BOPレポート(Bottom of the Pyramid)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

11. 共通の利害

第4層市場を構成する40億人の人々はMNCにとって大きなチャンスである。また、共通利害のもと、ビジネス、政府、市民社会で協力するチャンスでもある。実際、BOPをターゲットとする戦略は、自由貿易やグローバル資本主義の支持者と、環境的、社会的持続可能性を支持する者との対立を解消することができるのではないだろうか。

現在第1層の消費者に提供されている製品とサービスは第4層の消費者に適していないが、第4層市場にアクセスするには第2層や第3層で用いられるアプローチとも根本的に異なるアプローチが必要となるであろう。技術、信用、コスト、流通における転換が不可欠な要素である。世界規模の大企業のみが、このチャンスから利益を得るために必要な革新を実現するための、技術、経営、財務資源を持っている。

第4層における新しい商取引は、食品、衣類、家等の基本ニーズを充足するビジネスに限定されないであろう。BOPは、金融サービス、携帯電話通信、低価格パソコン等のハイテクビジネスを求めている。事実、多くの新しいディスラプティブ技術(燃料電池、太陽電池、衛星通信、バイオテクノロジー、薄膜マイクロ電子、ナノテクノロジー)では、BOPがもっとも魅力的な初期市場となる可能性がある。

いまのところ3種類の組織がこれを実施している。Amulやグラミン銀行等の地元企業、World Resources Institute、SELF、The Rainforest Alliance、The Environmental Defence Fund、Conservation International等のNGO、スターバックス、ダウケミカル、ヒュレット・パッカード、ユニリーバ、シティグループ、デュポン、ジョンソン&ジョンソン、ノバルティス、ABB等のMNC、World Business Council for Sustainable Business Development等のグローバルビジネスパートナーである。現在は、MNCに比べて資源が圧倒的に少ないNGOや地元企業のほうがより革新的で、これらの市場における発展に貢献している。

西欧の資本家が、富裕層は企業から恩恵を受け、貧困層や環境は政府やNGOが保護するものであると暗に想定することは、悲劇的である。この暗黙の想定は、想像されるよりも強力な影響を及ぼす。MNCの経営者、国家の政策立案者、NGO活動家は、この伝統的な役割分担から影響を受けている。この枠組みを壊すことで、持続可能な成長と発展というコンセプトのもとで形成された壁のない市場で、世界の貧困層と富裕層をつなげるという大きなチャンスが生まれるのである。

まとめると、我々は商業史のなかで最大の市場となる可能性の、ほんの表面部分を擦り始めただけである。自社をより包括的資本主義に投じようという民間セクターには繁栄のチャンスがあり、その繁栄を富の少ない者と共有することができる。本質的には、BOPの富は、我々の世界的ゴールのもっとも高い領域なのである。

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