久末 亮一
研究歴
私は19世紀~20世紀の近現代アジアにおける経済史を、これまでに2つの側面から研究してきました。1つは、華僑・華人の経済活動が、大きな構造変化のなかで(フレームワーク)、経済活動によって重層的な「つながり」と「ながれ」を形成し(ネットワーク)、それがどのような地点を経由して結ばれていったか(ゲートウェイ)という研究です。これを「香港」というゲートウェイを軸に、華南~東南アジア・米州・オセアニアに拡がった「見えざる経済圏」の興亡を辿り、描いてきました。もう1つは、そうした近現代アジアへの、同時期の日本によるアプローチの研究です。これを台湾銀行という日系特殊銀行が、「南進」という現象に関与していった姿から辿ることで、描いてきました。こうして、現在につながるアジア経済の史的な文脈・道程・態様を、多面的・立体的に描き出すべく取り組んできました。
現在取り組んでいるテーマ
現在では、上記の経済史研究に加えて、当研究所に移籍してから開始した、シンガポールの政治・経済・外交・社会に関する考察と論考にも取り組んでいます。さらに、これと従来の考察対象であった香港との比較都市論、さらには経済史研究から派生して以前より取り組んできた、歴史的文脈に根差した今日の金融センター論や、アジアでの非公式・非対称な経済活動と安全保障の研究も継続しています。これらは、それぞれが異なる分野のようで、実はアジアの過去・現在・未来という時間軸のなか、すべては相互に影響しながらリンクしています。こうしたパズルを解き続けることが、私の研究活動です。同時に、その解を学術のレベルだけではなく、各種メディアでの記事やインタビュー、公共・民間団体などでの講演で、幅広く還元する活動にも力を入れています。