アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

11. 中国の金融機関の役割

中国のアフリカでの経済的成功にとってきわめて重要なことは、国家の金融機関をうまく利用することであった。外国の資源企業や鉱業エネルギー資源に対する積極的な買収、大陸の石油資源やインフラへの大規模投資プロジェクトを下支えしているのは、いつでも即座に世界に向けて投資する用意のある、2兆米ドルを超える巨額な外貨準備金、それを運用する国営金融機関の集合体である。

これらの機関は中国開発銀行(CDB)、中国商工業銀行(ICBC)、中国中信集团公司(CITIC)、中国輸出信用保険公司(CECIC)、Sinosure、および中国輸出入銀行であり、それらの機関の役員は中国の石油会社と密接に協力して、金融取引を望ましい奨励金付きの金利で取りまとめている。これらの国家主導の機関は自由に利用できる巨額な資金をもち、中国企業の海外進出に伴走し、欧米企業ならば避けられない厳密なアカウンタビリティと透明性原則に縛られることなく、低利融資を提供することができる。

中国企業・国家・金融機関のあいだに成立している「黄金の三角形」が、中国の石油企業に、欧米の競合相手よりも低コストの資金を提供している。中国開発銀行は世界最大の準商業的銀行である。同行は3500億米ドルの資産を持ち、世界銀行やアジア銀行よりも大きい。中国輸出入銀行は世界で3番目に大きい輸出信用機関であり、その主たる使命は「産業、外国貿易と経済、財政、および国際関係において国家の政策を実施する」ことである。新たに創設された中国投資有限責任公司(CIC)の武器庫には、中国の中央銀行から提供された2000億米ドルがあり、現在その外国為替保有を、米ドルおよび米長期国債から資源資産へと多様化したいと考えている。

中国輸銀は、海外での探鉱および資源取得のために、CNPC とその子会社であるペトロチナに、12億米ドルに相当するオープンな低金利クレジットラインを提供する予定である。エネルギー・天然資源への株式投資を専門とするCITICの子会社CITIC Resourcesもまた、いくつかのアフリカの国、とくにチャドとナイジェリアで、中国石油会社が関与している石油取引の取りまとめの際、密接に協力してきた。

この種の資金的支援によって中国海洋石油総公司(CNOOC)は、2005年のUnacol 買収の際、シェブロン・テキサコの提示額より高い185億米ドルの現金付け値を入れることができた。米国の立法者のみがその取引の進行を停止させることができた。

2004年に華為技術は、グローバルな拡張のための資金として、100億米ドルのクレジットラインを中国開銀から、6億米ドルを中国輸銀から取得した。アナリストは、華為技術が競争者より70%も安く入札し、またベンダーへの融資を提供することができたのは、それゆえだとみている。たとえばナイジェリアは、2004年に華為技術の機材を購入するために2億米ドルのローンを中国開銀から受け取った。当時の貸出利率は6.39%で、これは中国でのベンチマーク貸出利率をはるかに下回っており、ときにはわずか1~2%ということもあった。

これらのすべてが、中国の納税者が提供したリスク投資への助成金に該当する。

重要なことは、欧米企業はそのような「投資パッケージ」をもっていないため、中国の競争相手のように割引ボーナスを交渉することができず、明らかにに不利な立場にいると感じているという点である。ある欧米の鉱山会社は、数え切れないほど多くのケースにおいて、中国企業ならば資源獲得ベンチャーと連動して中国の銀行の援助を受けて行なえるような、鉱業プロジェクトを確保するためのインフラ融資を提示することができていない。

中国の金融機関が貿易投資を促進するために用いている戦略は、アフリカで広範な事業基盤をもっている外国の銀行を、支店と顧客を通して買収することである。2007年10月、上場額では世界最大の銀行である中国商工業銀行(ICBC)は、南アフリカのStandard Bank Group Ltd.株の20%を54億米ドルで購入した。アフリカの18ヵ国で営業しているスタンダード銀行は、融資額においてアフリカにおけるすべての銀行をリードしており、1200億米ドル近くの資産をもっている(Caggeso, 2007)。中国は英国のバークレーズ銀行の株式を取得してこの購入を補足した。中国投資有限責任公司の2000億米ドルの資産を利用して、中国は米国のブラックストーン投資銀行の株を30億米ドル購入した。その後ブラックストーンは、CDBがバークレーズ銀行株を70億米ドル購入するのを助けたが、バークレーズ銀行はアフリカで活動する英国の主要銀行であり、ナイジェリア、南アフリカ、ザンビア、ジンバブエといった資源国において優位な地位を保持していた。この投資は、アフリカ主要国における金融界で有力な利権に中国がアクセスすることを保証し、二国間での政府契約によらない投資を促進するものである。

11.1. 中国輸出入銀行

中国がアフリカ大陸で行なったインフラへの融資の大多数は、(いずれ国の輸出入銀行と同様に)中国製品の貿易支援のため輸出業者や輸入業者に対する信用供与を専門とする中国輸銀から、融資を受けている。これらの信用は2005年には合計200億米ドルに達しており、それが中国輸銀を世界最大の輸出信用機関のひとつにしている。さらに中国輸銀は、海外のプロジェクトに譲許的資金を提供する権限をもっている中国で唯一の金融機関である。

2008年6月まで、中国輸銀はアフリカで少なくとも65億米ドルに相当する300以上のプロジェクトに融資してきた。承認されたプロジェクトの80%がインフラ開発に関係しているため、インフラは中国輸銀の中核案件になっている。

中国輸銀は、「アンゴラ方式」または「インフラによる資源獲得」と呼ばれるところの、インフラ開発融資の返済が天然資源(たとえば石油)によって行なわれる取引構造を、益々頻繁に利用している。このアプローチは決して新しくもユニークでもなく、石油産業での取引では長い歴史をもつものであるが、中国はこれをより高いレベルで行っているのである。

中国輸銀は、中国の国営企業や、中国製品の購入を希望する外国政府に対して有利なクレジットラインを提供することで、全世界の同業者に対抗して中国企業の生産性と競争力を高めることを長期的な目標としている“Go Global”戦略に沿って、中国企業の海外での拡大を支援している。

このスキームは、融資返済への適切な財務保証を提供できない国々に対して利用され、また中国企業が天然資源の探査とインフラ開発をパッケージ化することを可能する。

中国輸銀の融資条件は、そのプロジェクトの性質に従って、二国間協議で譲許性の程度が決定される。中国のサブサハラ・アフリカに対するインフラ・非インフラ双方の融資に関して、世界銀行の債務者報告システムから分かることがある。

中国の融資は平均利率3.6%、据置き期間4年、返済期間12年間である。全体としてこれは、譲許的性があるとされる公式の定義、36%のグラントエレメントを満たしている。

しかしながら、各国間でのこれらパラメータの差はかなり大きい。利率に関しは、下は0.25%(アンゴラのケースで)から上は6%までの範囲であり、据置き期間は2年から10年、返済期間は5年から25年、グランドエレメントは10~70%でばらついている。中国の融資は民間セクターの対アフリカ貸出と比較すれば有利だが、アフリカに対して約66%のグランドエレメントを提供しているODAほど魅力的ではない。

譲許的融資の場合、中国企業がコントラクターまたは輸出業者に選定されなければならないという条件がつく。さらに、プロジェクトを実施するために必要とされる機材、材料、サービス、技術の50%以上を中国から確保しなければならない。アンゴラのケースではその数字はさらに高く、70%である。

11.1.1. アンゴラの事例

アンゴラは、中国の経済的政治的関心がどのように絡み合っているか、石油産業部門における中国企業のアクセスを梃子入れするために輸銀融資がどのように利用されたかを示す、最良の例である。

中国のアンゴラへの関心は、アンゴラの新しい東方外交政策と時期的にほぼ一致していた。アンゴラでは、欧米のパートナーとの伝統的関係を悪化させるような、いくつかの問題が浮上していた。

  • 石油収入について高い透明性とグッドガバナンスを求めるグローバル・ウィットネス等のNGOと、国際通貨基金(IMF)および世界銀行等のグローバル金融機関からの圧力、およびアンゴラの汚職問題に対して高まる批判
  • 石油市場への有利なアクセスへの見返りとして、アンゴラ政府高官を含むアフリカ人エリートに賄賂が渡されたElf Aquitaneの汚職事件
  • UNITA との内戦継続
  • 民主的選挙の欠如
  • フランス製兵器の不法取得に関するフランスのFalconegate スキャンダルで、アンゴラ大統領府のHelder Viera aka “Kopelipa” 官房長を含むアンゴラ政府高官の名が浮上したこと
  • 30年近くに及んだ内戦で破壊された社会機構やインフラを再構築するにあたって、最大の焦点は資金の調達であった。アンゴラのBCI銀行によれば、内戦終結直後 (2002年4月)に150億米ドルの直接借り入れが必要であったが、そのうちアンゴラの銀行やその他金融機関から借りられたのは30~40億米ドルだけであった。

およそ110〜120億米ドルを海外から調達する必要があった。アンゴラはどうにもならない状態にあった。アンゴラはすでに債権者のパリクラブから110億米ドルを借り入れていた。それはアンゴラ政府にとって返済不能の金額であり、利子支払いが精一杯だった。債務救済をえるにはIMFの構造調整計画を受け入れなければならなかったが、それは、アンゴラの政府組織の抜本的改革と、石油収入の不透明な使途を明らかにするよう求めていた。IMFのプログラムが始まると、パリクラブとの交渉はアンゴラに債務救済を施す方向に動きだした。

世紀が変わるころアンゴラは、アンゴラ経済と政府機関改革に着手するつもりで、IMFのスタッフ・モニタリング・プログラム(SMP)と接触した。しかしそれは、財務省や中央銀行よりも強力な、アンゴラ政府内の実質的な「主権国家」であったSonangol を解体するよう要求すると思われた。当時、これは大統領府(Futungo)が受け入れそうもないことだった。

前世紀末に石油価格が1バレル当り10米ドルの低水準から上昇し始めた後、アンゴラはSMPプログラムを捨て去り、Sonangolを通して積極的に、国際金融市場から石油を担保としたローンを借り受ける方針に切り替えた。この国有石油会社はアンゴラ政府にとって実質的に最後の貸手となり、そのようなローンの債務返済スケジュールを固く守るという評判を急速に確立し、国際機関をも喜ばせた。

しかしそれらのローンは非常に割高なもので、アンゴラは高リスクの貸付先として、通常の市場価格よりもはるかに低い担保評価での石油保証を使って、プレミア利子を支払っていた。ある時期には、Sonangolは将来計画されている石油生産のほとんど全部をローンに対する石油返済保証としていた。石油を担保にした借り入れ政策もまた、ブレトン・ウッズ機関からの痛烈な批判にさらされるようになった。彼らは、その政策はIMFの改革を受け入れるよりも金のかかる選択肢であり、アンゴラの経済を安定させるために必要とされる改革と、世界経済へのアンゴラの復帰を遅延させていると主張した。

加えて、IMFの監視つきながら外貨とソフトローンが集まるものと期待された「ドナー会議」の約束は、ついに果たされなかった。当時アンゴラ交渉団のトップであったJosé Pedro de Morais財務相、アンゴラ中央銀行(BNA)の有能なAguinaldo Jaime総裁は「アンゴラのように豊かな天然資源にどっぷりと浸かり、大掛かりな政治改革に取り組む気のない国に、金を貸すことは不道徳である」という、いつもの反応で迎えられた。

最後には、改革が行なわれないことから金を貸そうとしない外国ドナーとのあいだで手詰まり状態となり、アンゴラは、改革が行なえないのは貸付を拒否されたせいであると主張した。

11.1.1.1. 中国の参入

天然資源の取得を渇望していた中国のアンゴラ参入は、ある意味必然である。2002年4月における内戦の終結に伴い、アンゴラは、疲弊した大衆を活気づけるために急速な社会経済開発を必要としていた。ドスサントス大統領は、彼が記憶されるために社会経済開発(経済的平和配当)を在任中に遺産として残すことを、もっとも重要な政策目標としていた。

中国は豊富な現金というソリューションを提供してくれた。北京は中央銀行の金庫を現金の山で満たし、中国輸出入銀行、中国開発銀行(CDB)、中国建設銀行(CCB)、Sinosure、China International Fund (CIF)等の国営金融機関や開発系国有企業を使って、アフリカでの政治的影響力を強化しようとしていた。

重要なことは、それらのローンにはなんらの政治的、あるいは「道徳的」条件がついていないことである。中国は「国家の主権事項に対する不干渉」原則を厳密に固守している。当時Aguinaldo Jaime は内輪の会話で何人かに、中国がありがたいのは、中国の銀行には直ちに資金を融通してくれるだけの十分な流動性があり、ローンとは借手の必要がなくなるまで継続すべきものだと考えてくれることだと話していた。

アンゴラ政府の高官は、中国政府は、とくに透明性の問題について政治的なひもを付けずに進んで援助をオファーしてくれ、アンゴラ経済の重要部門に窓を開いてくれたため、われわれは中国を頼ったのだといっている。中国は低い金利と適切な返済スケジュールについて話し合う用意を固めていたが、それは、とくに石油産業における経済的な見返りを期待してのことであった。

11.1.1.2. ローン年表と石油との関係

2004年以降の対アンゴラ融資を時間の経過に沿ってみてみると、両国のあいだでの融資の発表と、重要なエネルギープロジェクトの取り決めとのあいだに、密接な関係があることが分かる。その関連性について、アンゴラ政府にいつどのような融資が提供されたかについての年代順の分析とともに、以下に概略を述べる。

  • 2000年: Kundy Pahyama国防相が200年5月に中国を訪問した年に、アンゴラの中国への石油輸出は、1999年の日量4万バレルから2000年には17万4000バレルへと急増した。
  • 2002年: 中国建設銀行(CCB)と中国輸銀が、アンゴラに進出した中国企業に1億4500万米ドルを投資。
  • 2003年11月26日: 中国の対外経済合作部(MOFTEC)とアンゴラ財務省とのあいだで包括契約が締結された。これは、両国間クレジット契約の今後の全プロセスを規定する法的根拠である。非常に重要なのはクレジットラインが、再建期間が終了するまで100億米ドルに拡張可能と決定されたことである。
  • 2004年2月: Sonangol のManuel Vicente総裁が中国を訪問、アンゴラの上流下流部門における共同プロジェクトと中国権益の拡大について協議した。これには、日量240万バレルの精製能力をもつロビト製油所計画へのSinopecの参加可能性が含まれていた。
  • 2004年3月2日: 中国のZeng Peyan副首相がアンゴラを訪問、これに続いてアンゴラのPiedo Nandó首相が北京を訪問した。中国輸銀とアンゴラ財務省は20億米ドルの融資契約を結び、加えて、必要に応じて引き出せる追加の5億米ドルが用意された。最初の20億米ドル融資はふたつの部分からなる。10億米ドルは公共事業18契約、さまざまな60のプロジェクト、農民と農産物業者用の1500台のトラック、ルアンダの送電網新設、農業プロジェクト、北部の中核都市Negageから鉱山地帯を通って首都に至る371km道路の建設を含む。残りの10億米ドルは、保健、教育、公共事業、社会開発をカバーする27契約と50の社会プロジェクト向けである。
  • 2004年9月: 輸銀のYang Zilin総裁が、ローンをめぐる不正疑惑を調査し、支出を効果的にモニターするためルアンダを訪問した。その訪問から間もなくアンゴラは、セクター間モニター委員会の傘下に、中国のローンを監視するためのモニター専門事務所(GAT)を設置した。José Pedro Morais財務相を長とするその委員会には、公共事業相、アンゴラ中央銀行総裁、内閣官房長官、Sonangol会長が含まれている。GATは、財務省、アンゴラ中央銀行、プロジェクトに関与する各省から派遣された専門家に加え、ローンには石油生産保証がついているためSonangolの職員からなっている[下記を参照]。
  • その訪問時に、SinopecはインドのONGC-Vindesh を手放して、BP-Amocoによって運営されているBlock 18において、シェル石油の50%を取得した。
  • 2004年10月: ドスサントス大統領とNandó首相 は中国政府と相談のうえ、国家建設を監督し、外国資金の支出を監視して、中国の融資を管掌してモニターする専門部署を創設することを決めた。それは国家再建室(GRN)と命名され、大統領府保安チーフであるHélder Vieira Dias将軍、別名Kopelipaの管轄下におかれた。重要な点は、アンゴラ政府高官が疑わしい経済実体を通じて多額の手数料を横領したという嫌疑に基づいて、輸銀のローンに対する監視体としてGRNが発足したことである。主犯は、内閣官房長官として、大統領と内閣を直接つないでいたAntónio Van Dunemとされ、事件発覚後すぐに解雇された。
  • 2004年11月: 中国はFalconegate 事件への報復としてトタルを3/80ブロックから追放した。Sonangolは同ブロックをSinopecに渡すための協議に入った。
  • 2005年2月26日: 有力者のZeng 副首相がルアンダを訪問し、複数の石油関連資金協定に署名した。「技術プロジェクト」向けの630万米ドルの無利子ローン、3/05(旧3/80)ブロックの石油探査に関するSonangolと Sinopecの共同研究MOU、新製油所建設に関する共同企画MOUなどがそうである。
  • 2005年3月/4月: 中国国際基金(CIF)とGRNのあいだで新しいローン契約が締結され、香港とルアンダで署名された。最初の29億米ドルは内戦で荒廃したルアンダ-ロビト、Malanje=Saurimo、Saurimo=Dundo、Saurimo=Luenaの各回廊に投下されるが、これには幾多の大統領直轄プロジェクトが含まれている。それは、ルアンダ空港改修や新空港の建設(4億5000万米ドル)、有名なベンゲラ鉄道を含む鉄道路線の拡張と補修(3億米ドル)、ルアンダ湾の浚渫、首都下水道システムの新設などである。追加の60~70億米ドルは、今後4年間にわたってディスバースされることになっているが、まだ実施されていない。だが、多くのCIF プロジェクトは2007年に停止した。それは、CIF とその親会社であるBeiya International Development Ltd.傘下の建設会社に問題が発生したからである。Beiyaは、アンゴラ原油を扱っているChina Angola Oil Stock Holding Ltd.の親会社でもある。2008年末までに、当初の29億米ドルの80%がディスバースされた。残りの60~70億米ドルはまだ拠出されておらず、中国輸銀を含む共同融資事業の一部として組み込まれる可能性が高い。
  • 2006年3月: 中国とアンゴラは、日量24万バレルの能力をもつ34億米ドルの製油所をロビトに建設するためSonangol Refineries (Sonangref)とSinopecが合弁会社を立ち上げると発表した。同じ月、20億米ドルの第1期ローンが30億米ドルに増額されたことで、中国はアンゴラの戦後復興において最大の国外プレーヤーになった。
  • 2006年5月: Sonangol-Sinopec International (SSI) は、国際入札において15ブロック(20%)と17ブロック(27.5%)における重要部分を24億米ドルで落札した。これらふたつの区画の確定埋蔵量は32億バレルである。
  • 2006年6月20日: 中国の温家宝首相がアンゴラを電撃訪問。Nandó首相が、同行したYang Zilin輸銀総裁と会談した。Yang Zilin総裁、Nandó首相、José Pedro Morais財務相のあいだで、アンゴラへの20億米ドルの追加融資に関するMOUが署名された。 2007年4月:中国アフリカ開発基金(CADF)のGao Jian総裁と中国開発銀行(CDB)の副総裁がAguinaldo Jaime 副首相と会談。石油保証を伴わないローンについての最初の協議が行なわれた。2006年に50億米ドルで設立されたCADFのエクイティ・ファンドが、中国政府によるアフリカ投資の第一歩を記した。Jian総裁は、CADFのChi Jianxin CEOを伴って以前からアンゴラ側と接触していた。CADFは4月か5月以降、Libor プラス1.5%の金利で融資を行うものと思われる。しかし、貸し出される金額は輸銀の額ほど大きくないであろう。 [注: CADFからアンゴラには、どんなローンもまだ行なわれていない。両者間で現在も交渉が続いている。]
  • 2007年1月19日: 2004年の輸銀融資に関連する拡大分として、追加の5億米ドルが承認された。融資条件は、2004年3月の輸銀による20億米ドル融資のものと同じである。
  • 2007年9月20日: José Pedro Morais 財務相が中国輸銀のLi Ruogu新総裁(米国で教育を受けたテクノクラートで、IMF、アジア開銀、アフリカ開銀での勤務経験がある)と会談、2006年6月に同財務相とYang Zilin、Nandó首相が署名したMOUに基づいて契約文書の詰めを行った。これにより追加の20億米ドル融資が可能になる。条件は、2004年の輸銀第1期融資とは若干異なっている。利子はLiborプラス1.25%に設定され、返済期間は17年から15年に短縮されている。
  • 2008年7月3日: 輸銀のLi Ruogu新総裁とJosé Pedro de Morais財務相が、アンゴラにおける3つの共同社会開発プロジェクトへの、1億3400万米ドルの個別ローンを想定した個別融資MOUに署名。条件は2007年9月の輸銀融資と同じである。これは、Lunda Norte州とLunda Sul州にある2都市の電力システム近代化、ルアンダにおける水処理ブラントならびに運河建設、他の2州における道路改善プロジェクトに用いられる予定である。
  • 2008年8月~9月: ドスサントス大統領がオリンピック大会のために北京と上海を訪問。中国とアンゴラはローン契約に対する新しいアプローチを開始する必要性を確認。ドスサントスとAguinaldo Jaime中銀総裁がCADFのGao Jian 総裁と会い、石油ではなくアンゴラ財務省発行の国家保証による新しい融資計画について協議した。Jianはこれを「リスク分担ローン」と呼んでいる。Gao Jianは中国開発銀行(CDB)副総裁も兼務している。
  • 2008年12月: 世界経済危機の発生後にドスサントスは、契約済み融資が停止されないことを確認したうえ追加融資の可能性を求めるため再び訪中した。彼は中国政府の高官から、信用収縮は「一時的なもの」であるとの考えを示された。ドスサントスはLi Ruoguと輸銀取締役会を訪ね、石油保証から一部を切り離した新しい融資計画を示されて、アンゴラの外貨流動性は信用力として十分なだけ増加していると中国はみていると告げられた。CIF の支払い危機問題も、他の投資案件と同様にレビューされた。停止しているCIFプロジェクト、すなわちルアンダ新空港やルアンダ新都市プロジェクトなどの今後に関して、輸銀共同出資の可能性に討議が集中した。つまり、計画中のSONAREF製油所、新しいSoyo技術産業都市・開発拠点、新規発電プロジェクト、アンゴラ航空(TAAG)の拡張と訓練、SonangolのLNGプロジェクトのような他の旗艦プロジェクトと同様に扱われるかどうかについてである。
  • 2009年1月19日: 中国のChen Deming商務相は2日間の短い訪問中にアンゴラの新しい財務相であるSeverim de Moraisと会談。中国輸銀からアンゴラに対して供与された直接ローンは、2004~2008年期間に45億米ドルに達したと述べた。この数字は、現在では55億米ドルを超えている。 2009年2月7日:アンゴラ財務相が訪中。中国輸銀の新しい10億米ドル融資が最終決定した。これは、石油保証ではなく国家保証となる見込みである。

対アンゴラ融資が通常以上に寛大な条件を与えられたことは疑いない。通常の輸銀貸し出し標準金利は、英国指標Libor 3M(3カ月)プラス1.5%である。返済は、据置き期間5年間の17年間に引き延ばされている。半年ごとの支払いが毎年3月21日と9月21日に設定されている。利子率は有利であるが、2005年のスタンダード銀行による23億5000万米ドルのローン(Liborプラス72.5%利率)と比較してみると、利子支払いは、アンゴラに対して行なわれた他のローン、たとえばLR LuminarやDeutsche Bank of Spanish Santanderと大きな差はない。インド輸出入銀行はLiborプラス1.75%のローンをオファーした。しかし、これらすべてのローンはひとつの点で異なっている。それらは、約状による石油生産割当といった実物保証ではなく国家保証、すなわち財務省からの約束手形に基づいている。

今年、アンゴラはIMF との協議を再開した。その理由として、アンゴラの中国融資に対する依存が過剰になり、対外債務ポートフォリオのバランスをとるため代わりの資金ルートが必要になったためといわれている。

11.2. 中国=アフリカ開発資金(CADF)

中国アフリカ開発基金(CADF)は、2006年に北京で開かれた中国アフリカ・サミットでの胡錦濤国家主席の公約によって、対アフリカ投資促進のための追加融資を提供するため2007年3月14日に正式発足した。CADFは、過去20年間にわたって中国経済において重要な役割を果たしてきた国有の中国開発銀行(CDB)から、出資と監督を受けている。

CADF は、胡錦濤国家主席が北京で開かれた2006年の中国=アフリカ協力フォーラム(FOCAC)サミットでその概要を述べた、今後3年から5年のあいだにアフリカとの関係を強化するプランの、8つの要素のうちのひとつである。FOCACサミットで胡主席は、中国がアフリカへの投資を促進するため、新しいメカニズムを検討していたことを明らかにした。この基金の事業範囲は、株式および順株式投資、基金投資、投資管理、コンサルティングサービスを含んでいる。この基金の使命は、アフリカ諸国の農業、製造業、エネルギー部門の開発を支援することであり、運輸と電気通信ネットワークを拡張することである。また、アフリカにおける都市インフラ、資源採掘、通商特区、中国ビジネスセンターの創設を加速することである。

中国政府は、この資金は、ADBやIFCといった国際金融機関の同種類のオファーより包括的なものになると約束している。中国の多国籍企業および国有企業はアフリカ市場にアクセスする際に、すでにこの基金からの援助を受けている。たとえば通信分野の巨大企業であるAlcatel Shanghai Bell は、アフリカで新しいビジネスチャンスを探すためにCADFから支援を受けている。

CADFは中国企業に低利融資や現地での事業促進サービスを提供することにより、大陸全体でビジネスネットーワークを確立して維持するためのメカニズムを提供する。2009年度は10億米ドルが支出され、追加の20億米ドルが2010年には利用可能になる。さらなる20億米ドルが2011年12月にオファーされる予定である。

CADF は中国企業のアフリカ進出に大きなインセンティブを提供することになろう。さらに、CADFには公的機関の後ろ盾があり、中国企業がアフリカで事業を行なう際の多くの困難を克服できよう、支援を提供する。この基金は現在、経済危機で欧米企業が後退した後の、とくにはRio Tintoのような資源企業が残した空白を、中国企業が埋めていくのを援助するにあたって、絶好の位置にいる。

アフリカ大陸全体で活動している900以上の大規模な中国企業は、新規プロジェクトや事業拡大のため、CADF融資を受けることができる。

この基金は設立以来、アフリカで20以上のプロジェクトに対して4億米ドルを投資した。たとえば、

  • マラウイ:綿花プロジェクト
  • ガーナ:56万kWの発電所
  • エチオピア:ガラス工場(農業、製造業、建設業でのプロジェクトを調査中)
  • エジプト:スエズ貿易パーク
  • リベリア:農業、建設業のプロジェクトを検討中
  • ナイジェリア:Lachish通商地区
  • ジンバブエ:クロム鉄鉱プロジェクト

CADF はまた、アフリカにおける独立系地域銀行グループであるEcoBankと提携を結んでいる。EcoBankはアフリカ25カ国で活動し、マイクロ金融から大規模投資まで、広範なサービスを提供している。

CADF特有の機能は、すでにアフリカで事業をしているか、あるいはアフリカに投資する計画をもつ中国企業に、直接投資することとされている。CADFは、中国アフリカ関係と戦略的パートナーシップを強化するという中国政府の方針および外交政策に協力するものである。CADFは適切なプロジェクトを特定して、そこから利益をあげようとする。アフリカ諸国の債務プロフィールにさらなる負担を課すことなく、中国企業の能力を高めることが目的である。専門家チームが利益確保という最優先目標にそって基金を運営しているが、それと同時に、全権者である国務院の管轄下にある中国開発銀行に属している。CADFの一義的ターゲットは、ビジネスを拡大したり新規事業に乗り出したいと考えているアフリカ進出中国企業なのである。

CADF の事業範囲は下記を含んでいる。

  • 株式投資:在アフリカの中国企業支援(CADFは通常、筆頭株主にはならない)
  • 準株式投資:株式および債券への投資
  • 基金投資:アフリカでの運用があるキャピタルファンドへの投資
  • 投資管理・コンサルティングサービス:アフリカへの投資を望んでいる中国企業へのアドバイス

CADF がターゲットとしている産業は下記の通りである。

  • 農業および製造業
  • 発電、運輸、電気通信、水道を含むインフラ
  • 石油、ガス、原材料等の天然資源
  • アフリカにおける中国企業のための工業団地

CADF は、アフリカでの事業を始めるか拡大しようとしている、新規あるいは既存の中国企業に、いつでも投資する用意がある。事業が軌道に乗った後は、CADF は支援を終了する。

CADF は、中国国内のインフラ開発や基本産業および戦略産業振興における国有の中軸的金融機関である中国開発銀行(CDB)から、十分な資金を与えられている。CDBの目的は、資金能力の高いCADF を通して、アフリカにおける中国の活動にモデルや指針を提供することである。中国でのCDBの実質的な活動は、下記のようなものである。

  • 電力供給:中国全土の発電所建設、送電線開発に対して5千億米ドル以上を提供
  • 道路:中国の主要道路の開発に4900億米ドルを提供
  • 鉄道:中国鉄道省と戦略提携して広範な鉄道網を建設。現在は中西部と北京を結ぶ高速鉄道プロジェクトに関与
  • 石油:中国全土の油田、製油所、パイプライン、ネットワークに1千億米ドル以上を投資
  • 農業、公共インフラおよび電気通信:新規の開発プロジェクトに融資、経済開発を進めるうえで主要な役割を果たしてきた

このようにCADFの融資パートナーは、新興経済を発展させ、良好な結果を出すために資本とアドバイスを提供することについて豊富で広範な経験を有している。中国開銀は、アフリカが主要な対象のひとつである中国の“go global”戦略の推進と実践において、当然ながら中心的機関なのである。

2009年1月初めまでにCADFは、設立以来20を超えるプロジェクトにおいて、ほぼ4億米ドルに相当する取引を成立させてきた。提案され検討されたプロジェクト件数は100以上である。この基金はまたアフリカ諸国との事業協力を拡大するために、中国の主要企業10社と戦略的パートナーシップを確立している。

11.2.1. CADF南アフリカ新事務所開設

2009年3月16日、中国アフリカ開発基金(CADF)はヨハネスブルグ市内に、アフリカで最初の駐在員事務所を開設した。開所式では、CADFと南アフリカ貿易産業省(DTI)とのMOU署名が行われた。しかし、このMOUに関してはほとんど情報がなく、南アフリカでの「中国の投資機会を増大させる」という一般声明が出されたのみである。中国政府の高官は後に、その覚書についてより多くの情報が用意されるべきであったことを認めた。

しかしCADFヨハネスブルグ事務所の開設は、アフリカにおける中国政府のより深い関与の姿勢を表すものである。CDBのChen Yuan総裁によれば、この新しい事務所は南アフリカと南部アフリカ開発共同体(SADC)双方における投資を加速させるためのチャンネルとして機能し、大陸全体の開発を支援するため、われわれの資金は多様なプロジェクトに適用可能になる。この基金のため50億米ドルがCDB によって用意され、そのうち10億米ドルはすぐにでも利用が可能である。今日までCADF は4億米ドルを、アフリカにおける中国企業の新規プロシェクトにコミットした。

Chen Yuan総裁(付属文書IV参照)によればCADFは、アフリカの長期的な経済発展を促進する、中国の対アフリカ投資におけるニューウェーブに道を切り開くものである。その経済発展に広い選択肢を提供するため、CADFは複数の産業に投資するという。CADFのChi Jiaxin会長(付属文書IV参照)は、この事務所はアフリカでは初めてのものだが、活発な投資計画を促進するため大陸の他の場所にも多くの事務所を開設する予定だと語った。CADF は中国アフリカ間の貿易投資を拡大するために基盤を提供し、中国の投資家にとって南アフリカおよびアフリカ全体への進出を、より魅力的なものにするだろう。

Zhong Jianhua駐南アフリカ中国大使は、中国大使館は中国企業の南アフリカ訪問が増えうるよう尽力すると述べた。彼は、CADF事務所の開設によってアフリカへの関心が高まると予測し、開所式の出席者に対して、大使館はCADFと緊密に協力して中国の新しい投資計画を進展させると語った。大使はまた、CADF事務所開設の3週間前に、中国通信産業の重鎮が率いるビジネスミッションが、南アフリカでの新しい投資機会を調査するため南アフリカを訪問したばかりだとも述べた。

南アフリカ貿易産業省のElizabeth Thabethe副大臣は、CADFは鉱業、運輸、エネルギー、農業、インフラ開発および情報通信技術部門といった分野での共同案件に焦点を当てるだろうと述べた。これに関して南アフリカ政府は、CADFの後援を受けて中国の投資会社と新しい商業関係が築かれることに期待を示している。CADFのChi Jianxin CEOとMOUを交わした際に副大臣は、このMOUは世界金融危機の影響で困難を抱えている南アフリカ企業に資金援助を提供するものであると述べた。

開所式でキーノートスピーカーを務めたアフリカ民族会議(ANC)のMathews Phosa財務局長は、新しいCADF事務所の開設は中国が南アフリカの法制度を信用している表れだと語った。彼はまた、近年ますます高まっている中国の経済的政治的威信が、新しい経済パートナーを探すにあたって南アフリカの目を東方に向けさせていると述べた。Phosaは、南アフリカの新興企業を助けるため中国が融資するプロジェクトを、ANCは支持するとも述べている。世界の主要国の経済が収縮しているにもかかわらず中国が依然としてアフリカで新しい投資を行い、アフリカが財政的困難を克服するのを助けようとしているし、欧米のアフリカへの関心が衰退しても、それは中国の新しい投資の波によって埋め合わされるであろうとの印象を、彼は感じている。Phosaは、中国のアフリカへの関心を歓迎しており、中国の投資は南アフリカ、SADCおよび大陸全体で歓迎されていると強調した。

Mathews Phosaは参加者に、中国と南アフリカの関係は4月の選挙後にはさらに深まるだろうと語り、今後数ヵ月内に民間ベース、政党ベースの協力関係が強化されるとの予想を示した。

政府ではなく政党幹部であるPhosaの開所式への出席は、幾分不自然であった。しかし、それ以前にもたれたChen YuanとANCのズマ総裁との会談で、中国・南アフリカ協力関係の改善が話し合われたことをフォローアップするものだった。信頼できる筋によると中国は、2009年4月の選挙運動に資金援助するため、ANCにかなりの寄付をしていた。

11.3. 中国工商銀行

中国商工業銀行(ICBC)は中国最大の銀行であるが、同行が2007年に南アフリカのスタンダード銀行の株式20%を51億米ドルで購入したことは、アフリカでは大ニュースとして報じられた。2年間をかけてICBC とスタンダード銀行は、2010年までに5億米ドルを超える大規模買収をアフリカで計画中である。スタンダード銀行がもつアフリカ市場での強力なアクセスは、中国資本の後援をえて、中国による買収の加速と拡大を通じて大陸経済を変えていくだろう。スタンダード銀行の優位性はアフリカ18ヵ国における1000ヵ所の支店ネットワークにあり、DRCとアンゴラにも支店を開設する予定である。

スタンダード銀行の広範なカバレッジによって、中国国家を背後にもつICBCに新しい道が開かれ、アフリカ大陸を覆う中国政府の地政的戦略を前進させている。

銀行業におけるスタンダードの伝統的アプローチと、中国の国家主導のアフリカ長期ビジョンのあいだに矛盾があるのは明白だが、妥協的なビジネスモデルを作る作業が進んでいる。スタンダードのClive Taskerアフリカ事業部長が、石油、電気通信、鉱業、ベースメタル、電力事業に焦点を当てた50億米ドルの買収計画を作成中であるといわれている。対象国はDRC、ギニア、タンザニア、モザンピーク、ナイジェリアである。

その第一歩は、ICBCをアフリカの主要商品市場に参入させることを意図した10億米ドルの資源ファンドであると予想されている。長期的にスタンダード銀行は、中国の戦略的資源獲得計画の前面に立つことになるだろう。

ICBCとスタンダード銀行の協力リストは現在60プロジェクトに及んでおり、今後数ヵ月でかなり拡大することが予想される。ICBC の年間の利益成長率は、過去6年間の平均で37.5%に上る。

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