずしも消費者の好みに合った服ではないという短所がある。体格、肌の色、服飾の歴史、ドレスコードなど、衣料のデザインは本来、国や地域によって違いがあるため、もし古着がこれほど多くなければ、今とは違う独創的なアフリカのトレンドが生まれていたかもしれない4。
経済活動という点からみると、古着の流通は都市部を中心に多くの雇用を生み出している。古着の小売りは店舗や仕入れの資金がなくても始められるため、学歴が低く貯蓄を持たない人々も始めやすい仕事である。貧しい人々や移民など経済的に困窮しがちな人々が古着の小売商として生計を立てているが、参入が容易なだけに競争は厳しく、また収入は不安定だ。同じデザインと品質の商品は他になく、また消費者の好みに合わないものも含まれる古着は、一点ごとに売れやすさが違うという特徴があるため、収入は仕入れの運にも左右される。卸売商の倉庫にある古着の山の中から、他の小売商と競争して売れやすい商品を選ぶことが商売の肝だが、そもそも、先進国から届く古着の梱包はその質にバラツキが大きく、売れやすい商品が集められないときもある。また、クリスマスの前や農作物の収穫直後などはよく売れるが、ほとんど売れない時期もある5。
リユースとサステイナビリティ
数年前から、チリのアタカマ砂漠やガーナの沿岸部などに、古着ゴミが山積みとなっている写真がメディアやネットで公開されている。報道によると、着用にたえないものや、売れ残ったものが処理されずに投棄された現場だとのことだ。品質に基づく大まかな選別は送り出し国(つまり先進国)や中継国でも行われるが、輸入国の市場に合わない商品が多く含まれているため、輸入されても市場に出回ることがない廃棄物が、途上国で発生している。これらが焼却などの適正な処理が行われれば問題ないが、廃棄物処理が十分に行われなかったり不法投棄されたりすることが多いのが、開発途上国の実態である。
十分に選別されない古着が途上国に送られる原因の一つは、その方が廃棄物処理のコストを抑えられるためである。先進国で高い賃金を払って選別し、ごみを処理するよりも、不法投棄によって処理費用を抑えられる途上国に送る方が全体としてコストを下げることができる。この問題は古着に限らず、家電や自動車部品(バッテリー)などのリユース品においても発生している。リユースのメリットの一つは、製品寿命を延ばして廃棄物を減らすことだが、古着が途上国に送られることによって廃棄による環境負荷が増えてしまうのであれば、リユースの効果は減り、逆に負荷が増える可能性もある。
他方で、まだ着られる服を捨てるよりもリユースすることで、新品の消費量を減らす(リデュース)という効果もある。先にみたように古着は普段着として新品と代替的に利用されているので、古着が手に入ることで開発途上国の人々が買う新品衣料の量は減っていると思われる。では、古着を出す先進国での消費はどうだろうか。もしリユースという選択肢があることで服を早く買い替えるようなことがあれば、新品衣料の購入量は増える。捨てるとなると躊躇するが、他の誰かに着てもらえるから、もしくはリユースは環境にやさしいから手放すという動機が存在すれば、リユースという仕組みは買い替えサイクルを短縮する。そうなると、リユースがリデュースに結び付くという効果も怪しくなる。
繊維産業をめぐる対立
古着については、もう一つ大きな論点がある。アフリカのルワンダは2016年に古着に対する輸入関税を大幅に引き上げたが、その理由は、国内の繊維産業を古着から保護するためだ。先ほど古着の輸入を制限している国があることを紹介したが、ルワンダに限らず、多くの国で輸入された古着が自国の繊維産業の成長を妨げていると考えている。ルワンダの関税引き上げに対して、古着の輸出大国であるアメリカは対抗措置をとった。アメリカは、アフリカからの輸入衣料品(新品)に対して自国の関税を免除しているが、その対象からルワンダを排除した(実施したのは第一次トランプ政権である)。この免税措置はいくつかのアフリカの国で輸出向けの繊維産業の成長をもたらしているが、ルワンダはその機会を失うという代償を払っても古着への高関税を維持しているのである。
古着が輸入国の繊維産業の成長を妨げているというはっきりした証拠はない。それは、古着輸入の増加と同時に中国製の新品衣料の輸入も増えたため、古着がなかったとしてもアフリカの国内市場向けの繊維産業は衰退していた可能性があるためだ。しかし、もし中国製衣料の輸入が急増していなかったとしても、古着の輸入によってアフリカでは繊維産業が成長する機会が奪われていたことを示す分析もあり、古着は繊維産業に悪影響を与えた可能性が高い6。
ただし、古着輸入を禁止して国内供給を回復したとしても、経済成長に対する効果はさほど大きくないと考えられる7。また、先にみたように、古着の流通は多くの雇用を生み出している。それにもかかわらず、ルワンダをはじめとする国々が古着輸入を制限するのは、古着産業のインフォーマル性にある。貧困から脱するためには、フォーマルセクター、すなわち政府に登録された企業や団体の雇用が豊富に存在することが必要であり、その政策の一環として、古着産業に代わって繊維産業を育成したいという政府の意図がある。
このように、古着輸入には経済的に正負の両方の影響があり、またその大きさは明確ではない。誰の利得を重視するのか、将来の変化をどのように予測するかによって古着の経済的な評価は大きく異なるため、その影響は白黒がはっきりつかない。
さいごに
私たちが何気なく回収ボックスに古着を入れるという行為は、実は開発途上国に商品を供給することを意味している。古着市場に供給された私たちの服は世界をめぐり、その行先で人々の生活に様々な影響を及ぼしている。多くの古着が人々の生活を助けていることは間違いないが、もたらす結果はよいことばかりではない。
問題は、私たちを含めた古着を供給する側が需要する側のことを十分に考慮していないことで生じている。一般的に、商品のメーカーは消費者の嗜好に合わせて生産、供給するのだが、古着の場合は供給者間の競争がほとんどないことから、古着を買ってもらうために需要側の事情に配慮する動機が弱い。その結果、品質の悪い商品やマーケットに合わない商品が大量に送られている。競争がない直接的な原因は、梱包された古着は品質が判別できないこと(したがって買い手は質のよい梱包を選べない)と、質の低い古着が低コストで廃棄できること(したがって質の悪い梱包も受け入れられやすい)だと思われる(写真3)。梱包は中に入っている古着がみえない状態になっているが、例えば、デジタルデータで内容物を安価に記録する技術が普及し、同時に不法投棄を摘発できれば、質の高い梱包が買い手に選ばれるという競争が生まれると考えられる。そういった仕組みを考えることは、国際的なリユースの効果を高めるという点から持続可能な開発における重要な課題である。
私たちにできることは、供給者として私たちの服が旅先で出会う人々について思いをめぐらせ、古着を供給することのメリットを高めることだろう。仕分けをする人、売る人、買う人のことを想像し、まだ着られる服かどうか確認してリユースに出すと、彼らの負担も減る。また、もしあなたが環境保護のために服をリユースしようとするなら、回収ボックスに入れるのではなく、丁寧に扱ってもう少し長く着たり、リメイクしたりすることも考えてみよう。
※この記事の内容および意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式意見を示すものではありません。
写真の出典
- 写真1~3 筆者撮影
参考文献
- 小川さやか 2011.『都市を生きぬくための狡知――タンザニアの零細商人マチンガの民族誌――』世界思想社.
- 福西隆弘 2014.「リユース品貿易の実態――古着の国際貿易を事例に――」小島道一編『国際リユースと発展途上国』アジア経済研究所.
著者プロフィール
福西隆弘(ふくにしたかひろ) 日本貿易振興機構アジア経済研究所 開発研究センター。Ph.D. 専門は開発経済学で、アフリカ諸国の労働市場、産業構造変化などをテーマとしている。主な著書として、『アフリカ経済開発論』(ミネルヴァ書房2025年 共編著)、『発展途上国における経済のデジタル化――アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカの事例から考える――』(アジア経済研究所2024年 共著)、The Garment Industry in Low-Income Countries: An Entry Point of Industrialization(Palgrave Macmillan 2014年 共編著)などがある。
注
- 国内で発生した古着のフローについては、環境省「衣類の資源循環システム構築に向けた現状」(2025年)に基づいている。
- 国連の貿易統計(UN Comtrade)に基づく。
- 各国の行先別輸出量を集計して国別の輸入量を作成している。例えば、世界各国の日本への輸出量を集計して日本の輸入量としている。特に開発途上国の貿易統計は欠損があるため、先進国の報告が多い輸出量をもとに統計を作成する方法をとっている。データの作成方法については、福西[2014]を参照のこと。
- アフリカのファッションについては、当コラムのモザンビークの記事も参照されたい。
- 古着商人については小川[2011]に詳しく説明されている。
- 輸出市場で中国製品と伍して競争できる繊維産業を有するバングラデシュやインドなどでも、国内市場においては古着の輸入量が減ることはないことが示されている[福西 2014]。
- 日本をはじめ、いくつかの国では繊維産業の成長をきっかけに経済成長を達成しているが、それらは輸出市場での成功に基づいている。なお、アフリカでも、モーリシャスは繊維産業の成長をきっかけに、金融や観光業が発展する豊かな国となった。
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