やはりマイナスの第1四半期GDP

ブラジル経済動向レポート(2015年5月)

地域研究センター 近田 亮平

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第1四半期GDP:2015年第1四半期のGDPが29日に発表され、前期比▲0.2%、前年同期比▲1.6%、直近4四半期比▲0.9%で、実額(2010年基準)はR$1兆4,080億(前期比▲2.6%、前年同期比+6.5%)であった(グラフ1)。市場の予想ほど悪くはなかったものの、第1四半期GDPはやはりマイナスを記録し、前年同期比に関しては世界主要33カ国中、ブラジルは31番目であった(日本は32番目)。Levy財務大臣は、悪いGDPは年のはじめの先行き不透明感を反映したものだと発言し、緊縮財政法案が可決されつつある現状を踏まえ、経済対策が順調に実施されれば状況は好転するとの見方を示した。しかし、第1四半期GDPが発表される少し前の22日、政府は今年のGDP予測を0.8%のプラスから▲1.2%のマイナス成長へと下方修正した。また、マイナスだった第1四半期GDPの発表を受け、市場関係者の今年のGDP予測も政府より悪い▲1.5%が大半となっている。

グラフ1 四半期GDPの推移
グラフ1 四半期GDPの推移
(出所)IBGE

第1四半期GDPの需要面を見ると(グラフ2~4)、景気が低迷する中での物価上昇が顕著なため、今まで好調だった家計支出(前期比▲1.5%、前年同期比▲0.9%)が過去12年で最大の落ち込みとなった。財政支出の削減を進める政府の支出(同▲1.3%、同▲1.5%)も、選挙やサッカーのW杯のあった昨年と異なりマイナスを記録し、投資である総固定資本形成(同▲1.3%、同▲7.8%)は前期比が7期連続でマイナスとなり、景気の低迷振りを示すものとなった。貿易に関しては、供給面である農牧畜業に海外向けのアグリビジネスが多く含まれるため、輸出(同+5.7%、同+3.2%)は好調だったが、輸入(同+1.2%、同▲4.7%)は為替市場でドル高レアル安が進行したこともあり、前年同期比で2期連続のマイナスとなった。

一方の供給面では、第1四半期が農産物の収穫期である関連から農牧業(同+4.7%、同+4.0%)は高い伸びを記録した。しかし、輸出用がメインである鉱業(同+3.3%、同+12.8%)は好調だったものの、製造業(同▲1.6%、同▲7.0%)などの不振から工業(同▲0.3%、同▲3.0%)は今期もマイナス成長となった。また、今まで相対的に安定していたサービス業(同▲0.7%、同▲1.2%)もマイナスを記録したが、これは運輸通信業(同▲2.1%、同▲3.6%)での景気後退が大きく影響した。

グラフ2  2015年第1四半期GDPの需給部門の概要
グラフ2  2015年第1四半期GDPの需給部門の概要
(出所)IBGE
グラフ3 四半期GDPの需給部門別の推移:前期比
グラフ3 四半期GDPの需給部門別の推移:前期比
(出所)IBGE
グラフ4 四半期GDPの需給部門別の推移:前年同期比
グラフ4 四半期GDPの需給部門別の推移:前年同期比
(出所)IBGE

貿易収支:5月の貿易収支は、輸出額がUS$167.69億(前月比+10.6%、前年同月比▲19.2%)、輸入額がUS$140.08億(同▲4.5%、同▲30.1%)で、貿易収支はUS$27.61億(同+462.3%、同+286.2%)と3カ月連続の黒字を計上した。また年初からの累計は、輸出額がUS$747.00億(前年同期比▲17.1%)、輸入額がUS$770.05億(同▲18.9%)で、貿易収支は▲US$23.05億となり赤字額は前月比で52.5%減少した。

輸出に関しては、一次産品がUS$85.88億(1日平均額の前月比+13.8%)、半製品がUS$19.91億(同+16.0%)、完成品がUS$58.10億(同+5.6%)であった。主要輸出先は、1位が中国(US$41.09億、同+19.6%)、2位が米国(US$18.99億、同▲3.6%)、3位がアルゼンチン(US$11.19億、同+10.5%)、4位がオランダ(US$7.75億)、5位がドイツ(US$5.47億)だった。輸出品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では銅カソード(+215.8%、US$0.31億)が200%、減少率では鉄鉱石(▲62.3%、US$9.31億)が60%を超える増減率を記録した。また輸出額では(「その他」を除く)、大豆(US$36.13億、同▲1.9%)と原油(US$11.50億、同▲15.9%)の2品目がUS$10億を超える取引高を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$30.11億(1日平均額の前月比▲14.8%)、原料・中間財がUS$66.58億(同▲1.5%)、非耐久消費財がUS$13.38億(同+3.6%)、耐久消費財がUS$13.16億(同▲1.8%)、原油・燃料がUS$16.85億(同▲3.1%)であった。主要輸入元は、1位が中国(US$22.70億、同▲8.8%)、2位が米国(US$22.45億、同▲8.8%)、3位がドイツ(US$9.53億)、4位がアルゼンチン(US$8.73億、同▲7.3%)、5位が日本(US$4.54億)だった。輸入品目を前年同月比(1日平均額)で見ると、増加率では家庭用機器(+6.1%、US$3.48億)が僅かながら相対的に大きく、減少率では原油(同▲57.1%、US$4.00億)が50%超のマイナスを記録した。また輸入額では、原料・中間財である化学薬品(US$19.62億、同▲16.3%)と鉱物品(US$11.32億、同▲37.1%)の2品目、および、その他の燃料(US$12.85億、同▲38.6%)がUS$10億を超える取引額を計上した。

物価:発表された4月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.71%(前月比▲0.61%p、前年同月比+0.04%p)で、前月よりは低下したが、食料品価格が0.97%(同▲0.20%p、▲0.22%p)と1%近い上昇率を記録した。年初累計は4.56%(前月同期比+1.70%p)と政府目標の中心値である4.5%を早くも超え、過去12ヶ月(年率)も8.17%(同+0.04%p)と政府目標の上限である6.5%を大きく上回った。

食料品に関しては、ジャガイモ(3月▲2.40%→4月▲10.02%)のように10%も値下がりしたものもあったが、大幅に値上がりしたトマト(同4.46%→17.90%)や高止まりが続くタマネギ(同15.10%→7.05%)など、多くの品目で依然として高い伸びを記録した。また非食料品では、燃料価格が下落した運輸交通分野(同0.46%→0.11%)のように、数値が低下した分野もあった。しかし、医薬品の価格調整が行われた影響で健康・個人ケア分野(同0.69%→1.32%)が1%を超えて上昇し、前月ほどではなかったが電気料金の引き上げにより住宅分野(同5.29%→0.93%)も相対的に高い数値を記録するなど、全体的に前月より伸びが大きかった。

金利:5月は政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は開催されず。次回のCopomは6月2日と3日に開催予定。

為替市場:5月のドル・レアル為替相場は、メーデー連休の前に中央銀行が為替介入の規模を縮小するとの見解を示したため、休み明けにドル高レアル安が進行した。しかし、公開されたCopomの議事録で金融政策は情勢の注視を継続すべきとの見解が示されたため、今後もSelicは引き上げられるとの見方から金利高を見越したレアル買いが強まり、一方で、発表された米国の雇用状況が市場予測を下回ったことでドルが売られた。その後、中国の金利引き下げやギリシャ問題の不透明感の増大などのドル買い要素がある一方、米国の利上げが予想より遅れる可能性というドル売り要素もあり、月の半ばは小幅な値動きとなった。

月の後半になると、政府の財政緊縮案に関する議会審議が遅れていることを嫌気したレアル売りとともに、米国FRBのYellen議長が年内の利上げの可能性を示唆したことや米国経済の好調さを表す指標が発表されたことでドル買いが強まった。そして、ブラジルの弱い第1四半期GDPが発表されると更にレアル安が進行し、月末はUS$1=R$3.1788(売値)で5月の取引を終えた。このレベルは前月末比+6.19%のドル高レアル安であるとともに、ドルの月内最高値であった。

株式市場:5月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、前月の流れを引き継ぎ、4月末に決算報告を行ったPetrobrasやValeなどの鉄鋼関連株を、主に外国人投資家が買う動きが強まり上昇。特に、汚職や経営問題で過去の四半期が2期連続でマイナスだったPetrobrasが第1四半期の決算を発表し、原油価格の上昇の影響で純利益がR$53億ものプラスとなり、市場の予想を上回ったことで同社株が大幅高となり、5日には今年の最高値となる58,052pを記録した。

しかし、Petrobrasの財務状況を憂慮する投資家が同社株を売ったため、株価全体も再び下落。また、政府が過去13年で最大となるR$699億に上る財政削減を発表し、市場が期待していた削減額のR$700億に近かったためある程度は好感を持って受け止められたが、その内容は、低所得向け住宅政策などを管轄する都市省、次いで保健省、教育省、運輸交通省の削減額が大きく、インフラ整備を中心とした政府の経済政策PACも大きな影響を受けることが予想されるものであった。さらに、発表された毎月の正規雇用統計が4月として過去最悪だったことことに加え、上院で政府の財政緊縮案の一つが可決されたものの、6月1日までに上院での可決が必要な財政緊縮案が更に2つあることから、ブラジルの財政問題はすぐには改善しないとの見方から、株価は右肩下がりの展開となった。そして、月末に発表されたブラジルの第1四半期GDPがやはりマイナスだったことを受け、5月の終値は前月末比▲6.17%ものマイナスとなる52,760pまで値を下げ取引を終了した。