アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

15.付属文書3:商務部

中国のグローバル経済政策を策定するにあたって中心的役割を果たしている基軸組織は、間違いなく商務部(MOFOM)である。2003年までは長年にわたって対外貿易経済合作部(MOFTEC)として知られていた。この官庁は、中国と他国間の経済関係を促進する重要な役割を果たしており、二国間貿易投資という面において中国と他国とのあいだをつなぐ主要な官僚組織である。

Chen Demingの指揮下、商務部は中国への商品資源基盤の国際的スタンスを主導して定義し、投資、技術競争、市場、価格、その他に関する基軸的な権限を有する。副大臣で影響力のある重要人物は、Yu Guangzhou、Ms. Ma Xinhong、Gao Hucheng、Yi Xiaozhunである。

Yi Xiaozhunは世界貿易機構(WTO)と、同省に深く関係しているビジネス情報ユニット(下記参照)を管轄しているが、ここは、Zhou Bohuaの配下にある国家商工行政管理局(State Administration for Commerce)からもインプットを受けている。

約1350名の職員から構成され、価格決定、生産、原料ならびに加工材料の国内利用や輸出に対して影響力をもつMOFCOMの関連機能には、以下のようなものがある。

  • 短期(1年)中期(5年)長期(5年以上)の国際貿易計画をまとめるにあたって、国家総合計画の方針に従い、国家安全部(MSS)や中国兵器工業集団(NORINCO)のような軍事関連企業と連携する
  • 商品輸出基盤の構築
  • 外国での経済活動や貿易ビジネスに関するデータ管理、収集、分析(公式経済統計はほとんど公開されている)
  • 外国での経済活動や貿易に携わる企業に、経営や財務会計ガイダンスを提供する
  • 政府間での経済・貿易交渉
  • 国務院のもとで、中国を代表して二国間経済・貿易条約や協定を締結するための共同委員会を設置する
  • 中国の貿易関連条約や協定を起草する
  • 対外経済協力や貿易を管理する規則や規定を制定する
  • 外国政府への融資、対外ビジネス投資、技術の輸出入(完成プラントの輸入を含む)に関して交渉をまとめ調印する。国外資本や技術を用いた大規模プロジェクトの協定や契約を審査し、承認する
  • 建設請負、労働力輸出、対外経済連携を含む対外プロジェクトについて、部門別に管理する
  • 輸出入ライセンスや輸出割当制度を部門別に管理する。各部門で外国企業がどのように設立されているかを審査する
  • 中国大使館や領事館における商務部や経済担当参事官の働きを(MSSや軍事情報局と協力して)監督する
  • 中国にある外国企業を検査する
  • 関税率、関税構造、為替レート、その他対外経済関係に関わる規制手段に関する研究や方策に関与する
  • 国際経済、貿易状況、市場について調査研究を行う。国際経済や貿易に関する情報をキャッチアップする
  • 国家総合計画に従って、同省の関連機関やさまざまな地域および機関に対して、組織化と調整を行いながら方針を示す
     

CCPIT

同省の重要な下部組織として中国国際貿易促進委員会(CCPIT)がある。表面的には中国の対外投資推進機関として活動しているが、中国の競争相手に関するビジネス情報を収集するため、MOFCOMのビジネス情報ユニット(BIU)を補完している。その対象には、外国の価格戦略、重要な貿易数値、貿易上の策略、生産上の秘密、競合者の投資と事業計画等が含まれる。また、アフリカをはじめ海外に向けた中国の投資攻勢に助言を提供したり、その先陣を切ったりする、重要な役割をする。CCPITは国際商工会議所(CCIC)と直に連携している。

(党および実業界で大きな影響をもつ)Wang Jifeiが委員長であり、Zhang Wei (副議長)、Wang Jinghen (事務局長)がサポートしている。

CCPITは製品価格、とくに国際貿易にかかわる財の価格政策形成に参画している。CCPITは、国外での価格設定交渉や、国際通商上のあらゆる機密に通暁している。MOFCOM内の情報収集部局が、国家安全部(MSS)で同様の機能をもつ部局や人民解放軍の軍事諜報部局と緊密に連携することで、この機能が果たされている。

国際産業交渉や通商情報収集におけるMOFCOMの機能は、国内の石油、石炭、鉄鋼、金属生産業者にとって決定的に重要である。ここに、企業担当と安全保障や防衛担当の官僚間のシナジー接点を見出すことができる。情報資源の集約と調整が中国の交渉者に、競争相手を凌駕する競争力を与えているのである。 

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