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ASEANと日本――変わりゆく経済関係――
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内容紹介
内容紹介
本書は2023年に日本とASEANが友好協力50周年の節目を迎えたことを契機として、ASEANの国々の視点からASEANと日本の関係の変遷について考えてみることを目的に作成されました。昨今、日本の位置づけの低下が懸念されていますが、その背景について、貿易や投資、援助などの統計に基づき客観的に理解できるように工夫しました。本書は2つの視点から書かれています。まず、経済の発展段階などが異なる多様なASEANのそれぞれの国から日本との関係を見ています。次に経済協力機構としてのASEANと日本の関係や、グローバル化する世界経済のなかのASEAN経済と日本の関係を俯瞰しています。本書はオープンアクセスの電子書籍としてアジア経済研究所のウェブサイトにて無料で公開しています。この公開に先立ち簡易版「日本ASEAN友好協力50周年に考える:ASEANと日本―変わりゆく経済関係―」を公開していますが、若干の加筆・修正と編集を加えておりますので、こちらの電子書籍版をご利用ください。
目次
まえがき
序章 ASEANとともに成長するとは何か
筆者:濱田 美紀
第1章 インドネシアと日本の経済関係――援助から投資、投資から戦略の共有へ――
筆者:濱田 美紀
第2章 マレーシア経済と日本――高所得国同士の互恵関係を目指して――
筆者:熊谷 聡
第3章 フィリピンと日本の経済関係――開発に寄り添いつつ成長機会の共有も――
筆者:鈴木 有理佳
第4章 シンガポール・日本経済関係の変容と現状
筆者:久末 亮一
第5章 タイ経済と日本――日系企業の集積は続くか――
筆者:塚田 和也
第6章 ベトナム経済と日本――新たな挑戦と変化への対応を――
筆者:藤田 麻衣
第7章 日本の対ラオス経済協力の歩み――贈与偏重の脱却が課題――
筆者:ケオラ スックニラン
第8章 カンボジアにおける援助と直接投資――中国の台頭とパートナーの多角化――
筆者:藤田 麻衣
第9章 日本の対ミャンマーODA――拡大と凍結の論理――
筆者:工藤 年博
第10章 日・ASEAN経済協力の50年
筆者:梅﨑 創
第12章 日本のインフラ整備支援の経済効果――IDE-GSMによる経済回廊シミュレーション――
筆者:熊谷 聡、ケオラ スックニラン
参考資料 統計から見たASEANの国々
筆者:周 揚
まえがき
まえがき
2023年、日本とASEANは友好協力50周年の節目を迎えた。50年という月日は長く、この長い間に日本もASEANも大きく変わった。日本は高度経済成長を経て、バブル崩壊を経験し、その後失われた20年といわれたが、それはさらに続き2024年2月には日経平均株価は史上最高値を更新したが実感としてはいまだ失われた30年のなかにある。一方、戦後復興を達成するためにASEAN(東南アジア諸国連合)を形成した先行ASEAN5カ国は、1980年代の構造調整を経て、1990年代にはアジアの奇跡と呼ばれた急速な経済成長を遂げた。90年代後半のアジア通貨危機によって経済は大きく混乱したが、その後経済再建を果たした。新規加盟国においても1990年代半ばには国内情勢が安定し、ASEAN加盟が実現して、ASEANは10カ国に拡大し、世界経済のグローバル化の洗礼と恩恵を受けながら、今最も活力のある世界の成長センターとなっている。
日本は戦後賠償から始まった政府開発援助によって、ASEAN諸国の経済成長を促しそれを取り込むことで日本の経済成長も同時に達成してきた。援助のみならず、互いに重要な貿易相手国、重要な投資相手国として日本とASEAN 諸国はともにこの50年を歩いてきたといえる。これまでの50年間の関係を土台として、さらなる関係の発展を目指すために50周年の節目となる2023年には、ASEANとの関係を考える機会が日本でも多くもたれた。アジア経済研究所では2023年6月に国際シンポジウム "Fifty Years of ASEANJapan Friendship and Cooperation, Revisiting ASEAN-Japan Economic Interdependence" をオンラインで開催し、8月には経済産業省と日本貿易振興機構および日本商工会議所をはじめとする経済界は「日ASEAN経済共創ビジョン」をまとめた。
アジア経済研究所には、東南アジアの国々を観察する研究者が集積しており、この節目を機会に、ASEANと日本の関係の変遷について分析するために2023年4月に機動研究会「変わるASEAN・日本経済関係――これまでとこれから」研究会が立ち上げられた。本研究会は、日本の位置づけの低下がいわれて久しい状況を、自律的な経済成長と高度化を目指すASEANの視点に立って、貿易や投資、援助に関する統計に基づき分析することを目的とした。ASEANは経済の発展段階や体制の異なる10カ国からなるため、ASEANの国々を個別に分析することで、ASEAN各国は多様であること、そして日本との関係性も国により大きく異なることを理解することを目的とした。一方で、経済協力機構としてのASEANと日本の経済関係や、グローバル化する世界経済に統合されていくことで成長を続けてきたASEAN経済と日本の関係を概観するなど、ASEAN全体から日本を見渡すことも試みた。本書はその研究成果をまとめたものである。統計の分析を中心として客観的に日本の立ち位置の変化を確認すること目的としており、これらの成果が読者にとってASEANから見た日本を捉え直す機会となれば幸いである。
本書は、日々の研究のなかで常にASEANの国々を観察してきた執筆者たちがいたからこそ、これらの多くの章を短期間に書き上げることができた。さらに、匿名の2名の査読者およびIDE-GSM開発チーム、鈴木早苗氏(東京大学)、山田裕史氏(新潟国際情報大学)に大変貴重な助言をいただいた。この場を借りて謝意を示したい。また研究会の運営や大量の図表の編集など編集・出版に際して研究所の関係各位にもご尽力をいただいたことで本書を完成することができた。深く感謝申し上げたい。また、本書の各章で示された見解は、執筆者個人に属するものであり、研究会や所属機関の見解を代表するものではないことを改めて付け加えておく。
2024年3月 編者