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採用・募集情報

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研究者インタビュー

山田七絵(2003年入所 新領域研究センター環境・資源研究グループ)

自分の研究に集中できるのがアジ研の魅力

山田七絵

──農業経済や環境問題がご専門とお聞きしています。関心をもったきっかけは何ですか。

子どもの頃から環境問題、とくに生物多様性の問題に興味がありました。環境問題と途上国の貧困問題が深くつながっていることに気づき、大学と大学院は農学部で農業・資源経済学を専攻しました。学生の時は、島根県や北海道など日本の農村をフィールドにしていました。大学院の指導教官の中国との共同プロジェクトで雲南省に行く機会があったのですが、長江上流では計画経済時代の無理な農地の開墾や森林破壊が原因で大規模な土壌浸食が起こっていました。自然のスケールの大きさと、山間のわずかな土地で懸命に生きる人々の姿に衝撃を受けました。その時、途上国研究をするなら中国だと思い、アジ研入所時にそのように希望しました。

──アジ研に入ったあとの仕事の様子を教えてください。

最初は中国語もできなかったので、経産省の受託研究をする部署に配属されました。インドネシアの投資環境やラオスの林業について、英語で調査して論文を書きました。この経験は中国研究を始めた後も、中国の事例を相対化するために役立ったと思います。

並行して、自分の本来の関心である農業や中国の環境問題をテーマとした共同研究会に参加し、先輩方から研究の進め方や論文の書き方を学びました。とくに、タイ農村研究者の重冨真一さんからは、論理的な文章の書き方からリサーチクエスチョンの立て方、現地調査の方法、論文のまとめ方まで、地域研究の基礎をたたきこんでもらいました。このほか若手を対象としたアドバイザー制度が当時はあり、研究の方向性について定期的に指導を受けたり、原稿にコメントをもらったりしました。語学研修や所内の自主勉強会にも参加しました。

その後、北京と青島での在外研究を経て本格的に中国研究の道に入りました。

──アジ研に入ったあとに博士課程にも進まれていますね。

腰を据えて少し大きなテーマに取り組みたいと思い、博士号の取得を目指しました。研究所の支援制度を利用できたこと、業務の現地調査で集めたデータや研究成果を利用して博論を執筆することができたのは大きなメリットでした。数年後、博論をベースとした単著『現代中国の農村発展と資源管理』(2020年)を出版することもできました。

──アジ研を目指す修士号取得者の方々に向けてメッセージをお願いします。

アジ研では仕事として研究に専念できます。研究テーマは比較的自由に設定することができ、人間関係もフラットなので、わりと自分のペースで研究を進めることができます。2年間の海外派遣制度があるのも恵まれていると思います。

ただ、論文執筆のノルマもあるので、常に自分で新しい研究テーマを見つけ、成果を出し続けるための好奇心と向上心が必要です。また、途上国での調査はなにかとうまくいかないことも多く、論文の執筆は大変なので、心身ともにタフな人がいいと思いますね。

湊一樹(2006年入所 地域研究センター南アジア研究グループ)

いろいろなテーマに楽しんで取り組む姿勢が大事

湊一樹

──研究者という職業をめざすことになったきっかけは何ですか。

高校生の頃、進路について話すとき「研究者になりたい」と言った覚えがあります。当時、地理、歴史、英語といった科目が得意だったので、経済学を勉強するのには向いていたかもしれません。

大学は経済学部に進学しました。ゼミの指導教員は数理経済学が専門だったのですが、開発経済学のテキスト(Debraj Ray, Development Economics, Princeton University Press, 1998)を輪読したのがきっかけで、経済開発の問題に興味を持つようになりました。修士課程は、その著者のレイ先生が教鞭をとっていたボストン大学に進み、開発経済学を専攻しました。

──インド研究を始めたきっかけは何でしたか。

アジ研の採用試験に合格してすぐに、インドを担当するよう打診がありました。それまでインドには一度も行ったことがありませんでした。当時同僚だった久保研介さんにインドの製薬産業に関する研究会に誘ってもらい、その現地調査でインドに連れていってもらったのが初めての訪問でした。まだインドについて何も分からない頃、インドの政治経済のことを勉強するために先輩の近藤則夫さんが輪読会を開催してくれたりもしました。2012年からは2年間、海外派遣でデリーに滞在し、インドでの在外研究に従事しました。

インド政治の研究をされているアジ研OBの佐藤宏さんには、いまでもよく質問をしたり、書いたものを読んでもらったりしています。研究に対する姿勢の厳しい方なので、きちんと準備してから質問するようにしていますし、いい加減なものを書くわけにもいかないので気が引き締まります。

──1日のモデルケースを教えてください。

午前中は原稿を執筆する時間にあてるようにしています。午後は、インドや南アジア関係のニュースをチェックしたり、論文や学術書を読む時間にあてたりしています。ただ、インドに関する情報は、新聞、雑誌、ネットメディアと多岐にわたって発信されますし、トピックも多いのできりがありません。カレントな情報の収集と学術的な作業のバランスにはいつも悩んでいます。研究以外では、『アジア経済』の編集委員をしたり、事業関連の委員会の仕事などもしたりしています。

──アジ研を目指す修士号取得者の方々に向けてメッセージをお願いします。

アジ研は、組織もフラットですし、自分のやりたいテーマを研究できます。発表媒体も、学術論文から一般向けの記事、ウェブサイトでの発信といろいろと選べるのがいいところです。

問題意識や研究関心は広く持っていた方がいいと思います。共同研究が仕事の中心にあるので、いろいろなテーマに楽しんで取り組める姿勢、柔軟性が大事ではないでしょうか。

雷蕾(2014年度入所  新領域研究センターグローバル・バリュー・チェーン研究グループ)

2年間の在外研究が魅力

雷蕾

──簡単な自己紹介をお願いします。

私は中国で育ち、米国に留学して応用経済学を学びました。さらに、マニラのアジア開発銀行でインターンをしながら低所得国のグローバル・バリュー・チェーン参加について、ベルギーでは客員研究員として欧州の貿易政策を研究しました。アジア経済研究所には2014年から勤務しています。

──どのような研究をしていますか。

今まで私は農業経済学、国際貿易論、開発経済学を研究してきました。なかでも関心を持ってきたのは、農業と食糧の国際サプライチェーンと持続可能な農業の二つです。例えば、貿易相手国同士で農業食糧サプライチェーンの標準・規制が普及する過程、食糧生産・消費の環境的側面などを取り上げました。また、アジ研の同僚たちとセッションを組んで、WTOのパブリックフォーラムや気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCC)のCOPコンファレンスといった国際的な場での成果発信にも取り組んできました。

──研究で心がけていること、アジ研の魅力、そして今後の抱負についてお聞かせください。

研究のアイディアを研究計画に仕立てる最初の一歩として先行研究レビューを大事にしています。アジ研では現地を調査する機会がたくさんあります。こうした機会を使ってデータ収集のための調査をしたり、さまざまな関係者と会うことで、自分の研究が現実世界の問題を解決するうえで役立つか確認できます。研究所の同僚と議論を重ねることも、とても有用だと思っています。また、アジ研の魅力に、多くの研究者が二度経験する2年間の在外研究があります。海外の大学や研究機関に滞在して行う在外研究の機会は貴重です。私自身は、農産物基準策定を世界的にリードしている欧州の研究機関で、農作物の国際貿易ルールに関する研究を深められればと考えているところです。

菊池啓一(2014年度入所  地域研究センターラテンアメリカ研究グループ)

トップジャーナルに挑戦したい

菊池啓一

──簡単な自己紹介をお願いします。

もともとサッカー観戦が好きでヨーロッパや南米に興味を持っていたのですが、大学3・4年のラテンアメリカ研究のゼミで研究を続けたいと思ってしまったのが運の尽きで(笑)、研究の道に入りました。修士課程までは慶應義塾大学で、博士課程ではアメリカのピッツバーグ大学でラテンアメリカ政治を勉強し、帰国後筑波大学を経て2014年4月からアジア経済研究所で働いています。専門は比較政治学・政治制度論でして、主にアルゼンチンやブラジルをフィールドとして、議会や予備選挙の機能などといった制度的側面を中心に研究を進めています。

──大学での勤務経験もお持ちですが,職場としてのアジ研は,いかがですか?

やはり大学と比べるとアジ研の方がスケジュールの拘束が少ないと思います。例えば講義や入試業務等がありませんので、現地調査に行く時期は比較的自由に選ぶことができ、昨年は所内研究会と自分の科研費プロジェクトとの按分出張で計1か月半現地に滞在しました。また、充実した図書館があることや、他の研究者のキャレルや個室を気軽に訪れて色々相談できる「文化」があること、似たような関心をもつ研究者と気が向いたら勉強会を開けること、などもアジ研の特徴かなと思います。そして、他の研究者がお土産に買ってきてくれる世界各国のお菓子を味わえるのも、隠れた魅力です(笑)。

──今後の抱負をお聞かせください。

昨年度は自分の博士論文を英文単行書として出版するための所内研究会をしていたのですが、佳境に差し掛かりつつあるその出版作業をきっちりと完了させることが目下の課題です。それから、そろそろ海外派遣員制度でブラジル・アルゼンチンに長期滞在ができることを期待しているのですが、その成果は海外のトップジャーナルに絶対載せたいです。また、折角アジ研にいますので、他の研究者と「遊び心のある研究」にもチャレンジできたらなと思っています。

今井宏平(2016年度入所 地域研究センター中東研究グループ)

現地感覚と方法論を身につける場

今井宏平

──簡単な自己紹介をお願いします。

中学時代の1995年にイスラエルのイツハク・ラビン首相暗殺に衝撃を受けたことがきっかけで中東の国際政治に関心を持ちました。大学時代は国際関係論の基礎を学び、大学4年時のトルコ旅行を機に本格的にトルコ外交の研究者を志しました。大学院時代にトルコの中東工科大学に約5年間留学し、博士号(国際関係論)を取得、帰国後、日本でも博士号(政治学)を取得しました。日本学術振興会特別研究員を経て、2016年4月からアジア経済研究所に勤務しています。

──どのような研究をしていますか。

現代トルコの外交政策を研究しています。トルコは地理的に中東、ロシア、南コーカサス、ヨーロッパに隣接するとともに、NATO加盟国、EU加盟交渉国で、常に国際政治の最重要問題の最前線に位置する国です。そのため、トルコの外交は非常に多面的で活発です。こうした「複雑怪奇な」トルコ外交を、国際関係論の枠組みからどのように説明できるかを研究課題としてきました。その中で明らかになったことは、トルコの政策決定者が常に地域秩序と国際秩序を意識した外交を展開していることです。2015年に出版した『中東秩序をめぐる現代トルコ外交』ではそうした外交を描きました。

──研究において心がけていることは何ですか。

常に現地感覚を保つことと社会科学の方法論を意識することです。国際的な水準で考えれば、地域研究者は現地の事情と方法論の両方をハイスペックで備える必要があります。 現地感覚を保つためには、年に数回必ず現地に足を運びとともに、現地の新聞などを通じて情報に常に敏感でなければなりません。アジア経済研究所は独自の研究会制度があるとともに科研費の取得も認められており、現地に足を運びやすい環境にあります。また、図書館には、トルコ語の新聞が置かれています。加えて、在籍する研究者は方法論の習得、開発にも非常に力を入れています。アジア経済研究所は発展途上国研究にうってつけの環境を有しています。

藤田麻衣(1996年度入所 地域研究センター東南アジアⅡ研究グループ長代理)

共同研究が生み出す刺激

──簡単な自己紹介をお願いします。

一橋大学社会学部を卒業し、民間企業勤務を経て英サセックス大学で開発学修士号取得後、1996年にアジア経済研究所に入所して20年になります。修士課程在学中に、市場経済化で注目されつつあったベトナムにひかれ、研究を始めました。入所後はシンガポールとベトナムでの在外研究を経験し、ベトナムの対外経済関係から経済全般、産業、企業へと研究対象を広げてきました。

──どのような研究をしていますか。

ベトナムの経済・産業を研究しています。とくに市場経済化やグローバル化の下での産業・企業の成長に関心を持っています。2001年、中国から怒涛のように模倣バイクが流入し、市場や生産を一変させるさまを目の当たりにして衝撃を受け、二輪車産業の研究に着手しました。およそ10年越しで地場や外資(日系、台湾系、中国系)の二輪車企業や部品企業の訪問調査を重ね、2013年にExploiting linkages for building technological capabilities (Tokyo: Springer)として 出版するとともに、英サセックス大学から博士号(開発学)を取得しました。

──研究において心がけていることは何ですか。

既存の統計や調査がほとんどない対象を取り上げ、大規模アンケート調査では捉えにくいテーマを扱ってきたため、現地での聞き取り調査を研究の中心に据えてきました。現地での問題発掘や実態把握からスタートし、それを社会科学の枠組みでどう理解できるか考えることを大事にしています。小さな子どもがいるため長期の調査は難しいのですが、家族のサポートを得ながら現地調査の機会を確保しています。 近年ではベトナムについてのデータや情報源も増えましたので、それらと現地調査をどう効果的に組み合わせるか、知恵を絞る必要性も増しています。所内研究会や科研費プロジェクトでの様々な研究者との共同作業や議論を通じ、多くの刺激を受けています。

*肩書はインタビュー当時のものです。