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川村晃一編『2019年インドネシアの選挙――深まる社会の分断とジョコウィの再選――』

一般書

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2019年インドネシアの選挙――深まる社会の分断とジョコウィの再選――

著者/編者

出版年月

2020年10月

ISBNコード

978-4-258-30033-4

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内容紹介

内容紹介

2019年に行われた大統領選挙・議会選挙の分析から、インドネシアにおける民主主義や政治経済社会の変容を読み解く。投票行動、イスラーム組織の役割、選挙戦におけるソーシャルメディアの活用、分断のなかの社会運動、政治家の社会的背景など、選挙をめぐる諸相を多角的に分析。さらに、2014〜2019年のジョコ・ウィドド第1期政権の政治、経済、社会政策の動向を分析することを通じて、再選を果たしたジョコ・ウィドド大統領の第2期政権の行方を展望する。

目次

はじめに

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略語一覧

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序章 2019年選挙と第1期ジョコ・ウィドド政権が意味するもの

著者 : 川村 晃一

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第1部 2019年選挙の分析

第1章 2019年大統領選挙――社会の分断と投票行動の分極化――

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第2章 イスラーム票の動員――ナフダトゥル・ウラマーの結束――

著者 : 茅根 由佳

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第3章 ポスト・トゥルース時代におけるインドネシア政治の始まり――ビックデータ、AI、そしてマイクロターゲティング――

著者 : 岡本 正明、亀田 尭宙

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第4章 ジェンダーの政治と大統領選挙――分極化の犠牲となった性暴力排除法案――

著者 : 見市 建

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第5章 2019年議会選挙――固定化する有権者の政党支持――

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第6章 2019年国会議員の特徴と民主化後20年の国会議員の変化――二大勢力化しつつある経済界関係者と地方政界出身者――

著者 : 森下 明子

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第2部 ジョコ・ウィドド第1期政権から第2期政権へ

第7章 第1期ジョコ・ウィドド政権の政治――イスラーム保守派の台頭と民主主義の後退――

著者 : 川村 晃一

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第8章 第1期ジョコ・ウィドド政権期の経済――経済成長と雇用・貧困削減の分析――

著者 : 東方 孝之

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第9章 ジョコ・ウィドド政権の再分配政策――社会保障制度と社会扶助プログラムの展開――

著者 : 増原 綾子

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第10章 ジョコ・ウィドド第2期政権の展望

著者 : 佐藤 百合

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資料

資料1. 2019年総選挙参加政党一覧
資料2. 2019年大統領選挙の投票結果(州別)
資料3. 2019年国会議員選挙の投票結果(選挙区別)
資料4. 先進インドネシア内閣(Kabinet Indonesia Maju)閣僚名簿

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はじめに

はじめに

5年が経つのは早いものである。私たちインドネシア研究者は、5年ごとに行われる選挙にあわせて共同研究のプロジェクトを組織し、選挙の諸側面とその時々にインドネシアが直面する課題について分析を続けてきた。その成果として、民主化直後の1999年総選挙を分析した佐藤百合編『インドネシア・ワヒド新政権の誕生と課題』(アジア経済研究所、1999年)、大統領直接選挙が導入された2004年選挙を分析した松井和久・川村晃一編『インドネシア総選挙と新政権の始動―メガワティからユドヨノへ』(明石書店、2005年)、2009年選挙を分析した本名純・川村晃一編『2009年インドネシアの選挙―ユドヨノ再選の背景と第2期政権の展望』(アジア経済研究所、2010年)、そして「民主主義の定着したインドネシア」という広い視野から2014年選挙を分析した川村晃一編『新興民主主義大国インドネシア―ユドヨノ政権の10年とジョコウィ大統領の誕生』(アジア経済研究所、2015年)という4冊の書籍を私たちはこれまでに発表してきた。そして、また5年後の選挙の年がめぐってきた。2019年の選挙にあわせて今回も共同研究「2019年インドネシア大統領選挙・総選挙の分析」(独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所機動研究事業)を組織することができ、ここに5冊目の成果を読者の方々にお届けする次第である。

5年ごとに5冊の成果を発表してきたということは、インドネシアにおける民主主義の歴史も20年以上が過ぎたということでもある。その間、よちよち歩きだったインドネシアの民主主義は、なんとか独り立ちを遂げ、さらには一人前へと成長してきた。しかし、歴史はそこで終わったわけではない。他の民主主義と同様、インドネシアの民主主義は社会が変動するなかで常に揺れ動いている。私たちは5年前の共同研究の成果に『新興民主主義大国』というタイトルを付したが、「民主主義大国」は「安定した民主主義」と同義ではないことは現実が指し示している。

5年ごとに行われる選挙は、インドネシアにおける民主主義や政治社会の変容を映す鏡のような役割を果たしている。2019年の選挙からは、インドネシア政治に起こっているどのような変化を読み解くことができるだろうか。それを明らはじめにかにすることが本書の第1の目的である。本書では、2019年の選挙を、投票行動、イスラーム、選挙戦略、社会運動、政治家の社会的背景といった観点から分析する。選挙をめぐる諸相を多角的に分析することによって、インドネシアの民主主義に起きている変化を明らかにしていく。また、選挙には、選挙と選挙の間に起こった政治、経済、社会の変化がくっきりと映し出される。そこで、2014年から2019年のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権1期目に政治、経済、社会にどのような変化が起こったのかを振り返る。それらの変化を踏まえて、2019年から2024年までのジョコウィ第2期政権の政権運営を展望することが本書の第2の目的である。

本書の刊行にあたっては、多忙な執筆者の方々に短い期間で論文を書いていただくという無理なお願いを申し上げた。また、本書全体の草稿を2人の匿名査読者の方々に通読いただき、たいへん有益なコメントをいただいた。また、研究会の運営および成果の出版にあたっては多くの同僚諸氏にたいへんにお世話になった。特に、2020年3月以降のコロナ禍のなか編集作業にご尽力いただいた皆さまに感謝申し上げたい。ただし、本書の刊行が当初の予定から大幅に遅れてしまったのは、編者の力不足のゆえである。ご容赦いただきたい。

なお、本共同研究の成果の一部は、アジア経済研究所のウェブマガジン『IDEスクエア』で特集「2019年インドネシアの選挙」(https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/SpecialTopics/Indonesia_Elections2019.html)として、2019年4月から8月にかけて6本の記事を配信した。こちらもあわせてご参照いただければ幸いである。

編者

2020年5月