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図書館

アジア経済研究所図書館は、開発途上地域の経済、政治、社会等を中心とする諸分野の学術的文献、
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ライブラリアン・コラム

システム担当の図書館司書って何をやっているのですか?

 

榎本 翔

2021年10月

「図書館司書の仕事」のイメージ

図書館司書はどのような仕事をしていると思うか。様々な機会を通じて図書館司書になりたい人や司書資格取得を目指す学生に聞いてみると、図書館の本の管理や貸出返却、利用者への対応といったサービスが最初に挙げられる。もう少し聞いてみると、目録の整備や図書館でのイベントの企画をしているという。検索エンジンで図書館司書の仕事を検索しても似たようなことが書かれている。ここまで図書館司書の仕事として挙げられたものは重要なものである。いずれにおいても図書館システムに関する話はほとんど出てこない。今回は、図書館システムを始めとしたシステム全般を扱う図書館司書について書いてみる。

図書館司書とシステム色々

図書館システムを取り扱う図書館司書は「システムズライブラリアン」と呼ばれることもある(宇陀 2006)。しかし、「システムズライブラリアン」の専門性や役割について議論をする以前に、冒頭で述べたとおり、そもそも図書館司書とシステムが関係ないように思われている節がある。そこで、まずは図書館司書である筆者が担当するシステム関連業務を簡単に紹介してみよう。

最初に紹介するのは研究所ウェブサイト(https://www.ide.go.jp/)の管理運営である。図書館司書が担当するにしても図書館のウェブサイトに留まるのが一般的だが、アジア経済研究所の研究情報を発信するという観点から学術情報流通に造詣が深い図書館が管理運営している。研究所内の各部署からウェブサイトへの掲載依頼が来たのち、図書館職員を中心にウェブページの作成や校正、確認を行って公開される。

図  本稿が掲載される前のアジア経済研究所ウェブサイトにあるライブラリアンコラムのページ
図  本稿が掲載される前のアジア経済研究所ウェブサイトにあるライブラリアンコラムのページ。
これから掲載される自分の原稿も含めてウェブサイト全般の管理を行っている。

月に一度はアクセスログを集計し、利用状況の把握に努めている。また、場合によっては不正アクセスへの対応を行うためにサーバーのセキュリティ強化を行うことがある。

次にデジタルアーカイブス(https://d-arch.ide.go.jp/)を紹介する。アジア経済研究所で発行された出版物や、図書館が保有している貴重資料といったものをウェブサイトで公開している。

例えば「アジア動向年報重要日誌検索システム(https://d-arch.ide.go.jp/dlib/meta_pub/G0000019ASIADIA)」では、研究所が出版した『アジア動向年報』に掲載されている日誌――簡単に言えば年表みたいなものであるが――を、一日単位で検索することができる。内容としてはいつどこで何が起きたか1行にまとまっているだけだが、2021年時点で31カ国と地域、約26万件のデータが登録されており、1960年以降の各国での出来事を広く知ることができる。更新頻度は頻繁ではないが、データの更新や新しい貴重資料をデジタル化する際に、大量のデータ更新が問題なく行われているか確認したり、どのようなデータベース設計をするか検討したりする必要がある。

最後に機関リポジトリ(https://ir.ide.go.jp/)である。アジア経済研究所ではARRIDEという名称でデジタルアーカイブスに内包されている形だが、ウェブサイトとしては独立しており、国立情報学研究所のJAIRO Cloudsというシステムを使って運営している。現時点で2万件以上データベースに格納されており、毎日のように研究者が書いた論文や研究所の出版物を登録している。登録にあたって目録作成と同様にメタデータの入力を行うが、外部の出版社が発行している場合は、各出版社のポリシーを参照して著作権を侵害することにならないか事前に確認する。

他にも色々なシステムがあり、現在は担当外であるが図書館の蔵書検索や管理を行う図書館システムもある。アジア経済研究所図書館を含む大きな図書館では、蔵書の利用や管理において図書館システムは必要不可欠な存在である。

そして、いずれのシステムおいても図書館員がすべて自分の手で作成や管理を行っている訳ではない。他部署との連携以外にも、システムの開発や保守を行う業者との連絡や調整を行い、サービス提供に支障がないように運用する必要がある。

見える所にいるはずの見えない図書館司書

図書館司書や司書資格に興味のある人に筆者のシステムに関係する担当業務を紹介すると、「図書館司書はそんなこともするんですね」と驚かれることが多い。ウェブサイトや図書館の検索システムのように、図書館利用者のほとんどが見かけるものはあっても、管理する図書館司書の存在には気づかない。様々な図書館において、図書館司書のなかでもシステム担当はいるとしても数は多くないし、利用者の目に直接映ることはほとんどない。

ただし、本の貸出管理や利用者対応をしている図書館司書と同様に、システム担当の図書館司書はウェブサイトや図書館システムを通じて利用者にサービス提供をしている。見える所にいるはずの見えない図書館司書は、図書館関係のシステムを通じて利用者が何を求めているのか、見えないながらもコミュニケーションを取ってサービスを提供する必要があるのだ。

プログラミング必修化、企業活動のDX化(デジタルトランスフォーメーション)が進み、現代社会ではIT人材の需要と供給が増え続けている。順当に考えれば図書館も例外ではなく、システム関係に理解のある図書館司書が増えるはずだが、図書館司書になりたい人にもなっている人にも「システムはちょっと……」と今でも言われることが多い。システム担当の図書館司書は、図書館司書でありながら図書館司書っぽくない、何をやっているか分からないパソコンをいじっている人と思われがちである。まずはその認識を取り除くために図書館のシステムやウェブサイトに興味を持ってもらいたいと思う今日此頃である。

参考文献
著者プロフィール

榎本翔(えのもとしょう) アジア経済研究所学術情報センター図書館情報課課員。担当は研究所ウェブサイト全般やデジタルアーカイブといったシステム関係。