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アジアのワンヘルス――人・動物・環境の健康をめぐるリスクとガバナンス――
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内容紹介
内容紹介
本書は、人・動物・環境の「健康」を統合的にとらえる「ワンヘルス」の課題について、新興感染症のホットスポットとされるアジアをフィールドに多角的に検討したものである。COVID-19のようなパンデミックを防ぐためには、自然資本への投資や多様なステークホルダーの協力など経済、社会、ガバナンスに関する取り組みが必要であり、そのための社会科学的な研究が求められている。本書ではとくに、森林保全、食肉のフードシステム、野生動物の生息地と近接する地域社会、野生・畜産動物の利用をめぐる国家の規制、国際的な野生動物取引などに注目して、人・動物・環境の関係のなかに潜むリスクとそれらの健康を統合的にとらえるためのガバナンスのあり方を論じている。アジアにおけるワンヘルス・アプローチの現状と課題を理解するための解説書として、研究者だけでなく、広く学生、政策担当者、企業家、市民活動家など既存の分野・領域を越えた多くの方々に手に取っていただけることを期待したい。
目次
まえがき
第Ⅰ部 総説
第1章 ワンヘルス・アプローチの視角――リスクとガバナンス――
筆者:大塚 健司
第2章 ワンヘルスのグローバルな動向――草の根運動から国際条約へ――
筆者:戸上 絵理
第3章 森林とワンヘルス
筆者:道田 悦代
第4章 食肉のフードシステムとワンヘルス
筆者:山田 七絵
第Ⅱ部 地域研究
第5章 中国の野生動物関連政策の展開にみるワンヘルス・アプローチの課題――COVID-19の原因究明と対応をめぐって――
筆者:大塚 健司
第6章 ベトナムの家畜市場と人獣共通感染症対策――ワンヘルス・アプローチの実現と課題――
筆者:坂田 正三
第7章 熱帯アジアの地域社会における開発・生業転換と新興感染症リスク――ラオス・サワンナケート県セポン郡の事例――
筆者:蒋 宏偉
第8章 日本における中山間地域の変容と「鳥獣―人」の接近
筆者:藤田 香
第Ⅲ部 データ整備と利用
第10章 ワンヘルス・アプローチにおける時空間データの利用と改善――メコン地域の感染症リスク評価を事例に――
筆者:ケオラ スックニラン
あとがき
まえがき
まえがき
本書は、2022年度から2023年度にかけてアジア経済研究所の基礎的総合的研究事業の一環として実施した「ワンヘルス研究の学際的アプローチ」研究会の主な成果である。
「ワンヘルス」は、2000年代に入りSARS(重症急性呼吸器症候群)などの新興感染症(その多くは「人獣共通感染症」ともいわれる)が世界で頻繁に流行し大きな社会経済的影響を与えるようになったことを背景に、医学、獣医学、食農、野生動物保護などの専門家によって提唱されるようになった概念であり、人・動物・環境の「健康」を分野横断的かつ統合的にとらえるアプローチである。このたび世界的に甚大な被害・影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックを受けて、改めてワンヘルス・アプローチが注目されるようになり、パンデミックの防止に向けた取り組みとしてG7やG20でも言及されるようになっている。そのなかで自然資本への投資や多様なステークホルダー間の協力などワンヘルス・アプローチにおける経済、社会、ガバナンスの側面の重要性が認識されつつあるものの、社会科学的な研究は立ち遅れているのが現状である。
こうした背景をふまえ、本書は新興感染症のホットスポットとされるアジアをフィールドにしてワンヘルス・アプローチを多角的に検討したものである。本書は、環境学、獣医学・公衆衛生学、経済学、人類生態学など多様な専門分野から成る執筆陣によって書かれた学際的な研究書となっており、それぞれの専門分野内にとどまらず、学生、研究者、政策担当者、企業家、市民活動家など分野・領域を越えた多くの方々がワンヘルス・アプローチへの関心と理解を深めるきっかけになれば幸いである。
編者