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「台湾リスク」と世界経済

  • (世界を見る眼)(「台湾リスク」と世界経済)第5回 中台間海上輸送の現状と東アジアへの影響 / 池上 寬 台湾側の貿易統計で、中国と台湾の貿易について計上されたのは、1991年7月からである。しかし、それより以前の中台間貿易は一旦香港に輸出され、そして香港から中台それぞれに再輸出される形での貿易、つまり間接貿易で成り立っていた。中国との海上貿易は1997年1月から外国船舶会社が所有する外国船籍の定期船に限定し、かつ第三国を経由した場合のみ、台湾政府は中国からの貨物の輸入を認めることとなった。このことからわかるように、中国と台湾の貿易を海上輸送の点から見ると、少なくとも台湾が中国から海上輸送で輸入する場合には、第三国を経由し、しかも中台の船舶会社は従事できない状況であった。つまり、中台間の直接往来ができない状況であった。これは、直接の通航ができない「三通」の問題のひとつであった。この三通は2008年12月に解禁されたことで、中台間で直接輸送が可能となった。 2024/04/24
  • (世界を見る眼)(「台湾リスク」と世界経済)第4回 世界の半導体工場となった台湾と地政学リスク――集中から緩やかな分散へ / 佐藤 幸人 1949年以降、台湾海峡を隔てて中華人民共和国と中華民国が並立した状態が続いている。近年、この状態が不安定化するかもしれないという懸念が高まり、国際政治や安全保障の観点からだけではなく、台湾が世界の半導体生産を担っているという経済的な理由からも、国際的に大きな関心を呼んでいる。 2024/04/22
  • (世界を見る眼)(「台湾リスク」と世界経済)第3回 中台貿易は政治的緊張の影響を受けるか / 早川 和伸 近年、「経済的威圧」という言葉を聞く機会が増えている。McLean(2021)によると、経済的威圧とは、政策的譲歩を引き出すために、相手国に経済コストを負わせる、もしくは負うことになると脅す行為を指す。本用語は、とくに中国による威圧的行為に対して用いられることが多い。その例としては、2010年における尖閣諸島中国漁船衝突事件に伴う、中国から日本へのレアアース輸出規制などが挙げられる。Hunter et al(2023)によると、2020年から2022年の3年間において、中国による威圧行為は73件に及ぶ。最も多いのがオーストラリア向けで21件、次にリトアニア向けが11件である。前者は2020年に豪政府が新型コロナの起源について独立した国際調査を求めたことが原因とされ、豪州産ワインや食品などに制裁関税が課されたりした。後者は駐リトアニア台湾代表処を開設したことが原因とされ、リトアニア産品に対する輸入規制を導入した。このように、中国による経済的威圧では、貿易制限措置が取られることが多く、全体のうち最も多い30件を占める。 2024/04/17
  • (世界を見る眼)(「台湾リスク」と世界経済)第2回 台湾総統選挙後の中台関係と東アジアの安全保障 / 松本 はる香 2024年1月13日、台湾総統選挙が行われ、民主進歩党(民進党)の頼清徳候補が当選し、蔡英文から政権が受け継がれることが決まった。民進党が与党として二期8年を超え三期目の政権を担当するのは台湾史上初のこととなった。また、総統選挙と同時に台湾の国会に当たる立法院の選挙も行われた。台湾での選挙後、台湾有事のリスクは高まるのであろうか。 2024/04/12
  • (世界を見る眼)(「台湾リスク」と世界経済)第1回 中台関係の緊張が世界経済に与える影響 / 熊谷 聡松本 はる香 台湾と中国の関係は、歴史的にみても、そして今日に至るまで、東アジアはもとより世界の政治・経済・安全保障に大きな影響を及ぼしてきた。近年、中国が台湾に対して軍事的な圧力をかけることによって、「台湾リスク」とも言える台湾海峡における紛争の危険性が高まっている。台湾海峡における中台の緊張は、多くの国々にとって深刻な懸念材料となっている。特に、2021年3月、当時のデービッドソン米インド太平洋軍司令官が、中国が台湾を軍事的に併合する可能性に警鐘を鳴らしたあたりの時期より、国際社会の懸念が高まり 、こうした事態が起きることは「台湾有事」と呼ばれてきた。 2024/04/12