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台湾:与野党の次期総統候補者が揃う

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00049617

2007年6月

台湾では来年(2008年) 3月に総統選挙が実施される予定である(ただし、立法委員[国会議員]選挙と同じ来年1月12日に実施される可能性もある)。中国国民党(以下、国民党)は5月2日に馬英九・前同党主席(前台北市長)を、民進党は同7日に謝長廷・元行政院院長(前高雄市長)を総統候補として選出した。いずれも、党内予備選挙は党員投票と世論調査を併用した。

馬は昨年12月に台北市長を任期満了し、国民党主席に専念し始めたが、2月13日に台北市長特別費流用疑惑で起訴されたため、同党主席を辞任した。ところが、同日、彼は総統選挙への出馬を敢えて表明し、国民党中央常務委員会も汚職で起訴された者の公認を禁じた「排黒条款」を廃止した。馬のライバルである王金平立法院院長は当然これに抗議したが、呉伯雄党主席代理(4月7日に党主席選挙で当選)など国民党幹部は人気の高い馬が脱党して出馬することを憂慮し、王の抗議を聞き入れなかった。5月2日に行われた予備選挙では、馬と無名の雷僑雲高雄師範大学教授だけが立候補し、王は雷を支持するに留まった。なお、6月15日に王に近い楊政治高雄農会(農協)理事長らが台湾農民党を結成したが、同党は表向き王との関係を否定している。

民進党では謝、蘇貞昌行政院長、游錫堃民進党主席、呂秀蓮副総統が予備選挙に出馬したが、実際は謝と蘇の一騎打ちであった。謝は5月6日の党員投票で第1位となり、世論調査でも優勢であったため、他の候補は全員、謝への支持を表明した。なお、蘇は6日に行政院院長の辞任を否定したが、5月12日に突然、辞任した。その理由は定かでないが、蘇がライバルであった謝の足を今後も引っ張ることを未然に防ぐため、陳総統が蘇に辞任を迫ったとの見方がある。後任には張俊雄・海峡交流基金会理事長(元行政院院長[2000年10月から2002年1月])が再登板した(14日発表、21日就任)。

台湾の世論調査は不正確なため、謝と馬のいずれが有利とも言えない。また、馬は特別費問題で有罪とされる恐れがあり、謝も高雄市長時代の特別費の使途や高雄MRT(地下鉄)疑獄で躓く可能性が残っている。今後の展開に注目したい。