研究活動のご紹介

独立行政法人 日本学術振興会
研究拠点形成事業 B. アジア・アフリカ学術基盤形成型

新しい「グローバルサウス・スタディーズ」の確立に向けた研究ネットワークの構築

New Global South Studies JSPS CORE-to-CORE Program

2026年3月更新

  • 日本側拠点機関:独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所
  • コーディネーター:川村晃一
  • 事業期間:令和7年度~9年度(2025年度~2027年度)事業

研究交流計画の目標・概要

本交流事業は、グローバルサウス諸国の視点を取り入れた新しい「グローバルサウス・スタディーズ」を確立するため、独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所を研究拠点として、アジア、中東、アフリカ諸国の間に国際的な研究ネットワークを構築することを目標としています。こうした研究ネットワークの構築を通じて「グローバルサウス」という概念を批判的に検討したうえで、実証的な地域研究の手法を用いてグローバルサウス諸国の対外行動を政治経済学的に理解することを目指します。

これまで「南」、「第三世界」と称されてきた発展途上国は、近年「グローバルサウス」と呼ばれ国際社会における存在感と影響力を増しています。しかし、ウクライナ戦争、米中対立、環境問題、BRICSといった世界的課題に対するグローバルサウス諸国の態度は一様ではありません。そもそも、「グローバルサウス」という新しい概念の中身やその含意について、学術的にも政策的にもコンセンサスが存在しないのです。私たちは、「グローバルサウス」が使われている文脈や目的に関するメタレベルでの分析と、政治、外交、経済など各分野における各国の行動に関する事例分析を統合することで、総体としての「グローバルサウス」を把握することを目指しています。こうした研究を継続的に行うためには、グローバルサウス諸国との国際的な研究ネットワークの構築が必須です。

こうした問題意識から、本交流事業では、特徴的なグローバルサウス外交を展開している4カ国の研究機関、①インドネシア(国家研究イノベーション庁[BRIN])、②マレーシア(マラヤ大学)、③トルコ(中東工科大学)、④南アフリカ(ステレンボッシュ大学)との研究ネットワークを構築します。それを通じてアジア、中東、アフリカの事例を比較分析し、グローバルサウス諸国の対外行動を総合的に明らかにしていきます。アジア経済研究所がもっている既存の研究ネットワークを、本交流事業を通じて複数国にまたがる地域横断的な研究ネットワークに発展させ、グローバルな「グローバルサウス・スタディーズ」の研究ネットワークを構築していきます。

令和7年度(2025年度)

令和7年度(2025年度)活動実績

シンポジウム “Exploring the Global South: Epistemologies, Development Pathways, and Research Network
  • 開催日:2025年8月7日(木)、8日(金)
  • 主催:アジア経済研究所、インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN
  • 場所:BRIN(インドネシア・ジャカルタ)
  • 参加者:約420名(インドネシア政府関係者、現地アカデミア、民間企業、および本事業関係者[日本、インドネシア、マレーシア、トルコ、南アフリカ])
  • 概要:本シンポジウムの第1セッションでは、インドネシアの視点からグローバルサウスが考える国際秩序や南南協力のあり方について議論が交わされ、同国がその戦略的位置を活かして、ノースとサウス、サウスとサウスの橋渡し役を担えることが示されました。つづく第2セッションでは、グローバルサウス概念の分類枠組みが提示された後、各拠点の研究者が自国の文脈においてその概念がどのように利用されているのかという点から発表を行い、概念の多義性の問題が検討されました。また、若手研究者フォーラムでは多様な研究成果が共有され、BRICSの日本への影響や研究手法に関する活発な質疑が行われました。

写真(撮影:BRIN)

写真(撮影:BRIN)

(撮影:BRIN

日本拠点・南アフリカ拠点間の研究会合
  • 開催日:2025年9月1日(月)
  • 場所:アジア経済研究所(日本・千葉市)
  • 参加者:約10名(南アフリカ拠点コーディネーター、日本側拠点メンバー、アジア経済研究所の研究員)
  • 概要:南アフリカ拠点コーディネーターの来日に合わせ、研究会および交流会を開催しました。グローバルサウス概念の整理や南アフリカの外交戦略について意見交換を行い、特にアフリカ地域における同国のリーダーシップ、対中外交、BRICS+の動向などを重点的に議論しました。あわせて、今後の共同研究の方向性や成果出版についても協議しました。会合にはアフリカ地域を専門とする当研究所の研究者も加わり、研究関心や今後の交流の可能性について活発な対話がなされました。

写真(撮影:アジア経済研究所)

(撮影:アジア経済研究所)
日本拠点・マレーシア拠点間の研究会合
  • 開催日:2026年1月6日(火)、7日(水)
  • 場所:マラヤ大学(マレーシア・クアラルンプール)、マレーシア科学大学(マレーシア・ペナン)
  • 参加者:約25名(マレーシア拠点メンバー、両大学教員・大学院生、および日本拠点メンバー)
  • 概要:マレーシア拠点であるマラヤ大学を訪問し、グローバルサウス研究の概念的課題や今後の研究の方向性について議論するとともに、日本との人的交流や共同研究の可能性を検討しました。あわせて若手研究者との意見交換を行い、中国やアフリカ出身の研究者を交えてグローバルサウスをめぐる認識論的論点を議論しました。さらに、拠点以外の大学(マレーシア科学大学)も訪問し、社会科学・国際関係論の分野における同国の研究動向について意見を交換しました。こうした活動を通じて、今後の連携拡大に向けた基盤を構築することができました。

写真(撮影:マラヤ大学、マレーシア科学大学)

写真(撮影:マラヤ大学、マレーシア科学大学)

(撮影:マラヤ大学、マレーシア科学大学)

日本拠点・マレーシア拠点間の研究会合
  • 開催日:2026年3月3日(火)
  • 場所:アジア経済研究所(日本・千葉市)
  • 参加者:10名(マレーシア拠点メンバー、日本側拠点メンバー、アジア経済研究所の研究員)
  • 概要:マレーシア拠点メンバーの来日に合わせ、研究会を開催しました。マレーシア拠点メンバーから、覇権国なき国際社会において国際公共財がどのように提供されうるのかという問題提起がなされ、東南アジアでASEANが覇権国にかわって地域的な公共財を提供する可能性についての視角が提示されました。これに対して、アフリカ連合(AU)のあるアフリカや、中東の事例との比較が行われ、覇権国なき世界でグローバルサウス諸国がどうやって国際・地域秩序を維持・形成しようとしているのかという点について議論が交わされました。2年度目の研究テーマと深く関わる点について有意義な意見交換ができました。

写真(撮影:アジア経済研究所)

写真(撮影:アジア経済研究所)

(撮影:アジア経済研究所)

令和7年度 組織図
拠点機関 メンバー
日本 アジア経済研究所
インドネシア BRIN
マレーシア マラヤ大学
トルコ 中東工科大学
南アフリカ ステレンボッシュ大学

以上

令和8年度(2026年度)

令和9年度(2027年度)