BOPレポート(Bottom of the Pyramid)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

14. BOPの将来は?

将来的にみると、BOPの分野には多くの問題が残っている。不確定要素の1つとして、現在の地政学的状況がどのように変化し、それがどのような影響をBOPに及ぼすかということがある。同時に、BOPレベルのビジネスにおいて多くのジレンマが発生している。小規模経済の把握、高取引コスト、流通に関する課題、文化的・組織的障壁に対する対応等、多くが厄介な問題である。また、これらの実験が現実にはどのように機能するのか、BOPは最終的に市民セクターに結合されるのか、それとも衝突するのか、といった問題もある。

一方で、なにがより確かなものになるのであろうか?実際、このコンセプトの強力で素晴らしい側面は、多数の、深く根差した原動力の背中に乗っているという点である。多くの人間は、BOPは所与のもので、将来的に「確定された」モデルであると論じている。我々が知らないだけで、西欧企業の視野に入っていないBOPイニシアチブはまだまだたくさん存在しているというわけだ。BOPの概念はボトムアップで現れ、既存産業構造や既得権益を破壊するのであろうか?より幅広く捉えるならば、グローバルシステムが変化していくなかで、時代の所産たるBOPが果たそうとしている役割はいったいなにか?

従来の考え方を変えるうえで、BOP市場に進出することが企業にとってよい考えであり戦略であるとするならば、これを実現するにはなにが必要か?あるプロジェクトは企業など個別のアクターが実施することができるが、その他のものについては協力体制が必要で、より幅広い利害関係者の協調が求められる。結果として得られる分業体制は、これまでのモデルとはかなり異なって見えるかもしれない。我々は、現在におけるベストプラクティスやモデルを探し出してその価値を認め、それらに関っている人々や組織と連携する必要がある。

概念的ツールと実際のテクニックを正しくつなぎ合わせれば、行動研究や学習にさらなるチャンスが得られるであろう。それによって、BOP概念の可能性と落とし穴がよりよく理解できるであろう。9・11を経験したいま、上記の問題に対処するには正しい時期かもしれない。新しい希望の地平線が求められ、開発に関する新しいアイデアを試みるときである。「信用や評判といった無形資産が、企業の市場価値に占める割合が大きくなる」世界において、企業経営者は自社の遺産、ブランドの脆弱性、企業デザインや測定基準の長期的有効性を真剣に検討し始めている。

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