IDEスクエア
シンガポールのデジタル資料横断検索サービス“OneSearch”を使ってみよう
PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00051425
土佐 美菜実
2019年7月
(2,242字)
豊富なデジタル資料
昨今、私たちの生活はあらゆる場面においてデジタル化が進んでいるが、筆者が滞在しているシンガポールではことさらその状況を実感させられる。
例えば、シンガポールには図書館、公文書館、博物館などが保管する資料をインターネット上で一般向けに提供するサービスが充実している。シンガポールで発行された過去の新聞記事を検索できるSingaporeSGや、歴代首相や大臣など、この国のトップたちのスピーチと政府のプレスリリースが検索できるSpeeches and Press Releasesなどがある。
ただ、個々のデータベースは独立して運用されており、利用者は検索のためにそれぞれのデータベースに逐一あたる必要がある。このため、そもそも多種多様なデータベースがあることを知っておかないと、目的の情報にたどり着く可能性は狭まってしまう。
そこで、これらを一括で検索してくれるポータルサイトがOneSearchである。OneSearchは2014年より試験的にサービスを開始し、徐々にサービスを拡大させながら現在に至る。以下では、このOneSearchについて紹介したいと思う。
OneSearchの魅力
表1 主なOneSearch検索対象データベース一覧
(注)*1提供元の図書館とは、国立図書館及び情報通信省国家図書館局が管轄する公共図書館である。
*2提供元の博物館とは、文化・社会・青年省国家遺産局が管轄する博物館施設である。
たとえ利用者がすべてのデータベースの存在を把握していなくても、OneSearchからキーワードを入力し、検索することで一度にすべてのデータベース先へ情報をあたることが可能になった(表1)。
実際にOneSearchを見てみよう。トップページには中央に検索窓が用意されているほか、画面下には検索対象の資料のカテゴリーが以下の9つに分類され、図のようにアイコンで示されている(図1、表2)。
図1 OneSearchトップページ
表2 OneSearch内の資料カテゴリー一覧
図書や雑誌、画像のほか、ウェブサイト、博物館が所蔵する作品、そして視聴覚資料などもまとめて検索できる。こうした多様なデータベースの横断検索を可能にしたOneSearchの便利さに感心するのはもちろん、そもそもこれだけたくさんのデジタルコンテンツを公開してきたことにも感嘆してしまう。
さて、まずは東南アジア島嶼部の各地で見られる伝統的なろうけつ染め布地、バティック(Batik)に関する情報を検索してみたいと思う。はじめに中央の検索窓に“Batik”とだけ入力し、検索してみた。すると該当した200件以上の関連図書の情報が一覧として表示された。これははじめに検索対象の資料カテゴリーを指定しなかったので、デフォルトとして図書の検索結果が中央に登場する。そして右側には、そのほかの資料カテゴリーの検索結果も併せて表示されるので、他のカテゴリーでどのような資料がヒットしたのか確認することができる(図2)。
図2 “Batik”で検索した結果
図3 資料カテゴリーを“Physical Objects”に変更する
図4 画像とともに作品の詳細情報が確認できる
さらに他のトピックにも挑戦してみよう。シンガポールの歴史において看過できない出来事に、1942~45年の日本占領がある。
シンガポールの日本占領に関する資料を探すため、まずはトップページで“Japanese occupation”を入力して検索を開始する。先ほどと同様にまずは図書の検索結果(およそ1000件)が中央に表示される。そして今度は右側のカテゴリーをチェックしてみると、“Audiovisuals”の資料が4000件以上あることがわかる。どんな資料があるのか、クリックしてみる。視聴覚資料の検索結果に切り替わり、一覧が表示される(図5)。
図5 “Audiovisuals”を選ぶと4000件以上のヒット資料が表示される
参考文献
- TANG, Chris. 2015. "Achieving the Ables: Reimagining the Digital Discovery Services at the National Library of Singapore." 81st IFLA WLIC, Cape Town, South Africa.
著者プロフィール
土佐美菜実(とさみなみ)。ジェトロ・アジア経済研究所海外研究員(在シンガポール)。2013年ライブラリアンとしてアジア経済研究所に入所。東南アジア地域を担当。