スリランカでは、2005年に大統領に就任したマヒンダ・ラージャパクサとその一族が政治的な意思決定権を独占し、スリランカの民主主義は崩壊寸前と評された。途中で選挙に敗れ下野したものの、露骨な一族支配は2022年の反政府運動により辞任を余儀なくされるまで続いた。本書では、この特異な政治構造と展開に焦点を当て、スリランカ政治を理解するために多角的な分析を提供する。ラージャパクサ一族の権力基盤構築プロセス、彼らを取り巻く政治環境、権限を強化するために実施された憲法改正を検証する。さらに彼らの台頭を支えたシンハラ・ナショナリズムの役割や、選挙において決定的影響力を持つ、村に居住するシンハラ人の政治意識の変化、ラージャパクサ政権下の財政運営の特徴、そして同政権と中国との関係性について詳細に論考する。