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「世界最大のロックダウン」はなぜ失敗したのか
――コロナ禍と経済危機の二重苦に陥るインド

 

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2020年7月

(21,185字)

2019年12月、中国の湖北省武漢市で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がはじめて確認された。急激な感染の拡大は、中国がその中心地であった時期を経て、わずか3カ月足らずの間に世界中を覆いつくし、3月11日には世界保健機関(WHO)が「パンデミックといえる状況にある」と表明するに至った。その後、新型コロナウイルスの感染拡大はさらに勢いを増し、7月27日までに世界全体で確認された感染者と死者の数は、それぞれ1625万人と65万人にのぼっている。また、国別の累計感染者数は、米国が423万人と圧倒的に多く、ブラジル(242万人)、インド(144万人)、ロシア(81万人)、南アフリカ(45万人)、メキシコ(39万人)、ペルー(38万人)、チリ(35万人)が後に続く1

そのなかでもインドは、上位を占める他の国々を次々と追い越し、瞬く間に順位を上げている。13億を超える巨大な人口を抱えているうえに、爆発的な感染拡大に見舞われた欧州諸国では事態が大きく改善しているため、これは当然のことのように思えるかもしれない。しかし、インドでは3月末以降、非常に厳しい封鎖措置が実施されてきたことを考えると、必ずしもそうとはいえない。つまり、長期にわたる全土封鎖を経たにもかかわらず、感染者の急増に歯止めがかかっていないのである。

さらに、インドの全土封鎖については、経済活動の停止が国民生活に計り知れない悪影響を及ぼしたことも明らかになっている。特に、就業者全体の9割を占めるインフォーマル部門の労働者とその家族をはじめとする、セーフティーネットからこぼれ落ちた大量の貧困層は、最低限の生活水準どころか生存さえ危ぶまれる状況へと追い込まれた。ところが、政府が打ち出した一連の経済対策は、その有効性に大きな疑問符がついている。

本稿では、段階的な水際対策から一転して、「世界最大のロックダウン」が断行されたものの、経済的打撃という副作用が大きくなりすぎた結果、封鎖措置の緩和へと転換が図られるに至った経緯を説明する。そして、インドの新型コロナ対策が破綻を来している要因として、全土封鎖の実施に関して迷走を繰り返す一方、未曽有の緊急事態への対応としてはあまりにも不十分な経済対策しか打ち出さないなど、政府の対応に重大な問題があることを指摘する。さらに、ナレーンドラ・モーディー首相にあらゆる権限を集中させる個人支配的統治と貧困層に対する政策的無関心という、現政権に顕著な2つの特徴がより根本的な原因であると論じる。

写真:新型コロナウイルス感染症への対応を話し合うためのビデオ会議に出席するモーディー首相

新型コロナウイルス感染症への対応を話し合うためのビデオ会議に出席するモーディー首相(2020年6月16日)
インド政府の初期対応と外交関係

インドで新型コロナウイルスの感染者がはじめて確認されたのは、2020年1月30日のことである。この最初の感染例は、武漢大学で学ぶインド人留学生が南部のケーララ州に帰省中に判明したものであり、同州では2月初旬にも、武漢大学に留学していた学生2名の感染が確認された。しかし、それ以降は1カ月にわたって、インド国内での感染例は一件も報告されなかった。

この間、新型コロナウイルス感染症が世界各地で猛威を振るう事態を受けて、インド政府は入国制限などの水際対策を段階的に強化していった。2月28日には、日本と韓国の国籍を有する渡航者への到着ビザの発給を停止するとともに、日本、韓国、イラン、イタリアの国籍保有者による電子ビザ(e-VISA)申請の受付も前日から停止した。また、3月3日には、日本を含む上記の国々の国籍保有者に発給されたビザを無効としただけでなく、2月1日以降に中国、日本、韓国、イラン、イタリアのいずれかを訪問し、インドにまだ入国していない外国人のビザも無効とした。そして、3月12日には、(各国の政府関係者や国際機関の職員などを除く)すべての外国籍保有者のビザの効力を一時的に停止することが発表され、外国人のインドへの入国が全面的に差し止められることとなった。

新型コロナウイルスの感染拡大とインド政府の初期対応は、外交関係に思わぬ影響を及ぼした。例えば、日本国籍の保有者に発給されたビザをすべて無効にするというインド政府の決定は、友好的な側面が強調されることの多い日印関係に少なからぬ緊張をもたらした。日本政府は、その他の入国制限の対象国と日本では感染状況がまったく異なるとしたうえで、インド側の一方的な措置によって、現地の日系企業や高速鉄道計画が影響を受ける恐れがあると外交ルートを通じて抗議を行った。これに対してインドの外交筋は、入国制限に政治的な意図はまったくなく、日本政府の反応を過剰であると述べている2

また、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相の父親で、同国の初代首相ムジーブル・ラフマンの生誕百周年を記念する式典が3月17日に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症への懸念から直前に延期となり、招待を受けていたモーディー首相はバングラデシュ訪問を取りやめることとなった。ただし、記念式典の延期には本当は別の理由があり、それを隠すための方便として新型コロナウイルスが使われたのではないかとの見方もある。つまり、2019年12月にインドで成立した「市民権改正法」(Citizenship Amendment Act)と同法をめぐって2020年2月にデリーで起きた宗教暴動を受けて、モーディー首相の来訪に反対する抗議デモがバングラデシュ各地で行われたため、混乱を恐れたハシナ政権が式典の延期を決定したというのである3

いずれにしても、国内向けのアピールの手段として首脳外交を最大限に活用してきたモーディー首相にとって、新型コロナウイルスの感染拡大は――少数派のムスリムを狙い撃ちにした市民権改正法への国際社会の厳しい視線とともに――外交面で大きなマイナス要素となったとみてよいだろう4。しかし、内政面での影響はそれよりもはるかに深刻であることが次第に明らかになっていく。一連の水際対策にもかかわらず、3月に入るとインド各地で感染例の報告が相次ぐようになったからである。

長期化する全土封鎖、止まらない感染拡大

インドでの新型コロナウイルスの累計感染者数は、3月3日にはわずか5人だったのが、10日に44人、17日に125人、24日に492人と急増していった。そのため、「(インドでは)新型コロナウイルス感染症は保健上の非常事態にはあたらず、パニックに陥る必要はない」(3月13日の保健家族福祉省高官の発言)という姿勢から一転して、インド政府は全土封鎖という強硬手段へ一気に舵を切ることになる5

モーディー首相は、3月19日に国民向けのテレビ演説を行い、22日(日曜日)の午前7時から午後9時にかけて、「人民のために、人民の手によって、人民に対して課される外出制限」(いわゆる「Janata Curfew」)を全土で実施すると発表し、この時間帯には一切の外出を控えるよう国民に求めた。そして、この「予行演習」の3日後の3月24日に再びテレビ演説が行われ、翌25日から3週間にわたってインド全土を封鎖することが発表された。約30分の演説のなかでモーディー首相は、感染の連鎖を断ち切るためには家に留まることが重要であると繰り返し強調する一方、封鎖措置の内容や経済対策については一切言及しなかった6

インドの全土封鎖は、他の国々と比べても非常に厳しいものであった(図1)。具体的には、官公庁をはじめとする公的機関、民間企業、店舗、工場、学校などは原則としてすべて閉鎖され、飛行機・鉄道・道路での移動も停止された。例外として、食料品店、薬局、金融機関、インフラ部門、貨物輸送など、日々の暮らしに欠かせない品物やサービスに関連する分野は対象とはならなかったが、封鎖措置は人々の日常生活や経済活動に大きな制約を課すこととなった7。さらに、封鎖措置の違反者に対しては、警察による過剰ともいえる厳しい取り締まりが行われた。それにもかかわらず、テレビ演説での発表から全土封鎖の開始まではわずか4時間しかなく、一般市民には準備を整える余裕は与えられなかったのである。

図1 各国政府による対応措置の厳格さの比較

図1 各国政府による対応措置の厳格さの比較

(注)各国政府による新型コロナウイルス感染症への対応措置の厳格さを「0」から「100」の間の値(「100」が最も厳しい対応措置にあたる)をとる指数として表している。したがって、対応措置の妥当性や効果を表すための指数ではないという点に注意が必要である。
(出所)Our World in Dataの「Government Response Stringency Index」を参照。

モーディー首相は全土封鎖が開始された当初、『マハーバーラタ』では戦いが18日続いたことを引き合いに出して、インドは新型コロナウイルスとの戦いに21日で勝利すると発言していた8。しかし、実際にはその後、封鎖措置の実施は繰り返し延長され、段階的な緩和を伴いながら(本稿執筆時点で7月末まで)4カ月以上も続くこととなった。そして、厳しい封鎖措置が長期に及んだにもかかわらず、インドでの新型コロナウイルスの感染拡大には歯止めがかからなかった。それどころか、国内で確認された感染者と死者の数は増加の一途をたどり、収束する気配を一向にみせていない(図2)。さらに、インドは人口あたりの検査数が非常に少ないため、実際の感染者や死者の数は報告されているよりも格段に多く、実情ははるかに深刻である可能性が高い。

図2 インド国内での1日ごとの感染者数と死者数(2020年3月1日~7月15日)

図2 インド国内での1日ごとの感染者数と死者数(2020年3月1日~7月15日)

(注)(b)の図では、6月17日のデータを除いている。これは、それ以前に死亡した人たちがこの日にまとめて報告され、死者数が2003人と極端に多くなっているためである。
(出所)Our World in Dataの「Daily confirmed COVID-19 cases」と「Daily confirmed COVID-19 deaths」を参照。

もちろん、全土封鎖が実施されていなければ、感染者と死者の数がさらに膨れ上がっていた可能性はあるだろう9。そのため、全土封鎖は感染拡大の防止に効果がなかったと言い切ることはできないが、インド政府が期待したほどの効果を上げなかったことは事実である。例えば、政府の新型コロナウイルス感染症対策で中心的役割を担う医療分野の専門家は、全土封鎖が大いに効果を発揮し、新規感染者数は5月初旬にピークに達した後、5月中旬にはゼロになるとの分析結果を4月後半に公表していた。ところが、このあまりにも楽観的な見通しは、厳しい現実によってあっさりと裏切られてしまった10

その一方で、4月20日以降、農業分野などでの規制の解除に加えて、感染が比較的抑えられている地域での封鎖措置の緩和が徐々に進められ、さらに6月に入ると、「封鎖解除」(Unlock)という新たな名称とともに経済活動の再開に向けての動きが本格化していった。また、いくつかの州政府から懸念する声が出たものの、5月12日から首都デリーと主要都市を結ぶ15路線で列車の運行が始まり、国内航空便の一部路線での運航も5月25日から再開された。このような緩和へ向けての動きがみられるようになったのは、全土封鎖の度重なる延長によって経済活動の停止がさらに長引いた場合、インドが経済的に持ちこたえられなくなってしまうと政府が判断したためである。

現在、感染拡大の防止と経済活動の再開との間でいかにバランスをとるべきか、世界中で模索が続いており、インドもその例外ではない。しかし、感染拡大(少なくとも、その第一波)を抑え込んだ国々とは異なり、収束への見通しがまったく立たないなかで経済活動の再開へと踏み出さざるをえないインドの現状は、きわめて深刻であるといわなければならない。

全土封鎖をめぐる混乱

インドがこれほどの苦境に立たされている背景には、不十分な保健医療体制、経済的に脆弱な貧困層の割合の高さ、セーフティーネットの欠如など、多くの途上国が共通して抱えている構造的問題があることは間違いない。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済的打撃という二重苦がインドに重くのしかかっているのは、それだけが原因ではない。むしろ、明確な方針の欠如、政策を実行する前の準備不足、計画性のない場当たり的対応、責任を回避しようとする姿勢などに象徴されるように、インド政府の対応のまずさが事態の悪化に拍車を掛けているとみるべきだろう。

その一つとしてあげられるのが、全土封鎖の実施をめぐって次々と問題が噴出しているという点である。3月25日に始まった全土封鎖は、「国家災害管理法」(National Disaster Management Act, 2005)という法律に基づいて連邦政府が指針を発出し、それに従って各州政府が封鎖措置を実施するという形をとっている。しかし、全土封鎖についての指針の内容が思わぬ誤解を招き、連邦政府が追加説明に追われたり、連邦政府の方針そのものが二転三転して大きな混乱を引き起こしたりする事例が後を絶たない。

例えば、全土封鎖についての当初の指針では、インターネット通販などのeコマース企業は、生活必需品に限り配送を認められていたが、封鎖措置の延長に先立つ4月15日に出された新たな指針では、4月20日以降は生活必需品以外の取り扱いも可能になることが示された。ところが、この決定に反対する小規模小売業者の団体から圧力を受けた政府は、eコマース企業による配送商品の対象拡大を実施直前の19日になって撤回した。また、5月17日付の指針では、国内航空便の運航停止は5月末まで継続することが明記されていたが、航空会社が大量解雇や経営破綻さえ起こりえると財政面での窮状を訴えたため、政府は一転して運航再開を前倒しせざるをえなかった。このように、感染拡大の防止と経済活動の再開との間でのバランスに加えて、特定の産業や業界団体の利害に対する配慮なども相まって、全土封鎖の方針は計画性と一貫性を欠いたものになっている11

さらに、連邦政府と州政府の政治的対立が、全土封鎖の実施をめぐる足並みの乱れを引き起こしている。特に、国政与党のインド人民党(BJP)以外の政党が州政権を握る州からの反発は根強く、全国一律の指針が中央から押し付けられるうえに、封鎖措置の実施をはじめとする感染対策は地方にすべて丸投げされるのに、連邦政府は財政的な手当てに後ろ向きなどころか、州政府による追加的な資金調達にも条件を課したことなどが、州側の不満の背景にある。

実際、新型コロナウイルスの感染対策の費用がかさんでいるうえに、全土封鎖によって税収が大幅に落ち込んでいるため、インドの各州は財政的な危機に見舞われている12。5月に入り封鎖措置の一部が緩和され、いくつかの州で酒の販売が始まると、酒屋の前に長蛇の列ができたことが大きな話題となった。しかし、この出来事は、われ先に酒を買い求めようと大勢の人が社会的距離を一切無視するように密集したというだけの話ではなく、連邦政府からの財政的支援が乏しいなかで、酒の販売から得られる間接税をあてにしなければならないほど州財政が逼迫していることを如実に示しているのである。中央と地方との間の軋轢は、感染拡大をめぐる責任の押し付け合いとも相まって、感染症対策での協力を阻む要因となっている。

都市から農村へ逆流する出稼ぎ労働者

全土封鎖の実施に関してモーディー政権の迷走ぶりが最も際立ったのが、都市部の出稼ぎ労働者とその家族への対応である。その多くは、経済活動の停止によって生活の糧を突然奪われ、出稼ぎ先の都市から親族が暮らす農村へと戻らざるをえない状況に追い込まれた13。ところが、全土封鎖の実施に先立つ3月24日に政府が示した当初の指針は、鉄道やバスなどの運行はすべて停止すると定めていたため、数百キロから千キロ以上もの道のりを徒歩や自転車で移動する大量の人の波が各地で発生した。驚くべきことに、この当初の指針では、困窮した出稼ぎ労働者が都市から農村へ大挙して移動することを想定した対策は一切明記されておらず、モーディー政権がこのような事態を想定していなかった(少なくとも、過度に軽視していた)可能性を示唆している。

インド政府は、全土封鎖の開始から4日後の3月29日になって、出稼ぎ労働者の大移動は「社会的距離を保つための封鎖措置に反している」(同日付の内務省による命令)として、仕事や住む場所を失い都市で路頭に迷っている人たちやすでに移動中の人たちを最寄りの避難所に収容するよう各州政府に指示した。そして、多くの感染者が出ている都市から農村への人の移動を厳しく制限する方針は、感染拡大を防止するという理由からその後も維持された。

しかし、実際には、大きな荷物や幼い子どもを抱えて歩く出稼ぎ労働者とその家族の姿は、道中で交通事故や鉄道事故に巻き込まれて死亡する事例が相次いだこととあわせて、メディアで連日取り上げられた。また、他州で立ち往生している出稼ぎ労働者や学生を地元に帰還させるためにバスを用意する州政府が現れるなど、全土封鎖の指針に反するような措置も実際にはとられていた。

モーディー政権が都市から農村への人の移動を正式に許可したのは、全土封鎖が始まってから1カ月あまりが過ぎた4月末のことであった。5月1日からは、全土封鎖によって立ち往生する出稼ぎ労働者や学生などの地元への帰還を進めるために、インド国鉄が特別列車(Shramik Special trains)の運行を各地で開始した。鉄道省の発表によると、6月3日までの1カ月あまりの間に、約4200便の特別列車で580万人以上が輸送された。その行き先の大半を占めていたのは、人口規模の大きい貧困州であり、州外への労働移動が盛んなウッタル・プラデーシュ州(1682便)とビハール州(1495便)であった14

特別列車の運行によって、都市に居残っていた出稼ぎ労働者とその家族の帰還が可能になったのは確かだが、実際に乗車した人たちの証言からは、運行状況や車内環境は混乱が絶えない無秩序なものであったとの声が数多く聞かれる。それらに共通しているのが、社会的距離をとるのが不可能なほどの混み具合、トイレからの悪臭が車内に立ち込めるような不衛生さ、真夏であるにもかかわらず冷房設備がないことによる耐え難い暑さ、満足に与えられない水と食料、などといった点である。また、線路上での渋滞を避けるために特別列車は迂回することが多く、乗客は運行ルートや到着時刻について何も知らされぬまま、長時間(場合によっては数日間)にわたって上記のような状況に耐え続けなければならなかった15

特別列車での移動の過酷さは、乗車中に亡くなる人が立て続けに出ているという現地メディアの報道からもうかがえる。例えば、5月9日から27日にかけて、約80人の乗客が死亡したとある現地紙は伝えている。これに対してインド政府は、特別列車で移動中に死亡した乗客がいることは否定しないものの、食料や水の不足などの車内環境の劣悪さが原因ではなく、持病の悪化によるものであるとして、メディアによる関連報道をフェイク・ニュース呼ばわりさえしている。しかし、少なくともいくつかの死亡例については、政府の主張に根拠がないことが遺族の証言などから明らかになっている。責任を回避しようとする政府の姿勢の一端が、ここにも現れているというべきだろう16

さらに、経済的に貧しく、教育水準が低い傾向にある出稼ぎ労働者にとっては、特別列車に乗車することがそもそも容易ではないという点も見逃すべきではない。まず、特別列車に乗るためには1人あたり平均600ルピー(約840円)ほどの運賃を支払わなければならないが、これはインフォーマル部門で働く労働者の数日分の賃金に相当する金額であり、家族全員で乗車するとなればさらにハードルが高くなるのはいうまでもない。また、乗車許可を得るための手続きが単純ではないため、何の手助けもしてくれないどころか、「手数料」を要求する警察官がいたり、特別列車への乗車を斡旋すると称する中間業者が暗躍したりしている。特別列車の運行が始まって以降も、徒歩や自転車で都市から農村へ脱出する人の波が途切れなかったのには、このような背景がある17

全土封鎖による経済活動の停止のあおりを受けて、地元への帰還を余儀なくされた人たちの数については、分析対象の期間や州内での労働移動も含めるかどうかなどの違いがあるため、「約500万人」から「最低でも3000万人」までと推定値に大きな開きがある。ただし、少なくとも数百万という単位の人たちが短期間のうちに移動したのは確かだろう。実際、国内の労働移動が近年盛んであるという、2017-18年の経済白書(第12章)などで示されている分析結果に照らしてみても、これは決して大きすぎる数字ではない18

都市から農村へ移動する人の波は、全土封鎖が始まった直後から各地で発生していた(2020年3月28日のThe Quintの動画)。
不十分な経済対策と「自立したインド」

モーディー政権に対して厳しい視線が注がれているのは、全土封鎖の実施をめぐる問題だけではない。経済活動の停止による深刻な打撃に対処するために、インド政府が発表した経済対策についても、様々な疑問や疑念が生じている。具体的には、以下のような点が指摘されている19

第1に、厳しい封鎖措置は経済活動に重大な影響を及ぼしただけでなく、経済的に脆弱な貧困層の生存さえも脅かしかねないため、経済支援や生活保障の取り組みには迅速さが求められるはずであるが、政府の経済対策はそうした切迫感に欠けていた。モーディー首相は、全土封鎖の実施に合わせて、比較的規模の小さい第一弾の経済対策(1.7兆ルピー)を打ち出したが、具体的な内容がシーターラーマン財務大臣から発表されたのは、全土封鎖の開始から3日後の3月27日であり、出稼ぎ労働者の都市から農村への流出はすでに始まっていた。さらに、より規模の大きい第二弾の経済対策(11兆ルピー)が発表されたのは、それから1カ月以上も後の5月半ばのことであった。

第2に、政府が規模の大きさをことさらに強調するのとは裏腹に、経済対策の実質的規模はそれほど大きくない。モーディー政権は経済対策の総額について、インドのGDPの10%に相当する約20兆ルピー(約28兆円)であるとしているが、検証を行った経済学者や金融機関・格付け機関などは、経済対策に伴う2020年度(2020年4月~2021年3月)の追加的な財政支出は2兆ルピー程度であるとの見方で一致している。その理由としては、零細・中小企業向けの無担保融資など、全土封鎖による影響を強く受けた部門に対する流動性の供給が大きな部分を占めていること、すでに発表されていた政策が経済対策に含まれていること、農業部門の改革などのように実施のスケジュールが不明確な政策が含まれていることなどがあげられる。そもそも、これらの政策の有効性についても様々な疑問の声が出ている20

第3に、政府の経済対策では、供給面での取り組みに主眼が置かれる一方、直接現金給付や雇用保証事業などの需要面での取り組みに加えて、経済的に脆弱な貧困層の生存を確保するための政策(例えば、食料配給制度の拡充)が軽視されている。上記の第2の点と考え合わせると、セーフティーネットの恩恵を受けられない大量の貧困層が最低限の生活水準どころか生存さえ危ぶまれる状況にあっても、政府は追加的な財政支出を避けることをむしろ重視しているようにみえる。

新型コロナウイルスの感染拡大と全土封鎖の長期化は、それ以前から低迷が続いていたインド経済にさらなる打撃を与えると予想されており、2020年度の経済成長率はマイナスに転じるとの見方が広がっている。さらに、一部の経済学者からは、2019年度に比べて1割以上も実質GDPが減少するのではないかとの厳しい予測も出ている。つまり、規模の面でも内容の面でも、インド政府の経済対策は危機的な経済状況には到底見合っていないといわざるをえないのである。

その一方で、モーディー政権は、「自立したインド」(Aatmanirbhar Bharat / self-reliant India)という、第二弾の経済対策に付けられたキャッチフレーズを経済政策の分野で強く打ち出している。ただし、それによって何を目指そうとしているのかは、あまりはっきりしない。というのも、首相や政府高官からは、現在の厳しい状況をむしろ好機ととらえ、経済改革をさらに推し進めていくという趣旨の発言が繰り返されるものの、それと同時に、保護貿易政策によって国内産業を振興し、インドの輸入依存を減らすことを目指す取り組みが表明されるなど、経済政策としての一貫性がみられないからである。一例をあげると、2020年6月2日にインド工業連盟(CII)が開催した年次総会でモーディー首相は、経済改革の重要性を強調しながらも、「インドはエアコンの国内需要の3割以上を輸入に頼っている。これをできる限り速やかに削減しなくてはいけない」と述べ、エアコン関連部品の関税引き上げを示唆した21

さらに、実効支配線をめぐる中印対立に端を発して、中国との経済関係の見直しや中国製品のボイコットを求める意見がインド国内で勢いを増している22。それが単なる政治的レトリックに留まるのかどうかは別として、保護主義的な経済政策を正当化するための条件がまた一つ増えたことだけは確かだろう。

全土封鎖はなぜ失敗したのか――個人支配的統治と貧困層への政策的無関心

新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済的打撃という二重苦がインドに重くのしかかっている背景には、明確な方針の欠如、政策を実行する前の準備不足、計画性のない場当たり的対応、責任を回避しようとする姿勢など、政府の対応に大きな問題があるという点をこれまで論じてきた。実際、モーディー政権の対応は幅広い分野の専門家から厳しい批判を受けている。

5月下旬、公衆衛生や疫学などに関連する3つの学会が共同声明を発表し、あまりにも厳しい全土封鎖を断行したのは政策的に誤りであり、感染症対策の実地経験のない「専門家」が作ったモデルに依拠して意思決定を行ったために、政府が重大な判断ミスを犯したのではないかと推測している。また、感染拡大が進行していなかった初期段階で、出稼ぎ労働者を農村へ帰還させていれば、現在のような深刻な状況は避けられたのではないかと指摘したうえで、「帰郷した出稼ぎ労働者によって、全国の隅々にまで感染症が持ち込まれている」と警告している。同様の意見は、インド政府の新型コロナ対策のタスクフォースのメンバーの間にもあり、そのうちの一人は匿名を条件に「全土封鎖が失敗に終わったのは明らかだ」と率直に述べている23

公衆衛生や疫学の専門家の間では、全土封鎖そのものへの批判だけでなく、それと並行して検査・追跡・隔離の強化や重症患者の受け入れ態勢の整備が十分進まなかったことへの批判も根強い。つまり、政府は来るべき感染拡大に備えて、脆弱な保健医療体制を至急手当てしなければならないのに、全土封鎖によって稼いだはずの貴重な時間を浪費してしまったというのである。インドの州のなかで感染拡大の抑え込みに関して他を圧倒しているのが、保健分野での積極的な取り組みを長年行ってきたケーララ州であるという事実は、このような背景とあわせて考えるべきだろう24

一方、前節で説明したように、経済分野の専門家の間では、政府の経済対策への不満が表面化している。ただし、それはモーディー政権の経済運営全般に及ぶ、より根深い性質のものである。例えば、インド準備銀行(RBI)総裁を務めた経済学者のラグラム・ラジャンは、あるインタビューのなかで、インドは新型コロナウイルスだけでなく、過去3~4年にわたって低迷が続く経済の再生にも取り組まなければならず、そのためには、「経済データは現実を反映していない」などと不都合な現実を否定してきた、これまでの態度をまず改めるべきであるとモーディー政権に注文をつけている25

このように、政府の新型コロナ対策が幅広い分野の専門家から批判される背景には、首相個人が圧倒的な権力を握り、それを行使するための司令塔として首相府(PMO)が中心的な役割を担うという、現政権の統治スタイルがあると考えられる26。つまり、幅広い意見(特に、政府にとって都合の悪い意見)に耳を傾けることなく、首相とその側近の「官邸官僚」が不透明な形で政策を決定しているために、モーディー政権が専門知を著しく軽視する結果を招いているという可能性である。実際、全土封鎖の実施および延長に関して、上記の新型コロナ対策のタスクフォースは政府から見解を求められることはなかったが、それとは対照的に、全土封鎖の実施が開始直前に発表されたのは、国民に事前周知するとパニックが発生して本来の目的が達成できなくなるという、首相の側近たちの意見が通ったためであるといわれる27。RBI総裁として現政権下で実務に携わったラジャンが、「首相府がすべてやろうとするのは無理がある」と上記のインタビューで述べているのは偶然ではないのである。

そして、全土封鎖を中心とする新型コロナ対策が悲惨な結果を招いている原因として、個人支配的統治に起因する専門知の軽視とともにあげられるのが、貧困層に対する政策的無関心である28。まず、経済活動の全面的停止によって大量の貧困層が困窮することは当然予想されたにもかかわらず、政府は長期に及ぶ全土封鎖を突然実施し、それによって路頭に迷うことになった出稼ぎ労働者への対応も混乱を極めた。さらに、全土封鎖の副作用を緩和することが期待された経済対策でも、経済的に脆弱な貧困層が生存と最低限の生活水準を確保するのに十分な施策が講じられたとはいえない。

では、このような頑なともいえる政府の姿勢は、一体何に起因するのだろうか。一つの可能性として考えられるのが、現政権が依拠するヒンドゥー至上主義的な国家観・社会観には、貧困層を含むすべての国民の生存を国家が保障する——つまり、インド憲法第21条の「生存権」(right to life)——という発想が欠落しているという点である。例えば、3月19日のテレビ演説でモーディー首相が述べた以下の一節は、この点を裏打ちしているといえないだろうか。

今回のパンデミックによって、我が国の中間層、下位中間層、貧困層の経済的利益と幸福がひどく傷ついていることは明らかです。このような危機に際して、経済界と高所得層のみなさんには、日々働いてくれているすべての人たちの経済的利益に可能な限り配慮するようお願いしたいと思います。これからの数日間、こうした人たち[引用者注――従業員や家政婦・運転手など]は職場や自宅に来ることができないかもしれませんが、そのような場合でも、共感と慈悲の心をもって彼らに接し、給料を減らしたりはしないでください。彼らにも家庭があり、病気から家族を守らなければならないことをつねに心に留めておいてください。

また、政権与党のインド人民党(BJP)の支持母体である民族奉仕団(RSS)の幹部は、外国メディア向けの会見のなかで次のように述べている。

私たちの社会の仕組みのなかでは、人々は自ら進んで同胞を助けるので、あらゆることについて政府機関を頼りにしたりはしません。立ち往生している出稼ぎ労働者や貧者に対して、各宗教の施設が施しをしていたのは、まさに賞賛されてしかるべき感動的なことなのです29

これらの発言が念頭に置く「理想的な社会」が、インドの現実とはかけ離れていることはいうまでもない。しかし、それよりも重要なのは、すべての国民が享受すべき「権利」を「善意」や「思いやり」の問題にすり替えることで、政府の不作為を正当化しようとする姿勢が透けてみえることである。経済対策の不十分さを覆い隠そうとするかのように繰り返される、「自立したインド」という新たなスローガンには、「国にすべてを頼るな」という自己責任論的な意味が込められているのではないかという疑念さえ生じるのはそのためである30


「世界最大のロックダウン」は、感染拡大の収束に結びつかなかったばかりか、経済的打撃という副作用があまりにも大きかったが、それにもかかわらず、政府が打ち出した経済対策はこの危機的状況に到底見合うものではなかった。その結果として、コロナ禍と経済危機という二重苦がインドに重くのしかかっている。この現状をインドがいかに乗り越えていくのか、現時点ではまったく見通しが立たない。

そして、コロナ禍を経てインドの政治体制がどのように変容するのかという問題についても、まったく同じことがいえる。権威主義体制のもとでよくみられるように、コロナ禍のどさくさに紛れるような形で、モーディー政権に批判的な政治勢力やメディアに対する締め付けを一段と強めるなど、非民主的な方法によって権力基盤を維持・強化しようとする動きが目立っているからである31

写真の出典
参考文献
  • 佐藤宏 2020. 「インドにおける移民排除法制の展開――インド北東地域を中心に」アジ研テクニカルレポート。
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  • Tiwari, Suyash 2020. "Impact of Lockdown on Government Revenue," PRS India, 19 April.
  • Varadarajan, Siddharth 2020. "As the First Year of Modi 2.0 Ends, It's Clear that Democracy Has Been Quarantined." The Wire, 30 May.
著者プロフィール

湊一樹(みなとかずき) アジア経済研究所地域研究センター研究員。専門は南アジアの政治経済。最近の著作に、「非政党選挙管理政府制度と政治対立――バングラデシュにおける民主主義の不安定性」(川中豪編著『後退する民主主義、強化される権威主義』ミネルヴァ書房、2018年)、"Too Many Cheers and Not Enough Independence: Media Control through Government Advertisements in an Indian State," IDE Discussion Paper 784, 2020などがある。

  1. 以上の数字は、Our World in Dataの「Cumulative confirmed COVID-19 cases」に基づいている。
  2. "Coronavirus in India — Japan concerned at visa restrictions." Hindustan Times, 6 March 2020を参照。2020年3月5日の記者会見で菅官房長官は、インド側に「強い懸念」を伝えたと述べている。
  3. "Has coronavirus given Dhaka an excuse to avoid the embarrassment of anti-Modi protests?" Scroll.in, 10 March 2020を参照。市民権改正法については、佐藤 (2020)の第5章を参照。
  4. "Coronavirus, CAA put a pause on high-level visits." The Hindu, 7 March 2020を参照。モーディー外交の特徴(特に、ヒンドゥー至上主義との関連)については、Hall (2019)を参照。また、モーディー首相が各国首脳との抱擁を戦略的に用いているという興味深い指摘については、"Who does Modi choose to hug?" The Caravan, 6 May 2019を参照。
  5. "COVID-19 is not health emergency, no need to panic: Health Ministry." The Hindu, 13 March 2020を参照。
  6. 首相の個人ホームページから、テレビ演説の映像と演説原稿を確認できる。
  7. 2020年3月24日付の全土封鎖の指針を参照。内務省のホームページから、その後の指針の追加・変更なども確認できる。
  8. 首相の個人ホームページを参照。
  9. ただし、全土封鎖の混乱ぶりを考えると、そうはならなかった可能性も十分ありえる。また、経済的困窮が引き金となり死亡したケース(これには、仕事を失った出稼ぎ労働者とその家族が、都市から農村への移動中に交通事故や衰弱により死亡した場合も含まれる)はより少なかっただろう。これらの点については、以下の節を参照。
  10. "Surge disproves NITI Aayog’s ‘zero cases by May 16’ prediction." The Hindu, 18 May 2020を参照。
  11. "E-commerce firms barred from delivery of non-essentials." Indian Express, 20 April 2020; "Why the govt changed its mind in just three days and allowed flights." Indian Express, 23 May 2020を参照。
  12. Kapur et al. (2020); Rao (2020); Tiwari (2020); "Will approach Supreme Court to make centre pay states GST cess for COVID fight: Kerala FM Thomas Isaac." The Caravan, 7 April 2020を参照。
  13. 全土封鎖が貧困層に与えた経済的影響に関する調査としては、Azim Premji University (2020); Stranded Workers Action Network (2020)などがある。
  14. 2020年6月3日付の鉄道省のプレスリリースを参照。
  15. Haksar (2020); Pandey (2020); Stranded Workers Action Network (2020); "No food and water aboard Shramik Special trains." Telegraph, 23 May 2020; "An anguished lullaby, fights for seats, water: 24 hours on a Shramik Special." Indian Express, 28 May 2020など、具体的証言は多数ある。
  16. "Railway Protection Force reports 80 deaths on Shramik trains." Hindustan Times, 30 May 2020; "Deaths in Shramik trains not due to lack of food, water, says government." The Hindu, 5 June 2020; "PIB’s 3 out of 4 ‘fact-checks’ on deaths in Shramik trains are unsubstantiated." Alt News, 6 June 2020を参照。政府の主張には多くの誤りや虚偽が含まれているという点については、"Fact Check: The lies and misdirections of the Modi government during the coronavirus lockdown." The Caravan, 13 June 2020を参照。
  17. Stranded Workers Action Network (2020); "Why migrants are walking home: ‘We know of govt schemes, they won’t help’." Indian Express, 20 May 2020; "As Shramik trains remain shrouded in secrecy, agents are cheating desperate migrant workers." Scroll.in, 21 May 2020を参照。
  18. "Explained: How many migrant workers displaced? A range of estimates." Indian Express, 8 June 2020; Ministry of Finance (2018)を参照。
  19. 詳細については、Ray and Subramanian (2020)を参照。Dey and Roy (2020); Dréze and Khera (2020); Isaac (2020); Sen, Rajan and Banerjee (2020); Thapar (2020a, 2020b)も参照。
  20. 例えば、零細・中小企業向けの融資については、"High rates, low demand: Stressed MSMEs can’t tap into Govt relief." Indian Express, 22 June 2020を参照。また、"The central bank’s Covid-19 relief on interest rates hasn’t really reached many Indians." Quartz India, 10 July 2020も参照。
  21. 首相の個人ホームページを参照。エアコン関連部品の関税引き上げに向けての動きについては、"ACs made in India but costlier: experts red-flag return to ’70s." Indian Express, 4 June 2020を参照。
  22. 実効支配線をめぐる中印対立については、駐中国大使、外務次官、国家安全保障補佐官を歴任したシヴシャンカル・メノンのインタビューを参照(Thapar 2020c)。中印両軍の衝突によりインド側に20名の死者が出る前に収録されたこのインタビューでメノンは、中国側の姿勢はこれまでになく強硬であり、問題解決は容易ではないとの見方を示している。
  23. Indian Public Health Association et al. (2020); "Members of PM’s COVID-19 task force say lockdown failed due to unscientific implementation." The Caravan, 19 May 2020を参照。
  24. ケーララ州の取り組みについては、Heller (2020)を参照。保健分野への公的支出が対GDP比で1%前後と低い水準に留まっているのは、会議派を中心とする前政権時代から続く問題である。ただし、保健分野の公共サービスの質には州の間で大きな隔たり(「南高北低」の傾向)がある。これらの点については、Dréze and Sen (2013)の第6章を参照。
  25. ラグラム・ラジャンのインタビューを参照(Thapar 2020a)。
  26. モーディー政権における首相府の重要性については、Gupta (2019)を参照。
  27. "Members of PM’s COVID-19 task force say lockdown failed due to unscientific implementation." The Caravan, 19 May 2020; Kapoor (2020)を参照。
  28. さらに、出稼ぎ労働者の苦境に対する都市中間層の無関心とその背後にある階級間のあまりにも大きな溝を指摘する意見も多くみられる。この点に関しては、Mander (2020); Mehta (2020); Palshikar (2020); Singh (2020)を参照。
  29. Foreign Media Interaction with Shri Dattatreya Hosabale, Sah Sarkaryavah, (Joint Gen. Secretary),RSS, 6 May 2020を参照。
  30. ヒンドゥー至上主義の偽善性については、RSSに所属していたダリト(旧不可触民)による回想録であるMeghwanshi (2020)を参照。
  31. この点については、Palshikar (2020); Varadarajan (2020)を参照。
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新型コロナウイルスと新興国・開発途上国