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特集

BRICSと世界

  • (BRICSと世界)第4回 マレーシアの選択――経済的実利と中立外交 / 谷口 友季子 2024年10月、マレーシアはBRICSのパートナー国となることを正式に認められた。近年の米中対立やウクライナ戦争の影響もあり、BRICSはロシアや中国を中心とする「非西側陣営」であると、欧米や日本では受け止められているだろう。したがって、マレーシアをはじめとする国々が続々と加盟に名乗りをあげたことは、「反欧米」の動きとして映るかもしれない。だが、マレーシアにとってBRICSへの参加は、特定の陣営に加わるという政治的メッセージではなく、自国の経済的実利を最大化するための現実的な選択である。その背景にあるのは、マレーシアがこれまで一貫して掲げてきた「中立・非同盟」の外交方針という小国としての生存戦略である。
    2025/06/13
  • (BRICSと世界)第3回 アルジェリアの選択――エネルギー外交とBRICSとの関係 / 高橋 雅英 アフリカ大陸の北端に位置するアルジェリアは、アフリカ諸国最大の約238万㎢の面積(日本の6.4倍)を擁する。16世紀にオスマン帝国の統治下に入った後、1830年からフランス植民地支配を受けたが、約7年半にわたるフランスとの激烈な独立戦争を経て、1962年に独立した。政治体制は、大統領を元首とする共和制である。現職のタブーン大統領は、ブーテフリカ前政権(任期1999~2019年)崩壊後の政治的混乱が続いていた2019年12月に就任し、2024年9月の大統領選挙で再選を果たした。大統領を支えるのは、独立解放運動を牽引した現与党の民族解放戦線(FLN)とアルジェリア人民国軍(ANP)であり、両組織とも歴代政権の政策決定に影響力を及ぼしてきた。
    2025/05/28
  • (BRICSと世界)第2回 中国の選択――BRICS拡大にみる中国の外交戦略 / 高橋 知子 ブラジル、ロシア、インド、中国について、経済的に成長する4カ国として「BRICs」という呼称を提示したのは、2001年当時ゴールドマン・サックスのエコノミストであったジム・オニール氏である(University of Surrey 2012)。該当する国がそれを自称し、BRICsとして国連総会の場で初めて集まるまでに5年、サミットを開催するにはさらに3年を要し、南アフリカが加わり「BRICS」となるにはさらに2年かかり、2014年に、上海を本部とする新開発銀行(BRICS銀行)を設立するに至った(BRICS Information Centre n.d.)。 2025/05/08
  • (BRICSと世界)第1回 BRICSのこれまでとこれから――2050年の人口・GDPの将来予測から見える課題と野心 / 熊谷 聡 近年、国際政治・経済の舞台で「BRICS」の存在感が増している。もともとはブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の頭文字に複数形を意味する“s”を付けた「BRICs」という経済用語であったが、後に南アフリカが加わり「BRICS」と呼ばれるようになった。この枠組みは、メンバーシップの拡大を続け、2025年4月現在では10カ国が正式加盟し、さらに9カ国が「パートナー国」として協力関係を結ぶ、グローバル経済における新たな勢力圏として台頭している(図1)。G7(先進7カ国)など従来の主要国枠組みへの対抗軸としても注目されるBRICSは、どのような経緯で生まれ、拡大してきたのだろうか。本稿では、BRICSの設立から現在までの歩みを振り返り、将来のGDP(国内総生産)と人口予測などを通じて、その特徴と戦略的な狙い、そしてBRICSが抱える課題を明らかにする。 2025/05/01