岩﨑 葉子
研究歴
1991年にアジア経済研究所に入所して以来、イランをフィールドとして市井の人々の経済実践に着目してきました。これまでにイラン固有の産業組織のあり方とそれを支える外部業者の機能、国内の流通機構の特徴、商業地での店舗用益権の売買制度などを研究テーマに取り上げています。中小零細企業、仲介業者、商人などをインフォーマントに、彼らの間で実践されている仕事上の慣行・しきたりなどを取り上げ、その社会経済学的な機能や意義、また歴史的・文化的背景を解明することに関心があります。フィールドワークで得られた知見と関連する法制度などについての文献調査とを組み合わせ、自生的な経済制度とフォーマルな枠組みのいずれにも目配りするよう心がけています。
現在取り組んでいるテーマ
グローバル化によって世界の産業や市場の統合が進んでいますが、それは資源配分の公正性や持続可能性の観点からは脆弱さも孕んでいます。イランは政治的事情によってそうした流れに乗り遅れてきたものの、逆にそのローカルで自己充足的な経済システムの中には過度の競争や無駄な消費を抑えるための制度的なヒントが隠されています。そうした視点から(1)平均的なイラン企業の経営戦略に見る「単独主義」的な行動パターンの分析、(2)イラン経済における市場の開放性の要因、(3)独占・寡占・カルテルとイスラーム的商業倫理の関係などのトピックに関心を寄せ、21世紀の新たな企業像や経済システムについて考え続けています。