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ライブラリアン・コラム

システム担当の図書館司書って何をやっているのですか? ――Google Analytics 4でアクセス分析しよう編

榎本 翔

2022年12月

利用者はウェブサイトにどのように訪れるのか

図書館へ直接来館するのは難しいが、図書館にある資料やサービスは利用したい。そういった利用者に提供できるサービスはいわゆる非来館型サービスとしていくつか存在するが、サービスのポータルである図書館ウェブサイトは利用者にとって窓口となる。ウェブサイト上でどのようなサービスを、どのように提供するのかは図書館の判断による。例えばアジア経済研究所図書館の場合であれば拙稿「システム担当の図書館司書って何をやっているのですか?」で述べているとおり、図書館の開館情報をはじめ、デジタルアーカイブスや「アジア動向年報重要日誌検索システム」、機関リポジトリといったサービスを提供しているほか、蔵書検索や新着図書案内、過去に受けた参考業務の事例等を紹介している。ウェブサイト上で何らかのサービスを提供するにあたって、そのサービスに対し、どこからアクセスがありどの程度利用されているのかを調べるのが「アクセス解析」である。本稿ではアクセス解析でよく利用されているGoogle Analyticsを紹介する。

Google AnalyticsとはGoogle社が提供しているウェブサイトのアクセス解析サービスである1。サービスとしては元々存在した解析ソフトであるUrchin社を買収した2005年から開始しているが、実際に多くのユーザーが利用し始めたのはGoogleが台頭してきた2010年代だろう。Google Analyticsはいくつかの世代があり、原稿執筆時点ではGoogle Analytics 4(以下、GA4)が最新で、前バージョンであるUniversal Analyticsからの移行期間中である。本稿ではGoogle Analyticsを初めて知った人向けにGA4の導入方法や簡単な使い方の例を紹介する。

図 Google Analyticsのロゴ

図 Google Analyticsのロゴ2
Google Analytics 4を使い始める

GA4を利用するには2つの情報が必要である。まず、Googleのサービスであるため、Googleそのもののアカウントが必要である。Googleにログインした状態でGA4のページ(https://marketingplatform.google.com/intl/ja/about/analytics/)を表示すると、「測定を開始」というボタンがある。これを押下すると、GA4のダッシュボードが表示される。もう1つ必要な情報はアクセス解析対象とするウェブサイトのURLである。これは、GA4ダッシュボードで初期設定をした後に作成するデータストリームで入力が求められる。データストリームはデータを収集するアプリケーションのようなもので、データストリーム入力後に作成されるトラッキングコードを集計対象としたいウェブページの<head>タグ内に埋め込むことで、24時間以内にアクセス解析の対象となる。GA4のダッシュボードにアクセスし、データの集計が適切に行われていれば「リアルタイムの概要」等で利用者がウェブサイトに訪れていることが分かる。

なお、GA4を扱うにあたって注意点がいくつか存在する。まず、GA4でのデータ保存期間は初期設定で2カ月となっているため、長期的な分析を行う予定であれば14カ月に変更しよう。次に、利用規約の確認およびプライバシーポリシーの整備等、サービスやデータの取り扱いに注意する必要がある。GA4はEU一般データ保護規則(GDPR)違反であると判断され、EU圏内での利用が禁止される事例が増えている。利用の際にはEU圏内からのアクセスに対して、GA4を用いた利用情報の収集および分析への同意を得るバナーを用意する必要がある3。最後に、ボットフィルタリング機能を有効化しておくとよい。リファラースパムという悪質な行為(自分のウェブサイトへ多くの閲覧者を誘導しているウェブサイトのリストに、スパムサイトを紛れ込ませ、結果としてアクセス解析者にスパムサイトへのリンクをクリックさせる攻撃方法)から保護するためである。

アクセス分析あれこれ

GA4を始めてしばらく経つとデータが蓄積されてアクセス分析を行うことができる。アクセス分析の方法は無数に存在するが、ここでは筆者がよく利用する3つの分析方法を紹介する。

まずはレポート内にあるアクセス数(ページとスクリーン)の情報である。従来のビュー機能にあたるもので、集計対象となるウェブサイトのなかで表示回数が多いページが順に表示される。基本的に表示回数が多いページはトップページか、何らかの理由で頻繁にアクセスされるようになった特定のウェブページである。トップページの特徴としては表示回数が非常に多く1人のユーザーが何度も訪れる傾向にある一方で、相対的にアクセスする新規ユーザーの割合は小さい。後者の特定のページについてはトップページ経由ではなく、Google検索やSNSの投稿を経由してアクセスしてくるため、初めて訪れるユーザーであることが多い。ただし、後者の場合は分析を注意して行う必要がある。GA4ではページへのアクセスやページ内のスクロールといった「イベント」を計測しており、アクセス数のみが多くエンゲージメントやスクロールといったイベントが少ない場合、ユーザーが間違えてアクセスした可能性が高い。類似するぺージの存在や検索間違いで偶発的に起こりえることであるが、本来集計されるはずのなかったアクセスも含まれるので注意が必要である。

2つ目はデータ探索機能をカスタマイズして測定するファイルダウンロード数である。データ探索機能はウェブサイトがどのように利用されているかを様々な指標で計測することができるもので、例えば特定のウェブページから別のウェブページへの遷移や離脱率を測定することもできる。ダウンロード数もfile_downloadというイベント項目があるため集計することができる。ダウンロードの計測対象となるのはPDFで提供している論文やレポートであり、これらの情報を取得するには通常のアクセス集計とは別に設定する必要がある。

3つ目はGoogle Search Consoleと連携したクエリ分析および外部からのアクセス流入分析である。Google Analyticsはウェブサイトに訪れた後のユーザーの動向を調べるツールであるが、Google Search Consoleはウェブサイトに訪れる前にどういった検索語やリンクからウェブサイトを訪れたかを調べるツールである4。GA4と同様に設定を済ませた後にサービス連携をさせることで、GA4上でGoogle検索からどのような検索語でウェブサイトにたどり着いたかを知ることができる。また、GA4ではどのような経路でウェブサイトに訪れたかを知ることができるが、Google Search Consoleと組み合わせることで具体的にどのURLから来ているのか、あるウェブページのURLがどのようなウェブサイトに掲載されているかを調べることができるため、どのような目的でウェブサイトを訪れたのかある程度推測することができる。

以上、GA4の導入方法や簡単な使い方の例を紹介した。図書館での調査といえば来館者を対象とした満足度調査や貸出履歴分析等があるが、ウェブサイト上での利用者の動向を調べることによって、利用者に対してより良い図書館サービスを提供することができるかもしれない。

参考文献
  • 窪田望ほか著・小川卓監修『1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本』インプレス, 2021, 487p.
著者プロフィール

榎本翔(えのもとしょう) アジア経済研究所学術情報センター図書館情報課課員。担当は研究所ウェブサイト全般やデジタルアーカイブといったシステム関係。

  1. Google. “Googleマーケティングプラットフォーム”. (https://marketingplatform.google.com/intl/ja/about/analytics/)Google, 2022-12-22. (アクセス日、以下の注も同様)
  2. Google. “Google アナリティクス開発者向けのブランディングに関するガイドラインとポリシー”. (https://developers.google.com/analytics/terms/branding-policy)Google, 2022-12-22.
  3. GDPD. “Google: Garante privacy stop all’uso degli Analytics. Dati trasferiti negli Usa senza adeguate garanzie”. (https://www.gpdp.it/web/guest/home/docweb/-/docweb-display/docweb/9782874)GDPD, 2022-12-22.
  4. Google. “Google Search Console”. (https://search.google.com/search-console/about)Google, 2022-12-22.