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海外研究員レポート

2021年

  • 平和構築と開発援助の未来――米軍のアフガニスタン撤退が与える影響 / 能勢 美紀 2021年8月のタリバーンによるカブール制圧と米軍をはじめとする多国籍軍の撤退は世界中に大きな衝撃を与えた。筆者が滞在しているオランダも例外ではない。ただ、日本での受け止め方と大きく違うと感じるのは、この出来事を、「多額の開発援助を投じた平和構築活動の失敗」と捉え、今後の平和構築活動そのもののあり方が議論の中心のひとつになっていることである。特にオランダをはじめとするNATO加盟国は、ISAF(International Security Assistance Force, 国際治安支援部隊) と、軍事部門と復興支援部門からなるPRTs(Provincial Reconstruction Teams, 地方復興チーム)を通して戦後の早い時期から治安維持と復興に携わってきた。PRTsの軍事部門は実質的にISAFが担っており、軍隊に対して「安定化」のための積極的な武力行使を容認する平和構築活動のあり方には当初から懸念があっただけに(Maley 2007)、現在、軍事的な関与のあり方だけでなく、今後の開発援助と平和構築のあり方が問われているといえる。 2021/12/06
  • 家から半径2kmのSDGs――コロナ禍のスイスで見つけた身近な取組み / 佐々木 晶子 スイスはアルプスの山々に囲まれた、美しく自然豊かな国というイメージを持つ人は多いだろう。筆者が赴任したジュネーブ州もレマン湖やジュラ山脈など素晴らしい自然に恵まれており、そうした環境の保全を目指し、化石燃料を使わない公共交通機関の整備、再生可能エネルギーの普及など先進的な環境政策も進められている。だがその一方で、宅地開発による緑地の消失やコロナ危機で露呈した経済格差や貧困など課題も少なくない。今回は、ジュネーブ州の持続可能なまちづくりに向けた取組みや課題について、生活者の視点から紹介したい。 2021/03/30
  • 交換文化と自給生活でコロナ危機を乗り越えるフィジー / 片岡 真輝 「靴とオムツを交換しませんか。」これは、昨年来フィジーで話題となっているフェイスブックのページ「Barter for Better Fiji(より良いフィジーのための物々交換)」に投稿された交換の提案だ。Barter for Better Fijiは、一言で言えば物々交換を行うためのプラットフォームだ。お金のやり取りは一切禁止であり、欲しいものとあげたいものを投稿し、物々交換の相手を探すページである。コロナ禍の経済苦境に対応するために立ち上げられた同ページは瞬く間に話題となり、2021年2月現在、人口約90万人の同国で実に20万人近くがこのコミュニティに参加している。Barter for Better Fijiは日本のメディアでも取り上げられたので 、ご存知の方も多いだろう。 2021/03/16