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特集

2024年インド総選挙

  • (2024年インド総選挙)第5回 第3期モディ政権下のインド経済の課題 / 佐藤 創・辻田 祐子 モディ首相率いるインド人民党(BJP)は、今回の選挙公約のなかで、政権を担当した2014年からの10年間でインドを世界第11位から第5位の経済に成長させた実績を強調し、2047年までに先進国とするための基礎を次の5年間で築くと訴えた 。選挙公約として掲げられた24項目からなる「モディの約束」には、貧困層や若年層などの社会階層に関する項目、中小企業や製造業などの産業に関する項目、ガバナンスや教育、技術などの社会全体に関わる項目など多様な内容が含まれている。
     しかし、BJPは周知のとおり今回の選挙で大幅に議席を減らしており、この選挙結果に関する分析をみると、物価高騰と雇用・失業問題に対する対応への不満がそのおもな原因として指摘されている 。国内総生産を含む国民経済計算の集計や推計についての疑義が論じられるなど基本的な諸統計に依拠することに留保が必要ななかで 、経済という観点からの課題を論じることには難しさが伴うところがある。そのような制約に留意しつつ、現在のインド経済が抱えている課題について整理したい。
    2024/09/06
  • (2024年インド総選挙)第4回 第3期モディ政権の外交課題と展望 / 伊藤 融 2024年総選挙の結果、モディ政権は3期目に入った。これまでと異なり、モディ首相のインド人民党(BJP)単独では連邦下院の過半数に達しない勢力図のなかでは、連立を組む地域政党の発言権が大きくなるのは当然である。与党連合の国民民主連合(NDA)でカギを握るアーンドラ・プラデシュ(AP)州のテルグー・デーサム(TDP)やビハール州のジャナター・ダル統一派(JDU)は早速、自州を税財政上優遇する特別カテゴリーの州に指定するか、多額の財政支援を行うよう求めた。またモディ政権が導入した軍の任期制採用制度「アグニパト」や、BJPがヒンドゥー国家建設の道として掲げる統一民法典制定にも懐疑的な立場を示している。現政権を維持するつもりならば、これらの要求に耳を傾けざるをえない。実際、7月23日に発表された連邦予算案は、両州への「利益誘導」が露骨であった 。 2024/08/26
  • (2024年インド総選挙)第3回 モディ政権3期目の課題──分断を乗り越え、民主主義を取り戻せるか? / 中溝 和弥 2014年の政権掌握以来、モディ政権はあらゆる方法を用いてインド民主主義を切り崩してきた。民主主義体制が権威主義体制に移行する過程を検証した『民主主義の死に方』で知られるレビツキーとジブラットは、独裁者を見極めるための行動パターンとして、次の四つをあげる。第一に、ゲームの民主主義的ルールを言葉や行動で拒否しようとする。第二に、対立相手の正当性を否定する。第三に暴力を許容・促進する。第四に、対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする。これらの特徴は、モディ政権の2期10年でいずれも見出すことができる。 2024/08/21
  • (2024年インド総選挙)第2回 選挙結果の分析──インド人民党の大幅な後退 / 近藤 則夫 インドの第18次連邦下院議員選挙が6月4日に一斉開票された。結果は事前の予想と大きく異なり、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)は 前回2019年の303議席から今回は過半数にみたない240議席へと大きく後退した。BJPが率いる国民民主連合(NDA)は前回の352議席から293議席となった。一方、インド国民会議派(以下、「会議派」)を中心とする選挙連合は2019年の統一進歩連合(UPA)としては91議席であったが、2023年7月に結成されたINDIA 連合(Indian National Developmental Inclusive Alliance,インド国民発展包括連合)は232議席を確保した。会議派は前回の52議席から今回の99議席へ勢力を回復した。 2024/07/18
  • (2024年インド総選挙)第1回 与党優位の背景 / 辻田 祐子 4月19日、酷暑期のなかでインド国民は総選挙最初の投票日を迎えた。今後、6月1日までの44日間に合計7回に分けた投票が全国で実施される。一斉開票日は6月4日である。今回の総選挙では、6月中旬に5年間の任期満了を迎える連邦議会下院の議員543人が、18歳以上の男女約9億6800万人の有権者により小選挙区制で選出される。 2024/05/17