BOPレポート(Bottom of the Pyramid)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

7. 欲求の形成

第4層において持続可能な製品の革新が始まり消費者への教育が広がると、BOPの商品選択にプラスの影響を与えるだけでなく、究極的には、アメリカ人や第1層のその他の者の生活様式も再定義することができる可能性がある。実際、ここ20年の間、第4層において「ディスラプティブ技術」が早期に導入され、先進国の非持続的な技術に取って代わり、先見の明のあるMNCの資産を増加させた。

例えば、ユニリーバの子会社HLLは、現実的で低価格、かつ低エネルギー消費の冷凍技術の欠如に取り組んだ。HLLの研究施設は、従来のものと大幅に異なるアプローチを開発し、アイスクリームを標準的な非冷凍トラックで国内配送できるようにした。このシステムは、電力消費を大きく抑制し、危険で汚染源となる保冷剤を不要にした。追加ボーナスとして、この新しいシステムは設立と使用費が安くなっている。

電気、水、冷凍、およびその他の基本的サービスは、途上国ではすべてチャンスである。米国のNGO、Solar Electric Light Fund(SELF)は、創造力を生かして技術を応用し、小規模信用金融サービスを採用して、アフリカやアジアの僻地に住む人々に電力サービスを提供している。これらの人々は、灯油、キャンドル、木材、肥料等危険な物質を燃やして明りや調理に使用していたのである。SELFの農村電力化システムは、再生資源を用いた小規模オンサイト発電施設で行っている。貸付資金が循環することにより、農村部の住民はこれらの電力システムを自身の手で運営することができ、さらに仕事も生み出されている。1990年の設立からSELFは、中国、インド、スリランカ、ネパール、ベトナム、インドネシア、ブラジル、ウガンダ、タンザニア、南アフリカ、ソロモン諸島においてプロジェクトを立ち上げている。

SELFと他のNGOによる小規模流通エネルギーソリューションの成功は、米国のPlug Power Inc.(燃料電池)やHoneywell Inc.(マイクロタービン)等の西欧諸国の企業の注目を集めた。それらの企業は、自社技術をライバル企業や組織がいる先進市場に早々に投入するよりも、第4層にある広く開かれた市場に移行することに合理性を見出した。数十億の潜在的顧客が世界にいるなかで、そのような革新に投資することは実行する価値があると言えた。

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