BOPレポート(Bottom of the Pyramid)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

13. BOPの類型

BOP領域で生まれているイノベーター、アクター、リーダーは、民間セクターから公共セクターとの間の7つのカテゴリーに分類される。これらのカテゴリーのうち3つ(企業化実験、触媒機能や現実化機能、社会起業)はとくに企業に関連があり、起業のスタイルや動機が素早く変化する点に特徴がある。ほかの4つのカテゴリーについては、本論の論点から外れているため簡単に説明するに留める。

1) 企業化実験:
これらの実験プロジェクトは、100%利益を目指すビジネスであるか、短期的にそのような目的を持っている傾向がある。これらは、BOPの文脈のなかでは注釈が付くケースである。なぜならば、ビジネス経営者の既存の視点に固執しているからである。

2) 触媒機能・現実化機能:
この多様なグループには、学術組織やシンクタンクから、財団法人やNGO、特定分野の団体やコンサルタント会社までが含まれる。これらの組織は通常証券会社的機能を果たし、仲介業者となって、強力なネットワークを構築する。これら組織は、BOP概念を機能させるための「ミドルウェア」(新しい市場領域形成のための新しいツール、プロセス、青写真、ハードおよびソフトインフラ)の構築をめざす。これらの組織は規模が小さく柔軟性があり、機会主義的性質をもつ。資金形態は、営利目的から自己資本・自立型、非営利団体まであり、幅広い。

3) 社会起業家:
自分のアイデアを現場で実行し、クライアントや顧客にサービスを提供するアクターである。これらの組織の多くが慈善目的であり、政府の補助金や外部からの支援をある程度受けているが、その額は営利事業の立ち上げに比べれば少ないことが多い。重要なことは、この初期のサポートを用いて営利団体に移行する組織もあるということである。これらのカテゴリーには3つの重要なサブカテゴリーがある。エコデザインやコンピュータに詳しい起業家、大企業からのスピンアウト組、その国や地方の著名人である。

ほかの4つのカテゴリーは以下の通りである。本論では詳細については検討しない。

4) 多国籍機関および開発機関:
世界銀行、UNDP、USAIDもまた社会起業や市場形成の重要な実現機関である。ビジネス環境の改善をめざして多くのプログラムを実施している。このグループが「触媒・現実化機能」グループと違う点は、足腰の重さと、開発に対する伝統的な公共セクターのアプローチである。開発期間上級職には、BOPプロジェクトに関して明らかなためらいや疑いがある。それは、BOPプロジェクトが政府や開発プログラムの仕事を奪ってしまうのではないかという心配からくるものも含まれている。しかし、こういった公的機関の最大の問題は、どうすれば彼らのプログラムをもっと効率的に、筋道を立てて行うことができ、他のセクターと協調させることができるのかという点である。この分野でじつに多くの活動が行われているため、重複や非効率性が一般化してしまっている。

5) 支持者:
NGO、社会活動家、市民、宗教グループは、歴史的に世界の貧困層の問題や不公平を改革しようとする最強の支持者であった。このグループは、多くの方法でBOPの問題に関与している。構成メンバーは、強い信念のもと使命を持って参加しており、強い規範的目標を持っている。このグループの多くは、企業を解決策ではなく問題の一因であると捉え、企業を変化におけるプラスのアクターとして位置付けることは彼らにとって通常困難である(OXFAMやGreenpeaceが有名な例である)。もちろん、これらグループの多くはまた、実利的でもあり、社会起業家カテゴリーとの境界が曖昧で、BOPの実現に主要な役割を果たす。彼らを包含できるプロセスの開発が、ますます重要になっている。「非営利」(not-for-profit)という表現は「営益」(for-benefit)という用語に置き換えられている。このほうが実態を反映しているし、否定語による定義を避けることができる。

6)コーポレート・フィランソロピー:
コーポレート・フィランソロピーは、BOPに対するもう一つのベクトルである。Michael PorterとMark Kramerが論じているように、この企業活動は一般的に評価が低く、活用度も低い。しかし、適切なアプローチによっては企業の比較優位にとって重要なものとなる。彼らはBOPという言葉は使っていないが、彼らの枠組みは明らかにそれを意識している。

7) 多国籍ネットワーク:
入れ子になったこれらのネットワークは、おもにウェブや携帯電話によって、地元や地域のグループと個人にグローバルな広がりと視点を提供している。ネットワークのなかにはその場限りで一時的なものもあるし、実践的で技術的なものもある。さらに社会運動や世界的目標をサポートするために構築されているものがあって、反グローバリゼーション連合はもっとも強力な例である。たとえば、ウガンダではWoman Information Resource Electronic Services (WIRES) が起業のための技術的支援を提供している。La Via Campesinaは、アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパの小中規模農民、農業労働者、農村女性、先住民族コミュニティを結びつける国際運動である。

もちろん、これらのカテゴリーのすべてが広範な協力のネットワークを形成して、資金調達、属性、マインドシェアの競争が激化するなかで重なりあっている。したがって、このネットワークの地勢図は不均衡であり、いくつかのグループは他に比べ力や影響力を多く持っている。また、協調関係のなかにも緊張、偏見、縄張り意識、価値の衝突が残り、現実に共有される問題で協力することが難しくなる場合もあることを指摘しておかなければならない。企業経営者たちはしばしば、「うまく機能する官民パートナーシップモデルを見せてくれ!」と叫んでいる。したがって、行動観察から実りある成果を得るには、これら多数の利害関係者の協力体制を管理するための最適なプロセスを見つけ出さなければならない。

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