アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

4. FOCACの役割

中国の政策決定機構の密室での決定によって、その後の中国=アフリカフォーラム(CAFs)(のちにFOCACと改称)が3年ごとに中国とアフリカで交互に開催されることとなり、機関としての意思表明を行うことになった。中国とアフリカ諸国間の外交・貿易・安全保障・投資関係を促進するメカニズムであり、中国のアフリカ関係を統括する枠組みを提供し、外交的主軸として国有石油会社への支援強化を制度化している。

中国が主宰した2000年10月の北京における最初の中国=アフリカ協議フォーラム(CACF)では、数多くの多国間レベルで積極的な関係構築政策への新たな糸口がもたらされた。欧米諸国の堅固な権益に直面した北京政府は、大陸の主要な自然資源産出地域に素早く進出するために、経済的・政治的・安全保障が一体となったユニークなパッケージを誘因として申し出る必要があった。

それには以下のものが含まれている。

  • 一部の国への債務免除
  • リベリア、DRC、スーダンといった地域での平和維持活動参加
  • インフラ整備とリンクした低額貸付
  • アフリカ諸国指導者の北京への招待
  • 国際的フォーラム、すなわち国連(UN)、世界貿易機関(WTO)、国際通貨機関(IMF)、世界銀行でのアフリカ支援
  • 競争力のある軍事取引
  • 「伝統的医術」における協力的プロジェクト
  • アフリカ諸国の国内政策に対する政治的非干渉
  • 「南-南」連結の推進
  • IMFや世界銀行のような機関に対して、並行的な融資機関の設立

FOCACは、中国の海外政策目標の基礎となる平和共存五原則の主要な信条を反映している。

このプロセスでは政治的対話と経済協力を、「ひとつの中国」というイデオロギーに基づいて、長期的な経済開発と繁栄を促進することが期待されている。

2000年10月の10日から12日にわたって北京で開催された最初の会議には、中国とアフリカ諸国から800人以上もの高官が出席した。協議には17の国際機関代表と企業の代表も出席した。“自然同盟”による「南-南」協力と「公平で新しい国際的な政治経済秩序」の創出が、この活動の主要な信条であった。アフリカとの経済的かつ外交的相互活動が主要ステージを占め、未来の関係を規定しようとしていた。

「中国=アフリカ協力フォーラムの北京宣言」と「経済・社会開発における中国アフリカ協力プログラム」という会議から生まれたふたつの主要文書が示された。

個別の計画では貿易・投資・共同計画の拡大が含まれ、また農業・輸送・医療・自然資源開発・銀行業務における協力を拡大するものだった。

貿易をさらに推進するためのメカニズムとして「中国=アフリカ合同ビジネス協議会」の設立が提唱された。また中国とアフリカ開発銀行(ADB)、および東・南アフリカ貿易開発銀行(PTA銀行)の助成によるジョイントベンチャー樹立のための特別ファンドの創設がコミットされた。さらに中国の経済発展のキーとなる、アフリカ大陸における自然資源の開発と有効活用が新たな焦点として特記された。

この会議から生まれたもうひとつの重要な議題は債務救済であった。2000年CACF会議の直後に中国の外務省と対外貿易経済合作部(MOFTEC)のもとに評価委員会が設立され、複数の公的機関がおこなった監査と分析から、各国の財務状況と債務額が正確に査定された。

当時アンゴラにいたMOFTEC職員によれば、債務は全額免除、無利子融資に転換、特定産品とのバーター、債務の再査定と減価、元本支払および/または利子期間のリスケジュール、アフリカ市場参入を希望する中国企業に対する税法上の優遇措置や投資ボーナスへの転換といった方策が計画された。さまざまな歴史的、経済的、財政的事情によってすべての債務を同じように扱うことはできないため、上記はケースバイケースを基本として決定されることとなった。今日までにアフリカ債務のうちの20億米ドル分が免除されている。

2003年12月15-16日、エチオピアのアジスアベバで二回目のFOCAC閣僚会議が開催された。会議にはアフリカから7人の大統領と多数の高官、中国から温家宝首相が出席した。中国とアフリカ44カ国から70人以上の大臣が出席した。この会議の中心議題は「実践的で行動優先の協力」についてであった。温首相は中国アフリカ関係をさらに強化するための4つのプログラムを提案した。相互支援、国際関係の民主化、グローバリゼーションへの対応、あらゆるレベルでの協力強化であった。

会議では「FOCACアジスアベバ行動計画2004-2006」が決定され、そこでは将来の中国アフリカ協力がさらに強調された。アジスアベバ計画の政治的枠組は、トップレベルでの外交を奨励し、政治的対話を進め、アフリカの平和維持活動に中国政府が行動的に参画する姿勢を確認して、安全保障面で協力することを誓約している。社会開発関連では、中国はアフリカの人的資源開発基金を増資して今後3年間で一万人のアフリカ人技術者を育成し、医療と公衆衛生支援を増大、農業技術指導を提供し、いくつかの国では債務を廃棄、さらには文化交流、人材交流を奨励することを約束した。

中国国際貿易促進委員会(CCPIT:MOFTEC関連委員会)のアレンジによる中国=アフリカ・ビジネス会議がFOCACと同時に開催されたが、これはとくに、中国アフリカ間の貿易投資を支援することを意図していた。CCPITは、アフリカ17ヵ国について中国企業17社の、総額4億6千万米ドルに上る20協定を成約した。さらにCCPITは、プライオリティが高いと思われるエジプト、ナイジェリア、ケニア、南アフリカなどのアフリカ市場で、中国ビジネス展示会を開催した。この目標は主として他のアフリカ諸国へ商業リンクを拡張し、貿易関係を強化することであった[ 付属文書1 を参照]。

FOCACの付属機関のひとつである中国=アフリカ・ビジネス会議(CABC)は、中国とアフリカ大陸間の貿易をさらに支援するため、国連開発計画(UNDP)から提供された基金百万米ドルを原資に、2005年8月に発足した[下記参照]。

FOCACの活動は、中国の通商官僚、外交官僚から構成された中国フォローアップ委員会(FUC)からの強力なサポートを受けており、効率的な活動を行っている[FUCの仕事については 付属文書2 を参照]。

10月に北京で開催された2006サミットには48のアフリカ国家が参加、温家宝首相は中国アフリカ協力の長い歴史と、経済発展と繁栄という共通目標を強調した。中国は大陸全体の利益を向上させるため、アフリカ諸国と連携することを約束した。

FOCAC会議での2006年北京宣言の主たる成果には以下が含まれていた。

  • 中国にはアフリカに対する援助を2009年までに倍増する
  • 向こう三年間で30億米ドルの優遇ローンと20億米ドルの優遇バイヤークレジット(長期輸出入決裁における信用供与の一種)をアフリカに提供する
  • 中国企業のアフリカ投資を奨励するために50億米ドルの中国=アフリカ開発基金(CADF)を設立する
  • アフリカ統一の目標を支援するため、エチオピアにアフリカ連合(AU)カンファレンスセンターを建設する
  • 重債務を抱える最貧国の無利子債務をさらに免除する
  • 無税措置を受ける輸出産品を190から440に増やす
  • アフリカに新しい貿易経済協力地区を5ヵ所設立する。アフリカ人専門家1万5千人に対する訓練供与。病院、マラリヤ予防センター、学校を建設。アフリカ人学生に提供する中国の奨学金を倍増する

温家宝首相のアフリカに対する約束では中国の戦略的関心を再確認したうえ、共同開発アジェンダを固めていくための基金を設置した。このように、全般的に北京アジェンダは、前回のFOCAC会議の約束事項を確認するとともに、将来の協力に対してさらに幅広い枠組を提案している。

FOCACはまた、政治的紐帯を背景として契約を進めるという経済利益のための、巨大なロビーイングフォーラムとしても効果的に機能している。その好例のひとつとして、HuaweiのRen Zhengfei (任正非) 社長が当時のWu Bangguo外務大臣を伴って2000年11月にアフリカ諸国に外交ツアーに出た際、近年では同社の最大級の取引(ナイジェリアにCDMA 450ネットワークを設立する2億米ドル契約、2005年受注)の基礎が築かれたことがあげられる[下記を参照]。さらに最近では、2006年11月のFOCACサミットで、ZTEとHuaweiがレソトとガーナで3億米ドルの契約に署名した。内部情報によれば、この会社は少なくともあと6カ国で、さらに大きな契約を調印している(開示されていないが、35億米ドル規模の新規事業になる)。

4.1. カイロ会議

もっとも最近のFOCAC会議は、2008年10月18-20日にカイロでおこなわれた第6回政府関係者会議であった。この会議は、FOCACのプロセスを見直し、2009年後半にエジプトで開催される次回FOCAC閣僚会議のアジェンダを確定することを意図していた。中国、アフリカ48ヵ国、地域機関が参加した。

会議では中国のFOCAC事業の好調な進捗を確認し、今年10月に開催される次期FOCAC閣僚会議に向けて基礎固めをした。現在の世界経済危機に関して討議されたふたつの主要課題は中国=アフリカ農業協力と食料安全保障、およびインフラ建設であった。食料安全保障は、中国が成長する中流階級の上層部向け食料需要対策に着手して以来の主要戦略課題である。これは、スーダン、アンゴラ、ジンバブエにおいて計画されている中国の新農業投資プロジェクトにおいて明白である。出席者は同じく「公平な相互利益と相互学習」原則に基づいた、中国とアフリカ間の「新しいタイプの戦略パートナーシップ」を打ち立てることにも合意した。

中国フォローアップ委員会のXu Jinghu事務局長は現時点での進捗を、アフリカでの作業に関連した困難によってFOCACのいくつかの合意事項、とくに建設の分野での実現を損なっていることは衆知であるが、成果は着実に出ていると表現した。Zhai Jun外務副大臣は、FOCAC枠内での将来の開発項目としてつぎの分野を提案した。

  • アフリカ諸国とのトップレベルの外交交流の拡大
  • FOCACアジェンダ企画におけるアフリカ側インプットの増加
  • ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けアフリカ支援を優先する。さらに、食料安全保障を強化するうえでアフリカを支援する。
4.2. 中国=アフリカ・ビジネス会議

FOCACから生み出されたもっとも重要なイニシアティブは中国=アフリカ・ビジネス会議(CABC)で、広範な関係者の参加により2005年3月に北京で発足した。国連開発計画(UNDP)から供与された設立資金100万米ドルを原資に設立された同会議は、UNDP、中国商務部(MOFCOM)、China Society of Promotion for the Guangcai Programme (Guangcai)の合同イニシアティブであり、中国共産党と民間セクターの重要な結節点で、16500社を超える中国の「私」企業会員を有する。CABCは保定、武漢、香港、マカオ、重慶、さらにはカメルーン、ガーナ、ケニア、モザンビーク、ナイジェリア、タンザニアのアフリカ6ヵ国に事務所を設立した。

CABCは2008年12月に、世界経済危機が中国とアフリカの通商関係に及ぼす影響に焦点を当てたセミナーを、北京で開催した。中国の主要なシンクタンクと北京のアフリカ代表が参加した。セミナーでは世界危機によりもたらされた困難を克服するため、FOCACが中国とアフリカに強固な枠組を継続して提供することを決定した。

これらの政治的経済的イニシアティブは中国とアフリカ間の貿易拡大をもたらしている。1999年に双方貿易は20億米ドルにとどまっていたが、2008年には1080億米ドルになり、50倍に増加した。2008年におけるアフリカの上位貿易パートナーは下記である。

  • アンゴラ(24%)
  • 南アフリカ(17%)
  • スーダン(8%)
  • ナイジェリア(7%)
  • エジプト(6%)
  • 残りのアフリカ諸国(38%)

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