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朝鮮民主主義人民共和国の党軍関係
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内容紹介
内容紹介
朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)では1948年9月9日の建国当初から金日成が1994年の死去まで最高指導者として君臨し、その後、その息子である金正日が2011年12月17日に死去するまで2代目の最高指導者となり、そのまた息子である金正恩が3代目最高指導者となって今日に至る。こうした疑似王朝的な政治体制が安定して維持されている最大の要因のひとつとして、それぞれの最高指導者が軍隊と非常に密接な関係にあることが挙げられる。本書は金日成、金正日、金正恩と軍隊の関係を扱うものである。
本書では最高指導者と軍隊の関係を議論するための前提として、軍隊の規模と政治機関での議席数によって軍隊の社会的地位を考察し、また、政治指導者の軍隊に対する活動内容を知るための基礎作業として人民軍部隊のコードナンバーと属性および位置に関する調査を行う。その上で金日成時代における軍隊の建設と軍隊統制の仕組みが形成されていく過程、金正日が軍隊を掌握していく過程が明らかにされ、金正恩時代に入ってからの軍隊統制の変化が示される。
目次
まえがき
序章 体制の維持と軍隊の役割
第1章 軍隊の規模
第2章 最高人民会議における軍人数
第3章 朝鮮人民軍のコードナンバー
第4章 金日成の軍隊建設と政治統制制度の構築
第5章 金正日の軍隊掌握過程
第6章 金正恩の軍隊改革
まえがき
まえがき
1991年4月に筆者はアジア経済研究所に入所して社会主義朝鮮に関する研究に携わるようになった。その頃の日本社会ではベルリンの壁の解放とそれに続く、東欧社会主義政権とソ連の崩壊の印象が強く、少なからぬ論者が朝鮮労働党の一党支配体制も近いうちに崩壊する運命にあると予測していた。しかし、朝鮮労働党はその後の核兵器開発疑惑をめぐるアメリカとの対立、初代最高指導者金日成の死去、食糧難と動力難といった試練を乗り越え、今日に至るまで、政権党として強固な政治体制を維持しており、一党支配体制が崩壊する兆しはみられない。
筆者は朝鮮半島の政治と経済の動向を分析するなかで、強固な政治体制を構成する要素のひとつが軍隊にあることに気づき、1998年から党機関紙や政府機関紙などの記事や最高指導者の著作、重要人物の回想録といった平壌の公式報道および出版物、ソウルなどで刊行された亡命者の著作のなかから朝鮮人民軍に関する情報を集めてきた。そして、断片的な情報を繋ぎ合わせていくことによって、軍隊の主要な幹部と最高指導者との関係、主要な部隊の沿革と最高指導者との関係が徐々に浮かび上がるようになった。この作業には、アジア経済研究所の動向分析事業によってこの国の新聞が購入されたこと、研究所図書館が多くの平壌の出版物を所蔵していることが大きな助けとなった。
さらに、筆者は研究所からソウルとモスクワで研究する機会を与えられたことで、韓国統一部北韓資料センター、慶南大学校極東問題研究所の図書館、ロシアの国立図書館、外国文献図書館に所蔵されている朝鮮関連の資料を閲覧し、作業を補強することができた。そして、研究所の2023年度基礎的総合的研究「朝鮮民主主義人民共和国の党軍関係」研究会(個人研究)として本書を執筆する運びとなった。
本書で示されるのは、軍隊の社会的地位の高さ、その軍隊に対する最高指導者による統制する仕組み、現最高指導者による軍隊統制の状況である。民間武装組織の建設、海外への派兵、海外での軍隊建設支援といった問題はとりあげていない。
著 者