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内容紹介
内容紹介
2024年10月、インドネシアでは10年ぶりの政権交代がみられた。大統領であったジョコ・ウィドド(ジョコウィ)が二期10年の任期を全うし、プラボウォ・スビアントが新大統領に就任した。この政権交代にあわせて、本書では大きく3つの視点からインドネシアの分析を試みている。まず、ジョコウィ政権の評価である。ここでは政治や経済、市民社会、外交、そして環境問題への取り組みといったトピックを取り上げている。つぎに、2024年2月に実施された国会議員選挙と大統領選挙における選挙運動や投票行動、そして選出された国会議員の特徴の分析である。最後に、プラボウォ新政権の特徴の解明である。以上の分析を通じて、本書は、現在および今後のインドネシアの動向を探る際に必要となる視座を提供する。
目次
まえがき
序章 岐路に立つインドネシア――民主主義の後退と経済成長の伸び悩み――
筆者:東方 孝之
第Ⅰ部 ジョコウィ政権の評価
第1章 ジョコウィの政治と民主主義の後退
筆者:本名 純
第2章 ジョコウィの10年における市民社会――国家による抑圧とその間隙――
筆者:見市 建
第3章 ジョコウィ政権期の経済実績の分析
筆者:東方 孝之
第4章 ジョコウィ政権下のマクロ経済政策と制度整備
筆者:濱田 美紀
第5章 ジョコウィ政権の再分配政策と2024年選挙
筆者:増原 綾子
第6章 地域大国の損得外交――ジョコ政権期のインドネシア外交――
筆者:相澤 伸広
第7章 ジョコウィ政権下の気候変動政策――産業政策と国際公約――
筆者:道田 悦代
第Ⅱ部 2024年の選挙と新政権の誕生
第9章 「穏健化」の名の下の抑圧――ジョコウィ政権のイスラーム政策――
筆者:茅根 由香
第10章 踊れば勝てる?――2024年インドネシア大統領選挙におけるティックトック政治の特徴――
筆者:岡本 正明・八木 暢昭・久納 源太
第11章 選挙公正性の評価――Tempo誌による調査報道の比較を元に――
筆者:水野 祐地
第12章 2024年国会議員はどのような人々か――中央・地方の政治家一族(Political Family)による国会進出――
筆者:森下 明子
第13章 プラボウォは何をめざしているのか?――新政権の政治、経済、外交――
筆者:川村 晃一
終章 ジョコウィの10年とプラボウォ政権の誕生が意味すること
筆者:川村 晃一
資料
筆者:水野 祐地
まえがき
まえがき
本書は、2023~2024年度にかけてアジア経済研究所で実施された共同研究会の成果である。インドネシアでは、スハルトによる開発独裁体制が終了した直後の1999年以降、5年ごとに総選挙が実施されている。2004年からは大統領の直接選挙も導入されたが、現在に至るまで大きな混乱もなく民主的な選挙が続いている。アジア経済研究所では、この5年に一度の選挙ごとに研究会を組織してその成果を広く公開しており、前回の2019年総選挙・大統領選挙時には、川村晃一編『2019年インドネシアの選挙――深まる社会の分断とジョコウィの再選』(アジア経済研究所、2020年)を出版している。そして今回、2024年の選挙にあわせて立ち上げられた研究会の成果が本書である。
序章・終章を含めた全15章と巻末資料で構成された本書は、大きく3つの課題に取り組んでいる。まず、2期10年に渡るジョコウィ政権の多角的に評価を試みている。つぎに2024年の総選挙・大統領選挙における選挙運動や投票行動の分析を行い、そして最後に、2024年10月に発足したプラボウォ・スビアント新政権の特徴を探っている。
こうして今回も無事に研究成果の出版に至ったのは、何よりもまず、研究会に参加された委員の皆さんの多大なご協力のおかげである。研究会にアジア経済研究所の内外から14名もの研究者に参加いただけたことにより、本書はこのように質量ともに重厚な内容となった。また、アジア経済研究所学術情報センターの編集担当者には、すべての原稿に丁寧に目を通していただき適切なコメントを頂戴した。あらためて感謝をお伝えしたい。
最後に、本書はオンラインで無料公開されている。加えて、研究会の成果の一部は、すでに「2024年インドネシアの選挙」特集記事として、アジア経済研究所のウェブ・マガジン『IDE スクエア』にて公開済みである。この連載記事とあわせて、本書もお手元にダウンロードの上必要に応じて参照いただきたい。有料とはなるものの本書は冊子体での入手も選択可能である。ご希望の方は三省堂書店や楽天ブックス、もしくはアマゾンのプリント・オン・デマンド(POD)にて発注していただきたい。本書を通じてインドネシアの現状に対する理解が深まれば幸いである。
2025年10月 編者

