資料紹介: Ethnic Inequality
アフリカレポート
資料紹介
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■ 資料紹介:Alberto Alesina, Stelios Michalopoulos, and Elias Papaioannou, “Ethnic Inequality”
■ 福西 隆弘
■ 『アフリカレポート』2016年 No.54、p.88
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一国における民族構成や所得格差が経済成長に及ぼす影響は、数多くの実証研究によって検討されてきた。これらの研究は、世界のなかでもアフリカの民族構成や所得格差は成長を抑制する傾向があることを示しているが、そのメカニズムについての実証的な検討はいまだ不十分である。この論文は、衛星写真データを利用することで、これまで蓄積された先行研究に一石を投じようとしている。
計量経済分析を利用した先行研究は、民族の多様性(fragmentation)や構成(特に同じ程度の規模を持つ民族グループの存在、polarlization)が一人あたりGDPの水準や成長率と相関があることを示している。他方で、個人間の所得格差も経済成長を抑制することも示されてきた。これに対して、本論文は民族グループ間の所得格差が経済成長と強い相関関係を持つことを示し、このことを考慮すると、民族の多様性や構成、個人間の所得格差はもはや経済成長と有意な相関を持たないと説明している。民族グループ間の所得格差は、「水平的な格差(horizontal inequality)」ともよばれ、それが紛争の要因となることは指摘されてきたが、格差のデータを収集することが難しく、国際的な比較を行った例はほとんどないと思われる。本論文では、衛星写真に現れる世界各地の夜間の照明から、各民族のホームランドにおける照明の輝度を計測し、それを民族グループの所得水準の代理変数としている。夜間の照明輝度が経済活動、ひいては所得水準と密接に関連することは、多くの研究で示されている。
本論文の後半では、民族グループの所得とホームランドの地理的性質の関係が検討されている。農地としての適性、気温、降雨量などについてホームランド間の地理的「格差」を計測すると、それは民族グループ間の所得格差と相関していた。このことは、民族間の所得格差の一部はホームランドの地理的性質によって生じている可能性を示している。また、民族間の格差が大きいアフリカ諸国では、地理的な格差が他の地域よりも大きいことを示唆している。
民族のホームランドを特定することは一般に困難であることを考えれば、著者たちが用いた手法にも限界があり、実証手法の洗練が必要であろう。しかし、民族構成と経済活動の関係に関する実証研究が進むべき方向性を示す成果であると思う。なぜ個人間の格差ではなく民族間の格差が問題になるのか、続く研究に解明を期待したい。
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