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アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)

5. 中国の新たな資源獲得ビジネスモデル

中国のアフリカと南米への進出は、重商主義的アプローチに従って国家資源を国有企業向けに利用するもので、従来の欧米多国籍企業とは経済的目標を異にしている。例をあげれば、中国の国有企業は株主利益以上のものを求めている。中国の会社は政治指導者の長老や政府のファイナンスと海外援助手段がバックにいて、政治的リスクが高い国々に攻撃的に投資しようとするが、それには3つの理由がある。

a) 母国のためにエネルギーと自然資源を確保する
b) 中国製品のために新しい消費者市場にアクセスする
c) 国際政治・経済における欧米の覇権に挑戦して世界制度を北京の世界観に適合するように再形成する

これらのファクターは、従来型の欧米企業のビジネス意思決定プロセスには反映されない。多層的で大規模な国家支援を擁する中国のビジネス戦略は、欧米企業にとって脅威である。

開発途上国のエネルギー資源市場への中国の競争力ある参入の基礎構築は、十年前から行われていた。その際中国政府は、石油業界の再構築を断行した。一例をあげれば、1998年、国有石油会社が薄利か赤字の状態のときに、その建て直しに小規模製油所、小規模製油業者、密輸入の取締り、人民解放軍の石油ビジネス関与の停止、さらにディーゼル油とガソリンの輸入禁止などの措置を行った。2001年以降、中国がWTO参加するまでの準備期間、および中国がWTOメンバーとなった初期の数年間、国有石油会社は自らの収益性を補強するためにさまざまなビジネス領域で独占権を与えられていたが、これには石油精製ビジネス・石油卸売ビジネス・石油スタンド、さらには石油輸出が含まれていた[ENERGY POLICY ACT 2005 Section 1837: National Security Review of International Energy Requirements, Prepared by The US Department of Energy, February 2006]。これらの措置は巨大な国有石油会社が権益獲得に乗り出すため、その資産基盤を拡大して軍資金を積上げる余地をもたらした。同様のリストラ政策は鉱業、銀行業、建設、電信の各企業についても実行された。

同時に中国共産党はエネルギー供給について政策を打ち出した。具体的に国家発展改革委員会(NDRC)がとった政策は、主要な国有石油会社による、世界中の小中規模石油企業の株式投資と買収を進めることだった。

これを可能にしたのは、政治、軍事、財務等各レベルの権力を同時に活用する調和のとれたアプローチであり、各石油会社が属する地域や国と中国政府のあいだで早期に構築された関係であった。

例をあげれば、上海協力機構(SCO)の組織には中国の石油会社が中央アジアで最優先ターゲットとする産油国が含まれている。アフリカと同様に、中東で2004年初頭に設立された中国=アラブ諮問フォーラム(CACF)は、巨大中国会社の獲得プログラムをサポートするための政治的影響力を提供している。

中国の指導者たちが構築しようとしているのは、エネルギーと安全保障が統合されたモデル(エネルギー資源の安全な輸入)である。例えば、中国の新しいアプローチは契約ベースのものだが、これは長期かつ安定した協約に基づいて原油の採掘と取得権を達成するための強力な外交とロビーイングの努力に基づいている。外交的努力はFOCACや中国=アフリカ・ビジネス会議などの機関によってサポートされている。

これはスーダンのような国でもっとも顕著に見ることができるが、そこでは産地で石油を取得するために中国の企業は、

a)現地の治安機構や人民解放軍の支援のもとで権利を買って採掘するか、または、
b) 中国現代国際関係研究院(CICIR)によれば、ホスト国と長期購入契約を締結して、一連の政治的資金的誘因に裏打ちされた20~25年の供給保証をしてもらうかである。

これは中国本国への供給量を確実にすることと関係があり、ガボンのような国でも明白である。

石油の輸送は、先行的に中国が建造して保守・管理をしている石油パイプラインを経由して、中国が建設もしくは保守する製油所に供給されるか、あるいは中国海軍(PLAN)とある種の協定を享受する港へと向かう。中国船舶(巨大なカーゴ輸送船)に積載された石油は、戦時に船舶航行上の実際的な脅威となる航行妨害可能な地点においては、中国海軍の密接な監視の下で輸送される。

アフリカで中国船舶が定期的に寄港するために測量をおこなった港湾、あるいはリースにて使用する寄港地には、マダガスカルの2カ所の投錨地(マジュンガ、アントギル湾)、ダルエスサラーム、マプト、ベイラ、ポートサイード、ウォルビス湾、サイモンズタウン、マサーワ、ダーラク、ケビル・アーチペラゴ(エリトリア)、フラミンゴ湾(スーダン)、アルジェとアンナバ(アルジェリア)が含まれる。この件に関する討議のため中国のCao Gangchuan(曾剛川)国防相が、2006年4月にカイロとダルエスサラームを訪問した。

結果として、アフリカで増大する中国投資は、その海岸線周辺で強化されている海軍の行動と足並みを合わせた体制となり、民間人と軍人のアフリカ展開の加速は、アフリカの平和維持活動で増大する中国の役割においてすでに目に見える形になっている。これに続いたのが中国の石油関連以外の企業と、増大する数の中国の外交要員で、多数の経済情報担当官が商業省(MOFCOM)とMSSから派遣されている[ 第6章 参照]。

5.1. アフリカの概観

中国のエネルギーおよび通信セクターへの参入は、とくに現地国営企業(SOEs)と密接な経済関係構築を通じて行われている。これによって中国は、そういったSOEの意思決定プロセスを支配する政治エリートに接近することが可能となり、彼らはその見返りに現地のエネルギーと通信セクター開発に関して、さらに広大な戦略的影響を及ぼすことができるのである。

例をあげれば、中国のアフリカでのエネルギー探索パターンとして明らかになってきたのは、アフリカの国有石油会社(NOCs)、より大規模な(非欧米)NOCs、国際石油会社(IOCs)、さらには、技術能力は低くてもハイレベルの政治的影響力をもつニッチの私企業と密接と連携するということである。それは以下のためである。

  • 早急な政治的ネットワーク作り
  • 新規エネルギー市場へのアクセス
  • アフリカにおける台湾の影響力を低下させる
  • 新テクノロジーへのアクセス

国営企業間の同盟は援助に下支えされたものであり、資本や技術的経験や正統性を政治的に交換しあう、大きな組織と小さな組織の相互依存関係のようなものである。

この国家レベルでの参入戦略は多くの国々において明瞭であり、とくに顕著なのがアルジェリア、アンゴラ、チャド、コンゴ民主共和国、ニジェール、ナイジェリア、モーリタニア、スーダンである。方程式はシンプルである。アフリカのSOEと国家石油会社(NOCs)はきわめて政治化された企業であり、与党エリートたちとの緊密な繋がりがある。これらの例としてはソナンゴル(アンゴラ)、ソナトラック(アルジェリア)、ナイジェリア国家石油企業、スダペット(スーダン)がある。欧米の石油企業はNOCと経済的関係をもつことを嫌がるものだが、中国の会社は逆に彼らを、自分たちをおんぶして権力の回廊にまで連れて行ってくれる非常に重要なベルトコンベアとみなしているのである。中国は油田の「搾取者」と見られないよう注意を払いながら、中国のプレゼンスが増大することは、結果として現地の石油企業に新しい機会を提供しているのだと力説する。これがもっとも顕著だったのが、2004年のアンゴラでのソナンゴル-シノペック・インタナショナル(SSI)の設立や、ナイジェリアのケースである。

アフリカでのエネルギー争奪が激化するにつれ、競争はさらに複雑化する。国家がNOCにアクセスができないところでは、中国の石油会社は「トロイの馬」アフリカ侵入戦略にでた。背後に見かけだけ新しい、あまり名の知れていないプレーヤーたちを隠し、このものたちが大陸のセンシティブな資源地域で相当な政治的権力を享受するのである。名高い例のなかにはEnergem ResourcesとClivedent Oil、それにいくつかのナイジェリアの石油会社が演じた役割があり、これで中国は貧弱な外交関係しかもっていなかったアフリカの、センシティブだが潜在的な資源地域への扉を開いたのである。

同様のポリシーは電信通信の分野でも踏襲されており、ここで中国の電信通信会社はさまざまな合弁会社を通じてアリカ国家のターパートと緊密に仕事をして、現地市場への急速なアクセスを成し遂げた。

5.2. アフリカにおける助成ビジネスのリスク

2兆米ドルという世界最大の外貨準備を有する中国は、同様にアフリカに対して寛大な援助と貸付を提供することが可能であり、それをエネルギーと他の契約を勝ち取る梃子として使う。もっとも有名なケースは2004年4月にアンゴラに貸付けられた20億米ドルであり、2006年にはさらに30億米ドルが上積みされた。これは、シノペックがアンゴラの石油業界に一気に参入する道を開いた。とはいえ近年になってシノペックは、この国でいくらかの経済的痛手をこうむった。もうひとつの例は2008年におこなわれたコンゴ民主共和国に対するローン90億米ドルで、いまだに論議の種となっているが、ここでは中国のインフラ開発関与の見返りとして中国の会社は大量の鉱山採掘権にアクセスできることになっている。

アフリカで活動している欧米企業にとって中国という競争相手の存在は、将来の投資決定を行うにあたって重くのしかかっている。端的に言えば、タイトで競争的な市場でエネルギーと鉱物資源にアクセスするため、中国の国益と一体化したアプローチに対処するにあたっては適切な対応メカニズムを有しておらず、したがってますます磨き抜かれていく中国の資源獲得戦略に盲点を突かれるのではないかという継続的な脅威に直面しているのである。アフリカのようなところで海外投資に向かう中国の統合アプローチによって、中国は欧米企業が直面するよりは低い政治的経済的参入リスクレベルを享受することができている。なぜなら、中国が行っているビジネス方法を下支えしているリスクマトリックスは、ことにエネルギー分野において欧米企業が有しているものと根本的に異なるからである。

例をあげれば、欧米の石油会社は主として利益によって動かされているのであって、各々の国家の安全保障考慮によって動いているのではない。他方中国の国有石油会社は、中国経済のための石油供給獲得に向かって舵を切っており、一般市場で売り捌くためではない。欧米企業は彼らの株主に対して説明責任があり、中国の会社は国家に対して、より正確に言えば中国共産党に対して説明責任がある。欧米企業において対アフリカ投資計画を作っているのは、基本的に彼ら自身である。中国の企業が市場に参入するときは全面的に国家の制度的裏打ちがあり、資金、外交、貿易、開発プロジェクト、さらには安全保障と情報支援までカバーされている。

端的に言って、ホスト国に対して中国は、国家によって裏打ちされた多段階の投資パッケージをまとめて多種類の便宜を提供することにますます長けてきており、それに欧米企業は張り合うことができないのである。例をあげれば、2006年6月、CNPCは(ナイジェリア)プラトー州マムビラに1000MWの水力発電所(現在は3000MWまで増強)を建設するため投資を行うとの意向を示したことで、また、日量11万バレルのカドゥナ製油所の株式を40億米ドルで引受けることの見返りとして、4つのオイルブロック(チャド湖槽の2区とニジェール・デルタの2区)を取得した。

結果として、中国企業がアフリカに投資するにあたっての政治的リスクに付随する問題は、中国政府がアフリカの国際場裏における影響力と権威を押し上げるために相当の「外交的政治的資本」を投資するという意向によって、大きく相殺されている。こういった政治協約、あるいは合意が、アフリカ諸国で中国企業が享受している特別な位置付けを下支えしているのである。加えて中国企業は、財務面でも低利融資と保険といった形でつねに安価な政府の制度的支援を受けており、さらに付加価値開発プロジェクト、またはFOCAC、中国=アフリカ・ビジネス会議などの地域的および大陸間機関支援グループのホストとして、また増加している多数の中国友好団体やビジネス団体の存在によって、投資を保護するための政治的影響力を与えているのである。

これらはすべて投資プロジェクトを政治的リスクと市場競争から守るためのものとなっており、以前は厳しかった市場に中国企業が参入できるルートを急速に構築しているのである。これはまた、中国企業が欧米の競合者よりも高いリスク閾値を許容し、欧米企業にはできない地域への投資も可能にさせている。たとえばスーダンである。それらの地域もやがて安定していくだろうが、安定が目に見えてくるころには、中国はすでに現地経済に地歩を固めているだろう。

中国輸銀から供与される巨大な貸付は、中国の商業的関わりの基盤を形成している。中国輸銀による政府のサポートは、中国企業がハイリスクの契約を締結し、欧米の競合企業が利益を出すよりも長い猶予期間を持てるよう保証している[第11章参照]。

中国の石油・ガス企業三年計画によると、中国は自国の企業が外国企業のM&Aを行うための基金設定を考えているという。この計画は、2009年2月に北京で開催された国家エネルギー会議に提出された。これは、中国がどのようにして国家財政を使って海外での全般的な企業買収を下支えしようとしているかをいっそう明白に示すものである。

国家的サポートに裏打ちされた長期計画は、中国の企業家にとってはアフリカ市場に挑戦するための強固な後ろ盾となる。短期の損失は無視してもよい。なぜなら戦略的計画と国家の後ろ盾があるあいだは、中国輸銀は株主利益に対してではなく、中国のリーダーシップに対して責任をとっているのであるから。国営銀行は保証付きの貸付と中国のイニシアティブに保証された政治的サポートを提供する。

自らの商業目的が中国の国家的利益とリンクしている中国企業は、アフリカ市場の厳しさに耐えることのできるビジネスモデルを有している。欧米の企業が次第に短期志向でリスク回避的になるときでも、中国はアフリカでの自国の企業進出をサポートし、強固な中国アフリカ依存関係への道を開いていくのである。

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