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(2024年インドネシアの選挙)第1回 大統領選挙の見どころ――ジョコウィ路線の継承をめぐる三つ巴の争い
Highlights of the upcoming presidential election in Indonesia: A three-way race over Jokowi’s legacy
PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/0002000836
2024年1月
(7,333字)
2024年はインドネシアにとって大きな節目の年となる。2月14日、2億480万人もの有権者が直接投票により大統領を選出する。国家元首である大統領を直接選挙するという点で規模としては世界最大となる。
5年前の選挙は、2014年に就任したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権の実績を評価する選挙であったが、そのジョコウィ大統領が憲法の定める2期10年の任期を満了することに伴い、今回は新しい政権を選択する選挙となる。次期大統領が政権を担当する今後5年ないし10年は、2030年代に終わると予測されている人口ボーナス期(15〜64歳の生産年齢人口の総人口に占める割合が上昇する期間)の最終局面に重なる。つまり、インドネシアにとっては豊富な労働力を生かして経済成長を実現する最後のチャンスとなる。このタイミングでインドネシア国民は誰を大統領に選ぶのだろうか。
「2024年インドネシア大統領選挙」特集の初回では、正副大統領候補者を紹介しながら今回の大統領選の見どころを解説する。
三つ巴の戦い──現政権に対する支持率が高いなかでの選挙戦
2024年大統領選挙は、ジョコウィ政権の路線を忠実に継承するのか、それとも修正するのかが争点となっている。10年前の2014年も任期満了を迎えたスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領の後任を選ぶ大統領選挙だったが、その時とは選挙の構図が大きく異なっている。この背景にあるのは、現ジョコウィ政権に対する有権者からの高い支持である。現地紙コンパスによる世論調査をみると、ジョコウィ政権に対する支持率はほぼ常に60%以上を維持してきただけでなく、任期終了が近づきつつある2024年1月になっても73.5%と極めて高い水準を維持している。
この高い支持率は、ジョコウィ政権の経済運営に対する国民の評価を反映している。なかでも、インフレ率が足元では2%台にまで低下していることが評価されている。2022年後半から2023年前半にかけて世界的な物価高騰がみられたなか、インドネシアでも、食用油をはじめとした消費財価格が高騰した。一時はインフレ率が6%近くに迫り、政権への支持率は62%まで下がった。しかし、政府の適切な対応もあってその後はインフレ率が落ち着き、支持率も回復している(図1)。
この現政権に対する高い支持を自らへの投票に結びつけようと「ジョコウィ路線の継承」をアピールしている候補者が、現国防大臣のプラボウォ・スビアントと中ジャワ州知事を2023年まで2期10年つとめたガンジャル・プラノウォである。一方、彼らとは逆に現政権に対して批判的な立場をとっているのが前ジャカルタ州知事のアニス・バスウェダンである。
なお、候補者数が3人に限られているのには理由がある。総選挙法により、正副大統領候補者ペアを擁立できるのは、前回の国会議員選挙で20%以上の議席数ないしは25%以上の有効投票数を確保した政党もしくは政党連合と定められているためである。今回、単独で大統領候補者を決定できた政党はジョコウィ大統領が所属する闘争民主党(PDIP)のみであった。その闘争民主党を中心とする政党連合からはガンジャルが大統領候補として出馬している。プラボウォは自らが党首をつとめるグリンドラ党を含む7政党の大連合から、アニスはナスデム党が擁立するかたちで3政党の連合から出馬している(表1)。
「ジョコウィの継承者」をアピールするプラボウォ
ジョコウィ大統領の忠実な継承者となることを猛アピールしているのがプラボウォ候補である。その選挙公約の文書で掲げられたビジョン「黄金のインドネシア2045に向けて先進インドネシアをともに」には、2019年選挙時のジョコウィ陣営のビジョンや第2期政権の内閣の名称となった「先進インドネシア」、さらには第2期政権に入ってからジョコウィ大統領が頻繁に用いている「黄金のインドネシア2045」というフレーズが盛り込まれている(表1)。つまり、プラボウォの公約は、ジョコウィ政権が提示した「建国100周年にあたる2045年までに高所得国・先進国になる」という目標を踏襲したものとなっているのである。
また、公約文書のなかでプラボウォは、8項目からなるミッションを「8つの希望」と名付けて列挙している。これは、ジョコウィが2014年の選挙公約で9項目の優先すべきアジェンダを「9つの希望」と名付けたことを意識したものである。このように、公約文書のフォーマットを見ただけでも、プラボウォ陣営が「ジョコウィの継承者」としてのイメージ作りを選挙戦略の中心に据えていることがはっきりと分かる。
しかし、プラボウォ候補は、2014年と2019年の選挙でジョコウィと大統領の座を激しく争った政治家である。その2回の選挙では、両陣営がインターネット空間での誹謗中傷を含めて激しい選挙戦を繰り広げ、有権者もジョコウィ支持派とプラボウォ支持派とに分断された。2019年の大統領選後には、選挙結果を受け入れられないプラボウォ支持者によるデモが暴動に発展して死者が出た。新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種するかどうかでも支持者間で態度がはっきりと分かれるなど、選挙後も社会の分断が影を落とした(Higashikata 2023)。
ところが、プラボウォは、2019年の第2期ジョコウィ政権でジョコウィの呼びかけに応じて国防大臣に就任、自らが率いるグリンドラ党は連立与党に加わり、ジョコウィとの対立を解消した。2024年選挙へ出馬するにあたっては、政党連合名をジョコウィ第2期内閣の名称になぞらえて「先進インドネシア連合」としたり、「我々はチーム・ジョコウィである」と発言したりするなど、プラボウォ陣営はジョコウィ路線の継承を前面に出す方向に大きく戦略を転換した。
実は、選挙に向けた動きが本格化し始めた当初、ジョコウィの後継者とみなされていたのはガンジャルであった。各種世論調査をみると、2022年後半から2023年10月にかけては、先行したガンジャルとプラボウォは首位の座を競い合っていた。ところが、選挙管理委員会である総選挙委員会(KPU)への立候補届が締め切られる直前に転機が訪れる。
大きな転機となった副大統領候補ギブランの擁立
転機となったのは、ジョコウィの長男でスラカルタ(ソロ)市長のギブラン・ラカブミン・ラカの副大統領候補ポストへの抜擢であった。2023年8月のコンパス紙の世論調査をみると、プラボウォ単独での支持率は31.3%とガンジャルの34.1%を下回っていたのが、正副大統領候補ペア確定後の12月の世論調査では、プラボウォ=ギブラン組の支持率は39.3%とガンジャル=マフッド組の15.3%を大きく上回った。
36歳のギブランは、他の候補と比べてひときわ若い。本来であれば総選挙法の定める立候補年齢制限(40歳以上)のため立候補できないはずであった。ところが、この条項について出されていた違憲審査請求に対して、10月16日に憲法裁判所が「地方首長を含む選挙で選ばれた公職経験者を例外とする」との判断を示したことから、ギブランの立候補が可能になったのである。プラボウォは、その判決をうけてギブラン擁立を決定し、締め切り直前の10月25日に総選挙委員会に立候補を届け出た1。
プラボウォは、ギブランを副大統領候補に据えることによって、ギブランと年齢の近い若年層、特に27歳(2024年時点)以下の「Z世代」と呼ばれる有権者からの支持を獲得することに成功し、ガンジャルを上回る高い支持率を獲得できたと考えられる。Z世代の若い有権者には、1998年以前のスハルトによる独裁体制の記憶もなければ、国全体が大混乱に陥った1997〜1998年の民主化運動の記憶もない。プラボウォには、スハルト時代の陸軍幹部として民主化活動家を弾圧するなどさまざまな人権侵害に関与していた過去に対する批判が常に付きまとっている。しかし、若い有権者はプラボウォに対してそうした負の印象をほとんど抱いておらず、むしろ「かわいらしい(Gemoy)」と感じている。そうしたイメージ作りのために、プラボウォ陣営も、正副大統領候補者2人をピクサー風アニメ・キャラクターにした画像を使って選挙運動を展開している。
プラボウォは、過去2回の選挙戦では、「男らしさ」や「宗教的敬虔さ」をアピールしてナショナリストやイスラーム保守派に訴えかける戦略をとっていたが、今回は、有権者の過半数を占める40歳以下の若い有権者にアピールするために、「親しみやすさ」を強調する選挙戦略に方向転換したのである。ギブランの擁立も、若い世代の支持を獲得することを狙った戦略のひとつだと考えられる。
プラボウォに対する支持が上昇しているもうひとつの理由に、かつてジョコウィが高い得票率を誇った地域、逆に言えばプラボウォの人気が低かった地域で、プラボウォ=ギブラン組への支持が高まっていることがあげられる。過去の選挙でプラボウォは、イスラーム教組織の影響力の強いスマトラやジャワ島西部などで高い支持を獲得していた(図2の青色で塗られた地域)。一方、大票田のジャワ島中部や東部、非イスラーム教徒の多いインドネシア東部地域ではジョコウィに大きく差をつけられることが多かった(図2の赤色で塗られた地域)。ところが、世論調査をみると、8月時点ではプラボウォ支持の少なかった中ジャワ州や東ジャワ州などで、12月に入ってプラボウォ=ギブラン組の支持率が上昇している。こうした地域でプラボウォが支持を伸ばしているのは、ジョコウィの長男であるギブランがプラボウォの副大統領候補になったことで、かつてのジョコウィ支持者がプラボウォ支持に鞍替えしているためだと考えられる。
図2 2019年大統領選挙でジョコウィの得票率が高かった地域・低かった地域
(注)赤色(青色)が濃くなるほどジョコウィの得票率が高(低)かったことを示す。
詳細は川村・東方(2020)を参照。
(出所)総選挙委員会の資料をもとに筆者作成。
ジョコウィ批判票を取り込むアニス
ジョコウィ路線の継承を謳うプラボウォ=ギブラン組とは対照的に、現政権に批判的な有権者の支持を取り付けているのが、アニス・バスウェダンとムハイミン・イスカンダルのペアである。そのムハイミンが党首をつとめる民族覚醒党(PKB)と、ナスデム党、そして福祉正義党(PKS)の組む政党連合名が「統一のための変革連合」であることから分かるように、アニス=ムハイミン組は現状からの変化を有権者に訴えかけている。
ただし、選挙公約をみると、アニス候補も教育や保健といった人的資本への投資や貧困削減策といった社会保障の拡充などを重視しており、基本方針としては現政権の政策を引き継ぐかたちになっていて、政策面で他陣営と大きな違いはない。選挙公約のなかで最も大きく異なるのは、他の候補者らがジャカルタからカリマンタン(ボルネオ島)東部への首都移転事業の継続を訴えているのに対し、アニスは、選挙戦に入ってから、首都移転の見直しを明言するようになった点である2。このほかにも、インターネット空間上での政府批判発言を委縮させ、表現の自由を侵害しているとして批判されてきた電子情報取引法の改正を訴えるなど、アニスは、ジョコウィ政権から距離をとって政権に批判的な票を集める戦略をとっている。
実は、アニスは、2014年の大統領選ではジョコウィ陣営の選挙対策チームに入り、第1期ジョコウィ内閣では文化・初中等教育大臣に就任した人物である。しかし、2016年の内閣改造で更迭された後、2017年のジャカルタ州知事選挙に立候補して州知事の座を勝ち取った。この時にアニスと対峙したのがジョコウィの大統領就任に伴い副知事から知事へと昇格していたバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)であった。
この州知事選挙の際、アニスはイスラーム保守派と組んだうえで、アホックが華人系クリスチャンであるというアイデンティティを争点とした選挙戦に持ち込んでいる。そして、当初は人気の高かったアホックの追い落としに成功したのであった。この頃からアニスはジョコウィと距離をとるようになった。
ジョコウィ大統領の支持率が高いこともあり、ジョコウィ路線を批判してきたアニスの支持率は他の2候補を下回る状況が続いていた。しかし、直近の世論調査ではアニス=ムハイミン組がガンジャル=マフッド組の支持率を上回る結果も出始めている。プラボウォ陣営がジョコウィ路線の継承を強く打ち出すにつれて、アニスが過去の選挙におけるプラボウォ支持層=反ジョコウィ層の受け皿になりつつあると考えられる(LSIの2023年12月の世論調査結果)。
失速していくガンジャル
アニスへの支持が上昇する傾向にある一方で、有権者の支持を急速に失いつつあるのがガンジャルである。ガンジャルは、国会第1党で、ジョコウィも所属する闘争民主党の政治家である。ただしジョコウィとは異なり同党生え抜きの政治家である。2004年から闘争民主党所属の国会議員として活動し、2013年からは中ジャワ州知事を2期10年務めた。
ガンジャルはジョコウィと同じ中ジャワ出身で、庶民派の政治スタイルもジョコウィに似ていると評されていた。2023年1月時点の世論調査では、2019年にジョコウィを選んだ有権者はガンジャルを支持する傾向が最も強いことが示されるなど、ガンジャルはジョコウィの継承者とみなされており、最有力候補として先行していた。ところが、思わぬところでその人気に陰りが生じる。
2023年3月、サッカーの20歳以下(U20)男子ワールドカップ大会開催にあたり、ガンジャルは、開催地のひとつとなっていた中ジャワ州の知事としてイスラエル代表の入国を拒否するとの声明を出した。人気政治家で、宗教と政治を切り離して考える世俗派の政治家と思われていたガンジャルの声明の影響は大きく、国際サッカー連盟(FIFA)はインドネシアでの大会開催を取り消してしまった。インドネシアで最も人気のあるスポーツであるサッカーの世界大会開催を心待ちにしていた若い世代の落胆は大きく、その後、ガンジャルの支持率は落ち込んだ。
ただし、この事件直後の4月、ガンジャルは闘争民主党のメガワティ・スカルノプトリ党首からついに同党の大統領候補としての承認を勝ち取ることになる。そしてその半年後の10月、ガンジャルの副大統領候補に選ばれたのは、第2期ジョコウィ内閣で政治・法務・治安担当調整大臣を務めるマフッド・MDであった。マフッドは、2000〜2001年にアブドゥルラフマン・ワヒド内閣で国防大臣を務めたほか、2008〜2013年までは憲法裁判所長官も務めており、政治・行政経験が豊富である。ガンジャルとマフッドの2人の経歴は、経験豊富な政治家として有権者に安心感を与えると期待された。しかし、それが支持率に反映されることなく、プラボウォ=ギブラン組との大きな差は埋まらないままである。
こうしたガンジャル失速の根本的な原因は、ジョコウィとメガワティとの間に生じた政治的対立に求められる。大統領退任後も政治的影響力を保持したいジョコウィと、国会第1党の党首として政局の主導権を握りたいメガワティは、自らがキングメーカーたらんとして主導権争いを続けてきた。大統領選を前にジョコウィ周辺から「大統領選の延期」や「憲法改正による大統領3選容認」といった動きが出てきたときにも、闘争民主党はいち早くこれを拒否するなど、大統領選が近づくにつれて両者の軋轢は深まっていった。
二人の対立のはざまで、ガンジャルはジョコウィにつくか闘争民主党につくかの選択を迫られた。それが端的に表れたのが、U20サッカー・ワールドカップへのイスラエル参加問題であった。自らのレガシーとして大会の開催を実現したかったジョコウィに対して、それを阻止しようとしたメガワティは、イスラエルの入国拒否声明を出すかどうかでガンジャルの党への忠誠心を試したのである。この時メガワティの意向を受け入れたガンジャルは、ジョコウィの継承者としてではなく、闘争民主党からの擁立を獲得することで選挙戦に臨む、という決断をしたといえる(この一連の詳細については水野[2023]を参照)。
しかし、その代償は大きかった。ガンジャルは、プラボウォほどにはジョコウィ色を前面に出すことができず、かといってアニスのようにジョコウィ批判に転じることもできず、特色を出せないまま中途半端な立場に追いやられてしまったのである。そしてガンジャルのお膝元である中ジャワ州でさえプラボウォ=ギブラン組に支持を奪われ、支持率が低下している。ここから巻き返しを狙うガンジャル陣営に残された時間は短く、決選投票へ進むための苦しい戦いが続く。
選挙の透明性の確保が重要に
本稿執筆時点では、プラボウォ=ギブラン組が頭一つ抜き出たとはいえ、圧倒的な支持を得ているわけではない。大統領選で当選するためには、全国38州の半分以上で20%以上の票を獲得したうえで全有効投票の過半数を獲得しなければならない。この要件を満たす候補者ペアがいなかった場合は、上位1位と2位による決選投票が行われる。現在の情勢では、2月の選挙で新大統領が決定されずに、決着は6月の決選投票へ持ち越される可能性が高いとみられる。
前回の大統領選挙では、事前の世論調査から予想されるほどには実際の得票率の差は開かなかった。2024年選挙でも、蓋を開けてみれば世論調査ほどには票差は開かず、得票数のわずかな違いで各候補者ペアの命運が大きく左右されるようなケースの発生も想定される。そこで特に重要となってくるのは、選挙が不正に操作されたとの疑いを持たれないよう、開票・集計過程における透明性を確保することである。今回は国軍・警察や地方自治体の首長・公務員らの中立性に強い懸念が持たれていることから、その重要性はさらに高まっている。過去2回の大統領選挙では、市民による草の根レベルでの監視活動が展開されたこともあり、集計時における選挙不正は未然に防がれてきた。今回も透明性が確保され、各候補者や有権者が結果を受け入れることのできる選挙となるのか注目である。
写真の出典
- 表1 Komisi Pemilihan Umum (KPU), Daftar Pasangan Calon Presiden dan Wakil Presiden Pemilihan Umum 2024.
- インデックスページ 筆者撮影(2019年総選挙における投票所の様子。国会・地方議会議員選挙に使われる投票用紙には全候補者名が掲載されているため、新聞紙を広げたほどの大きさになる。2019年4月17日)
参考文献
- 川村晃一・東方孝之 2020.「2019年大統領選挙──社会の分断と投票行動の分極化」
川村晃一編『2019年インドネシアの選挙──深まる社会の分断とジョコウィの再選』アジア経済研究所, 11-35ページ. - 水野祐地 2023.「インドネシアのU20男子W杯開催国への野心と挫折──その舞台裏での大統領選挙に向けた駆け引き」『IDEスクエア』2023年5月.
- Higashikata, Takayuki 2023. “Covid-19 Vaccine Hesitancy in Indonesia: Association between Trust in the Government and Vaccination Coverage.” IDE Discussion Paper No.880, Institute of Developing Economies.
著者プロフィール
東方孝之(ひがしかたたかゆき) アジア経済研究所 地域研究センター 東南アジアI研究グループ長。専門は開発経済学、インドネシア経済。近著に“The Effect of Increasing the Minimum Wage on Employment in Indonesia: An Analysis of Manufacturing Firms in West Java from 1994 to 2015.”(Journal of Southeast Asian Economies, 38(3): 358-374, 2021)、「第1期ジョコ・ウィドド政権期の経済──経済成長と雇用・貧困削減の分析」(川村晃一編『2019年インドネシアの選挙──深まる社会の分断とジョコウィの再選』アジア経済研究所 2020年)などがある。
注
- この憲法裁の判決が出されるまでの審査プロセスでは、さまざまな問題があったことを指摘する声が判事のなかからも出された。とくに問題視されたのは、ジョコウィの妹婿であるアンワル・ウスマン憲法裁長官が、当該条項に対して違憲判断を下すような行動や言動をとっていたことであった。この違憲判決に対しては強い批判が巻き起こり、アンワル長官は倫理規定違反で告発された。11月7日、告発を審査していた憲法裁名誉評議会はアンワルに重大な倫理規定違反があったことを認め、長官からの罷免を決定した。ただし、世論調査からは、この経緯が国民から問題視されている様子はみられない。
- アニス陣営の選挙公約の文書では首都移転・新首都建設には触れられていない。
この著者の記事
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