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インドのRCEP撤退がアジア経済秩序に及ぼす影響――地経学的観点から

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00051506

2019年11月

(9,634字)

ポイント
  • インドのRCEP交渉撤退は自然な成り行きである。インドは米中のどちらとも二国間協定を締結せず、RCEPへの参加と米国が戻ったTPPに将来的に加盟することで、米中間のバランスをとろうとしてきた。TPP加盟が見通せないなかで、RCEPのみを追求するのではバランスを失する。
  • インドがRCEP交渉に参加したのは、インドが望んだというよりも、中国の交渉力をそぎ落としたい日本の思惑によった。一方、RCEPは専門職業の相互承認協定(MRA)等インドの関心事項に十分な手当てをしてきたとは言えない。
  • 日本の今後の政策課題は3つある。第一に、日米協定第二弾として、ルール・セッティングを中心課題とした協定を締結するための交渉を、米国追随でなく、日本主導で行うべきである。第二に、インドを含む多くの途上国の関心事項であるMRAで何か追加的に譲歩できないか検討するべきである。第三に、米国がTPPに不在のなかでRCEPが発効してよいのか考えるべきであろう。
はじめに

アジアにおける国際経済秩序の構築に対する関心が高まっている。国際金融分野では中国主導でアジアインフラ投資銀行(AIIB)が2016年に設立された(浜中2016a)。貿易分野では米国が環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership: TPP)からの離脱をした後、日本主導でTPP11が2018年に発効した。もう一つのメガFTAである東アジア地域包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership: RCEP)は2013年に交渉が開始されたが、今月4日にインドが交渉から離脱すると表明した。

今後、RCEPを含めたアジアの経済秩序はどのようになるのであろうか。本稿では地経学的観点から考察を行い、今後の見通しを述べるとともに、日本の政策課題についても簡単に言及したい。

写真:RCEP首脳会議に出席した安倍首相とインドのモディ首相

RCEP首脳会議に出席した安倍首相とインドのモディ首相(2017年11月)
バランス外交の地経学

バランス・オブ・パワーは国際関係論、地「政」学の基本理論である。生存競争のために力の均衡は保たれなくてはならない。バランスが崩れれば侵略されるリスクが高まり、国家の存続にかかわる。したがって、国々はバランス・オブ・パワーを念頭に同盟を構築する必要がある。地「経」学においてもバランスは重要である。しかしそのロジックは若干異なる。米中両国と同盟関係にある国は存在しないが、米中の双方とFTAを締結している国は多い。これが地政学と地経学の根本的な違いを端的に物語っている。より重要なことは、米中両国とFTAを締結する方が、地経学的には理にかなっているということである。

経済連携の構築は、生存の確立を高めるという目的もあるが、一義的には特定の国に従属するような状況を避けるために必要となる。排他的な経済ブロックを創設してメンバー国に対して影響力を行使するのはいわゆる地政学であるが、この排他性は基本的には軍事的脅威を背景に成り立っている(例――ソ連支配下のコメコン)。地経学の場合、国々はある程度自由に経済協定を締結できる。言い換えるならば、排他的な経済ブロックに巻き込まれないように様々な経済連携を行うことこそが地経学のポイントである。

米国あるいは中国のどちらかのみと経済連携を深めれば、一国への依存度が増大してしまう。そのような状況を避けるための第一の方策は、米中両方と経済連携することである。オーストラリアやシンガポールが典型例である。両国は米中それぞれと二国間協定を締結したうえで、TPP、RCEPの両方に参加してきた。第二の方策は、米中のどちらとも二国間協定を締結しないことで、両国と等距離を保つことである。これに属する典型例が日本である。日本は米中両国と二国間協定を締結せずに、米国の含まれるTPPと中国の含まれるRCEPの両方に参加することのみでバランスをとろうとしてきた。

米中両者から等距離をとることはそもそも難題であるが、米国のTPP離脱によって、これはさらに困難なこととなった。特に日本の受けた影響は大きい。そもそも日本は、その外交下手な一般的印象とは真逆に、地経領域においては米中間のバランスをうまくとり、それを利用してきた。後に詳述するとおり、日本はそもそも中国主導になりかねない東アジアのFTA構想(EAFTA)にそれほど関心を有していなかったが、2011年に突然中国とアジアにおける貿易交渉を立ち上げることで合意した。見逃してならないのは、2011年に日本はTPP交渉への参加を表明したことである。TPP交渉への参加に様々な難題を突き付けてくる米国に対して、「RCEPカード」「中国カード」をちらつかせることを隠れた目的としていたように見受けられる(Hamanaka 2014)。

米国のTPP離脱後、日本のRCEP交渉へのスタンスは一層慎重になったように見受けられる。日本は米国とモノについての協定を締結したが、サービス・投資・知的財産権等を含むフルの日米FTAが締結されるタイミングは明らかではない。仮に日米FTAが締結されても、それがRCEPと釣り合うのかも不確実である。より一般的に言うならば、米中どちらかと二国間協定を締結し、もう一方と地域協定(TPPあるいはRCEP)に参加することでうまくバランスがとれるのか明らかでない1

それではインドはどうであろうか。インドは日本同様、米中どちらとも二国間協定を締結していない。RCEPには参加してきたが、TPPには参加していない。仮にTPP12が発効し、加盟のドミノが実現していれば、インドも加盟申請したかもしれない(TPPの加盟条項についてはHamanaka 2016および浜中2016b参照)。そうすれば、インドは米中と等距離を維持することができたうえ、並行して進むTPP加盟交渉とRCEP交渉のそれぞれの場で中国カード、米国カードを使うことで、両交渉のシナジーを利用することができた。これは日本がTPP交渉加盟のために中国・RCEPカードを使ったのと同じである。しかしTPPが近い将来拡大する可能性は極めて小さくなり、RCEP交渉のみ進む形となった。このような状況にインドが不安感を持ったことは想像に難くない。

今後中国は死に物狂いでRCEPの早期発効を目指すであろう。TPPに参加していない多くのASEAN諸国にとっては、インド同様、TPPへの加盟交渉とRCEP妥結の交渉が並行して行われることが最も望ましかった。近い将来におけるTPP参加の可能性がなくなったので、これらの国々にとってRCEPを妥結させるインセンティブは、少なくとも米中のバランスの観点からはそれほど大きくないかもしれない。TPPに加盟するASEAN諸国も米国がTPPに戻る可能性が低いなかで、RCEP交渉を妥結させるインセンティブは大きくないであろう。もしかしたら、唯一の例外は韓国かもしれない。韓国は米国との間に二国間協定を有するので、RCEP交渉の妥結に尽力することで対中国、対国内で得点を稼ごうとするかもしれない。

ルール・セッティングの地経学

いわゆる地「政」学は、地理的条件を重視し、大国間の軍事・安全保障面でのせめぎあいを主な考察対象とする。一方、地「経」学は経済を分析対象とするが、制度を通じた経済協力でWin-Winの状況を作り出すといった自由主義的な考え方をとらず、制度(ルール)構築に関するパワー・ポリティクスといった現実主義的な議論に徹する。「ゲームのルール」を誰が設定するのかが問題なのである(Hamanaka 2014、浜中2017a)。

ルール・セッティングのための交渉を主導するには、その前に二つのセッティングを自国に有利なものとする必要がある。第一はメンバーシップ(交渉参加国)のセッティングである。同じような政策選好を有する同士国のみを集めた自国に有利なメンバーシップ構成を実現し、競合国の主張を封じ込めてしまうことが重要である。競合国を封じ込めることが困難な場合は、ルール・セッティングの際には排除し、ルール(制度)が構築された後に参加せざるを得ないような状況を作り出すことに注力する。

第二は、アジェンダ(議題)・セッティングである。WTOを含む多くの交渉の場で「最強」の交渉方法は、「それは会議の権限から外れるので議論すべきでない」といった類の主張である。何を議論してよく、何を議論すべきでないかといったアジェンダを事前に自国に有利なように設定できれば、「戦わずして勝つ」ことができる。アジェンダ・セッティングは交渉前段階に締結される覚書(MOU)のようなもので決めてしまうことや、歴史的経緯等を強調してアジェンダは既に決まっていると主張することもできる。

東アジアにおける地域的貿易交渉は、日中間のルール・セッティングのせめぎあいとして考察するとすっきり理解できる。中国は2004年に、モノの貿易に関する関税削減を主な対象とした東アジアFTA(EAFTA)を提唱した。参加想定国はASEAN10カ国と日中韓であった。一方日本は2006年に、モノよりもむしろサービス・投資・知的財産権を中心テーマとした東アジア包括連携協定(Comprehensive Economic Partnership in East Asia: CEPEA)を提案した。参加想定国はEAFTAの13カ国に、インドとオーストラリア、ニュージーランドを加えた16カ国であった。当然日中は全く折り合えず、EAFTAとCEPEAに関する作業は並行して進められた。2011年に日中はRCEP交渉の開始に突然合意したが、これは日本の観点からは中国カードをTPPで使うためであったと言えよう。実際、TPP完成後の日本は、中国をTPPに参加させることを最善の選択と見なしてきたように見受けられる。

アジア太平洋における米中のせめぎあいも、ルール・セッティングの駆け引きとしてうまく説明できる。中国はRCEPを主導し、途上国に配慮した地域貿易秩序の構築を目指す。外国企業が国家の投資政策を訴えることができる条項(ISDS条項)を入れることには後ろ向きで、製薬会社等企業の知的財産権の過度の保護にも一定の距離をとる。一方米国は2008年に開始されたTPP交渉を主導し、できるだけ自国の利益を反映させた貿易秩序の構築を目指す(アメリカはこれを「ハイスタンダード」とよぶ)。特に、ISDS条項や知的財産権保護は最重要課題である。米国は(日本と同様に)、中国をいずれTPPに参加させ、先進国主導ルールに中国を従わせることを念頭においてきた。一方中国も、筆者の見立てでは、RCEP交渉が妥結した後には、米国にも参加のドアは開かれていると主張するであろう。

このようにみると、なぜ米国がTPPから離脱したのか、ある程度明らかにすることができよう。第一に、TPPのルール・セッティングが十分とは言えなかった可能性がある。TPPは電子商取引等の分野で重要なルール・セッティングを行ったと主張する識者もいるだろうが、米国のIT企業でTPP電子商取引章がなければビジネスに支障をきたすようなところがあるであろうか。学術的分析の観点からも、TPPの電子商取引章のルールの実質性については議論の余地が大いにある(浜中2017b)。第二に、近い将来中国が入らない可能性が極めて高いTPPの価値はそれほど大きくない。中国を将来的にTPPに巻き込んでいくことが重要と主張する識者もいるであろうが、問題はそれができるかである。両国は、米国のルールに中国が従うか、中国のルールに米国が従うかという熾烈な競争をしており、米国にとっては前者がありえない選択であることは言うまでもないが、後者も同様にあり得ない。近い将来中国が加盟する可能性が極めて低いTPPのルール・セッティング機関としての価値を過大評価する必要はなかろう。

それではインドはどうであろうか。まず、メンバーシップ・セッティングについて考えてみよう。よく言われることの一つに、ASEANのFTAパートナーを含む形で地域大FTAが追求されたためインドが入ったという説明があるが、そのようなものは後知恵の説明である。中国主導のEAFTAにインドは含まれず、そもそも日本がインドを含むCEPEAを提案した2006年時点ではIndia-ASEAN EPAは締結されていない(FTAが2009年、サービス・投資協定が2012年に締結)。インドが地域的交渉に引き込まれたのは、中国に押されつつあった日本が、少しでも中国の交渉力をそぎ落とし、自国が有利になるようなメンバーシップ構成を強引に追求した結果に過ぎない。

アジェンダ・セッティングの観点からインドのRCEP参加はどのように評価できようか。マルチの交渉の場において(WTO等)、インドの「攻め」の関心事項はほぼ一点にしぼられる。サービスのうち、人の移動である。特に専門職業サービス(プロフェッショナル・サービス、専門用語では「自由職業サービス」とよばれることが多い)を相互承認協定(Mutual Recognition Agreement: MRA)に基づいて「輸出」することに極めて大きな潜在性を見出している。MRAとは、二国間あるいは複数国間で締結される協定で、相手国の専門職業(例えば技術士)を自国の専門職業と同等なものと見なしてサービスの提供を認めるための取り決めである。日本主導のCEPEAの報告書にはモノの安全基準等のMRAについての言及はあるが、専門職業のMRAについての言及は全くない。上述のとおり、日本はRCEP交渉にインドを含めることには熱心であったが、同交渉においてインドの関心事項に十分な配慮がなされてきたようには見受けられない。日本が関心を有するのはサービス分野の投資自由化であり、専門職業に従事する者の国境を越える移動の自由の問題ではない。交渉終盤になり、インドの執拗な要求で専門職業の自由化が議論されたようであるが、2019年10月10日にセットされた各国のオファーがインドにとって満足のいくものではなかったのでないかと、筆者は推察する2

つまり、インドのアジアにおける地域的交渉参加は、これにより対中国で交渉を優位に進めることができるのではないかという思惑を日本が持ったことが主要因である一方、インドの関心事項は交渉にほとんど反映されてこなかったと言える。このように考えると、インドが関税引き下げに強硬に反対したことは自然に思われる。つまり、仮に専門職業MRAが交渉に含まれるのであれば関税引き下げ交渉にも応じたであろうが、そもそも専門職業MRAが交渉から外されているのであれば、関税引き下げを回避することで対処するほかない。ルール・セッティングの交渉において、メンバーシップ・セッティング、アジェンダ・セッティングの両方の観点からインドは極めて不利な状況に置かれ続けたわけであり、そのような交渉から離脱するのは、ある意味自然な成り行きである。

日本の選択

以上のように考えると、インドのRCEP離脱はきわめて合理的な選択であったと言える。そもそもRCEP交渉はインドに不利な土俵となっていた。また、近い将来のTPP参加の可能性がなくなったことが、インドがRCEPを通じて中国と関係を深めることに消極的にさせたのである。では、日本にとって重要な政策的論点は何であろうか。3点挙げたい。

まず、日米交渉の第二弾が極めて重要である。一般的には、日米交渉において日本側が守るべき領域として、関税、特に農業分野の関税が重要だと思われている節があるが、それは正確ではない。日本が対米交渉で最も恐れているのはサービス分野・投資分野等におけるルールの交渉である。TPPにISDS条項を入れることの是非について日本中で激論があったように、投資活動や知的財産権の扱いに関するルールを定めるための交渉を米国に牛耳られることを日本は恐れているように見受けられる。これは、政府の公式見解である国際経済ルールの制定をリードするという理念と相容れない。TPPをベースにするのではなく、日米交渉の第二弾では、世界最高水準のルールを日米FTAで実現すべく、交渉すべきである。例えば電子商取引分野では、新NAFTA協定はTPPよりもさらに進んだ電子商取引章を有している3。これはTPPのルール・セッティングは十分でなかったという上述の主張を裏付けするだけでなく、ルール・セッティングの分野でやり残した仕事が多くあることを意味する。米国が締結したFTAのルールを後追いするだけでなく、日本にとってどのような通商ルールが望ましいのか、能動的に考え、動くべきである。

インドのRCEP離脱は日本にとっては残念なことであるが、そもそもインドの最大の関心事項であるMRAをRCEPのアジェンダからうまく外し続けてきたのは日本である。もし日本が、RCEPにMRAを重要な要素として取り入れる努力をするとコミットするなら、インドは交渉に戻ってくるであろう。しかし、MRAについてASEAN+6のなかで最も消極的なのはおそらく日本である(Hamanaka and Jusoh 2019)4。つまり、アジェンダが最も相容れないのが日本とインドであり、日本の観点からうまくアジェンダ・セッティングがなされたということは、逆に言うと、インドはアジェンダ・セッティングの段階で封じ込められてしまったわけである。貿易交渉の中心課題はもはや関税ではなく、サービスや人の移動等であることに鑑みると、専門職業の移動の自由でさらなる譲歩ができないか再検討すべきである。

最後に忘れてならないのは、インドが不在となった今、RCEP交渉の妥結を遅らせる力のある国は日本のみという事実である5。筆者は今まで、日本は本質的には地経学的観点からRCEPに慎重であるため、RCEP交渉はまとまらないとみてきたが、インドが本当に撤退するならばその見通しを変えなければならい。インドの交渉ポジションを利用して交渉を長引かせるという作戦はもう通用しない。インド抜きではRCEPが瓦解するとの見通しもあるが、むしろインド抜きで交渉がラスト・スパートに入るであろう。中国は是が非でもRCEP交渉を来年中に纏めようとするだろう。中国はインドの参加よりも、RCEPの交渉妥結を重視したわけであるが、今後、日本の参加よりもRCEPの交渉妥結を重視するかもしれない。(米韓FTAを有する)韓国も中国の立場を後押しする可能性が高い。そしてRCEP妥結後、中国はRCEPの拡大(新規加盟)を猛烈に進めるであろう。日本が既にFTAを締結している途上国等、日本が反対しにくい国々を狙ってRCEPへの勧誘を強めることが想定される。あれよあれよという間に設立され、米国不在のままメンバーを大幅に拡大させたAIIBと同じ道をRCEPがたどる可能性は否定できない。

写真の出典
  • Presidential Communications Operations Office(The Philippines), Indian Prime Minister Narendra Modi and Japanese Prime Minister Shinzo Abe listen to the discussions during the Regional Comprehensive Economic Partnership (RCEP) Leaders' Meeting at the Philippine International Convention Center on November 14, 2017[Public Domain].
参考文献
著者プロフィール

浜中慎太郎(はまなかしんたろう) アジア経済研究所海外研究員(在ワシントンDC)。ウィルソン・センター公共政策フェロー。専門は国際関係論、国際政治経済学、地経学、自由貿易協定(FTA)。最近の論文に "The future impact of Trans‐Pacific Partnership’s rule‐making achievements: The case study of e‐commerce", World Economy, 42(2), 2019や "Why breakup? Looking into unsuccessful free trade agreement negotiations", International Politics(forthcoming)など。

書籍:The future impact of Trans‐Pacific Partnership’s rule‐making achievements: The case study of e‐commerce

書籍:Why breakup? Looking into unsuccessful free trade agreement negotiations

  1. ニュージーランドは中国と二国間協定を締結し、米国を含むTPPに参加することでバランスをとろうとしてきた。韓国は米国と二国間協定を締結し、中国を含むRCEP交渉に参加してきた。
  2. livemintウェブサイト
  3. 米国主導で再交渉された新NAFTA協定(正式名称は米国・メキシコ・カナダ協定)は、双方向コンピュータサービスにおける情報に誤り等があり損害が発生した場合、その責任は情報提供者でなく情報発信者であるとされた(19.17条)。この条文はTPPには含まれない。一方、2019年10月に締結された日米デジタル協定には含まれる。つまり、米国はTPPから離脱したように見えるが、実はルール・セッティングを主導し続けている。
  4. 日本は専門職業に就くために筆記試験を課している場合が多い。したがって、学歴+経験をベースに職業資格を取得できる英米法の国々の間で発達してきたMRAは日本の制度に相容れない。詳細についてはHamanaka and Jusoh (2019) 参照。
  5. 日本にとっては、インドなしのRCEPは意味がないと主張することや、中国が受け入れがたいアジェンダ(電子商取引におけるデータ・ローカライゼーションの禁止等)を蒸し返すこと等で交渉妥結を遅らせることができよう。
この著者の記事