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2026年

  • 混迷するイランの抗議運動と情報収集の壁――何が情勢把握を困難にしているのか / 松下 知史 昨年末にイランで発生した大規模抗議運動は、本記事執筆時点で4週目に入った。この運動は、物価高騰と通貨価値の急落による経済的不満を背景に、首都テヘランのバーザール商人らによるストライキを発端として始まり、短期間のうちに全国規模の抗議の波へと拡大した。国際社会の厳しい経済・金融制裁による国民経済の長期的困窮のなかで、こうした経済改革の訴えはかつての大規模抗議運動(2017年、2019年)の再来を予感させるものであり、幅広い国民の支持を獲得しやすいテーマであった。イランの体制は当初、全国民を対象とする現金給付を含む緊急経済対策を打ち出すなど、一定の融和姿勢を示していた。しかし、運動の拡大と一部での過激化・暴力化、さらには全国的な反体制運動へと変質していく過程で、体制は抗議者を「暴徒」や「テロリスト」「外国勢力の手先」と位置付け、弾圧を強化している。その結果、イランは、抗議者と治安部隊の双方に多数の死傷者を出す、極めて深刻な政治的危機に直面している。 2026/01/21