出版物

eBook

アジア諸国・地域の「新しい労働運動」――韓国、台湾、フィリピン、タイ、バングラデシュ、スリランカ――

ebook

研究会成果

学術書

CC BY

アジア諸国・地域の「新しい労働運動」――韓国、台湾、フィリピン、タイ、バングラデシュ、スリランカ――

著者/編者

太田 仁志 編

出版年月

2025年1月

ISBNコード

978-4-258-04666-9

eBookをダウンロードする

一括版はリフロー型EPUB形式とPDF形式で提供します。

EPUBをお読みいただくには専用リーダーが必要です。

内容紹介

内容紹介

本書は、韓国、台湾、フィリピン、タイ、バングラデシュ、スリランカというアジア6か国・地域の労働運動に関する比較研究書である。アジアの労働運動は多様性に富むため、先行研究は共通の論点に焦点を当て、各国を論じるものが多い。それに対して本書は、「新しい労働運動」という様態から各国の労働運動を論じる。「新しい労働運動」は編者の前編著『新興国の「新しい労働運動」』で提示された視角である。「新しい労働運動」は、1970~80年代に途上国にみられた「新興国型の新しい労働運動」と、労働運動の活性化/再活性化/再生の文脈で論じられる「包摂・権利擁護型労働運動」の2つからなる。本書では各章でそれぞれ「新しい労働運動」を定義し、各国の労働運動の動態を論じている。アジアの大国・インドと中国の論考を所収していないのは、前書『新興国の「新しい労働運動」』で両国を論じているからである。本書と併せて前書をご覧いただければ幸いである。

https://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Jpn_Books/eBook/202103_04.html

目次

まえがき

PDF

序章 アジア諸国・地域の「新しい労働運動」の文脈

筆者:太田 仁志

PDF

第1章 韓国――グローバル化・雇用の不安定化に対応する民主化後の労働運動――

筆者:磯崎 典世

PDF

第2章 台湾――民主化と新しい労働運動――

筆者:何 明修(佐藤 幸人 訳)

PDF

第3章 フィリピン――社会運動ユニオニズムの展開――

筆者:鈴木 有理佳

PDF

第4章 タイ――国家コーポラティズムと社会運動ユニオニズム――

筆者:末廣 昭

PDF

第5章 バングラデシュ――労働運動の現在地――

筆者:村山 真弓

PDF

第6章 スリランカ――「新しい労働運動」、社会運動との距離、労働組合の分裂からみえるもの――

筆者:太田 仁志

PDF

終章 まとめと展望

筆者:太田 仁志

PDF

まえがき

まえがき

本書は、アジア経済研究所が2022~2023年度に実施した「アジア諸国の『新しい労働運動』」研究会の成果である。編者は本書刊行にたどり着けたことに大きく安堵し、またうれしく思っている。というのは、編者は研究会1年目の終盤、2023年2月に新型コロナ・ウィルスに感染し、以降今日に至るまで、後遺症に悩まされているからである。このため、とくに研究会2年目は研究会委員諸氏にご迷惑をおかけした。アジア経済研究所内の査読用草稿を2024年2月に提出後、編者は約2カ月の休職に入り、その後、休職を一時中断して査読への対応を行った。この「まえがき」は、編集部への入稿時に認めている。

本書はアジアを舞台にした、編者の前編著である『新興国の「新しい労働運動」』(2021年、アジア経済研究所)の後継の書である。2022年度に本研究会を組織できたのは、アジアの新しい労働運動を研究したいという編者のわがままによるところが大きい。わがままにお付き合いくださった末廣昭氏(東京大学名誉教授)、磯崎典世氏(学習院大学)、何明修氏(国立台湾大学)、村山真弓氏(ジェトロ理事)、鈴木有理佳氏(アジア経済研究所)の研究会委員に心より感謝する。

研究会にはアジア経済研究所の佐藤幸人、近田亮平、佐々木晶子、佐藤千鶴子、山口真美の諸氏もオブザーバーとして参加された。オブザーバー諸氏の指摘は、編者の関心の相対化に資している。佐藤幸人氏には、国立台湾大学の何明修氏をご紹介いただき、何氏執筆の台湾に関する論考(第2章)の和訳も快く引き受けてくださった。査読対応では、査読者の指摘にかかる何氏との大小、機微なやり取りまで担っていただいた。佐藤氏をはじめとするオブザーバー諸氏にもお礼申し上げる。

研究会では、1年度目の2022年に水野広祐氏(京都大学名誉教授)、浅見靖仁氏(法政大学)、金美珍氏(大東文化大学)の3名に、インドネシア、タイ、韓国の労働運動とそれぞれの新たな潮流について、また2023年には篠田徹氏(早稲田大学)に、アメリカを中心とする先進諸国の労働運動についてご講演いただいた。日本で労働運動研究の第一人者である篠田氏はその後、研究会にオブザーバーとしてご参加くださり、大所高所からのご助言をいただいた。

新型コロナ・パンデミックが収束に向かう時期であったとはいえ、本研究会では思ったようにアジア各国・地域での現地調査を実施することができなかった。それでも、バングラデシュ(2023年)とスリランカ(2024年)での聞き取り調査では、労働組合リーダーをはじめとする方々がそれぞれの知見を惜しみなく共有してくださった。本書の出版にあたり、2名の所内匿名査読者、アジア経済研究所学術情報センターの編集担当者、また統計資料に関して同図書館司書に適切なご助言、ご尽力をいただいた。研究会および本書の刊行にご協力くださったすべての方々に深く感謝する。なお、本書の記述は断りのないかぎり、2024年1月現在のものである。

前書に続き、本書は電子書籍/eBookを中心に据えた出版である。無料のEPUB(イーパブ)での閲覧のほか、PDFファイルのダウンロードも可能である。冊子体は有料だが、アマゾン、楽天ブックス、三省堂書店オンデマンドでPOD(プリント・オン・デマンド)が提供されている。本書はタイトルに「アジア」を掲げていながら、アジアの人口および経済大国のインドと中国に関する論考を所収していない。これは前書『新興国の「新しい労働運動」』で両国について論じていることによる。南アフリカ、ブラジルの「新しい労働運動」とあわせて、EPUB等でご覧いただければ幸いである。日本では途上国の労働運動研究は今日、ほとんど顧みられることのない領域である。途上国に関する労働運動研究が日本で進むことを願う。

2024年9月 編者