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(混沌のウクライナと世界2022)第11回 ウクライナ戦争下の中央アジア――ロシアの「影響圏」での綱渡り

Central Asia Countries in the Time of Ukrainian War: Tightrope Walking on the Edge of Zone of Russia’s Influence

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00053083

齋藤 竜太
Ryota Saito

2022年7月

(7,970字)

揺さぶられる中央アジア諸国

2022年2月24日に発生したロシアによるウクライナ侵攻は、7月現在、事態好転の見通しが立たない。悪化する現地の人道状況や、問い直される国際秩序のあり方など、さまざまな次元で大きな衝撃を国際社会に与え続けている。

中央アジア地域においても、ウクライナ情勢は決して対岸の火事ではない。特にロシアとの関係が深い中央アジア地域への衝撃は計り知れず、タジキスタンでは食料の2年間分の備蓄を呼びかける動きもでている(Ibragimova 2022)。そして後述するように、ロシアはその動揺している中央アジアをさらに揺さぶるような動きさえ見せている。

本稿ではまず、ウクライナ戦争が中央アジア地域に与えている影響について概観する。そのうえで、中央アジア諸国に残された外交的選択肢について、現在見られる各国の動きや対ロ関係を念頭に置きつつ考察する。

結論から述べると、中央アジア諸国はロシアに対する依存度が高く、現地の政府や国民にとってその紐帯を断ち切るのは容易ではない。それに加えロシアからの圧力もある。中央アジア地域の指導者は、各国の事情によって違いはありつつも、国際社会からのまなざしと「旧宗主国」とのあいだで、今後も厳しい綱渡りを強いられる可能性が高いと思料する。

経済面での影響――出稼ぎ労働者の送金と経済的つながり

ロシアによるウクライナ侵攻により中央アジア諸国が受ける経済的影響で、最も懸念されることのひとつが、出稼ぎ労働者からの海外送金の遅延ないし喪失であろう。中央アジア諸国、特にウズベキスタン、キルギスおよびタジキスタンといった、地域内で経済的に比較的劣位にある国々からは、多数の労働者がロシアに出稼ぎに出ている。彼らの母国への海外送金は、2020年の対国内総生産(GDP)比でウズベキスタンが11.6%、タジキスタンは同26.7%、キルギスは同31.3%を占める。また、海外送金のうちロシアが送金元である割合は、ウズベキスタンが55%、タジキスタンが58%、そしてキルギスに至っては83%と非常に高い (Ratha and Kim 2022)1

制裁の影響を受けロシア国内の経済が減退すれば、出稼ぎ労働者の収入も減少し、結果として送金が滞るか、彼らが帰国する可能性がある。開戦直後の3月、世界銀行の専門家らは、ウズベキスタンで21%、タジキスタンで22%、キルギスで33%、海外送金が減少するとの予測を公表している(Ratha and Kim 2022)。実際、キルギス国立銀行が発表する統計データによると、2022年3月の国外からキルギス国内への送金額は、前月の1億8760万ドルから1億5340万ドルに減少した2。キルギスへの海外送金は毎年、1月に減少し(おそらく労働者が休暇で帰国するため)、その後春から夏ごろにかけて増加する、というサイクルをたどる。本来であれば送金が増加する途上であるはずの3月に、送金額が前月比で顕著に減少することは、イレギュラーな事態であるといってよいだろう。

その他、流通面でも影響を受ける。中央アジア地域は、北にロシア、東に中国、西に世界最大の塩湖であるカスピ海を挟んでコーカサス、南にアフガニスタンおよびイランと接する内陸地域である。南の国境は経済制裁下にあるイランと情勢不安定なアフガニスタンであることから、主な流通ルートはロシア経由か中国経由になる。

開戦から間もない3月9日、ウズベキスタンに展開するスーパーマーケットチェーン「karzinka」の創業者ザファル・ハシモフが、ウクライナ戦争がビジネスにもたらす影響についてメディアに語った。ハシモフは同社が扱っている商品にはロシアやベラルーシ、ウクライナの領土を経由して輸入しているものが数多くあるとしつつ、「別のルートから輸送することは、経済的な観点から不可能」と述べている(gazeta,uz 2022b)。

ただ、西側によるロシアの金融機関への制裁についてハシモフは、ロシアやベラルーシに対する支払いが支障をきたす可能性を認めつつも、「それらは短期的な影響と考える」「閉鎖的な通貨システム3の時代に培われた経験を我々は忘れていない」として、ロシアが制裁下にあっても対応に自信があるそぶりを見せている(gazeta.uz 2022b)。

金融システムについては、当初、タジキスタンから興味深い報道が出ていた。ロシアが制裁によって国際通信銀行協会(SWIFT)から切り離されたとしても、それとは別の電子金融取引システムが、西側が対ロ制裁を実施した2014年頃から構築されており、これにはアルメニア、カザフスタン、キルギス、ベラルーシ、タジキスタンが加盟しているとのことである(Чоршанбиев and Фозилджон 2022)。ロシア政府の高官はしばしば、自国があたかも「制裁慣れ」しているかのような言説を発出しているが、それには同盟国をも巻き込む形でこのようなシステムを前もって準備していたことも裏付けのひとつにあろう。しかしその後、ロシアの銀行がSWIFTから切り離された結果、銀行システムをロシアに依存していたタジキスタンは混乱状態に陥り、西側の金融機関との関係を有しているカザフスタンやウズベキスタンとの協力の必要性が指摘された(Чоршанбиев 2022)。同じ中央アジア諸国でも、対ロ依存の水準や次元が異なることで引き起こされている混乱の様相もまた違ってくることがうかがえる。

写真1 タシケント市内の銀行の受付タッチパネル。

写真1 タシケント市内の銀行の受付タッチパネル。
下から4番目が「国際送金」となっており、SWIFT以外にも
「By system」という選択肢がある。
銀行員に確認したところ、Western Unionなどを介した送金サービスとの由
(2022年4月29日)。
各国政府を揺さぶるロシア

中央アジア各国政府は今回の戦争について、国際法に基づき外交的手段による解決を訴える中立的な姿勢を示すことで、国際社会とロシア双方との関係維持に努めているように見える。海外ドナーの開発援助なしでは立ち行かないキルギスやタジキスタンなどの貧困国には、国際社会から見放されることは避けたいとの思惑もあるのだろう。

このような中央アジア各国の態度に関連し、ロシアが気になる動きを見せている。開戦直後の2月25日、ロシア大統領府は、ミルジヨエフ・ウズベキスタン大統領がプーチン大統領との会談において、ロシアの行動に対して「理解を示した」と発表した4。一方、同日付のウズベキスタン大統領府の発表では、ウクライナ情勢に関して「両首脳間では、ウクライナ周辺において形成されつつある情勢を含めた、国際問題および地域問題について意見交換が行われた」とのみ言及されている5。翌日にウズベキスタン大統領府の報道官は、ウズベキスタンはウクライナ情勢に関しては「思慮深くかつ中立的な立場」をとり、またすべての紛争と不和は国際法に基づいてのみ解決されるべきと考えているとの声明を出した(gazeta.uz 2022a)。これは、両国大統領府の発表内容の相違から起こりうる疑念の芽を摘み取ったとも、明確にウズベキスタン政府の立場を示し改めてロシアと距離を置いた、ともいえる。

これ以前にも、ロシアが情報発出を通じてウズベキスタンに揺さぶりをかけた事例があった。ミルジヨエフ大統領が2021年10月24日の大統領選挙で再選された際、ウズベキスタン時間25日16時の選挙結果発表前の14時に、プーチン大統領がミルジヨエフに当選の祝意を伝達した旨をロシア大統領府が発表したのだ6。この大統領選挙はミルジヨエフの当選が当然視されていたとはいえ、このような対応は尋常ではない7

ウズベキスタンは中央アジアのなかでも、比較的ロシアとは外交政策において距離を置いている国である。このようなロシアの行動は、近年の経済開放政策により地域内外において自らの存在感を示しつつ、引き続きロシアと一定の距離感を維持しようとするウズベキスタンに対し、ロシアの「影響圏」の範囲内であることを「わからせ」、ミルジヨエフ大統領に揺さぶりをかけようとしたと受け取れる。

写真2 プーチン大統領による祝意の伝達を報じるネット記事へのコメント。

写真2 プーチン大統領による祝意の伝達を報じるネット記事には、
「集計の途中経過もまだなのになぜ」「SFのよう。現地KGBが動いたかのごとく、
発表前に結果が分かったというのか」といったコメントが並んだ
(2021年10月25日)。

ロシアはキルギスやカザフスタンに対しても圧力をかけている。キルギスは2015年に人権問題をきっかけとして米国との経済協力協定を破棄したが、現在新たな協定の交渉を行っている。そしてロシアはメディアを通じて食糧や燃料の輸出優遇措置の停止、出稼ぎ労働者の排除といったカードをちらつかせている(Turgunbaeva 2022)。また、2022年6月にカザフスタンのトカエフ大統領がプーチン大統領同席の公開の場で、ウクライナ東部の2つの「未承認国家」について、カザフスタン政府はこれを承認しないことを宣明した後、ロシアの国会議員がカザフスタン国内のロシア人集住地域について「これらの地域はカザフスタンとの関係が薄い」と発言した(Lillis 2022)。出稼ぎ労働者への圧力やカザフスタンの主権の軽視については、過去にロシア側から類似の措置や発言がなかったわけではないが、今回の危機に際してより強圧的になった印象がある。

社会の反応とロシアメディアの影響

各国の民間レベルでは、開戦直後に反戦派やロシア支持派双方がデモを行ったとの報道が見られた。特にキルギスとカザフスタンではウクライナを支持するデモが多かったようである(Putz 2022)。キルギスの司法当局は3月14日、首都ビシュケク市内での集会を禁止する決定を下した (AFP 2022)。ただし、唯一中心部から離れ木立に囲まれたゴーリキー公園でのみその実施が認められ8、反ロシアだけでなく親ロシアいずれの集会も開催された。しかし、現地からの報告によると、当局は反戦集会への参加者のみを逮捕しているという(Wood 2022)。

カザフスタンの最大都市アルマティでも反戦集会が行われた。中央アジア研究者のエリカ・マラトは外交専門誌『ディプロマット』上のインタビューにて、今回のウクライナの事態によりカザフスタン政府は2022年1月に発生した騒擾から国民の関心をそらすことができたと述べるとともに、これまで政府が反中国集会に対して厳しい締め付けを行ってきたことを考えれば、(集会実施側と)政府とのコミュニケーションなしに開催は考えられないと指摘している(Putz 2022)。

キルギスとカザフスタンの両政府はバランスある対応に努めつつも、若干の相違が認められる。前述のとおり、カザフスタンのトカエフ大統領はプーチン同席の公開の場でウクライナ東部のいわゆる「未承認国家」について認めないと発言した。一方、キルギスについては「玉虫色」な対応から一歩出るような明確な態度は見られない。これは自立度の高さの違いが反映されていると考えられる。産油国であり経済力があるカザフスタンと、出稼ぎ労働者の送金に依存している国のなかでも特にロシアへの依存度が高いキルギスとの違いである。

以上のように民間レベルではウクライナ支持が見られるものの、各国社会の一定数はロシア側に立っている。4月7日に発表されたカザフスタンでの世論調査によると、回答者のうち10%がウクライナとの連帯を示した一方、39%がロシアの軍事作戦を支持したという(Demoscope 2022)。この調査は1100人を対象に行われ、そのうち77%がロシア語で回答した。調査を行った研究機関Demoscopeはロシア語話者とロシア支持には強い相関関係があると指摘している(Kumenov 2022)。

この世論調査の結果とも関連して、中央アジアではロシアメディアが広く視聴されており、その影響力について軽視できないものがある。例えば、2015年に筆者がウズベキスタンの西部、カラカルパクスタン自治共和国の友人宅に泊まったときも、砂漠地帯の地方都市に位置するその家のテレビで「モスクワ市A通りのBスーパーでアイスクリームが○○ルーブル」というCMが流れており、強い違和感を覚えたものであった9。海外の報道や文化紹介など、ロシアメディアは中央アジアの人々にとって世界を知るための窓口かつ手段となっている。ロシアメディアはその内容の豊富さなどにおいて現地メディアよりも優れているというのが、ソ連時代からの一般的な理解である。したがってロシアのフィルターを通じた知やマインドが人々の中に形成されており、その影響力は大きい。そのため、各国で一定の割合の市民がロシアを支持するのは不思議ではない。

このような状況を危惧した在ウズベキスタンのウクライナ大使館は、ロシアによるウクライナ侵攻後、ウズベキスタン政府に対しロシアのテレビ番組の放送を差し止めるよう口上書を発出した(gazeta.uz 2022c)。しかし、その実現は非現実的であると言わざるを得ない。中央アジアにおいて「ロシア」は、外部から圧力をかけてくるものであると同時に、内面にも深く根ざしたものでもあるため、切り離すのは容易ではない。

中央アジアに「ロシア以外の」選択肢はあるか?

政治・経済・社会すべての面において、中央アジア諸国は今回のウクライナ問題から直接的および間接的な影響を受けている。またロシア側には、ソ連時代に中央アジア地域が開発の裨益者側であったという認識が強いことから、中央アジア諸国を自国の「影響圏」のなかでも従属的な存在ととらえる向きがある。

では、中央アジア諸国には、ロシアが国際社会において孤立を深めるなかで、今後どのような外交的選択肢があるのだろうか。ロシア連邦以外の旧ソ連地域は大きく分けて、ウクライナ、ベラルーシ、モルドヴァやバルト諸国といった欧州地域と、コーカサス地域、および中央アジア地域に大分される。これらのうち欧州地域およびコーカサス地域のジョージアにおいては、今回のウクライナ戦争に先立っての、欧米諸国に対するEUや北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求める動き(ベラルーシおよびモルドヴァを除く。バルト諸国はいずれにも加盟済み)にみられるように、西側への参入に傾斜している。

写真3 ジョージアの首都トビリシ市内。

写真3 ジョージアの首都トビリシ市内。国旗とともにEUの旗が掲げられているが、
撮影当時も現在もジョージアはEU加盟国ではない(2018年8月13日)

一方で中央アジアの場合、旧ソ連欧州地域にとっての西欧(EUやNATO)にあたるような、ロシアとの紐帯に替わる新しい対外関係の選択肢は限られる。隣接する超大国の中国への依存を深めることのリスクは広く共有されており、それは、政治指導者よりも大衆レベルのほうがより強く認識している。中国側としても、西側との対立を深めるなか、ロシアから見て「影響圏」「責任圏」である中央アジアに過度に参画することは、西側と対抗していくうえでのパートナーであるロシアの心証を悪くする可能性がある。

また、中央アジアと同じテュルク系民族ということから10、トルコは旧ソ連崩壊後に同地域への経済、文化面での関与を深め、最近では軍事技術面での協力も行うようになっている。しかし地理的な距離や、トルコ自身の国力の限界、明確な戦略の不在、などといったトルコ側の条件、および旧ソ連時代に「近代化」を経験し、さまざまな面での規範をロシアに求める中央アジア側の傾向を鑑みると、トルコがロシアに替わりうる国としてみなされるかについては、議論の余地があろう11。中央アジア諸国は独立以降、自らを「大国間のはざま」に位置していることを活用して利益を最大化させようとしてきた。利にさとい中央アジア諸国の指導者が、パートナーシップを「グローバルな」大国(ロシア)から「リージョナルな」大国(トルコ)に移す、という選択肢をとるかは、やや疑問である。

これらを踏まえると、独立後の中央アジア諸国は外交の多元化を目指してきたものの、中ロのはざまで外交的選択肢が極めて限られているのが現状である。それは、ロシアによる対ウクライナ侵攻に対して、各国の政治的リーダーが「中立」「平和的手段や国際法に基づく紛争解決」を訴えていることによく表れている。言い換えれば、他に選択肢がないなかで積極的にロシアもウクライナも支持できないため、そのような消極的な対応をせざるを得ないのである。

※この記事の内容および意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構アジア経済研究所あるいは公益財団法人笹川平和財団の公式意見を示すものではありません。
写真の出典
  • 写真1~3 筆者撮影
  • インデックス写真 Kremlin.ru  CIS非公式首脳会議で握手するプーチン・ロシア大統領とミルジヨエフ・ウズベキスタン大統領(CC BY 4.0
参考文献
著者プロフィール

齋藤竜太(さいとうりょうた) 公益財団法人笹川平和財団安全保障研究グループ研究員。2018年筑波大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了(学術博士)。在キルギス日本国大使館専門調査員を経て、2020年9月より現職。専門は中央アジア地域研究、特に国際関係、開発、水資源問題。


  1. なお、これらの数値はあくまで銀行間のやり取りでの数値であり、出稼ぎ労働者が帰国する際に荷物に入れて持っていく現金などを考慮に入れると、実際にはもっと大きい額になるといわれている。
  2. キルギス国立銀行統計データを参照(最終閲覧日2022年5月31日)。
  3. これについて、ソ連時代を指すか、ウズベキスタンのカリモフ初代大統領の時代(1991年~2016年)を指すかは、明言されていない。
  4. ロシア大統領府公式サイト、25 February 2022。
  5. ウズベキスタン大統領府公式サイト、25 February, 2022。
  6. ロシア大統領府公式サイト、25 October, 2021。なお、ロシアに対する追随姿勢が強いベラルーシのルカシェンコ大統領も、ロシア政府の発表の1時間後に同様に祝意を伝達している(gazeta.uz 2021)。
  7. ウズベキスタン大統領選挙の結果を受けてのプーチン大統領による祝意伝達に関する発表について、ロシア大統領府公式サイト上でさかのぼって調べたが、確認できた範囲では(2007年12月、2015年3月および2016年12月)、このような「フライング」は他に見当たらなかった。
  8. この公園は市街の中心部からは若干離れていることからか、当局が混乱を避けるため集会の開催を認めることが多い。2018年から2019年にかけて、当時のジェエンベコフ大統領と激しい政争を繰り広げたアタムバエフ元大統領およびその支持者らも、同じ場所でたびたび集会を実施していた。
  9. インターネット利用に強い制限があるトルクメニスタンでも同様である。在トルクメニスタン日本大使館にて専門調査員を務めた地田は、トルクメニスタンでは各戸がパラボラアンテナを設置しロシアのテレビ番組を視聴しており、市民にとって一番の娯楽となっている、と指摘している(地田 2022, 56)。
  10. テュルク系(Turkic)民族は日本のメディアなどではしばしば「トルコ系民族」と表記されるが、トルコ民族(Turkish)もテュルク系民族のひとつであることから、正確を期すのであれば分けて表記すべきである。なお、タジキスタンはペルシャ系のタジク人が基幹民族となっている。
  11. 2009~2014年にかけてトルコの外務大臣を務めたアフメト・ダウトオウルは、トルコの対中央アジア外交について、ソ連崩壊後の「ノスタルジック」な雰囲気で始まったが、「心理的、理論的、制度的準備」を大きく欠いていた、と批判している。具体的には、トルコ国内における中央アジア地域研究の遅れ、冷戦期間中は「鉄のカーテン」の向こう側に対しては静観がトルコの基本姿勢であり外交は対西欧が中心であったこと、ロシア語人材の不在、中央アジア地域のトルコ外交における位置づけの不明確さ、などを指摘している(ダウトオウル 2020, 411-415)。また、トルコがグローバルな外交戦略を描いたうえでの対中央アジア外交を行えていないことも批判している(ダウトオウル 2020, 420-421)。