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海外研究員レポート

2019年

  • シンガポールにおける華人アイデンティティと中国 / 江藤 名保子 マレー半島の先端に位置する都市国家シンガポール。ダボス会議の主催者として知られる世界経済フォーラムが発表した『2019世界競争力報告』では、世界1位にランクインした屈指の先進都市国家である。海上交通の要衝であるマラッカ海峡に面していることから、古くからゴムや錫などの交易地として栄えてきた。2019年はイギリス東インド会社のトーマス・スタンフォード・ラッフルズによるシンガポール上陸200周年であり、貿易中継地としてスタートした発展の歴史を振り返るイベントが多く開催されている。 2019/11/27
  • 日韓関係の逆コース / 中川 雅彦 日韓関係の悪化が続き、とくに2019年に入って日本の報道では「戦後最悪」「過去最悪」といった言葉で語られるようになり、韓国の報道でも「最悪」という表現がみられるようになった。 2019/11/08
  • 東南アジアにおけるデジタル資料のアクセシビリティ向上を目指して / 土佐 美菜実 東南アジア諸国連合、通称アセアン(ASEAN)と呼ばれる地域機構において、その主な目的が経済協力や安全保障協力であることはよく知られているところである。このほか、ASEANという枠組みの中では、域内の文化を促進することも、各国の経済発展と同様に大きな使命として認識されている。各地域の文化や歴史を尊重するためにも、学術研究の発展を支援することが重要であると考えられている。また、東南アジア諸国の歴史を記した貴重な資料を後世に伝えることも、当該地域の発展に大きく貢献するものである。 2019/10/09
  • 世界銀行ほか共催「仕事と開発 国際会議」に参加して / 牧野 百恵 2019年6月6~7日、ワシントンDCの世界銀行において、「途上国の仕事にまつわる問題を改善する」ことをテーマとする「仕事と開発 国際会議」(原題はJob and Development Conference)が開催された。世界銀行、Institute of Labor Economics(IZA)、Network on Jobs and Development(NJD)の共催である。筆者は論文" Labor Market Information and Parental Attitude toward Daughters' Labor Force Participation: Experimental Evidence from Rural Pakistan"を発表する機会を得て、本会議に出席した。世界銀行の世界開発報告2013 (World Bank 2012)のテーマが「仕事=Jobs」であったことからも分かるように、途上国の貧困削減および経済成長において、「仕事」が重要な役割を果たすことは、論をまたないだろう。以下は本会議の参加報告である。 2019/08/26
  • ニュージーランドの大学と研究評価 / 片岡 真輝 ニュージーランドには8つの大学がある。8校中7校がいわゆる総合大学であり、サイエンスから人文・社会科学系まで幅広いコースを提供している。そして、ニュージーランドの大学は総じて国際的な評価が高い。QS世界大学ランキング でも8校すべてが上位500位にランクされている。現在、およそ17万人がニュージーランドの大学で勉強しており、その内およそ16%が留学生である。また、30%が大学院生である(Universities New Zealand 2018)。 2019/07/19
  • シンガポールのデジタル資料横断検索サービス“OneSearch”を使ってみよう / 土佐 美菜実 昨今、私たちの生活はあらゆる場面においてデジタル化が進んでいるが、筆者が滞在しているシンガポールではことさらその状況を実感させられる。 2019/07/12
  • 朝鮮最高人民会議第14期第1次会議で組織された政権機関 / 中川 雅彦 朝鮮民主主義人民共和国では2019年3月12日に、日本の国会総選挙に相当する最高人民会議代議員選挙が実施され、4月11日に最高人民会議第14期第1次会議が開催された。この会議では、金正恩が国家の最高位である国務委員会委員長に再選され、国務委員会および内閣などの国家機関が改めて組織された。ここでは、今回組織された最高人民会議、国務委員会、内閣の人員構成をみていく。 2019/06/28
  • 国際関係論ジャーナルの盛衰(続)――フィールド・ジャーナル、学際ジャーナルは権威あるジャーナルを超えるか? / 浜中 慎太郎 国際関係論研究においては、その全般をカバーする権威あるトップ・ジャーナルの影響力が依然強いのであろうか。それとも分野の細分化・専門化に伴い、紛争研究や国際政治経済学(International Political Economy、以下IPE)等の各分野に対象を絞ったフィールド・ジャーナルに最先端の研究成果が掲載されるのであろうか。あるいは国際関係論を超えた、より学際的なジャーナルに良質のペーパーが集まり始めているのだろうか。本稿ではこれらの問題について、インパクト・ファクター(Impact Factor、以下IF )の傾向を踏まえつつ考察を行う。 2019/05/17
  • クライストチャーチ銃撃事件とニュージーランドの反応――悲劇を繰り返さないために / 片岡 真輝 2019年3月15日午後、ニュージーランドのクライストチャーチで銃撃事件が発生した。事件があったのは、金曜礼拝のために多くのイスラム教徒が集まっていた2カ所のモスクで、50人が犠牲になるというニュージーランド史上前例のない大惨事となった。その被害者の多さに加え、犯人が白人至上主義を伺わせる犯行声明をSNS上に投稿しており、銃撃の様子をライブ映像で放映していたという事実が、さらに人々にショックを与えた。 2019/03/28
  • インドネシアの高等教育における巨大プログラム“KKN” / 土佐 美菜実 インドネシアの大学生は大変だ。筆者がKKN と呼ばれるインドネシアの高等教育機関で行われているプログラムを知った時、最初に思った感想がこれである。KKNとは、実践活動授業(Kuliah Kerja Nyata)の略語で、インドネシア国内の農村地域などへ学生がグループ単位で赴き、特定の課題テーマに取り組むものである。テーマは地域開発や貧困対策が中心だ。活動の特徴として、参加する学生たちはお互いに専門分野の垣根を超えて協力し合うこと、そして履修期間が約2カ月間という長期にわたることなどがあげられる。 2019/02/12
  • 国際関係論ジャーナルの盛衰――米国系の覇権凋落(?)と欧州系・中国系の台頭―― / 浜中 慎太郎 ひと昔前までは、「理論に関する問題」 を扱う論文が米国の主要な国際関係論(International Relations)ジャーナルにおいて重要な地位を占めていたように思われる。しかしここ十数年で状況は一変し、定量研究の波が押し寄せた。米国で主流の定量研究においては、変数の因果関係あるいは相関関係に関する仮説を理論と呼んでいるふしがあり、国際関係の見方についての根本的な相違についての論争をジャーナル誌上で見ることは極めて稀となった。一方で、定量研究への傾向は日本人研究者 に有利な状況かもしれない。なぜなら、欧米の文化と哲学、歴史を前提に発展してきた国際関係論の理論談義に日本人が割って入るのは極めて困難だからである。定量的な実証研究であれば、日本人研究者でも一定の貢献をすることは不可能ではない。 2019/02/06
  • ミャンマー農業・農村開発研究の動向 / 久保 公二 近年、欧米の研究者によるミャンマー農業・農村開発研究が急速に拡大している。長らく軍事政権下にあり、欧米諸国から経済制裁を受けていたミャンマーでは、一部の例外 を除いて欧米の研究者が農村調査に基づく研究を行うことはなかった。ミャンマー農村研究では、高橋昭雄(1992、2000)や藤田幸一(Fujita et al. 2009)、岡本郁子(Okamoto 2008)をはじめとする日本人研究者による限られた研究が存在する程度であった。しかし、2011年3月にミャンマーが民政化し、その後、経済制裁も解除されたことで、欧米の研究者による農村調査に基づく研究が増えている。 2019/01/28
  • 韓国の大学入試制度改編 / 二階 宏之 韓国教育部は2018年8月17日に「2022年度大学入学制度改編方案と高校教育革新方案」を発表した。韓国ではあまりに激しい受験戦争が社会問題ともなっているが、今回の大学入試制度の改編案は、2017年新たに発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権の下で、学生の入試負担の緩和を最大の目的としてまとめられた。しかし、この改編案が本当に学生の負担を軽減するものとなっているかについて、早くもいくつかの問題点が指摘されている。本稿では、韓国の大学入試選考の現況と今回の改編案の概要を紹介する。 2019/01/23
  • チャイナ・シンドロームとその後 / 佐藤 仁志 「貿易によって米国の雇用が奪われている」とは米国のトランプ大統領の一貫した主張である。もちろん、貿易の制限が雇用回復につながる保証はない。しかしこの主張を、ありもしない幻想を有権者に植えつける政策アピールと片付けてしまうのは早計である。1990年代以降に急速に増加した中国との貿易が米国製造業の雇用を大きく減らしたという指摘は、学界からもなされているからである。 2019/01/18