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ライブラリアン・コラム

連載:途上国・新興国の2020年人口センサス

第6回 中国――大国としての自負とその行方
 

村田 遼平

2022年2月

はじめに

新型コロナウイルス感染症の流行が全世界に拡大した2020年、その最初の流行地とされる中国では、1949年の建国後7回目となる全国人口センサス(第七次全国人口普査。以下、第7回センサスとする)が実施された。

第7回センサスは、2010年6月施行の「全国人口センサス条例」に基づき、2020年11月1日午前0時時点で中国国内に居住する人(香港・マカオ・台湾および外国籍の中国本土居住者――短期滞在者除く――を含む)および中国国外に居住する(定住していない)中国公民を対象に、4種の調査票を用いて行われた。すなわち、全数調査(短表)および10%サンプル調査(長表)、この1年間の死亡者に関する調査票、外国籍居住者に対する調査票からなる。調査対象と調査の内容構成は、第6回センサスと同様である。

「大国の点呼、あなたなくしてうまくいかない」を一つのスローガンに実施された2020年の第7回センサスは、中国共産党設立100周年である2021年までに達成が目指された「小康社会(まずまずの生活水準に達した社会)」の実現を確認するうえでも重要な意味をもったと思われる。以下、このセンサスの概要について紹介したい。

第7回センサスの宣伝ポスター
第7回センサスの宣伝ポスター。左上のロゴマークは、漢字の“人”を二つの“C”が
取り囲み、それぞれ“China”(赤)、“Census”(黄色)を意味している。
(出所)国家統計局ウェブサイトwww.stats.gov.cn
実施方法

第7回センサスの目的・内容等は、調査実施の1年前、2019年10月31日付の「国務院の第7回全国人口センサス実施に関する通知」で明らかにされた。その調査内容は、姓名・身分証番号・性別・年齢・民族・教育程度・業種・職業・移動・婚姻出産・死亡・住居状況である。今回新たに対象に加えられたのが身分証番号であり、データの質を高めるために追加されたと説明された1

また、省レベル2の地方政府等に対して、①法に基づいた調査実施、②調査データの質確保、③情報化レベルの向上、④宣伝工作の強化が求められた。このうち③の具体的手段として、スマートフォンを利用した調査データの収集が挙げられた。

中国の人口センサスの特色として、「日本の場合の戸籍登録と住民登録の両方の意味合いをもつ住民把握システム」と説明される「戸口」という視角から人口移動を把握しようとする点がある(木崎2017)。だが今回、身分証番号が調査内容に加わったことは、これが個々人を同定する数字であること、また生活の様々な場面で番号の登録や身分証カードの提示が求められる点で、各種行政記録との照合を容易にさせることにとどまらない意味をもつように思われる。

それでは、先述の「通知」を受けて、どのような方法で調査が計画されたのだろうか。第7回センサスの実施方法について、現在までのところ、全国レベルは国家統計局ウェブサイトで概要(「第7回全国人口センサス計画(摘要)」)を公開するに留まるようなので、ここでは市の統計局ウェブサイトで調査方法の詳細を公表している上海市を事例としてみてみよう。

2020年7月31日付で公表された「上海市第7回人口センサス実施計画」によると、回答は調査員(普査員3)による戸別訪問、または対象戸が自身で回答するという方式がとられることになった。調査対象戸自身で回答する場合はインターネットを利用して入力することになり、調査員の戸別訪問にしてもこれまでのような調査紙による回答ではなく、タブレット端末やスマートフォンを用いることとされた。インターネットによる全数調査項目の回答は2020年11月5日を期限とし、期日までに回答のなかった戸に対して11月6日から調査員が訪問調査を行うことになった。全数調査項目の登録終了後、国務院人口普査弁公室が全数調査回答戸から10%を抽出し、該当する戸を対象に調査員の訪問およびインターネット回答によるサンプル調査が実施される計画であった。抽出調査は11月30日までに完了する予定とされた。

実際の調査実施において、上海市統計局から回答対象の戸に配布された文書によると、調査員による戸別訪問は10月11日に開始された。また、自らインターネット回答をする場合は、調査員の訪問時に自身で回答する旨を伝え、広く利用されているメッセージアプリ微信(ウィーチャット)のミニプログラムを利用することになった。自身で回答する場合でも調査員の訪問が必要になるのは、調査員の所持する端末で生成される各戸専用のQRコードからミニプログラムにアクセスし、ログインに必要な12ケタの自主回答番号と6ケタの初期パスワードを調査員に提示してもらうためのようである4

調査項目

次に調査項目について確認しよう。第7回センサスの調査項目および今回のセンサスで削除された項目については、以下のとおりである。

表1 第7回センサス調査項目・削除項目一覧

表1 第7回センサス調査項目・削除項目一覧
(出所)第6回・第7回センサス調査票より筆者作成。*印は新規調査項目。

すでに述べた身分証番号以外にも、追加・削除・修正がなされている。例えば、前回10%サンプル調査では初めて高齢者(60歳以上)を対象とした調査項目(健康状態)が設定されたが(木崎2017)、今回はそれに加えて、「配偶者・子どもと同居/配偶者と同居/独居(「お手伝い」がいる)/独居(「お手伝い」がいない)/養老施設/その他」からなる居住状況を問う項目が設けられた。中国における高齢化の進展はよく知られているが、高齢者の生活が誰によって支えられているのかという点への当局の関心が垣間見られる設問となっており、興味深い。

前回同様の調査項目ながらも、選択肢や回答すべき内容が若干変化しているものもある。全数調査で個々人の学歴を尋ねる項目では、前回は調査時点で6歳以上が対象だったが、今回は3歳以上と対象が広がった。それと対応してか、回答項目の選択肢中に「就学前教育」が追加された。また、10%サンプル調査の5年前の常住地に関する項目では、前回は調査時点で居住する省内かまたは省外か(具体的な省名)を尋ねていたが、今回は常住地の県か、それともその他の地区か(具体的な省・市・県などの名前)を回答させるものとなった。つまり、5年前を基準に、どのまちからどのまちへ常住地が変化したのか(していないのか)を答えさせる質問内容となった。本項目は1990年の人口センサス(全数調査)で初めて採用され、その後はサンプル調査の調査項目となったが、基本的に省外への移動の有無を問う質問内容となってきた(1990年センサスのみ、省内の移動も問われている)。中国の人口センサスにおける人口移動に関する項目の変化は激しく定義も複雑であるが(厳2005)、10%のサンプル調査とはいえ詳細なデータが公表されれば、省間移動も含む、省より下級の行政区画間の人口移動の一端を把握することができるようになるのかもしれない。

結果の公表

第7回人口センサスの結果は、現時点で主要データが公表されている。以下、2022年2月現在でセンサスデータを確認できる媒体ごとにまとめておく。

①「第七次全国人口普査公報」(第1~8号)。2021年5月11日に国家統計局によって公表された。公表データは、人口数、戸口数・戸口別人口数、地区別分布、性別構成、年齢構成、教育歴別人口数、都市人口数、流動人口数、民族別人口数である。人口数・性別構成など一部のデータについては、省・自治区・直轄市別の数値が掲載されている。これらはいずれも、②『2020年第七次全国人口普査主要数据』に収録されている。

国家統計局の概要公表後、各省等の統計局のウェブサイト上で続々と第7回センサスの公報が公表されていった5。さらに下級の市等の統計局でも概要が公表されたところもあり6、中央の発表を皮切りに、省レベルの機関、次いでより下級の機関へと、ほぼ同様の様式で結果が明らかにされていく様子、そして公表時期も各行政区画によってバラツキがあることは、初めて中国の人口センサスに触れた筆者にとって印象深く感じられた。

②『2020年第七次全国人口普査主要数据』(2020年第7回全国人口センサス主要データ)。公報の公表後、2021年7月に出版された。刊行からしばらくたって、国家統計局ウェブサイトの2000年人口センサス(第五次)以降のデータを掲載するウェブページでも公開された7。この報告書は、歴代センサスデータとの比較図表や各省等別の主要データ、公報が収録される。なお、中・英併記である。

③『中国統計年鑑』。上記に加え、毎年刊行されている『中国統計年鑑』の2021年版(アジ研図書館請求記号:CHINA/0A1/2021)に第7回センサスの結果が反映されている。同書「二 人口」の表2-8~2-29が今般のセンサスデータに基づく情報であり、上記①②では確認できないような「城市」「鎮」「郷村」ごとの様々な数値も掲載されており、現時点では最も詳細なデータを提供している。

人口性比・出生人口性比

さて、以上を見るなかで筆者が気になったのは、人口性比である。女性の人口数を100とした時の男性の数を表す人口性比について、第7回センサスでは105.07(前回比0.13ポイント減)となり(前節①の第4号)、また出生人口性比は111.3(前回比6.8ポイント減)となった8。人口性比は2010年第6回センサスにおいて1964年の第2回以降初めて減少し、今回もわずかだが減少傾向が続いている。さらに、出生人口性比は1982年センサスで107.2となって以来、2010年センサスまで上昇を続けてきた数値であり、いまだ高い水準にとどまるとはいえ、今回減少に転じた点は注目される。短期的にはいわゆる「一人っ子政策」の撤廃(2015年)が関係するのかもしれないが、中国におけるアンバランスな男女比は、すでに清代には性別選択的な出産調整9や女子死亡率の高さを要因に「男余り」の社会として出現していたように歴史的な重層性をもっており(小浜2020、上田2020)、今後、いかなる展開をたどるのか気になるところである。

また省レベルでは、遼寧・吉林両省の人口性比が100を切った。つまり、女性が男性よりも多い結果となった。遼寧など中国東北部は総人口も減少しており、高齢者の増加がその背景にあるのだろうが、出生性比はどのような数値となったのだろうか。今後のデータ公表が待ち望まれる。

おわりに

冒頭で紹介したスローガンのように、今回センサスでは「大国」の語を度々目にした。そして、結果公表後の記者発表において国家統計局当局者が「公報」発表までに要した時間や平均年齢の水準は米国と同程度であることに言及するなど、米国への意識を感じさせる。果たして今回のセンサス結果は、大国・中国の内外に対していかなる意味をもつことになるのだろうか。そしてこの先10年で、中国という広大で多様性にもあふれる社会にどのような変化が生じていくのか、それを考える端緒として第7回センサスの最終的な結果公表が期待される。

最後に、具体的な数値についてはほとんど紹介できなかったが、日本語で読める様々な分析結果がすでに公表されており、また主要データについては英訳も付されているため、ぜひご覧いただければと思う。

参考文献
  • 上田信(2020)『人口の中国史——先史時代から19世紀まで』岩波書店。
  • 木崎翠(2017)「中国——人口大国の発展の軌跡と新たな課題」(末廣昭・大泉啓一郎編著『東アジアの社会大変動——人口センサスが語る世界』名古屋大学出版会所収、48~81ページ)。
  • 厳善平(2005)『中国の人口移動と民工——マクロ・ミクロ・データに基づく計量分析』勁草書房。
  • 小浜正子(2020)『一人っ子政策と中国社会』京都大学学術出版会。
  • 若林敬子・聶海松編著(2012)『中国人口問題の年譜と統計——1949~2012年』御茶の水書房。
  • 国务院人口普查办公室・国家统计局人口和就业统计司编(2012)『中国2010年人口普查资料』下、中国统计出版社。
  • 国家统计局编(2021)『中国统计年鉴 2021』中国统计出版社。
著者プロフィール

村田遼平(むらたりょうへい) アジア経済研究所学術情報センター図書館情報課。担当は中華圏。

  1. 国家统计局「这次普查的主要内容是什么?」国家統計局ウェブサイト、2020年5月7日。
  2. 中国の行政区画は、省級(省・直轄市・自治区・特別行政区)、地区級(市・区)、県級(区・県級市・県・自治県)、郷鎮級(鎮・郷級・街道)の四層からなる。
  3. 上海市では普査員と普査指導員合わせて、およそ13万4900人にのぼったようである(上海市统计局「李强龚正接受第七次全国人口普查现场登记」上海市統計局ウェブサイト、2020年11月3日)。
  4. 第七次全国人口普查登记正式开始」『经济日报』2020年11月1日。ただし、これは北京の事例のため、上海でも同様のやり方だったのかは不明である。
  5. 最も早かったのは、浙江省統計局と広西壮族自治区統計局の5月13日で、最も遅かったのは青海省統計局の7月13日である。
  6. 例えば、杭州市(浙江省の省都。公表日は2021年5月17日)、同省淳安県(杭州市管轄下の県。同年5月19日)など。
  7. Internet Archiveを利用して掲載ページ(http://www.stats.gov.cn/tjsj/pcsj/)の履歴を確認したところ、ウェブサイト上で公開されたのは2021年11月頃の模様である(2022年1月31日最終閲覧)。
  8. 現時点で出生人口性比については、宁(2021)での言及に留まるようである。
  9. 清代には、嬰児殺しを指す語として「溺女」が一般化し、女子が対象となる傾向が強くなってきた。