採用・募集情報

2025年度の採用について(地域研究[政治・経済]、法律)

応募を考えている皆さんへ

藤田 麻衣(地域研究センター 東南アジアⅡ研究グループ長)

地域研究センター 東南アジアⅡ研究グループ長
藤田 麻衣

はじめまして。アジ研でベトナム経済の研究を行っている藤田麻衣と申します。

皆さんは、ベトナム経済と聞いて、何を思い浮かべますか。多国籍企業の進出や急速な経済成長でしょうか。マクロ経済について基本的なデータを得て他国と比較することは容易にできます。しかし、たとえば多国籍企業との取引を通じた国内企業の発展パターンはどのようなものか、台頭する大企業の経営者はどのような人々なのか、といったテーマについてつぶさにみていくと、興味深い特徴が浮かび上がってきます。

これらは、1996年、修士号取得後にアジ研に入所して以来、私が取り組んできたテーマの一部です。ベトナムそのものの変化とともに、私の関心も徐々にシフトし、研究環境の変化にあわせて新たなアプローチも試みてきました。長期にわたりひとつの国を専門とする研究者のキャリアはさまざまですが、あくまでもひとつの例としてご紹介します。

私のこれまでの研究

入所後初めて配属された研究部門は、APEC研究センター(※)でした。ここで、ベトナムの対外経済関係について勉強を始めました。その後、先輩方が立ち上げた研究会に参加したり、自ら研究会を提案したりしながら、もともと関心があった産業や企業へと研究対象を広げていきました。
転機となったのは、2001年、2度目の現地調査でベトナムを訪れたことです。当時のベトナムでは、中国から低価格の模倣バイクが怒涛のように流入し、街中を縦横無尽に走り回っていました。1度目の訪問時にみたのんびりした街の様子が一変しただけでなく、瞬く間に新たな市場や産業が勃興するさまを目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。

この産業には既存の統計はほとんどありません。大規模質問票調査では、部品取引関係や企業の能力形成といった私の関心事について正確な情報を得ることも困難でした。現地での聞き取り調査を中心に据え、およそ10年越しで地場や外資(日系、台湾系、中国系)の二輪車企業や部品企業の調査を重ねました。その成果は、2013年に英文単行書を出版するとともに、英サセックス大学から博士号(開発学)を取得しました。

近年では、企業セクターの変容やデジタル化といったテーマにも取り組んでいます。ベトナムの産業や企業についてのデータや情報源も格段に増え、質問票調査も活用していますが、現地での問題発掘や実態把握からスタートし、それを社会科学の枠組みでどう理解できるか考えることを大事にしています。

※APEC研究センターはかつてアジア太平洋協力会議(APEC)にかかわる研究を行うためにアジ研内に設立され、貿易・投資や経済技術協力についての研究会が組織されていました。

現地での聞き取り調査の様子

現地での聞き取り調査の様子

アジ研の研究環境

アジ研では、入所後に担当国を決めて本格的な勉強を始める人も少なくありません。現地語を習得し、ネットワークを築く上では、海外派遣制度による長期滞在が貴重な機会になることが多いようです。私も、海外派遣員として赴任したハノイでは、幼い子連れながら外国人向けのアパートではなく家を借り、なるべく現地の人とかかわりながら生活することを心掛けました。30歳近くになってからベトナム語の学習を始めたこともあり、かなり難儀しましたが、語学や聞き取り調査の経験だけでなく、現地での暮らしから学んだことは測り知れません。

研究を進めるうえでの自由度が高いことも、アジ研の特徴です。研究会は、研究者による自発的な提案を基本としており、形態や期間もさまざまです。所内での立ち話から研究の種が生まれ、メンバーを募って研究会の発足に至る、といったことも珍しくありません。共同研究や個人研究、科研費を組み合わせながら、腰を据えてひとつのテーマに取り組むことも可能ですし、働きながら博士号を取得する人も多くいます。私の場合、『アジア動向年報』や一般向けウェブ記事の執筆、講演や問い合わせへの対応といった仕事もありますが、やはり柱となるのは自らのテーマに沿った研究です。

ハノイの自宅の周辺。

ハノイの自宅の周辺。
車は通れない狭い路地の奥にあり、家を建てて貸すベトナム人と家を借りる外国人が共に暮らす地域だった。
再開発された現在は、すっかり様変わりしている。

応募を考えている皆さんへ

現在、アジ研では修士号以上取得者を対象に地域研究(政治・経済・法律)分野の研究員を募集しています。

途上国の経済には、さまざまな興味深い現象がみられます。何が研究に値する問いであるかを見極めるため試行錯誤を繰り返し、どのようにしてデータを集め、分析するのかを一から考えなければならないこともあります。チャレンジングですが、やりがいのある仕事です。

現地語、理論や分析手法などの勉強に自発的かつ継続的に取り組んでいける方であれば、入所時点で、研究対象国についての知識や経済学の理論を習得していることは必須ではありません。途上国の経済への強い関心と研究への意欲をお持ちの皆さんの応募をお待ちしています。

研究者インタビュー

修士号取得後に採用された研究員の経験をご紹介します。


*肩書はインタビュー当時のものです。
この他にも研究者のインタビューを掲載しています。


2025年度採用 研究職員(地域研究[政治・経済]、法律)募集要項

募集内容

地域研究(政治・経済)、法律分野における研究職員若干名︓

現代の新興国・開発途上国地域に関する社会科学分野の研究者の募集。現地の言語を習得して調査を行い、長期的に一つの国・地域を専門に研究する意欲のある方を求めます。応募時点での海外滞在経験や現地語の習熟度は問いません。

業務内容

担当国・地域の情勢分析・学術研究とその成果発信(『アジア動向年報』などの執筆、講演、レファレンス対応など)およびその他の研究関連業務(研究企画、編集、査読など)。※原則、アジア経済研究所勤務。在外研究のための海外赴任もある。

応募資格

修士号以上を有する者(2025年3月頃までに取得見込みの者を含む)。原則として30歳以下であることが望ましい。国籍は問いません。ただし日本語でも上記業務内容が遂行可能なこと。

*長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用します。(雇用対策法施行規則第1条の3第1項 例外事由3号イ)。

雇用形態

原則として任期を定めないテニュア研究員として採用する。

選考

書類審査、筆記試験(5月を予定)、及び面接試験(6月を予定) ※詳細は該当者に別途案内

勤務開始

原則として2025年4月1日

応募手続きなどの詳細については、こちらをご覧ください。