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BOPレポート(Bottom of the Pyramid)

15. どうやって始めるか-BOP革新の概念的枠組み

企業は、多くの方面からBOPのチャンスにアプローチすることができる。ここに、C. K. プラハラードとステュアート・ハートが作成したBOP革新枠組みの重要な3つの側面を提示する。

1) 貧困層と貧困市場における中核的信念と内在する仮説に取り組む

仮説は次の通りである。貧困層が「ほんとうに」必要とし求めているものはなにか、そしてそれをどのように消費するか。流通障壁や他の取引コストなど、市場参入にあたって考えられる障壁には、非西欧文化や国に対する根強い感情や恐れがある。必要されるスキルと能力を構築し、これらの市場でなにが可能でなにが不可能かに関する新しい感性(mental maps)を得るには、教育やトレーニングが必要である。とくに西欧企業は、「西欧がもっとも知識が高い」という反射的な態度を見直し、他の市場や人々からなにを学べるかと自身に問いかける必要がある。

2) ボトムアップでビジネスデザインを革新する

多くの産業における目下のビジネスモデルの多くは、別の市場の時空間のために作成されており、BOPの文脈では機能しない。そのため、これらの特殊な条件にもっと適した、新しいビジネスデザインを作成する必要がある。しかしながら、ボトムアップの革新における課題は、先進世界に「またがる」持続可能で強固な新しいビジネス概念や技術を作成することである。品質の維持、低コスト、持続可能性、利益を、どのようにして同時に成立させることができるのか?企業は、これらの市場で強く求められている製品やサービスに対する潜在的需要を、どのように活用することができるのか?おそらく一つの答えは、次のポイントを心に留めながら革新プロセスを始めることであろう。

技術プラットフォームとそれをサポートするビジネスモデルの再定義。これによって急進的な革新、またはハイテクとローテクソリューションのハイブリッドが生まれるかもしれない。結果として、よりシンプルでより優れた、よりアクセス性が高くより低価格な、より環境に優しい技術が生まれるだろう。

生産量を増やすだけでなく、機能的ニーズやサービスを満たすことに集中する。これには、需要側のレンズを通して価値の新しい源を特定する必要がある。また、既存製品のプロフィールに関する知識を捨てさり、初心者の気持ちに戻って製品革新を行うことが必要かもしれない。

労働生産性だけでなく資本効率に注目する。労働生産性は、労働が安く豊富にあって人々が雇用を求めているところでは、重要度が低い。多くのBOPの事例では運転資本がゼロであり、これは驚くべきことである。

所有権に基づくアクセスを細かく分断して、消費者のそれを拡大するような、共同使用・共有アクセスのモデルを開拓する。その結果、資産の生産性が高まるのである。BOP世界においては、1人のユーザーではなく、ユーザーのコミュニティを考える。

情報と資産を交換する。たとえば、携帯電話サービスは現在、地方の農家に天気や土壌、価格のデータを提供している。それらは調達のための手段でもある。

「大きければ大きいほどよい」という規模の経済の考え方を転換する。代わりに、世界規模の能力と分散された小規模運営との融合を考える。

別の測定基準に焦点を当てる。経営者は利益幅に集中するよう訓練を受けているが、BOPでは商品当たりの販売量のほうが適している。

分野に関わらず多様な知識ソースを活用する。新しい光の下で古い問題に取り組む姿勢を学ぶことで、別の見方や対応策が見つかる可能性がある。

3) ビジネスエコシステムへの投資

他のグループ、機関、利害関係者と協調して市場スペースの形成を行う。新しいビジネスデザインは、幅広い4方面戦略なしには成功する可能性が低い。それには、購買力の形成(信用へのアクセス向上と所得増進)、欲求の形成(消費者教育と持続可能な開発)、各地域のニーズへの対応(底辺部の革新とターゲットを定めた製品開発)、アクセスの向上(流通システムの形成や、コミュニケーションリンクの強化のための新しいアプローチ)がある。もちろん、企業や機関がこれを正しく行えば、正統性を持った市場サークルを形成することができ、それまで推測できなかった将来的顧客を獲得することができるのである。しかしこれには「新しい国際的関与、世界規模での資源とスキルの共有」が必要である。結果として、すべての利害関係者がリスクに対してまったく新しい対応を迫られることになるであろう。

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