2023年8月、カンボジアで38年7カ月にわたって政権を担ったフン・セン首相が辞任し、長男のフン・マナエト前陸軍司令官が後を継いだ。なぜフン・センは大方の予想に反して早期の世襲に動いたのか。フン・マナエトら次世代の指導者らによる「世襲内閣」の誕生は、カンボジア政治においてどのような意味をもつのか。本書は、2023年総選挙とその後の新内閣を中心とする国家機関の人事の分析を通じてこれらの問いに答えていく。そこから明らかになるのは、フン・セン「政権」は終わっても、フン・セン「体制」はこれまでよりも強化された形で続いている点である。2023年総選挙と新内閣発足を経て何が変わり、何が変わっていないのか、急展開をみせるカンボジア政治のいまを読み解く。